巷で話題になった八ッ場ダム:水が貯まる直前の姿を見た

八ッ場ダム
いよいよやって来た秋の大型企画第1弾は群馬の温泉めぐり。その最初のイベントが八ッ場ダムの見学であった。

2年前に一人旅で訪れたときは、まだまだ工事中といった様子の現場を遠くから眺めたのだが、いまやコンクリート打設が完了して試験湛水を始める段階。ダムの姿形はすっかりできあがっている。

工事前でもなく、いかにもな工事の途中でもなく、完成後の整った姿でもない、微妙な「さなぎ」の時期の八ッ場ダムを記憶に留めることとなった。

(補足)2019年台風19号来襲前の話です。

ダム下流側:吾妻峡を行けるところまで行く

いつか来た道へ

2年前に八ッ場ダムと吾妻渓谷を見て回った時は鉄道一人旅だった。今回はグループ旅行。メンバーが出してくれた車で関越道を北上する。朝早く出たつもりだったけど途中で渋滞に捕まってエライ目にあった。行楽シーズンで天気も良かったからなあ。

半ば恒常化している渋川伊香保ICでの出口渋滞にも巻き込まれて目論見よりだいぶ遅れてしまった。時間があったらダム近くの川原湯温泉(たとえば王湯)に立ち寄ってみようかという案はパスすることになりそうだ。

ひとまずはダムの下流側へアプローチすることにして、吾妻渓谷の中でも特に狭い、吾妻峡と呼ばれる一帯を目指した。吾妻川沿いの国道145号旧道を行くと、かつて泊まったぬる湯ドバドバの松の湯温泉との分岐を過ぎ、やがて「この先通行止め」となる旧道の終点に達する。そこから脇道の坂を上がって十二沢パーキングへ。

猿橋と日本一短かったトンネル

ここからは車を置いて、前回と同じく吾妻峡の散策が始まる。最初の見どころは猿橋。
吾妻峡 猿橋
橋の上から渓谷をのぞき込むことができて滝なんかも見えたりする。でも木や崖の影になっちゃって黒っぽい画しか撮れない、撮影者泣かせのスポットだ。

猿橋は国道145号旧道につながっている。先ほどの通行止区間になるから、車といえばたまに工事車両が走る程度だ。行き交う人も少ない。この旧道に沿ってJR吾妻線の旧線(廃線区間)があり、日本一短いトンネルだった「樽沢トンネル」を見ることができる。写真だとわかりにくいが全長約7メートル。めっちゃ短い。
樽沢トンネル

吾妻峡のハイライト・鹿飛橋

お次は鹿飛橋。145号旧道から階段を下りていったところにあって吾妻峡でも特に幅が狭い場所になる。
鹿飛橋
鹿飛橋からのぞき込む渓谷は狭さと高さが際立ってなかなかの迫力だ。しかし光の加減でやっぱりうまく撮れない。あと流れる水が前回と違って緑色をしてなくて灰色だった。
鹿飛橋からの景色
鹿飛橋から145号旧道に戻ってさらに奥へ。前回訪問時は鹿飛橋で引き返してしまったので、ここから先は未知の世界。さあダムはまだか。

…まだでした。お次の紅葉台は単なる広場といった風情。紅葉シーズンにはいい景色になるのかな。崖の前に柵や手すりはなくロープが張ってあるだけだから転落が怖い。崖下をのぞき込んでもそんなによく見えないし、無理はしないに限る。
吾妻峡 紅葉台

まだ見学用に整備されていなかった

お次はようやくダムスポット。猿橋からゆっくり見学しながら30分かかった。でも本格的にダムの足元まで行くことはできない。そのはるか手前で歩行者を含めて全面的な通行止めになってしまうからだ。奥に見えるのは工事関係車(者)のみ。
八ッ場ダム下流側の通行止め
肉眼だと一応は木々の間からダムの姿を確認できるけど、スマホの写真だと何が何だかわからないですな。
下流側から見上げた八ッ場ダム
また川の対岸には小蓬莱という見晴台があるから、鹿飛橋→対岸へ渡ってハイキングコース→小蓬莱へ行けば、ダムをはっきり見ることができたのかもしれない。でも過去の大雨の影響により肝心の鹿飛橋~小蓬莱ハイキングコースが通行止め。完全に詰んじゃってました。


ダム上流側:見学の王道コースはこちら

ダムを見るなら「やんば見放台」がベスト

下流側がだめでも上流側があるさ。むしろ現時点では上流側こそが八ッ場ダムのメインステージである。我々は十二沢パーキングから車で坂を登って県道375号へ、そして前回は20分かけて歩き通した吾妻峡トンネルをあっさり抜けて、半端ない高さの八ッ場大橋を渡る。

渡ってからすぐ右折すると「やんば見放台」なる人工の高台があった。下流側と違って結構な人出じゃないか。にぎやかさが全然違うぞ。
やんば見放台
やんば見放台の上まで登るとダムおよびダム湖予定地を一望できる。ダム湖といっても水が全然貯まっていないので移転前の町の跡がまだ見える。湛水試験で満水になるまで3~4ヶ月かかるそうだ。
(補足)台風19号通過の際に一気に満水になったため、台風の後にはこのような景色はもう見られなくなった。
ダム湖予定地
ダムが最もよく見える位置は撮影用に数段高くなった1名分の特別スペースになっており、10名ほどの行列ができていた。混雑絶対避けるマンのおじさんといえども、ここまで来たら列に並ぶしかない。

こうして自分の番が来るのを待って撮影したのが冒頭の写真である。水に隠れていないダムの裏側(?)が丸見えってのは結構珍しいんじゃないかな。左手に見える建設中の建物はいわゆる管理棟でしょう。

せっかくなんで御尊顔をもっとはっきりと。天端にいるクレーン車との対比から、とんでもない高さであることがわかる。
八ッ場ダム

「なるほど! やんば資料館」を再訪

最大の見どころを無事クリアした我々は再び八ッ場大橋を渡って川原湯地区へと戻った。2年前に訪れた時は宅地造成中のニュータウンぽい雰囲気だなあと思った記憶があるが、やっぱり同様の印象を抱いた。

そうして今回もやってまいりました、プレハブ小屋の「なるほど! やんば資料館」。内部はこんな感じ。相変わらず細かい文字で説明がびっしり。
なるほど! やんば資料館
個人的には壁の掲示物よりも床の中央部に敷かれた地図や、その奥の地形模型に目が行く。各所の位置関係とかを興味深いと思ってしまうのは、なぜなんだぜ。一番奥は映像コーナーと観覧用の椅子。

ちなみに昔はここにペッパー君がいたらしいね。たぶん簡単な説明なんかをしてくれてたんだろう。いなくなっちゃったのは、なぜなんだぜ。

八ッ場大橋の高さを生かしたバンジージャンプ

さて見放台にも行ったし資料館も見学した。あとやることといえば八ッ場大橋を歩いてみることくらい。実際に多くの人が車を降りて橋の上を歩いていた。※橋の途中で車を止めるのはご法度。みなさん見放台や資料館の駐車場から歩いている。

八ッ場大橋は本当に高さが半端ない。高所がだめな人は厳しいかもね。
八ッ場大橋
橋の真ん中らへんにはバンジージャンプ場があったしな。まあ100m級と思われるほどの高さを感じられるのは今だけだろう。ダムが本格的に稼働してダム湖ができれば水面から測った橋の高さはだいぶ減るはずだ。

また橋の途中には無料の望遠鏡が設置されている。その場所じたいがダムを正面に見据えるちょうどいい見学スポットだけど、やっぱり本格稼働すればダムではなくてダム湖が主役になりそう。
八ッ場大橋の望遠鏡

完成後の姿も見るべきか

…ん? さっきから微妙に揺れてるぞ。橋が揺れている。これって吊り橋なの? 後日の調べによればエクストラドーズド橋という構造で吊り橋とは異なるらしい。よくわかってないが斜張橋でもないらしい。構造がどうであれ、とにかく揺れが気になって落ち着かない気分に支配されてきた。もう戻ろう。

最後の最後にダムと反対側の景色をチェック。鉄道旧線跡の鉄橋が見える。移転前の川原湯温泉街跡地もこのへんだと思う。いよいよ湖の底に沈んでしまうのか。
移転前の旧川原湯地区
以上で見学は終了。やっぱり川原湯温泉に立ち寄る時間はなかった。何年先のことになるのかわからんが、こうなったら完成後の姿も見届けてやろうかとちょっと思いつつ、今夜の宿へ向けて出発した。

(参考)2017年・八ッ場ダム工事現場周辺と吾妻渓谷の散策

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