ぬる湯好きにはたまらない、あの川浦温泉山県館を再訪

川浦温泉 山県館
山梨市の旧三富村地区にある川浦温泉をご存知だろうか。鎌倉時代の武将・畠山重忠が夢のお告げにより発見したというのが大河ドラマ勢にとってたまらない逸話だ。和田殿と仲良く入ったりしたのかな。

時を経て戦国時代には武田信玄の重臣・山県昌景が整備を行ったとされる。しかも現代の世では、川浦温泉の一軒宿「山県館」を昌景の子孫の方が経営しているとのことだから、その由緒は並ではない。加えて好みのぬる湯とくれば注目しないわけにはいかない。

そんな背景から過去に一度訪れていた山県館へ、2年ぶりにほぼ同じメンバーで再訪することになった。今回は寒さが意識される晩秋~初冬の季節だったが、湯量豊富なぬる湯はやっぱり最高。畠山殿と昌景公グッジョブ。

川浦温泉「山県館」へのアクセス

埼玉西部からだと雁坂トンネル利用で一気に

東京方面から山県館へ車でアクセスする典型的なルートは中央道で勝沼ICまで行って、フルーツラインと呼ばれる広域農道と国道140号を北上することだろう。西沢渓谷・雁坂トンネルといった埼玉県境付近のスポットから10kmほど手前に当館がある。

鉄道の場合はJR中央本線・塩山駅から旅館の送迎を頼るか(要予約)。もしくは山梨市駅から路線バス。ただし本数注意。

我々は秩父観光と組み合わせていたため、車で埼玉側から雁坂トンネルを抜けて山梨側へ出てきた。まもなく西沢渓谷の入口、そこを過ぎるとすぐに道の駅みとみ、でいったん休憩。

広瀬ダムに寄り道する

時間に余裕ありまくりだったから、道の駅と宿の間にある広瀬ダムを見ていくことにした。笛吹川をせき止めるロックフィルダムだ。
広瀬ダム
ダム湖(広瀬湖)側はこんな感じ。周辺の紅葉はもう終わってしまっていた。奥に見える山がいいね。奥秩父のボス的存在の甲武信ヶ岳ではなく木賊山らしい。
広瀬湖と木賊山
こちらが下流方向。なんか工事中といった様子で水は通っていませんな。
工事中の下流側
広瀬ダムの奥の広場では流木を無料配布していた。※業者の方はご遠慮ください。
流木の無料配布
大半が立派な太さの丸太だからせめて軽トラじゃないと厳しそうだな。しかも丸太を抱えて駐車場まで歩くのかよ、と思ったら「車の乗り入れも出来ます」って書いてあるね。そりゃそうだ。我々には活用の術がなかったのでスルー。

広瀬ダムを出ていよいよ山県館へ。国道から脇道へ入る箇所が2地点あるけど、看板が誘導するのは勝沼寄りの方のみ。雁坂寄りの方だと坂がきついからかな。で、脇道が国道の下をくぐった先が当館の駐車場だ。駐車場の端には当館の主役たる岩風呂への門がある。ただし施錠されている。
岩風呂への門

武田氏の隆盛をしのばせる宿

置いてあるものが並ではない

ではチェックイン。前回も撮影したような気がする山県昌景の武具がエントランスに展示されている。やはり並ではない。
山県昌景の武具展示
武田二十四将図の掛け軸なんかもあるし。名前をあげてみろと言われても出てきませんがね。
武田二十四将図などの展示
フロント横にはお土産コーナーがある。山梨だから果物をねたにしたお菓子やワインなど売り物には事欠かない。
お土産コーナー

これはびっくり、特別室

フロントがあるのは2階で、案内された部屋は3階のえらく広い和室だった。15.5畳+広縁と10畳の二間。しかも妙に高級感がある。特別室の称号がついた客室だった。予約した普通の部屋からアップグレードしてくれたんだろう。ありがてえ。
特別室
布団は最初から敷いてあった。主となる15.5畳の方をあらためて撮影してみよう。広さが余裕のよっちゃん。1泊して帰るだけなのがもったいなくなる。
特別室の主間
シャワートイレ・洗面台あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり、WiFiあり。タオルハンガーは大きめで使い勝手良し。駐車場側の部屋なので窓の外はこんな感じ。まさに陽光が降り注ぐ部屋。
窓の外は駐車場

良質な温泉のお風呂がいっぱい

ぬるい露天風呂を備えた「せせらぎ之湯」

山県館の大浴場は1階にある。エレベーターを降りると通路が左右に分かれており、夜21時までは左(薬師之湯)が女湯、右(せせらぎ之湯)が男湯だった。右へ行くと、大浴場とは別の岩風呂や貸切風呂もあるし、通路の一部が休憩処になっている。
通路の休憩処
泉質は2種類あるようで、少なくとも一方は「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、温泉」。もう一方は高温泉だったかもしれない。どの浴槽がどっちの泉質かは把握してない。混合して温度調節している可能性もある。加水・加温・循環なし、消毒あり。

せせらぎ之湯から紹介しよう。脱衣所に貴重品ロッカーがあったのを記憶している。洗い場はたしか8名分。※旅の2日目になるとすっかり気が緩んでしまい、観察力がかなり低下していた。

内湯浴槽はこのご時世だと6名が横並びで入るサイズ。お湯は無色透明で湯の花や泡付きは見られない。温度は熱すぎない適温で、ぬる湯ではない。軽い硫黄香が温泉らしさのアピールになっている。端っこが「寝湯」と札のある浅い区画になっていた。

美肌之湯と名付けられた露天風呂もあって、3名ずつの向かい合わせで6名サイズ。こちらははっきりとぬるくて川浦温泉のぬる湯パワーを垣間見ることができる。おかげで相当の長湯が可能だ。三面の壁と天井で囲まれているため、壁のない一面のみが外に開けた露天スタイルとなる。

収容力にすぐれた薬師之湯

夜~翌朝が男性用になる薬師之湯は、内湯1+露天2の構成。洗い場の規模は覚えてません。8名分くらいはあるんじゃないか。前回訪問時は内湯が熱かったが、今回はせせらぎ之湯の内湯と同じくらいの適温だった。相変わらずオーバーフローの量がすごい。

脱衣所に近い方の露天風呂・月見亭之湯は4名サイズの岩風呂でややぬるめ。屋根付き。月見亭というくらいだから夜に月を見るのにちょうどいい場所になってるのかも。知らんけど。

奥にある露天風呂・笛吹権三郎之湯は5名サイズの岩風呂。屋根付き。月見亭よりも若干ぬるかった。前回の印象と温度が逆だ。このへんはコンディション次第で変動する可能性があるね。高い位置の湯口から打たせ湯のようにお湯が落下してくるのが特徴。

主役級の信玄公岩風呂はさすがにすばらしい

風呂の数が多いんで、どんどんいきます。次は当湯の主役ともいえる信玄公岩風呂「笛吹溪流雅之湯」。せせらぎ之湯の直前で左に折れてつきあたりを右に進んでエレベータに乗ってB1へ。そこからさらに階段通路を下っていく。もう笛吹川のところまで下りてしまうんじゃないかというくらい。

ここは日の出~22時まで利用可能で、10時~16時が男性用、16時~18時半が女性用タイムになる。それ以外は混浴。

岩風呂が3つあり、手前外側の3名サイズ浴槽はお湯が熱め。他がぬるいからそう感じるだけで、まあ普通の適温だ。自分は最後にちょっと浸かるだけの上がり湯として利用した。手前内側は6名サイズでぬるい。十分に満足のいくクオリティだけど、一番奥に控える大物のせいで、我々にとってはただ通過するだけの影の薄い浴槽となってしまった。すまん。

この手前内側浴槽の中をザバザバと歩いて奥の岩をよいしょと越えていくと、隠された大物岩風呂が待っている。何が大物かって、際立つぬるさがぬる湯好きのハートにジャストミート。通った回数と浸かった通算時間ではここが一番だ。

ひいき目を承知で言うならば硫黄香が一番強い気がするし、肌がなじんでくると泡付きも見られるようになる。体温程度の熱くも冷たくもない心地良さで眠りそうになるし。1時間浸かりっ放しでもまったく苦ではない。笛吹川を近くに感じながらのぬる湯タイムがたまりませんな。

貸切風呂も体験してみた

朝食前に貸切風呂にも入った。フロントで鍵を入手して、せせらぎ之湯の手前で階段を1フロア分下りていくと、こぶし之湯・絶景之湯の2つがある。我々は絶景の方。たぶんどちらもレイアウトは一緒だと思う。

内湯は1名分の洗い場と3名サイズの御影石風呂。お湯は適温。広い窓越しに笛吹川を見下ろす景色が展開する。なるほど絶景の湯だ。

隣に露天コーナーもある。1名用の信楽焼陶器風呂だ。貸切風呂の中の貸切風呂といった風情で独占感がすごいわ。お湯はぬるい。…ふう、ひと通り紹介した。ぬるいゆえの長湯になるから、これだけ風呂が多いとなかなかに忙しい。


食事も満足度高い

夕食はボリュームたっぷりだがうまいので完食する

山県館の食事は朝夕とも3階の食事処で。広間を仕切って実質は個室に近い雰囲気だった。夕食のスターティングメンバーがこちら。食前酒は山梨ワイン。
山県館の夕食
前菜とお造りに始まり、鰻笹おこわ・山女魚の塩焼き・湯葉巻き松茸饅頭・天ぷら・リブアイステーキ溶岩焼き、と次々にやって来る。最終的にはかなりの量になった。
山県館の夕食その2
食の細い自覚がある自分がよくぞ完食したもんだ。まあうまかったからな。定番メニューをひたすらローテーションする日常生活では絶対に出会わない味覚の数々。コスパ・タイパだけでは語れない温泉旅行の楽しみのひとつだなあ。個人の感想です。

本来なら締めのご飯でギブアップとなるところ、禁断のとろろご飯で攻められては残すはずもなかった。山県殿の策にしてやられたわ。

温泉旅館の朝はお粥を

朝食は8時。7時に貸切風呂を利用してから会場へ向かうと、次のような品が並んでいた。
山県館の朝食
お粥じゃなくて普通のご飯を希望することも可能みたい。どちらのパターンにせよおかわり自由。自分は一膳で十分ですが。鍋の中身は忘れてしまった、すいません。湯豆腐とかではなく味噌汁だったかと。

もちろん朝食後にも風呂に入る気満々だったから、洋服に着替えず浴衣姿で行動している。最後の信玄公岩風呂を楽しんでからチェックアウト直前にラウンジでコーヒーサービスをいただいたのであった。

 * * *

再訪なった川浦温泉山県館はやはりお湯のクオリティがすばらしい。ぬるいからという温度の好みは当然あるにせよ、マイルドかつ硫黄の香るお湯が豊富にかけ流されているってのは、望んでもなかなか得られる条件ではない。

メンバーの一人はさっそく再々訪の機会を構想し始めているようだった。まあね、ここは3回目あっても全然おかしくないですからね。


おまけ:西沢渓谷と名瀑一之釜

本当の西沢渓谷は遠いから導入部だけ歩く

チェックアウト後に西沢渓谷へ行ってみた。ただし本当の西沢渓谷は駐車場から40分、二俣吊り橋で西沢と東沢に分かれる地点からが真のスタートだ。そこからアップダウンありの3時間コースが始まる。一方通行なのでいったん進入したら最後まで歩ききるしかない。

準備不足・時間不足だし、さすがに厳しいな。二俣吊り橋まで歩いたら引き返す計画で、さあ行くぞ。
西沢渓谷ハイキングコース(導入部)の起点
途中にあったのがナレイの滝。写真だとちょっとわかりにくいね。
ナレイの滝
道中、鶏冠山の特徴的な形がちらちら見えるけど木の枝が重なって邪魔をする。葉が落ちているだけまだましだが。ネトリ大橋という橋の上から見ると邪魔するものがなくはっきり見える。
鶏冠山
同じくネトリ大橋から見た笛吹川。
ネトリ大橋から見た笛吹川
道の状態は最初の舗装道路から砂利道、土の道へと変わり、幅も狭くなっていった。西沢山荘(廃業)まで来れば二俣吊り橋まであと一息。
西沢山荘
しかしこの先は本格的な山道風で、何の装備もなく気軽に立ち入ってはいけない様子だった。無理はやめようということで予定より手前の西沢山荘で引き返した。

ラストは名瀑一之釜

川浦を離れる最後に名瀑一之釜を見ていこう。駐車場から数分歩いて階段を下っていくと吊り橋がある。
一之釜へ続く吊り橋
最初に目に入るのが釜沢の滝。雄壮というよりは細くて優美な姿。
釜沢の滝
反対方向には女滝がある。吊り橋の上から見下ろせる。
女滝
主役の男滝はまだ見えない。吊り橋を渡って対岸をちょこっと進むと突如として現れるのだ。ううむ、迫力あるな。
男滝
笛吹川にこんな顔があったとは。あまり大勢が詰めかけるとキャパ的につらいが、ロケーションは国道沿いのようなもので行きにくいわけではない。近くへお越しの際はお立ち寄りください。