名馬のかわりに金色の名湯に出会えます - テイエム牧場温泉

テイエム牧場温泉
2021年最後の遠征は鹿児島への一人旅。なかなかの寒波が来ていた頃だったが、県南部だったらまずもって雪の心配はないだろうということで決定。※旅行後にもっとすごい寒波が来て雪降ったみたいだから運が良かった。

最初の立ち寄り湯は垂水市のテイエム牧場温泉。その名前からわかる人はわかる通り、テイエムの冠名を持つ競走馬のオーナーに縁のある温泉だ。有名なところではテイエムオペラオーという名馬がいましたね。

現地は隣が牧場だったり馬を飼っていたりするわけではない。小さな単体の温泉施設だけど、かなり本格的な源泉かけ流しで、いったんお湯に浸かると出たくなくなる。加えて周囲の景観が最高に素晴らしかった。

テイエム牧場温泉へのアクセス

早朝の飛行機で鹿児島空港へ到着すると、怪しげな黒雲と青空が入り混じった天気だった。予報では降らないみたいだからきっと大丈夫。さっそくレンタカーを借りて出発した。※カーナビに住所を入れたら「まさかり海水浴場」の名称でヒットした。それでも問題ない。

カーナビのおすすめは国分ICまで高速道路を使うルートであったが、経費節減のため一般道優先ボタンをポチッ。国分まで国道504号を使った。

国分の先で国道220号に入ると右手に錦江湾を臨む海沿いのドライブとなり、次第に桜島が大きくなってくるのを見ると、いよいよ鹿児島に来たんだなあという実感が強くなってくる。残念ながら桜島の山頂付近は雲に覆われている…と思ったら、あのモクモク感は噴煙かもしれないなあ。

桜島と大隅半島がつながっているところを過ぎてなおも南下し、「まさかり」という交差点を右へ折れていくと、ほどなくしてテイエム牧場温泉の看板が現れた。空港から100分前後かかったと思う。


これは名湯といっていいでしょう

開店時間を勘違いしていた

しかし本当にここでいいのか。駐車場は荒れてる感じだし、隣には廃墟となった店舗が寂しい姿を晒している。ネットでは閉鎖とかリニューアル準備で休業中とかの情報が錯綜していたこともあって、ちょっと心配になってしまった。
テイエム牧場温泉前の看板
一応、坂を下っていった先に温泉があることを示す看板が立ち、坂下に屋根付き駐車スペースらしきものは見える。でも坂の手前にチェーンがかかっていて車が進入できない。むむう。

とにかく様子を探ろう。徒歩で坂を下っていくと建物があった。ここがテイエム牧場温泉なのか? 一般のお宅じゃないよな。意を決して「すいません、こんにちは」と声をかけるとご主人がいた。「テイエム牧場温泉はこちらですか?」「そうだけどまだ準備中だよ、13時から」…おっとーやっちまったー。

ネットで錯綜する情報の中から11時~なるデータを見つけて信じたのが間違いだったわけだ。実際は13時~のところ、ご主人のご厚意により早めに入れていただけることになり、チェーンを外して正規の場所に駐車することもできた。ありがとうございます。入浴料450円を支払い、ロッカーの鍵を受け取る。

素朴な風情のある湯小屋

番台の奥へ進んで男湯の脱衣所へ。鍵の番号に対応したロッカーを使う。分析書は見当たらず。ネット情報によれば「ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩泉」のようだ。

浴室に入るといかにも濃ゆそうな色のお湯を湛えた岩風呂が目に飛び込んできた。これは期待大だぞ。ひとまず全体をチェックすると、木の骨組みに波板を張った屋根からなる小屋が素朴ながらいい雰囲気を醸し出している。わりと新しめのカランが5台。シャンプー・石鹸の類は置いてない。

脇にサウナ室ぽいのと小さめの水風呂。残りの主要部分を先述のメイン浴槽が占めている。人の動線部分にはすのこが敷いてあって、その下は浴槽からオーバーフローしたお湯が通る結果、析出物による千枚田模様が形成されつつあった。

濃ゆい金色のお湯

ではメイン浴槽へ。おお、ぬるい。38℃くらいじゃないか。開店前で湯加減の調整がまだ完了していないのか、もともとぬるめで提供しているのかは定かでないが、自分の好みの温度帯だから全然OK。ばっちりでございます。

黄褐色のお湯はゴールドと呼んでも差し支えない印象を与える。濁りで浴槽の底は見えない。お湯の匂いを嗅ぐと強めの金気臭を感知した。浴槽を囲む岩には赤茶けた析出物がこびりついている。これほどの濃ゆそうな温泉を贅沢に源泉かけ流しにしているのだから大したものだ。

湯口から投入されるのと入れ替わりに、壁の穴から外へと排出されたお湯が作り出したものだろうか、小屋のすぐ外側の地面には明るい茶色の砂状のものが積み上がっていた。こいつがどんどん増えていっちゃうんだろうし、砂を固めて石にしたようなやつが配湯管にすぐ詰まってしまうんだろうな。まあとにかくすごいわ。

風呂から見える景色も素晴らしい

浴槽は横並びに6名、一部向かい合わせになれば8名いけるサイズ。窓の外には先ほどの積み上がった砂ばかりでなく、ヤシの木が並んでいて南国ムードばっちり。そしてその先には白い砂浜と青い海。下の写真は帰り際に屋外で撮った写真だが、まあこんな感じの風景だ。
すぐ外は海岸
さらには海の向こうに薩摩半島。きれいな三角形をした山は開聞岳に違いない。良質の温泉に浸かりながらこんな景色を拝めてしまうのかよ。素晴らしすぎる。
錦江湾越しの開聞岳
ちょうどいい塩梅のぬる湯だから、いったん浸かると心地良くて出るに出られなくなる。あと5分、もう5分、…どんどん時間が過ぎていった。出たくねー。とはいえ、自分が来たことで開店準備作業が滞っている可能性あるし、あんまりダラダラと居座るのはご厚意に甘えすぎな気がする。もう十分に長湯したといえるくらいに堪能したところであがることにした。

 * * *

施設の名前にインパクトを感じたのがきっかけで計画に組み込まれたテイエム牧場温泉。しかしてその実体は湯質と景色にすぐれた本格派の温泉であった。いつでもお湯がぬるいのかどうかは確証ないけど、自分が体験した限りでは温度を含めてパーフェクト。

鹿児島遠征の初っ端でいきなり大当たりを引いてしまったようだ。幸先良し。テイエムサウスダンなみのスタートダッシュを決めたぜ。


おまけ:鹿児島といえば桜島

テイエム牧場温泉の後は30分ほど走って桜島の有村溶岩展望所へ。ここには遊歩道に沿っていくつかの展望スポットがある。なんとなく大河「西郷どん」のオープニング映像やポスターを思い出すのだけど、こんなタイトルバックじゃなかったっけ。
有村溶岩展望所から見る桜島
錦江湾側の景色も大変結構なり。開聞岳の方角を写すと雲と逆光で暗い画像になっちゃいそうだったので大隅半島方面を。テイエム牧場温泉はどのへんだろう。
有村溶岩展望所から見る大隅半島
有村溶岩展望所から車で約20分の、もっと標高を上がっていったところには湯之平展望所がある。先ほどと山の形が違うぞ。
湯之平展望所から見る桜島
桜島は北岳と南岳からなり、見る場所によって姿を変えるそうな。へー知らなかった。蛇足ながら湯之平展望所の駐車場には猫ちゃんがうろうろしているから運転には気をつけましょう。