ゴールデンウィークに休みをつけて超特大11連休に…なんてことはしなくていいから、その休みを他の週に回してこまめに遠征したい主義な温泉おじさん、激混みが予想されるGW前に一発打ち上げることにした。久しぶりに栃木へ行ってみるかな。
今回は行ってみたい温泉地を決めてから旅館を探すのでなく、ネットで温泉通がよく名前をあげる宿を直接ご指名で選んだ。お湯の良さに間違いはあるまい。
1泊目は塩原・塩の湯温泉の明賀屋本館。「首都圏に近い秘湯」を名乗るだけあって、川沿いの秘湯感あふれる露天風呂はかなり印象的。お湯も個性的、かつ個人的に好きなぬる湯のお風呂もあって最高だった。昭和レトロが好きな人には特におすすめ。
塩の湯温泉 明賀屋本館へのアクセス
電車・バスでも行ける秘湯
東京方面からだと新幹線那須塩原駅から路線バスに乗り換えて60分、塩原塩釜で下車。在来線であれば西那須野駅の方が便が多くて乗車時間40分だからいいかも。バス停から徒歩30分近くかかる。バス停に着いたら旅館に連絡すれば送迎サービスが利用できるようだ(14時から19時まで)。
おじさんは久しぶりに愛車を転がしていくことにした。もう冬じゃないし塩原なら車で大丈夫でしょう。もうひとつの理由は、せっかく平日休暇のカードを切るなら行ってみたい場所があったから。大藤で知られるあしかがフラワーパークである。日程的にもちょうど見頃だった。休日に行ったらとんでもない混雑に巻き込まれそうだからね。
あしかがフラワーパークで目の保養
結論から言うと、すごいっす。藤だけじゃない。場内が花だらけ。とりあえず西ゲートから入場して最初に目に入ったのがこちら。
広がり方が尋常でない大長藤は西ゲートのすぐ近く。
パンフレット写真なんかの滝みたいな・シャワーみたいな迫力の姿に見えないだろうけど、あれはベスト・オブ・ベストの見頃を狙ってプロが撮ったやつだし。現地で見れば十分に圧倒的だ。八重藤ってのもあります。
うす紅もあるよ。
そしてまた大藤が2本。歩いているだけで花の匂いがぷ~んと。
ツツジのコースもいいね。赤って何色あんねん。
白・桃・赤・橙・黄…とにかく色鮮やかだ。まさに色々。場所によっては青もあるよ。
雨が降りそうな曇天でこの鮮やかさだからとんでもない。人気スポットなのも納得。ゆえに平日のわりには混んでいて、もしも休日、ましてやGWだったら駐車場に入れるだけで何分待たされることか。すんなり駐車できて入場制限もチケット買いの列もなく、見学に集中できるレベルの混雑ですんだのは狙い通り。
いい気分で北関東道・佐野田沼ICから東北道・西那須野塩原ICへ、そこから国道400号で塩原へ。国道から分かれて塩の湯へ向かう道は奥へ進むほど細くなるが、すれ違いに気を使う狭さは最後の数百メートルだけだから何とかなる。
昭和レトロな雰囲気の旅館
正面玄関の道路を挟んだ向かいに水が湧いてた。飲んでいいのかはわからん。
入館してチェックイン。外観はいささか古びた感じだが中はそうでもない。とはいえ昭和レトロな雰囲気は残ってる。こちらがロビー。
お土産コーナーもございます。コーヒーサービスは1杯200円。エスプレッソマシンなので、エスプレッソ・アメリカン(アメリカーノ)・カフェモカ・カフェラテなんかは選べたがドリップ系はない。
フロントは2階と3階の中間フロアに相当し、案内された部屋は3階の10畳+広縁未満からなる和室。布団は夕食中に敷いて朝食中に上げてくれる方式。
シャワートイレ、洗面所あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり、WiFiあり。ベースの部分は昭和レトロでも水回りなどは新しくされていて、その他の管理状態も良好なのでいいんじゃないでしょうか。外の景色はこのような感じ。カメムシが侵入するから窓の開け閉めは素早く。
なんの景色だか、すぐにはわからないでしょうな。渓谷的な地形と緑に囲まれた環境といったところだ。下を覗き込むと鹿股川がちらっと見える。
なお、飲み物を買うなら、3階エレベーターホール付近にソフトドリンク自販機とビール自販機があったのでどうぞ。
濃ゆい泉質・温度変化・秘湯感
88段を下った先に
明賀屋本館の大浴場は地下1階に一般的な男湯・女湯や貸切風呂があるほか、そこからさらに88段の階段を下っていく川岸露天風呂は当館を特徴付ける存在であり、自分が今回の目玉とするお風呂だ。さっそくチェックイン直後に行ってみた。
88段はきついですね。帰りが特に大変よ。翌日太ももが筋肉痛になっちゃった。この階段部分からレトロの度合いがぐっと高まり、昔の宿泊棟だったのかなと思わせる廃墟風の建物を通ったりして、秘湯感がぐんぐん増してくる。
最後の方で女性専用露天風呂と混浴の川岸露天風呂に分かれる。もし女性が後者にトライする場合、まず女性専用露天風呂へ入り、そこから混浴側へ通じる扉を開けて移動するみたい。
高・中・低温からなる川岸露天風呂
川岸露天風呂の脱衣所は棚+かごだけの素朴なつくり。分析書は見当たらず。一般大浴場の方に貼ってあった紙によれば「ナトリウム-塩化物泉、中性、低張性、高温泉」で加温・循環・消毒なし、暑い時期のみ加水あり。ちなみに露天風呂に洗い場はありません。
川から遠い側に3名&2名サイズの2浴槽が見えたが、お湯を張ってなくて空っぽだった。そして川に近い側に3つの浴槽が並んでいる。川に向かって左から、2~3名サイズの低温木製風呂、すぐ右隣に2~3名サイズの高温木製風呂、少し離れた右方に5名サイズの中温岩風呂、と仮に呼んでおこう。いずれも頭上をトタン屋根が覆っている。
到着時点で誰もいない。ぬる湯派だけに大チャンス逃すまじと真っ先に低温風呂へ。お湯はモスグリーンに濁っており浴槽の底は完全に見えない。匂いはかなりはっきりした金気臭。なかなかの個性派だ。素朴なパイプから投入される源泉かけ流しのお湯はそのまま浴槽をあふれて床を伝って流れ出している状態。おかげで浴槽の木の縁や付近の床は析出物が積もってカチカチになっていた。
温度は期待通りにぬるい。37℃とかそんなレベルではないかと思われる。好みのゾーンでちょうどいい。濃ゆい温泉なのに喜んで長湯してしまった…チェックイン直後の時は事情により30分、夜寝る前に1時間、翌朝チェクアウト前に50分。低温風呂だけでも来た甲斐があったというもの。
神秘的な色の川を間近に見ながら入る
高温風呂も同様のお湯で温度だけが熱めの適温だった。こちらはワンポイントアクセントとして、あるいは上がり湯として(肌についた温泉を洗い流すためでなく最後にちょっと温まる目的として)利用させてもらった。あつ湯好きなら主力にどうぞ。
中温風呂は洞窟のような雰囲気があって、これはこれでおもしろい。温度は平均的な適温。低温と高温が川を真正面に見据える配置なのに対し、中温はやや斜めに下流方向を見るような配置になっている。景色を重視するならここかな。
川の水は薄い青色を呈しながらきれいに透き通ってて、水深が浅くて川底の石までよく見える。水面から露天風呂群までそれほど高低差がなく、大雨なんかで水量が増えたら露天風呂まで濁流の中になっちゃいそうだった。対岸は急斜面+草木が茂っているが、人工建造物の痕跡が残っており、土砂崩れて埋まってしまった感(真実は不明)。
浴槽から身を乗り出して川の上流・下流まで目を向けると、かなりいい感じの秘湯ムードを楽しめる。ぬる湯の存在込みで貴重な露天風呂だ。なお川岸露天風呂は朝7~8時が女性専用タイムとなる。
大きめ浴槽がある一般大浴場
朝起床後は一般の男湯へ行った。脱衣所には貴重品ロッカーと通常の棚が並ぶ。浴室にカランは7台。手前に2~3名サイズの小浴槽、奥に5~6名サイズの大浴槽がある。壁には細いパイプが引き回され、室内にゴーッという唸り音がずっと響き渡り、スチームパンク感がなくもない。
大浴槽は奥行きがそこそこあるので、向かい合わせを許容すれば5~6名×2で10名以上詰めることもできそう。お湯の特徴は露天風呂と似ている。温度は適温。景観とか雰囲気を抜きにしてお湯そのものに注目するなら、もし足腰の問題であの88段が厳しいのであれば、こちらに注力するのでも十分でしょう。
小浴槽もお湯の特徴はほかと変わらない。しかし明らかなあつ湯だったため短時間でギブアップ。最後にちょっとだけ浸かって終わった。
さらにレトロな太古館でいただくお食事
ボリュームたっぷりの夕食に敗北
明賀屋本館の食事は朝夕とも太古館という隣接棟で。太古館はよりいっそうレトロな建物であった。廊下をしばらく歩いて最後に木の階段を上った先の大広間へ。
夕食のスターティングメンバーがこちら。鍋系が2つ用意されている時点で「あ、こりゃ完食できないかもな」と直感した。
食前酒の梅酒あり。栃木→日光から連想される湯葉もありますな。刺身は白身のなにかと白身のなにかとニジマス。フロントにプレミアムヤシオマス云々のプレートが置かれていたから、おそらくプレミアムなヤシオマスなんだろう。前菜系にホタテや数の子と思われるものが使われていたりと結構頑張ってる。
イワナの塩焼きは頭も骨もばりばり食べられて良かった。そうしてお腹が膨れてきた頃、固形燃料で温められていた2品=肉とつみれの鍋と朴葉味噌ができあがった。
気持ちは全部残さずいただきたいところだったのだが胃の容量に限界が来ていた。夜の露天風呂のことを考えると、膨満感で部屋から動けなくなるパターンだけは避けねばならぬ。鍋の半分と唐揚げの半分と漬物、あと締めのご飯の大半を残すことになった。すんません。
朝食もいろいろあって盛りだくさん
朝食も太古館の大広間にて。前夜の分をなんとか消化して臨戦態勢は整っていた。さあ来い。
お、多くないか、これ…ご飯はおかわりを見越したくらいの分量がすでに盛られている。大丈夫かよと思ったけど、鮭・イカ・とろろの三位一体の攻撃により完食してしまったのは我ながら驚きだ。温泉玉子はそばの実とキノコ入りのそばつゆに浸かっていた。
湯豆腐はほっとする朝の一品という感じで結構ですね。デザートに付いてたコーヒーゼリーのおかげで食後のコーヒーなしでも十分だったのだが、どうしても飲みたくなり、例のエスプレッソマシンでアメリカンを作って飲んだ。お茶なら食事会場にセルフで用意されている。
太古館の文字になんだか威厳があるな。
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首都圏に近い秘湯…たしかにその通りの川岸露天風呂だった。ネットを見ていて温泉通の間で時おり名前があがること、ホームページその他で出回っている露天風呂の写真に惹かれたことから訪れたいと思うようになったが、実際に来てみて良い体験になった。泉質や景色はもちろんのこと、好みのぬる湯が提供されているのも大きかったね。ありがたや。