新旧揃い踏みのぬる湯が心地よい一軒宿 - 大塚温泉 金井旅館

大塚温泉 金井旅館
温泉旅行に出る時…とくに同行メンバーも温泉好きの場合は、せっかく遠くまで行くんだから温泉宿に泊まるだけでなく日中に立ち寄り入浴も楽しみたいと思ってしまう。いろんなところを体験してみたいし。それは今回の秋の上州湯めぐり紀行も例外ではない。

できれば好みのぬるいお湯で良さそうなところはないか? と探して見つけたのが中之条町にある大塚温泉「金井旅館」だった。農村地域の一軒宿である。体温より低いお湯は慣れないと面食らうが、浴感と効き目はばっちり。

しかも旧館の方の風呂は豪快な源泉投入とオーバーフロー。見た目もばっちりだ。

大塚温泉「金井旅館」へのアクセス

旅の2日目。四万温泉「あやめや旅館」をチェックアウトした我々の車は、四万川ダム・奥四万湖・甌穴群をまわった後、大塚温泉を目指して国道353号を南下していった。

ナビアプリは途中からショートカットする名もなき道を指し示したが、狭かったり走りにくかったりすると嫌なので、安全策で国道をそのまま進んだ。中之条町の中心部で国道145号にスイッチして沼田方面へ。

しばらく進んで高山村に入る手前で国道を外れる。あとは説明しにくい。ナビ必須。農村部の狭いくねくねした道を行かされた記憶がある。最後は田んぼの奥に冒頭写真のような建物が現れる。

駐車場がよくわからない。この建物の横(少し坂を上がる)にそれっぽい区画があるし、建物の前(少し坂を下る)の砂利地にも数台の車が止まっていた。宿泊者専用とか日帰り客はこちらとかの区別でもあるのかなあ。よくわからんので後者に止めた。


ぬる湯三昧の新館浴場

初見だと迷う入口

当湯へ日帰り入浴する場合、初見でなんの予備知識もなければ迷ってしまうだろう。ひとまず冒頭写真の建物は新館である。玄関に近づくと「日帰りの方は裏の旧館へ回ってください」と張り紙されていた。

裏手へ行くと旧館らしき建物が。
金井旅館 旧館
写真の右端のところに受付と書かれた木の札が立てかけてある。料金は2時間300円。机の上に置かれた木の箱にお金を入れればOK。野菜の直売所みたいだな。

支払いをしたはいいが、さて浴場の入口はどこだ? まさか新館の玄関から入るわけではあるまい。あたりを探索すると旧館前の道の少し奥に入口への階段があった。
日帰り客入口
階段を下りると鯉の泳ぐ池がある。
新館浴場と旧館浴場と池
大塚温泉には新館浴場と旧館浴場があり、上の写真の左上に見える扉が新館浴場の入口、右半分の白い壁の建物は旧館浴場。当時は予習不足でそんなことも知らず、どちらでもないところ(一番目立つ新館の裏玄関)から入ってしまった。初見殺しの罠がいっぱい。

内湯には温度の異なる3つの浴槽

いろいろ迷いつつも新館浴場へたどり着いた。渋い/マニア好み/ディープな世界という評判や空気感のわりに、新館だけあってハード面は小ぎれいでしっかりしたものである。壁の分析書には「アルカリ性単純温泉、アルカリ性、低張性、低温泉」とあった。

では浴室内へ。左手に4名分の洗い場。右手前に2名規模の小ぬる湯槽・1名規模のあつ湯槽が並び、右手奥に5名規模の大ぬる湯槽がある。それぞれに無色透明のお湯がかけ流しされていた。

あつ湯は好みでないので最初からスルー。まず小ぬる湯槽に入ってみた。微妙にぬくい。体温と同じくらいの温度かな。いくらでも長湯できる。

しかし大ぬる湯槽も気になったから味見は終了ということですぐに移動した。こちらはもっとぬるい。明らかに体温より低い。34℃とのことだ。冷たさに慣れると爽快感がやみつきになって出られなくなるタイプのやつ。

半分外へ出るような気分で行く露天風呂

いつもならここで粘るのだが、たしか露天風呂もあったよな…あやふやな記憶ながら気になって窓の外をちらちらチェックすると、おお、あったあった。内湯はあとで戻ることにして露天風呂へゴー。

内湯から露天風呂への移動が結構ワイルドである。奥の扉から外へ出ると、新館玄関や駐車場が近い。植え込みが多少の目隠しになってはいるが、半もろ見えって感じ。通りかかる人はまずいないのでまあいいけど。

石段を下りた半地下風のところに15名規模の空色のタイル張り露天風呂があった。ここはもろ見えではない代わり眺望もない。そして混浴である。女湯から露天風呂へは来づらいだろうね。露天に誰もいないかを内湯側から確実にチェックするのは簡単じゃないし。

ひたすらぬる湯につぐぬる湯

我々の時は男の先客1名だけだったから気は楽だ。34℃級のぬる湯にひたすら浸かりまくる。これといった強い特徴はないお湯だが、匂いを嗅いでみると温泉らしい温泉の匂いがした。あと指先がものすごいしわしわになった。

いやー爽快爽快。あらまそうかい。やっぱり出るに出られなくなった。しかしこのまま終わるわけにはいかない。内湯も堪能しなければ。ということで40分経過したあたりで露天風呂を出た。

内湯へ戻ったら大小のぬる湯槽を行ったり来たり。いやー極楽ですなー。大きい方で爽快感を味わい、体が冷えてきたと思ったら小さい方へ。小さい方もぬる湯なのだが温かく感じる。しばらく浸かって大きい方へ戻ればシャキッとする。まさかのぬる湯同士で冷温交互浴。

内湯で30分ほど過ごしてから新館浴場を出た。いやー満足満足。


源泉ドバドバが見ものの旧館浴場

すごすぎるドバドバ状態(ビニール付き)

本記事を書いているのは事後だから物事がすっかり整理されている。でも当時は予習不足で「旧館浴場もあるはずだけど見かけなかったぞ、どこだ?」状態だった。幸い他のお客さんが「大塚は初めてですか? こっちが旧ですよ」と教えてくれて助かった。

わかってしまえば超簡単。新館浴場の扉のお向かい。
旧館浴場入口
旧の方は年季の入った建物で、渋い/マニア好み/ディープがまさに当てはまる。脱衣所は男女分かれているけど浴室で一緒になる。つまり混浴。当時は誰もいなかった。

浴室内にカランはないと思っていい。開けっ放しの蛇口がひとつと壁から生えてるパイプがひとつ。どちらもものすごい勢いで水(いや、源泉かもしれない)を吐き出していた。受けた洗面器からただただあふれ出るのみ。

5名規模の主浴槽はもっとすごい。壁の一部が岩になってて、そこから源泉を投入しているのだが、量と勢いがとんでもない。ドバァァァァーーーーーーッと、大げさでなく滝のように流れ込んでいる。

あまりの勢いで跳ねる飛沫がすごすぎるからだろう、滝の前面にビニールがかけてある。なんじゃこりゃあ…。当然あふれ出す量も半端ない。浴室の床はすっかり一種の川と化していた。こんな湯船は滅多にお目にかかれないぞ。

ヌルヌル感のある体温以下のお湯が良い

浸かってみた感想は新の方の34℃級のやつと概ね一緒。こっちの方がヌルヌルした感触が強い。おそらくマニアな方々はこちらを好むでしょう。

すぐ隣には1名規模のサブ浴槽。上がり湯用のあつ湯かなと思って触ってみたら主浴槽と変わらない温度だった。ならあえて浸かってみるまでもあるまい。主浴槽から動かざること山の如し。

心地よくて出られなくなるパターンで20分が経過。新とあわせて1時間半は入り続けたことになる。次の予定もあるしそろそろ、ってことで旧館浴場を終了。久しぶりに長時間ぬる湯をやっちまったなぁ~。

もう指先はしわしわ、体はふにゃふにゃ、体中が温泉臭くなってしまった。期待して行ってみた甲斐があった。マニアを除くと主に地元常連向けの雰囲気だけど、銭湯より安いくらいの値段であんな名湯に入れるんだから、うらやましい限り。