かんなみ桜・白富士・良質ぬる湯…早春の畑毛温泉 大仙家

畑毛温泉 大仙家
冬の終わりが見えてきた頃、温泉旅行したいという要望をさる筋から受けて思い浮かんだのが伊豆の畑毛温泉であった。マイカーで行くのに無理のない距離にあること、雪とか凍結の心配はほぼ間違いなく無縁であること、国民保養温泉地に指定された本格温泉であること。まあ3つ目は建前で、本音は自分好みのぬるいお湯だからなんだけども。

宿泊先は過去2回訪れたことがあり、わりと気に入っている大仙家。格別お高いというわけではないのに設備・サービス・雰囲気がなかなか良くて、今回お連れする皆様にも満足してもらえるだろうと判断した。

結果は目論見通りにうまくいった(と、自分では思っている)。要望には応えられたし、個人的には大仙家の湯にまた入れたから言うことなし。

3回目の畑毛温泉大仙家へ

渋滞回避ついでに芦ノ湖へ

畑毛温泉は函南町と伊豆の国市にまたがる温泉地だ。近隣の観光地名でいうと世界遺産の反射炉や北条の里で知られる韮山をイメージするといいのではないか。徒歩圏に鉄道駅はなく、当宿では伊豆箱根鉄道駿豆線・大場駅やJR東海道線・函南駅への送迎を行っている。6年前の初訪問時にはこの送迎サービスを利用した。

今回はマイカーで皆様をお連れする旅。今年すでに甲府・常磐への長距離運転をこなしてだいぶ自信がついた。もうペーパーあがりだからと萎縮する段階ではないはず。狭い道・夜道・悪天候はまだノーサンキューだけどね。首都高もできれば避けたい。

初日の最大の敵は渋滞であった。わかっちゃいたけど、なんじゃこりゃな車の列。諸般の事情により仕方なかったとはいえ、朝早く出発するなどの工夫もなく、一般大衆と同じ行動パターンを取ってしまったからなー。東名海老名SAの時点でかなり消耗してしまった。

大井松田~御殿場でも工事による渋滞が見込まれたため、小田原厚木道路へ逃げて箱根新道へ。しかしなぜかカーナビがすぐに箱根新道を出て旧東海道を走るように指示。なんでや? なにか理由があるんだろうと従ってはみたものの…七曲がりの連続急カーブとか苦労して通る必要あったんだろうか。ここでも消耗。ひぃぃ~。

はぁーーー。なんとか芦ノ湖に着いた。せっかくだから見学しておこう。
芦ノ湖畔

2回目の三島スカイウォーク

はい、皆様よろしいでしょうか。目的地は伊豆なんで、箱根はまたいずれ。本日の観光メインイベントは日本最長の吊り橋・三島スカイウォークでございます。私めは大仙家初訪問時の帰りに立ち寄っておりますんでごぜえます。

吊り橋から富士山と沼津の海が見えて、ツアーガイドとしての面目は保たれた。ああよかった。その他詳細は割愛。三島スカイウォークについてはこちらの記事をどうぞ

あとは国道1号を三島の町まで下りて、伊豆縦貫道・塚原IC→大場・函南IC、あとは下道で現地へ。途中、柿沢川土手沿いに河津桜と菜の花が続くのが見えた。河津や南伊豆で見たのと同じような光景だ。「かんなみの桜」というらしい。


落ち着いてて好ましい雰囲気の宿

お変わりないようで大変結構

見覚えのある外観。そうそうこんなだったな。大仙家か、たった2回しか来てないけど、なにもかもみな懐かしい(沖田十三)。フロント横にお土産コーナーあり。
お土産コーナー
こちらがロビー。
ロビー
隣にはテラス付きのラウンジがあり、チェックイン時にもらった抹茶サービス券を使うと、ここで抹茶&和菓子をいただける。プチサプライズ的なうれしいサービスだ。
ラウンジ
ロビーから庭へ出ることができて、鯉のいる池や梅の花を鑑賞できた。もうちょっと奥に稲荷神社もあった。
大仙家の庭
また、陶芸体験にも力を入れている様子で、工房を併設して陶芸教室をやっていたり、館内に陶芸作品を展示したりしている。我々が飲んだ抹茶もそれっぽい器に入って出てきた。これらの落ち着いた雰囲気から察するに、どちらかといえば大人向け・シニア向けの宿だ(でもお子様連れもそこそこ見かけた)。

春の富士が見える部屋

過去2回がベッドの洋室だったのに対して、今回は4階の10畳+広縁和室。おおー、いい感じじゃないか。布団は夕食中に敷いてくれるクラシック方式。
大仙家 10畳和室
シャワートイレ・洗面台あり。空の冷蔵庫あり。金庫あり。WiFiは意識してなかったな。きっとあるはず。エアコン効かせてる感じではなかったのに、室温は寒くもなく暑くもなく、ちょうどよい状態が終始保たれていたのが良かった。いやあ快適快適。

窓から見える景色はこんな感じ。肉眼だとかんなみ桜が見えたと記憶しているが、あらためて写真を拡大してみてもわからんな。気のせいだったかな。
窓から見える景色
見る方角を変えると富士山の姿がバッチリと。お連れした皆様におかれましてはたいそうお喜びで、ツアーガイドとしての面目は保たれた。
富士山もバッチリ見える

やっぱり大仙家のお湯はええのう

2種類の源泉あり

大浴場は1階の奥にある。男湯と女湯の入れ替えはなし。夜中1時~5時を除いて入浴可能だったと思う。近くにビールを含むドリンク自販機あり。

脱衣所に貴重品ロッカーあり。部屋から履いていく“つっかけ”は脱衣かごの隣に収納ボックスがあり、他人が間違えて、もしくは気にも留めずに履いて出てしまう事故を避けられるようになっている。分析書は入口のところに貼ってあって、大仙湯と呼ぶ自家源泉は「ナトリウム-硫酸塩泉、低張性、アルカリ性、温泉」、韮山湯と呼ぶ一般的な畑毛温泉(推測)の方が「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、低温泉」だった。

浴室はとくに古さを感じさせることもなく、天井は高くて窮屈さがないので快適に利用できる。洗い場は8名分。ぎっしり埋まるところを見たことがないから宿の規模に見合ってるということで十分でしょう。

やや冷たい韮山湯も慣れれば爽快天国

温泉の主な特徴はどの浴槽も同じ。見た目が無色透明、主張の強い匂いなし、湯の花なし、泡付きは場合によりけり。はっきりした違いは温度ですかね。

内湯浴槽は3種類。ひとつは右奥の5名サイズの加温浴槽で、適温のお湯がわりとザバザバ投入されている。他がぬるめだから、ここを中心に入る客も多くいた。しかし自分は最後のあがり湯として使うのみだった。温度の好みもあるし、以下の2つの浴槽が源泉を謳っているからどうしてもそっちが優先になる。

左手前が3~4名サイズの韮山湯源泉浴槽。張り紙には30℃と書いてあったが、この時期にまったく抵抗なく浸かることができたのを考えると、もうちょっと温度は上かもしれない。いくらぬる湯派といえども、30℃だったらもっと冷たく感じて、肩まで浸かるのに強い意志と努力が必要だったはず。それとも慣れたんだろうか。

とにかく一度浸かってしまえば30分くらい居座ってもへっちゃら。むしろ全然のぼせないから永久にいられる気分。みんな冷たいからと韮山湯を避けるせいか、独占しやすかったのもGood。逆に夏は人気集中するかもね。

体温前後の大仙湯がすばらしい

左奥が5~6名サイズの大仙湯源泉浴槽。張り紙には35℃と書いてあったが、体温よりは上のようにも感じた。体温前後は自分のストライクゾーンなので、とても重宝する浴槽だ。微妙にぬくぬくする湯加減がまさに極楽気分。うっかりするとお湯の中で眠ってしまう。

湯口から少し離れると噴流を感じる場所があって、以前はそこを陣取ると結構な泡付きを観測できたのだが、今回は確認できなかった。お連れしたメンバーの方に意識がいってて注意力が欠けていたためかな。まあ、泡が付こうが付くまいが基本的なクオリティの良さには変わりなし。

韮山湯と大仙湯、そしてたまに加温浴槽を行き来すると、温度の違いから別種の楽しみ方ができる。食べ物でいう味変的なやつ。これをやると1時間経過してもまだ続けられる気持ちになっているからおそろしい。ぬるめの湯に長く入るという基本に忠実なのでまあいいでしょう。

ほかに適温の露天風呂とサウナもあるけど、全然利用しなかったな。大仙家は内湯の源泉浴槽2つが主役だと思っている。風呂あがりはお肌すべすべ。


食事はちょうどよい量で味わい深い

魚系で組み立てられた夕食の花籠会席

大仙家の食事は朝夕と1階のレストラン「遊山」で。部屋番号を告げてテーブル席に案内してもらう。夕食のスターティングメンバーがこちら。春の花籠会席だって。食前酒は梅酒。
大仙家の夕食
洗練された料理を適度な量だけ出してくれてるっぽいのが良いですな。この歳になると胃がはちきれんばかりに苦しくなるまでたくさん食べたいとは思わないからね。お品書きを見たらお肉がほぼ使われてなくてお魚系で組み立てられていた。過去2回もそんな感じだったような。こういうところもシニア向けと思われる点だ。

グルメレポはうまくできないので味の描写を割愛します。茶碗蒸しを思わせる容器が2つあるうち、ひとつは茶碗蒸し、もうひとつは桜色の甘鯛道明寺包みだった。春の訪れを予感させ、食卓を華やかにしてくれる一品。台物の白魚若竹鍋も同様ですね。白魚が透明→白に変わったら食べ頃。

量や味付けや各品の組み合わせがよく考えられており、おかげで締めの筍ご飯までしっかり完食した。

ハーフバイキング形式の朝食

朝はハーフバイキング。ご飯・味噌汁・パン・サラダ・飲み物をバイキング形式で取ってくる。焼き魚や温泉玉子などはあらかじめ席に配膳ずみ。
大仙家の朝食
焼き魚は赤魚とアジだろうか。2種類あるってのがまたニクいやね。ご飯を控えめに入れたのを後悔した。もうちょっと多めによそっておけばよかったかなあ。ちなみに蓋をしている鍋は湯豆腐だ。

食後のコーヒーも用意されている。紙コップに入れて部屋へ持ち帰ることもできる。いつもなら食後にラスト入浴するんだが、今回はメンバー的にそういうノリじゃないので、前述の抹茶サービスをいただいて、さくっとチェックアウト。うーん、一般人に温泉三昧を押し付けるのもアレだし、まあしょうがないか。

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3度目の大仙家。相変わらずすばらしい。マイカーを手に入れた時点で「大仙家だったら一人でふらっと行くのにちょうどいいかな」とぼんやり考えていたところ、縁あってグループ旅行の形で実現することになった。お連れした皆様も喜んでいたから、ツアーガイドとしての面目は保たれた。ありがとう大仙家。