冬のあんこう鍋&温泉ツアーの2泊目は北茨城市。有名な大洗あんこう祭を筆頭に、あんこうといえば茨城を思い浮かべるし、北茨城には温泉地もある。過去にはあんこうを求めて北茨城の平潟港温泉を訪れたことが2度あった。お得にあんこうを楽しめる小規模な民宿系が多く、温泉はなかなかストロングなあつ湯。
今回は少しだけ場所をずらして五浦海岸にある五浦観光ホテル別館大観荘に泊まった。個人的には一人旅の途中で日帰り利用させてもらったことがあるので再訪ということになる。
お湯はやっぱり熱かったが、アブラ臭の本格的な温泉と海の絶景がすばらしく、時間帯と湯船によってはぬる湯を楽しめるチャンスもあった。ツアーお題のあんこう鍋も濃厚で美味なり。
五浦観光ホテル別館大観荘への道
おっさん集団、アクアマリンふくしまに参上
まず、五浦観光ホテルには本館と別館があるけど、ここで紹介するのは別館だ。本館は別館から徒歩数分のところにあり、高層ホテルじゃない低層和風旅館で海は見えないんじゃないかと思う。
どちらも最寄り駅はJR常磐線大津港。駅から3km・徒歩40分だから歩くのはちょっとしんどい。このご時世は駅前にタクシーが待ってる保証もないしねー。当館が駅までの送迎サービスをしているから利用するとよい(事前予約制)。
我ら一行は車だから融通が利く。朝、いわき湯本温泉のうお昭をチェックアウトしたら、まず向かったのは小名浜のいわきマリンタワー。しかし諸般の事情により目的地をアクアマリンふくしまへ変更。個人的には一人旅の途中で立ち寄ったことがあるので再訪ということになる。
メンバー各位には「予想以上に充実していた」と好評だった。自分はぼーっと見学してただけで写真をほとんど撮ってなかったわ。とりあえず巨大水槽内のイワシの群れをどうぞ。
五浦といえば六角堂
見学後に五浦へ向かったらだいぶ早く着いてしまった。じゃあ六角堂を見学しましょうか(400円)。個人的には一人旅の途中で立ち寄ったことがあるので再訪ということになる。明治期の美術思想家・岡倉天心が建てた六角堂は東日本大震災による津波で消失し、現在見学できるのは再建バージョン。
六角堂から北の方角を眺めると、雪見灯籠と五浦観光ホテル別館の建物が見える。はるか遠くには小名浜も。
お次は南。崖の上に人工的なタワーの頭が出ているのが見えるだろうか。あそこに登って六角堂を見下ろすのもまた一興でしょう。
今日はもういい時間なので、タワーは明日行くことにして、そろそろ宿に入りますか。
風光明媚な五浦の立地を活かしたホテル
いきなりゴージャスな雰囲気
敷地に入るとレストラン椿の建物が現れるが、これはホテルじゃないからスルーして奥へ進むと、冒頭写真の建物と駐車場がある。
ではチェックイン。日帰り入浴や宿泊のお客さんがたくさんいますな。ロビーもお土産コーナーも大盛況。人が写らないようにしようとすると、ひな飾りの展示くらいしか被写体がないな。
全般にグレード感漂う雰囲気で、さらには横山大観の作品を展示していたりと、なかなかゴージャスな館内だ。我々が案内された部屋は9階。エレベーターを降りたら目の前の窓から六角堂が見えた。わお。ガラス越しの撮影ですが、こんな感じ。
テンション上がる和洋室
部屋に入ったらびっくらこいた。やたら立派な和洋室じゃねーか。和室部分は10畳、布団は18時30分以降に係員が順次敷きに来る方式(この部屋には夕食から戻って少し経った頃に来た)。
洋室部分はツインのベッドと広縁相当のスペース。
シャワートイレ・洗面台あり、暗証番号式の金庫あり、別途精算ドリンクの入った冷蔵庫あり、WiFiあり。浴衣はエレベーターホールのところにサイズ別に積んであるのを取っていく。ウェルカムお菓子が「大観」っていうあたりは徹底している。
天心、じゃなかった、テンションが上がる部屋だなあ。ベランダは五浦の海と崖を望むリッチな感じだし(北向きなので六角堂は見えず)。
角部屋だったから、ベランダの別の方角には間近に和風建築が見えた…ここ9階なのに?…きっと特別室ってやつじゃないか。あんなところへ泊まってみたいもんだね、まあ一生縁が無いだろうけど。
お湯と景色が高いレベルで両立したお風呂
長い通路の先に
五浦観光ホテル別館の大浴場は1階玄関横から始まる長い通路を歩いていく。この日は朝晩が厳しい冷え込みで、通路の途中途中にヒーターが置いてあった。それでも寒かった。
通路を外から見るとこうなっている。だからどうしたと言われても困るが。
歩ききった先には空調の効いた受付所とオーシャンビューの休憩コーナーがある。風呂場にスマホを持ち込む形にならないように部屋にスマホを置いてきたけど、こんな景色が見られるんだったら撮りたかったな。日の出の時間はさぞかし絶景だろうと思ったら、「こちらの場所から日の出は見られません」と注意書きがあった。うーむ、そうなのか。
左右に分かれて2箇所の浴場がある。夕方と夜は左=男湯・右=女湯、翌朝は男女が入れ替わる。まずは左側について。ホテルの規模相応な広めの脱衣所には脱衣棚がたくさん並んでおり、暗証番号式貴重品ロッカーもある。
分析書をチェックすると「ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉、高張性、弱アルカリ性、高温泉」と書いてあった。源泉温度68.8℃。加水・加温・循環・消毒いずれもなしの源泉100%かけ流しはすばらしい。
アブラ臭香る内湯
浴室に入るなりアブラ臭が漂ってきた。うぉー、こりゃすごい。8年前に日帰り入浴で訪れた時はまだ温泉めぐりの経験がほとんどなくて、ネットでアブラ臭という言葉を何度か見かけて「アブラ臭ってなに?」と気になって来てみたんだっけな。今ならわかる、こういう匂いだ…定義を述べるのは難しいが。
洗い場は10名分。内湯浴槽は広く、20名くらいはいけそうなサイズなので、お客さんがひっきりなしにやって来ても簡単には混雑状態に陥らない。いつでも十分に余裕があった。お湯の見た目はクリアな淡黄色に若干の緑が加わった感じ。
浸かってみると適温だった。我らメンバー全員がぬる湯志向なので、欲を言えばいくらでも長湯できるぬるさを求めてしまうけど、一般論的には万人受けするであろう温度だ。また、茶色い粒あるいは木くずのような湯の花を時おり確認できる。泡付きはない。お湯の匂いを嗅ぐともちろんアブラ臭を感知する。
絶景露天風呂の真骨頂をいかんなく発揮
お次は露天風呂へ。露天エリアは崖の際に作られており、転落防止の透明パネルを通して、崖から海を見下ろすような景色が展開している。やや北寄りを向いているため日の出は見えないだろう。それを抜きにしても、なんとも言えぬ趣のある絶景だ。横山大観らもこの景色から作品の着想を得たんだろうな。
2つある露天風呂の一方は(全員が海を見たいだろうから)横並び一列で入ったとして7~8名サイズの岩風呂。湯に浸かった状態でも透明パネル越しにそれなりに海は見える。温度は内湯よりも一段熱かったかな。ぼーっと景色を眺めながら長湯できるとベストなんだけどね。お湯のクオリティじたいはとても良い。
他方の5~6名サイズの岩風呂も似たようなもので、ただし湯口から遠い場所を陣取れば少しは熱さから逃れられる。もし景色を重視するなら最初の岩風呂の方が向いている気がする。どちらの岩風呂も大半が屋根に覆われているから雨天でも大丈夫。
朝のぬるめの露天風呂が最高だった
翌朝は右側の浴場へ行ってみた。基本的には同じようなつくりだ。浴室の洗い場は11名分。内湯浴槽はやや細長い形状ながらも、うまく並べていけば20名いける。前日の内湯よりも若干温度が低いように感じたのは、気のせいか、たまたまの温度調整のあやか、こちらの浴場の特徴か。
露天風呂は四角形の10名サイズと、六角堂をイメージした(?)六角形の6名サイズが並んでいる。前者は湯口から遠い場所を陣取れば十分にぬるかった。朝の冷え込みでお湯が冷めたのだろうか。限りなくぬる湯に近い温度になってたおかげで崖&海の絶景を眺めながらの長湯を楽しめた。※日の出の時刻に行ってみたがやっぱり太陽は見えなかった。
このぬるい状態の露天風呂が最高だったな。この旅行を通じて熱めのお湯ばかりだったから、企画時に宿の候補を提案した自分としては、ぬる湯派一同にあつ湯ばかりを体験させてしまい面目立たず。ようやく最終日の朝にぬる湯を満喫してもらって胸をなで下ろしたのであった。
左右の浴場について露天風呂の印象の違いでいうと、絶景を引き立てる野趣を求めるなら左、コンパクトかつ合理的にまとまっている右にはぬる湯チャンスの期待。どちらも湯あがり後は塩化物泉特有の温まりがあり、身体がゆでダコのように赤くなって、その後しばらくするとツルテカ肌になった。
夢のあんこう鍋に舌鼓を打つ
豪華キャストの夕食でお腹は苦しく、心はハッピー
五浦観光ホテル別館の食事は朝夕とも6階のコンベンションホール「ダイヤモンドパレス大観」で。入口で部屋番号と名前を告げると席まで案内してくれる。夕食のスターティングメンバーがこちら。この旅行の中心テーマとなるあんこう鍋プランだ。
サラダに入っていた真っ赤なトマトこんにゃくが珍しかった。すぐにお造りが追加され、その後も金目鯛煮付けとメヒカリ天ぷらが追加された。気がつけば結構なボリューム。
メヒカリは前夜のいわき湯本でもいただいたなあ。こちらは地元平潟で揚がったやつ。なんだか普通よりひと回りでかい気がする。
鍋と釜飯は自分のタイミングで火を付ける。あんこう鍋は、このために来たようなものだから、順番を後にしてお腹が苦しくなりながら無理やり押し込むようではいけない。中盤に入るあたりで手を付け始めた。ゼラチン質豊かで弾力性のある食感がたまりませんな。すごくぷりぷりしてる。決め手は味噌仕立ての濃厚なスープ。あん肝も入ってると思われるから、どぶ汁…少なくともどぶ汁風…だ。飲みだしたら止まらない。
うーん、久しぶりのあんこうにすっかり満足。終盤にはワタリガニの味噌汁まで出てきて、締めまで抜かりなしだった。おかげでかなりお腹が苦しくなった。残念ながら釜飯はちょっとしか口にできず、他のメンバーに代わって片付けてもらうという体たらく。
なんだかんだで朝もしっかり
翌朝、まだ胃もたれの感じが残ってる。朝食は大丈夫かなあ、と弱気になりつつご対面。
よし、なんとかなりそうだ。固形燃料で温めるやつはサバと温野菜。味噌汁はしじみだったような。水・お茶・コーヒー・のり・納豆は別テーブルにセッティングされているのをセルフで取ってくる。茨城といえば納豆なんだが、自分は関東人のくせに積極的に納豆を食べない異端者なのでパスさせてもらいました。
朝はこれくらいで十分でしょう。これだけあれば昼抜きでもOK。で最後にコーヒーをいただいて終了。なお、会場は海側に面しており、海の絶景を眺めながらの朝食という体験を期待したくなるが、海面に反射する朝日がまぶしすぎるためにカーテンを下ろしていた。
* * *
宿泊付きで再訪した五浦観光ホテル別館大観荘。五浦海岸の崖の上に立つロケーションは格別で、露天風呂の価値を高めている。アブラ臭香る源泉かけ流しのお湯は文句なし。基本は適温~熱めだと思うけど、朝方ぬるい場面に立ち会えたのはラッキーだった。
館内・客室にはグレード感があって、下手を打てない相手との旅行でも心配いらないだろう。今回のテーマであるあんこう鍋にも満足した。地域一帯のフラッグシップ宿ってところかな。
おまけ:五浦岬公園のタワーへ
チェックアウト後に六角堂を見下ろすタワーへ行ってみた。個人的には一人旅の途中で寄り道したことがあるので再訪ということになる。大津岬灯台の手前、五浦岬公園の入口に駐車場がある。まずは灯台を見学(中には入れない)。
公園内を数分歩くと目的のタワーがあった。東日本大震災の犠牲者を慰霊するために作られたとのこと。
上まで登って灯台の方角を見るとこうなる。
公園内に映画「天心」のロケセットがあり、タワーからアップで撮影するとこうなる。
六角堂とその奥の別館大観荘をややアップで。
実は、タワーを下りてロケセットへ向かう道の途中からの六角堂が、木が邪魔にならず距離も近くていい感じに見える。
こうして冬の温泉&あんこうツアーを無事完了。春はもうすぐそこだ。
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