収穫の多かった個性派揃いの九州温泉めぐりもいよいよ最後の1湯となった。世界屈指の炭酸泉とも評される大分県竹田市の長湯温泉こそはラストを飾るにふさわしい。名前通りに長湯を楽しめたらいいなと、ぬる湯好きおじさんは期待するのであった。
選んだ施設は日帰り専門のラムネ温泉館。初めての長湯温泉なら、知名度の点でもたいがいここになるだろう。人気があることは容易に予想されたので平日を狙ってみたが、それでも多くのお客さんが来ていて結構な盛況ぶり。炭酸のインパクトを最も感じられる露天風呂へ入るには、うまく立ち回ってチャンスを狙わないといけないほどだった。
ぬるい透明湯の露天風呂と適温にごり湯の内湯が対照的でおもしろい。
長湯温泉ラムネ温泉館へのアクセス
道の駅ながゆ温泉の近く
大分駅から長湯温泉へ直行するバス便があったが現在は終了してしまったようだ。かわりにもう少し内陸の久大本線向之原駅から出るバスがあるみたい。終点が道の駅ながゆ温泉なので、ラムネ温泉館までは10分あまり歩く。ほかにJR久大本線豊肥本線豊後竹田駅からの路線バスもある(運行本数注意)。
その後は豊後大野市の絶景スポット・原尻の滝へ。車は「道の駅原尻の滝」に止めるのが最も無難…現地状況をよくわかってなくて滝に近づきすぎたら、どんどん狭いところへ誘い込まれて詰みそうになった当人が語る。
原尻の滝を見てから行く
流れる緒方川は普通なのに滝のところだけ秘境風にワイルドな表情を見せる。
もうちょっと近づくとこう、
河原に下りて見上げるアングルだとこう、
川を渡る吊橋もあった。端の真ん中から眺める滝も良さそうだけど一方通行なのかな。すれ違える幅じゃないうえに、向こう岸からこちらへ歩いてくる人しかいない。いったんぐるっと回って向こう岸へ行かなきゃいけないのかな…うーん、時間の都合でパス。そろそろ長湯温泉に向かいましょう。
原尻の滝から長湯温泉までは峠をひとつ越えるような感じの道を30分ほどの運転。ラムネ温泉館の駐車場は、満車とは言わないまでもかなり埋まっていた。うわー、混んでそうだなあ。
ラムネ温泉館で長湯した話
メルヘンチックな雰囲気の温泉館
当館の建物はなんとなくメルヘンチック。まあとにかく入館してみよう。券売機でチケット(500円)を買って受付に提出。付近ではいろんなお土産やグッズを売っている。ラムネ温泉サイダーなんてのもあるぞ。奥のドアからいったん屋外へ出ると100円コインロッカーが並んでいたから、車のキーや財布を保管するのに使ったが、脱衣所に無料の鍵付きロッカーがあることに後で気づいた。
この屋外エリアは一種の中庭になるのかな。なんだか気になる像があるぞう。
近寄ってみたら擬人化した犬? そばにはリアル猫ちゃんがいた。
小さな飲泉所もあった。飲んでみたらたしかに炭酸シュワシュワを感じる。市販の清涼飲料水のような強さではないけどね。
個性の異なる2種類の源泉を予感させる
奥に見えるやっぱりメルヘンチックな建物が浴場棟だ。下足箱のところに分析書が2枚張り出されてて「含二酸化炭素-ナトリウム・マグネシウム-炭酸水素塩温泉、低張性、中性、低温泉」と「ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩温泉、低張性、中性、温泉」だった。後の体験を重ねあわせると、前者がぬるくて泡が目立つ露天風呂、後者が適温の内湯ではないか。
脱衣所は無料のロッカーと普通の棚がある。基本的に服を着脱するだけの場所で広くない。この日の人口密度は高めだった。
かがむような格好で進む出入口を抜けて浴室へ。内装もなんだかメルヘンチックだなあ。どう表現していいかわからないしメルヘンという語が適しているのかもわからないけど。実態は現地で確認されたし。内湯側に洗い場はない。露天エリアの方にシャワー室があって、洗身洗髪はそちらで行うようになっている。
内湯はモスグリーンのにごり湯
内湯浴槽は3つ。上流・中流・下流という形でお湯が流れ込むようにつながっているから、下流へ向かって温度が下がるようになっているものと思われた。小さいお子様は下流にしか入れないルール。
まず4~5名サイズの中流浴槽に浸かってみた。適温ですね。お湯はモスグリーンに濁っており浴槽の底は見えない。濁りのせいもあって湯の花や泡付きは確認できず。匂いははっきりとした金気臭。ラムネ温泉館の名前からイメージされるサイダーのような感じのお湯ではない。初めての長湯温泉だから単なる想像だが、おそらく典型的な長湯温泉がこういう特徴なんだと思う。
2~3名サイズの上流浴槽はもっと熱いんだろうなと予想してパス。3~4名サイズの下流浴槽に移ってみたら一段ぬるくなっていた。やはりね。個人的には下流の温度がゆっくり入れて好み。総合的な浴感がなかなかにすぐれているので好きな温度でどうぞ。
広めでも人気集中で埋まりやすい露天風呂
では露天エリアへ出てみよう。高温乾室と呼ばれる小屋にはサウナと洗い場がわりのシャワー室がある。肝心の露天風呂は頭上を白いシートで覆われた木の浴槽で、大きく2つの区画に分かれているようだ。手前側区画は小さめの数名サイズで積極的に狙う人は少ない。無人になることもある。なぜなら「泡がよく付くのは奥の方です」と書かれているからだ。弱冷房車みたいな、弱炭酸槽ってところですかね。
みんなが狙うのは奥の区画。向かい合わせに2列×5名くらいのサイズ。当時は満員御礼状態になりやすく、空きができてもすぐに後釜が埋める勢い。うまくチャンスを狙って立ち回らないといけない感じだった。
どうしようと迷ってふと見ると、一番奥の湯口の前が空いてるじゃないか。ちょっとすいませんな空気を醸しながら入れてもらうと「湯口のそばは各自5分以内でお願いします。泡付きは湯船のどこも同じです」と注意書きされていた。あー、だからか。
まさにサイダーのような温泉
お湯は無色透明で湯の花は意識されずで泡付きは豊富。まさにサイダーですな。入湯してすぐ全身泡だらけになるのだ。見るからに強炭酸でわかりやすい。天然温泉でこれはすごいっす。
温度は体温より少し低いように感じられ、炭酸の効果もあるためか、相当な清涼感。といっても冷たいとか寒気がするとかではなくて心地よいレベル。おかげでいくらでも長く入れてしまう。湯口のそばを5分で離れてからいったん内湯下流へ戻り、再び露天にトライして中ほどを陣取った時はずいぶんと…混雑具合を観察しながら問題ないと判断する範囲で…長湯させてもらった。
最後に内湯下流で軽く仕上げてコンプリート。いやあ、いい湯だった。湯あがりの清涼感がなんとも言えんね。ラストを気持ちよく締めることができて大満足でございます。