ぬる湯クオリティに変わりなし:2度目の畑毛温泉・大仙家

畑毛温泉 大仙家
ぬる湯好きは要チェックの畑毛温泉「大仙家」。首都圏からもアクセスしやすい伊豆・函南エリアにある(実際の住所は伊豆の国市奈古谷)。3年前に初めて訪れて「いい温泉だなあー」と感嘆したので、いつかまた来てみたいと思っていた。

同じくぬる湯好きの知り合いに大仙家をおすすめしたところ、興味を持って泊まりに行ってた。感想を聞くとずいぶん気に入ってもらえたようだ。そこで今回は一緒に再訪することにしたのである。

当館では2種類の源泉が提供されており、どちらも絶妙のぬる湯。残暑厳しい折だったからまさにぴったり。両源泉に温度差があるから、ただでさえ長湯しやすいというのに、交互に入ったりして飽きが来にくい。本当に何時間でもいられるレベル。あーやっぱいいわ、ここ。

今回の大仙家は車でアクセス

3年前の大仙家への初訪問時はJR東海道線・函南駅まで迎えの車に来てもらって、帰りは伊豆箱根鉄道・大場駅まで送ってもらった(要事前連絡)。今回は同行メンバーの出してくれた車で向かう。近年、中伊豆や西伊豆へ行くときのお決まりのルート=新東名・長泉沼津ICから伊豆縦貫道へ。

当館最寄りの大場函南ICを下りた時刻があまりに早すぎたため、いったん道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」へ寄り道した。※道の駅の最寄りは函南塚本IC。

道の駅じたいにレストランやお土産コーナーやコンビニがあるし、隣接して「伊豆わさびミュージアム」なる施設もある。ミュージアムといってもメインはわさび関連や静岡県産品の売店だ。

また道をはさんだ向かいに「かねふくめんたいパーク伊豆」もある。大洗にある同種の施設へ行ったときの体験から、明太子の試食ができるとの下心を持って突入したところ、このご時世にて試食は中止。がっくし。

こうしたスポットをぶらぶらしてから大仙家に到着。通常のプランでも14時からチェックインできて、チェックアウトは11時。早く入って遅く出られる。心ゆくまで温泉に浸かってくださいと言わんばかりだ。


陶芸体験ができるホテル

ではチェックイン。フロントやロビーの様子から3年前の記憶が蘇ってきた。落ち着きのある美術館のような雰囲気だなあと感じたんだよな。実際に陶芸品や絵画があちこちに飾ってある。
ロビー付近
とくに1階の大浴場へ続く廊下の隣には専用の展示コーナーが設けられていた。館内に大仙窯という陶芸工房があるし、フロントで陶芸体験教室の割引券をもらえるし、そっち方面に力を入れてるみたいね。
大浴場への廊下と陶芸展示コーナー
さて我々に割り当てられた部屋は3階のツイン洋室。3点式ユニットバスなんかを含め、旅館というよりはホテルというべきつくり。冷蔵庫には別途精算の缶ビールと缶チューハイが数本ずつ入ってた(同じものが大浴場前の自販機でも買える)。金庫あり。WiFiあり。
大仙家 ツイン洋室
我らにとっては快適な部屋で取り立てて不満はない。残暑厳しい折ながらエアコンの効きは十分。で窓の外はこんな感じ。木立の向こうに田園風景、さらに遠くに何が何かわからないがいくつかの山が見える。
窓からの眺め

いくらでも入っていられるクオリティのお風呂

2種類の源泉、どちらもぬるい

チェックアウトまでの持ち時間を入浴に全振りするつもりの我ら。すぐ浴衣に着替えて大浴場へ向かった。前述の展示コーナーを横目に1階の廊下を奥へ進むと、突き当たって左に男湯女湯の入口がある。時間による男女の入れ替えはない。

脱衣所に貴重品ボックスあり。また脱衣かごのそばにサンダル入れが付属している。自分のサンダルを他人に履いていかれるとちょっと悔しいから、これはいいね。入口付近に掲示された分析書は2種類。大仙湯と名付けられた方が「ナトリウム-硫酸塩泉、低張性、アルカリ性、温泉」。韮山湯なる方が「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、低温泉」だった。

浴室に足を踏み入れて完全に思い出した。そうそう、こんなだったな。浴室全体は八角形をしており、高い天井の真ん中は鉛筆の先端のように尖っている。内壁は木の壁板がはめこまれてなかなか良い雰囲気。ここに8名分の洗い場と3つの浴槽がある。

冷涼感がやみつきの韮山湯

一番手前の浴槽が4名規模の韮山湯。ここはタイミングが悪いと4名いっぱいに埋まることがあるから、空いてるのを見かけたら入っておいた方がよい。みんな長湯するから待っててもなかなか出てくれないよ。

韮山湯が一番温度が低くて32℃とかそんなレベルだと思う。チェックイン直後の体験では「あれ? 体温と同じくらいかな。思ったほど冷たくないぞ?」と感じたものの、次第に本気を出してきてスペック通りの冷たさに収まった。

見た目は無色透明で匂いなし。ずっと浸かっているとわずかに泡が付く。冷たさに慣れてくると爽快感が前面に出てきてやみつきになる。夏なら30分でも1時間でも入っていられる。当館による入浴指南でも30分~1時間浸かるようにと書いてあったはず。

なお、韮山湯と書かれた湯口から源泉がドボドボ投入されるはずなのだが、間欠泉じゃないけど稼働と休みを繰り返すようだ。しばらく何も出てこない時間が続いた後、急に勢いよく投入が始まって、10分くらいするとまた止まる。休止中に湯口の真下を陣取る場合は、急な稼働に注意すべし。

不感温度が気持ち良い大仙湯

韮山湯の奥にある6名規模の浴槽が大仙湯。こちらも無色透明で匂いなし。湯口の近くにいると、泡付きは韮山湯よりも目立つ。温度は体温と同じくらいで冷たいとも熱いとも感じない絶妙なゾーン。韮山湯の冷たさが苦手な人でも大仙湯ならいけるんじゃないかな。近頃のスーパー銭湯によくある、ぬるい炭酸泉に大勢が群がるんだから、たいがい大丈夫でしょう。

大仙湯の湯口はつねに元気一杯。止まることなく源泉投入が続く。そして浴槽の側壁からかなりの勢いでお湯を噴出している場所があった。その影響か何なのか、大仙湯に浸かっていると、見えざる手がお湯をぐるぐるとかき混ぜているかのような流れを感じる。

こちらも1時間だって入っていられる気持ちよさ。それでいて6名いっぱいに埋まることはまずないし、韮山湯よりは人の出入りがあるから、いつでもスムーズに利用できるのがありがたい。しかも我々は平日に行ったこともあって、大仙湯・韮山湯とも独占の機会が多かった。

入浴は続くよどこまでも

残る一つ、最も大きな7~8名規模のやつは加温浴槽。客観的には適温なんだろうけど他との相対比較で結構なあつ湯に感じる。ぬる湯でちょっと体が冷えたかなという時や最後の上がり湯に使うと思われる。せっかくの広さなんだけど、ここにガッツリ入る人はいない。

外へ出ると露天風呂とサウナ室がある。露天風呂は15名は余裕でいけそうな大きさにもかかわらず、気の毒なことにほぼ利用されてなかった。たまーに気分転換で短時間入る人がポツポツ現れる程度。ここもぬるくない適温だから、主力層と思われるぬる湯目当ての客は露天風呂に行かないのである。ちなみに屋根付きの岩風呂で、周囲は塀に囲まれて眺望はない。

当湯の優れたところは、2種類のぬる湯それぞれが単体で長時間入浴可能なだけでなく、温度差があるため交互に入れば飽きが来ず、本当にいつまでも居続けてしまえることだ。韮山⇔大仙の冷冷交互浴はもちろんのこと、加温浴槽や露天風呂と組み合わせた冷温交互浴も楽しめるし、まじやばいっす。

チェックアウトまでに90分コースを何セットやっただろう。まさに持ち時間を入浴に全振りした。旅館への全滞在時間に占める入浴時間の割合でいうと、今回が自分史上最高だったに違いない。でもさすがにやりすぎだったようだ。肌の乾燥もしくは温熱蕁麻疹で背中から腰にかけてやたら痒くなってしまったのだ。スキンケア大事。


ほどほど感がいい具合の食事

夕食は夏の撫子会席

大仙家の食事は朝夕とも1階のレストラン「遊山」で。部屋ごとに決まったテーブル席が割り当てられる。今宵の夕食は夏の撫子会席。冷酒の食前酒に始まり、三種盛り合わせのお造り・薬膳豚のコラーゲン鍋・炙りサーモンのカルパッチョなど。
大仙家の夕食
どうだ! ドーン! というような量の勝負じゃないのがいい。お腹が苦しくなる前に完食できて、しかし物足りないわけではない、ちょうどいい量。たとえば湯治目的で連泊した場合、こういうメニューが続いても大丈夫だろう。

締めは鰹節を乗せたわさびご飯だった。さすが伊豆といえばわさび。例のわさびミュージアムからのお取り寄せだったりして。口の中がさっぱりして、最後のデザートとともにいい感じで締めることができた。

朝食はハーフバイキングじゃなかった

初訪問時の朝食はハーフバイキングだったが、今回は一般的な和定食。味噌汁は自席で鍋を温める方式。中身はしじみ汁だったかな。
大仙家の朝食
朝食としては多すぎず少なすぎずの構成。ご飯はおかわりしなくても十分だった。それでも昼食はお腹が空かなくて抜いたくらいだからね。水・ジュース・牛乳・コーヒーはドリンクコーナーに用意されているのを取りに行く。

ちなみに朝食時間の選択肢に7時半と8時半があって8時がなかったのは、8時の選択肢を作るとみんなそこに集中して密になってしまうからだと推測する。根拠なし。

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大仙家のお湯は思い出通りに大変すばらしかった。ということをあらためて確認できた再訪であった。背中が痒くなっても全然懲りてない。東京方面からアクセスしやすいし、またいつの日か来てしまう確率はそこそこ高い。

などと余韻に浸りつつ、チェックイン時にもらったサービス券を活用して、最後にコーヒーラウンジでアイス抹茶をいただく優雅なひととき。
コーヒーラウンジのアイス抹茶
大変な満足感とともに、ぬる湯好きの・ぬる湯好きによる・ぬる湯好きのための大仙家を後にした。