レトロ感につられて。湯村温泉郷 弘法湯へまたふらり

湯村温泉郷 杖温泉 弘法湯
甲府駅からアクセスしやすい便利なロケーションの湯村温泉を初めて訪れたときに泊まった旅館が「杖温泉 弘法湯」だった。そのときの印象が良かったので2年半ぶりにまた泊まることにした。前回は真夏、今回は真冬、真逆の季節になったのはたまたまです。

まず、お湯がぬるいのはポイント高い。このブログでしつこく書いてるようにぬるい温泉が好きだから、大変重要な点だ。そして泡付きのするクオリティ確かな温泉。さらに予約なしで自由に入れる貸切風呂がある。

ついでに好みの問題を承知でいえば、どこか懐かしい感じのするレトロ風情たっぷりのザ・旅館であること。食事の割り箸の袋には「ホテル弘法湯」って書いてあるけどね。

2度目の湯村温泉郷「弘法湯」へ

印象としては街中の温泉場

甲府駅から路線バスで10分、湯村温泉入口という停留所で下車するとそこがもう湯村温泉。自分の地元の距離感覚からすると郊外でなくコアな都市部の一角であり、「こんな市街地の中に本格的な温泉場があるの?!」と思ってしまう。うらやましい。弘法湯まではバス停から湯村山方向へ徒歩10分くらい。

しかし今回は車で来たから行動の自由度は鉄道+バスよりも高い。最初にフカサワ温泉に立ち寄ったら、そこそこ仕上がってしまった。湯村へ行く前に一発観光しておくか。今年の大河ドラマ=どうする家康=立ちはだかる大きな壁としての武田信玄=武田神社、という安直な発想で武田神社へ。
武田神社
それから弘法湯へ向かった。現地付近の短い区間だけは車1台分の道幅しかなく、それでいて車の通行量がそれなりにある。離合の練習にはなるけども、こういうシチュエーションには慣れてないからちょっと緊張した。

現地付近は神社やお寺が多い

宿の手前に「弘法湯駐車場」の看板が立ってる未舗装駐車スペースに車を止めた。目の前は松元寺というお寺。
松元寺
チェックインの前に近所を探索しておこうか。温泉地には必ずといっていいほど存在する“湯なんとか神社”、ご当地の場合は湯谷神社であった。石段の麓にコーギー犬がいて、目が合うと「んっ?!」という感じで見つめてくる。
湯谷神社
塩澤寺というお寺の門前の松が立派だなーと思ったら、舞鶴の松なる県指定天然記念物だって。
塩澤寺
じゃあそろそろチェックインしますかね。


静かに、のんびり、好き勝手に過ごしましょう

弘法湯は家族経営的な小規模旅館であり(しかし仲居さんがいます)、昭和の香りが残るレトロチックな雰囲気が漂う。大勢でウェイウェイしにくるよりは、一人もしくは数名で静かにのんびりすごすのに向いている。こちらがロビーでございます。
弘法湯のロビー
案内されたのは2階の8畳+広縁和室。管理は行き届いており何ら文句ない。布団敷きと片付けは夕食後と朝食前に部屋を訪れてやってくれる方式。
弘法湯 8畳客室
シャワートイレあり。洗面台は広縁側にあった。金庫なし。冷蔵庫には別途精算の瓶ビールが入ってる。あとWiFiあり。最近は温泉旅館のこんな部屋にこもってリモートワークあるいはワーケーションってやつをしてみたいと思うことがままある。実際そういうので連泊するお客さんが当館には来るみたいだ。状況が許せば真似してみたいですがね…。

窓から見える景色は小さい川と白壁の建物。
窓の外の景色
なぜだか落ち着くなあ…風呂に入る・本(電子書籍)を読む・スマホを見る・ただボーッとする・ウトウトする、の繰り返し。コスパだのタイパだの生産性だの優先度だの、誰にもとやかく言われない環境で好き勝手にすごした。


弘法湯のお風呂と歓喜の再会

貸切風呂はお湯のあふれ方が半端ない

弘法湯は道路を挟んで2つの建物からなり、それぞれにお風呂がある。自分が泊まった本館(?)の方にあるお風呂が貸切風呂だ。無料・予約不要で、空いていれば自由に利用可。中2階みたいなフロアに設けられており、貸切風呂への階段手前に置いてあるファミコンボックスが郷愁を誘う。
階段前のファミコンボックス
貸切風呂の入口前に分析書が張り出されていた。「ナトリウム-塩化物泉、低張性、弱アルカリ性、温泉」。たぶんだけど源泉かけ流しじゃないかな。源泉が「杖温泉」と書かれた方の分析書に「未使用」と追記してあった。別のもうひとつの分析書には「地蔵温泉」の記載あり。この貸切風呂に関しては杖源泉でなく地蔵源泉を引いてるってことだろう。

過去に一度体験しているはずなのに、浴室に入って驚かされてしまった。床全体が1cmくらいお湯に埋もれてる…。湯船から大量のお湯があふれ出しているのだ。こりゃすげえ。床に寝っ転がればそのまま寝湯になりそうだ。やりませんけど。この光景を見るだけでも来る価値があるな。

カランは2台。浴槽サイズもちょうど2名分。おひとりさまも気兼ねなくトライできる規模だ。旅館全体のレトロ感に比べると新しさがある浴室。

うっとりするほどいいお湯

お湯の見た目は無色透明。浸かってみると体温よりやや上くらいでぬるい。30分以上入ってても全然のぼせないし、心身ともに緩んでくる感覚があって個人的には大好きな温度帯なのだ。そしてしばらくすると腕や腿に泡がびっしりと付いてくる。お湯が新鮮でないとこういう特徴は見られない。こいつは本物だぜ。

気分転換のために来ているのだから、こういう良質のぬる湯に入ったときは世俗のつまらぬことなど忘れて、頭を空っぽにしてお湯に身を任せるのが一番である。といってもあれこれモヤモヤ考えてしまうのはまだ精進が足りない。あー解脱してえ。

他のお客さんもいるから、あまり長時間の独占はよろしくない。30~40分くらいがいいところでしょう。この日が満室かどうかはわからないけれども、貸切風呂はなかなかの人気で、何度かトライしたうちのチェックイン直後と朝食後しか空いてなかった。

弘法大師に見守られた大浴場

もうひとつのお風呂は別館(?)にある。2階の渡り廊下を通って道路の向かい側の建物へ移り、1階へ下りると男湯があった。

脱衣所に祀られているのは弘法大師かな(弘法大師が杖を突いたら温泉が湧き出たという伝説が杖温泉の由来らしい)。こちらも杖温泉・地蔵温泉の2つの分析書が掲示されており、杖温泉未使用の記載はない。

浴室にはカランが4台と3~4名サイズの浴槽。貸切風呂ほど床全面がお湯ではないが、浴槽近くは結構なオーバーフローが起きている。お湯の特徴は貸切風呂と同様で、かつ他の客と一緒になる確率はかなり低いため、広めの貸切風呂に近いノリで利用できた。

ぬる湯に浸かっているとついコックリコックリと眠ってしまいそうになる。これがまたたまらん。


旅館の雰囲気にあってる食事

今回の夕食はうまくコントロールできた

弘法湯の食事は朝夕とも部屋出し。夕食は18時か18時半かを選べて、時間が来ると仲居さんが料理を運んできた。撮影時点で少し手を付けてしまっている。
弘法湯の夕食
実は前回、通常コースを予約したらお腹が膨れすぎて苦しくなってしまった反省から(風呂上がり・夕食時と立て続けにビール大瓶を飲んだせいなんだけど)、今回は用心して控えめコースを予約してあった。量的にはこれでも十分でしょう。

山梨のイメージに反して魚介類が多い。鍋も海鮮系だし。おかげさまで心地よい満腹感とともに完食した。大量にあるお櫃のご飯は残さざるを得なかったが、一膳半くらいはいただいたので敗北感はない。満足。食後にフロントへ連絡すると、皿を下げるついでに布団を敷いてくれた。

なお、通常コースだと1品多くなり、おすすめコースだとさらに馬刺しが付く。我が胃袋が許せば馬刺しコースいきたいですけどね。

朝食はこういうのでいいんだよ

朝食は7時半・8時・あと7時も選べたような。時間前に布団を上げに来てくれる。前夜食べたものはすっかり消化してどんとこいの状態で迎え撃ったのがこちら。
弘法湯の朝食
変化球で煙に巻かない、ザ・旅館の朝食という布陣で大変結構なり。固形燃料で温める鍋の中身は味噌汁。豆腐・わかめ・油揚げみたいなオーソドックスなやつでかえってホッとするね。こういうのでいいんだよ。小梅がたくさんあるから、妙な「せっかくだから」ロジックを発動して2つ食べちゃった。

多すぎず少なすぎずでちょうどいい量。このまま帰宅して夕食まで何も食べなくてもいいし、途中で昼ごはん食べてもいいし、どっちも対応可。実際には帰り道で信玄餅工場見学ついでに信玄餅ソフトクリームを食べた。それがお昼ごはん。

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冬の寒さと乾燥でガサガサになっていた手の甲が、弘法湯の風呂あがりに見たらすっかり潤いのある肌になって、生気を取り戻していた。去年の冬は温泉をお休みしていたら、指先から出血するほどのあかぎれ状態まで進行しちゃったからな。今年は弘法湯を一発入れたおかげで無事に乗り切れるだろう。

弘法湯のお湯はやっぱりすばらしかった。ぬるめといっても真冬でも全然オッケー。今後もふらりと行きたくなることがありそうな気がしてる。