念願のくじゅう連山周辺の温泉めぐりも2日目となって九重町から竹田市へと軸足を移してきた。温泉密集地域だから泊まる宿の候補は山ほどありそうでいて、一人泊OKやできれば2食付き、さらに予算面を考慮すると意外と難しい。
そんな中で見つけたのが三船温泉の民宿城山だった。がっつり濁り湯には期待が持てるし、リーズナブルなお値段の安心感。長湯温泉といった有名どころへ繰り出すにも便利なロケーション。ちょっと足をのばせば観光スポットの岡城跡や原尻の滝も射程に入る。よし決めた。
温泉はいかにも濃ゆそうで析出物の付着の仕方がすごい。洋室の部屋はとても新しく快適。そして料理がてんこ盛り。この内容はお得すぎる。
三船温泉 民宿城山へのアクセス
鉄道旅で当館へ行くには、JR豊肥本線・豊後竹田駅から直入支所前行きのバスで約40分、三船下車。バス停からはすぐだ。強力炭酸泉で知られる七里田温泉や長湯温泉ラムネ温泉館はここから数kmの圏内にあり、徒歩でOKとは言い難いものの、湯めぐりの拠点として適したロケーションといえる。
赤川温泉から三船温泉は車で20分くらい。カーナビ任せでよくわかってないが竹田市久住支所の前を通った記憶があるから、国道442号→県道30号のルートだったと思われる。最初は高原からずっと坂を下っていくような道で、途中にくじゅう連山がきれいに見える場所もあったが、展望所のように整備されたスポットでないのと時間に余裕がなかったためスルーした。天気が良かっただけにもったいないと同時にやむを得ない。
現地の付近はもはや高原ではなく、のどかな田園地帯の風景が展開している。ところどころに桜や菜の花が見られて春爛漫って感じだった。当館入口の桜もきれいに咲いていたのに撮るの忘れた。到着したら敷地内の駐車スペースから空いてるところを見つけて止めた。
冒頭写真が宿泊客用の正面玄関だ。別の棟にある大浴場は日帰り入浴にも対応しており、日帰り客は別棟の方に直接出入りするようだ。
懐かさしさと新しさが同居した民宿
一見すると古民家風
ではチェックイン。帳場の前の水槽に大きなウーパールーパーがいるぞ。この大きさは、ましてや水族館などでなく民家では、ちょっと記憶にないな。
水槽のそばにはビールなどを入れた冷蔵ケースがあり、湯あがりにここのビールを買って飲んだ。冒頭写真の通り、第一印象は田舎の立派な平屋でどこか古民家風情も漂う。帳場から食事用の個室が並ぶ廊下を歩いていく段階でも同様の印象だった。奥のドアを開けるまでは…。
ドアの向こうはいきなりモダンな空間になっていた! しかもとてもおニューな感じ。がらっと雰囲気が変わったぞ。コミック&お茶・コーヒーサービスのコーナーがこちら。うまい棒も置いてあった。一種のウェルカムお菓子ですな。
意外性あるモダンな洋室
案内された部屋はこのモダンな空間のツイン洋室。しつこいようだがとても新しくてきれい(2022年リニューアルだとか)。いい部屋に通してもらっちゃって、なんだかすいませんね。
民宿としてみると設備面も十二分に整っている。広めのシャワートイレあり、洗面台あり、金庫あり、空の冷蔵庫あり、WiFiあり。浴衣のかわりに作務衣が用意されている。タオル・バスタオルはもちろんのこと、それらを入れる手提げや足袋まであった。スマホを充電しながら時計アプリでアラームをかけて眠ることを想定すると、ベッドとコンセント・ちょっとした置き台の配置までよく考えられている。
とても快適に1泊できた。ちなみに窓の外はこのような感じ。
真相は不明なれど、シャレオツな屋根付きウッドデッキを作ろうとしている、ってことにしておこう。
がっつり効いてくる三船温泉
ローカル共同湯風情の大浴場
城山の大浴場は別棟にある。モダン空間の反対側のドアを出て渡り廊下を通る…この渡り廊下を外から見るとこうなっている。写真右の蔵造り風の建物の内部がモダン空間なのだ。
渡り廊下の先にも客室が並んでいた。こちらの雰囲気はレトロ調。トイレは共同のようだ。湯治ぽくエコノミーに泊まるならこちらですね。この建物も通過して屋内通路を歩いていくと浴場棟にたどり着く。こちらの雰囲気はローカル風情な共同浴場ぽい。
日帰り客向け出入口のところに分析書があった。「ナトリウム・マグネシウム-炭酸水素温泉、弱アルカリ性、低張性、高温泉」と書かれている。湯使いはわからず。※ネット情報では加水・加温・循環・消毒なしの源泉かけ流しとのことだ。
濃ゆそうな濁り湯
脱衣所はシンプルにかご+棚が並ぶ。浴室にカランは3台。向かって右側に岩風呂風の内湯浴槽が作られ、石のそれぞれに赤茶色がこびりついていた。見ればお湯は黄土色に若干赤を混ぜたような半濁りで、オレンジジュースを薄めて薄めて半濁りにした状態を連想させた。
4名サイズでそう大きな湯船ではなかったが滞在中に満員状態となる場面はなかった。だいたいは自分以外に1名いるかどうか。浸かってみると適温。何十分も長湯するタイプではない一方、ウンウン唸りながら耐えるあつ湯でもない。まあ濃ゆそうな温泉なので長湯し過ぎには注意でしょう。
湯の花は後述のエピソードを除けばなかった気がする。泡付きもなし。お湯をすくって鼻を近づけると金気臭を感知した。これはイメージ通り。気分の問題にせよ、源泉かけ流しの本格温泉がジンジン効いてくるぜという浴感はバッチリだ。
ややぬるめの露天風呂
外には露天風呂が見える。行ってみよう。4~5名サイズの岩風呂で頭上にシート状の覆いがかかっている。お湯の特徴は内湯と同様で、外気に触れるせいか若干ぬるく感じた。こちらの方が長く粘れるね…くれぐれも湯あたりには注意。
露天エリアはコンパクトにまとまっており、塀に囲まれてもいるから、広い範囲を見渡すような眺望はない。そこであらためて浴槽内を観察すると、石にこびりついた色は単に赤茶だけでなく、白の層→一部の上に赤茶の層→ごく一部の上に緑と、3層構造で重なっているようだった。緑は草津西の河原公園の遊歩道脇で見るあの緑色。だからなんだと言われても困るが。
朝の湯の花現象にも注目
せっかくだからゆっくり楽しもうと思っていたのに、さすがにこの日5湯目ともなると、いささかぐったりしてきていた。お湯そのものが濃ゆいし、まだ先がある・無理は禁物と20分であがる決断をしてしまった。夕方はこのくらいでいいや。まだ夜も翌朝もチャンスはあるしな。
と思ってたら、夜は夕食の満腹感で動けず、翌朝のみとなった。朝風呂で注目すべきは内湯の上に浮かぶ膜状の湯の花。だいぶ消えかかってたけど、もっと早く来れば一面を流氷のように覆っていたに違いない。同様の現象を和歌山の花山温泉で見たことがあるので。いやーすごい。
なぜだか得した気分になっちゃった一方、露天風呂には入れず残念。まだ湯を張り始めたばかりだった。もともとぬるめだったし、朝は吐く息が白くなる冷え込みだったから、きっと好みのぬる湯になっていると期待してたのだが。こんなことなら夕方もっと粘るか、夜の部を頑張って入りに来るべきだったかな。
温泉だけじゃない、料理にも期待せよ
夕食は自慢の食材がてんこ盛り
城山の食事は朝夕とも帳場寄りの個室にて。テーブル席に置かれた説明によれば、スマホでQRコードを読み込んで立ち上げたアプリからお酒などを追加注文する方式。
席についてすぐに運ばれてきたスターティングメンバーがこちら。豚しゃぶの食材がとんでもない大盛り。
2名分どころかもっとありそうに見える。肉はもちろんのこと野菜が新鮮でうまそうだ。後日の調べによれば自家栽培農園野菜を活用しているとのこと。これはありがたくいただかないと…食べても食べてもなかなかゴールが見えない中、天ぷらが追加された。うわああ。
こちらも負けじとビールに続いてお酒を追加。銘柄は忘れてしまった、すいません。見よ、この金色に輝く一杯を。そして一合どころじゃない大サービスの量を。
素材と味付けは見事でお酒にも合う。量はたいがいの人にとって十分すぎるくらいだろう。しゃぶしゃぶは全部いただいたが他を少し残してしまった。ご飯も少なめで頼んでどうにか片付けた。もうお腹パンパン。久しぶりに「胃が苦しくて部屋で動けず」をやってしまった。夜の風呂はパス。
なんだかんだで完食してしまった朝ごはん
朝になっても空腹感は戻っていなかったが、なんとかなりそうだ。さあ来い。
ほっとする和定食スタイルですな。これなら大丈夫、完食できる気がする。さり気ない朝の一杯=みかんジュースがいいですね。固形燃料で温めるやつはベーコンエッグだ。できあがりはこのように。
この野菜も自家栽培なのかな。なんだかうまそうに見えるんだよね。もし違ってても実際うまいからいいです。ところで食事部屋は壁にポップなアートが飾られてたりするものの全般に和風レトロな部屋だ。
洋室エリアと他の棟のギャップ、食事部屋とQRコード注文スタイルのギャップ、なかなかおもしろい。
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提供される内容がお値段以上でお得な宿だ。洋室プランであればハード面は民宿の水準を超えている。料理はおいしい食材が山と出てくる。そして濃ゆい本格温泉を好きなだけ楽しめる(自分は夜の入浴を飛ばす羽目になったが…)。女将さんとご主人の対応もよくて、思わぬ良宿との出会いになった。