春たけなわの頃、茨城の観光名所である竜神大吊橋や袋田の滝を見たいとの要望に応えることとなった。ボリュームとしては1泊2日の温泉旅行である。個人的には4年前に訪問ずみで、その時は袋田温泉郷に泊まった。
自身の体験の幅を広げる意味から今度は別の温泉地にするとか旅館を変えることも考えたけど、下手を打てないメンバー構成だったため、結局は勝手がわかっている同じ旅館を選ぶことにした。それが「思い出浪漫館」だ。温泉は万人向き、設備やサービス面も良好なレベルで安定していたとの記憶があるので。
結果的に記憶していた通りだった。ややぬるめの温泉でゆっくりした後はご当地らしさを感じられるお食事。部屋のつくりも申し分なし。ロマンな思い出を再び記憶に留めることになった。
再びの思い出浪漫館へ
途中の見どころは竜神大吊橋
思い出浪漫館の最寄り駅はJR水郡線の袋田。2019年台風19号による被害で袋田を含む区間が一時不通になっていたが2020年7月には水戸方面からのアクセスが可能なところまで復旧したみたい(全線復旧は2021年3月)。駅から歩くと20分は覚悟しなければならない。素直に宿からの送迎を頼るのが良さそう。
我々は車で行った。運転はワタクシでございます。このところ一人レンタカーの旅をいくつか経験していたおかげでだいぶ運転慣れしてきた。袋田は初めての土地ではないし、2ヶ月前に常陸太田の宝来館へレンタカーで訪れていたことが一種の予行演習となった面もあって、気持ち的にはずいぶん楽だ。
要望の中心であった吊橋と滝は初日のうちに片付けてしまいましょう。まずは竜神大吊橋。常磐道那珂ICから常陸太田市へ入り県道33号を北上していくと水府と呼ばれる地域に至る。水府の里に思い出通りの竜神大吊橋あり。歩行者専用の橋で通行料320円。
上の写真は向こう岸へ渡った側から撮影した。よく見ると橋の上から今まさにバンジージャンプでダイブした瞬間の人の姿がある。橋のはるか下は竜神ダムにせき止められてできた竜神湖。
袋田の滝に程近いロケーション
竜神大吊橋からさらに北上して大子町で国道461号を西進すると思い出浪漫館の前を通る。ここはいったん通り過ぎてカーナビに従って袋田の滝方面へ。滝付近に無料駐車場はないものと思った方がいい。我々は滝生屋さんの駐車場に止めた。このお店で1500円以上の飲食・買い物をすると駐車料金500円がキャッシュバックされる。
袋田の滝の詳細についてはこちらの過去記事をどうぞ。相変わらずの迫力と優美さ。あえて観瀑台が入るようにして撮る画にも味がありますな。
こうして観光面のノルマを達成して安心感を確保した後に思い出浪漫館へ向かった。滝からは車で5分もあれば着く。
名前通りにロマンな感じのお宿
ここにも温泉むすめが
では入館。すぐに過去の思い出が蘇る。あーこんな感じだったな。大正ロマンと呼ぶべきかはわからないけど旅館名にあった雰囲気だ。こちらがロビー。
その隣に優雅な談話室。
おみやげ工房の前には温泉むすめがいたぞ。
前はいなかったと思う。近年の新キャラかな。大子紅葉ちゃんだそうだ。
のどかな里と川が見える部屋
客室にはシングルルーム/お手頃な出で湯館/ちょっといい安らぎ館/ロマン最高潮の懐かし館がある。我々は出で湯館の渓流側の部屋を取った。案内されたのは5階の10畳+広縁和室。きれいで管理は行き届いており万事ばっちりだ。布団は夕食時に敷いてくれる方式。
シャワートイレ・洗面台あり。空の冷蔵庫あり、金庫あり、WiFiあり。ウエルカムお菓子のりんごせんべいが結構うまかった。なにせ大子町はりんごの産地。車で走っているとあちこちにりんご園を見かけるから…いや待て、ネットで調べたらどうやら長野のお菓子ぽい。まあうまかったからいいか。
窓の外はのどかな景色が広がっている。
薄い緑と濃い緑のコントラストが鮮やかで良き。かつ、ほんわかした気分にさせてくれる。手前の川は袋田の滝から流れてきた滝川であり、後述の露天風呂にも絡んでくる。
安定感あり、満足もできるお風呂群
最初に一般大浴場へ行ってみた
さっそく風呂へ行きませう。ロビーやフロントのあるフロアが2階で大浴場は1階になる。エレベータを出たら向かって右側が一般大浴場の女湯と渓流露天風呂、左側が一般の男湯。最初は一般大浴場へ行った。
脱衣所には貴重品ロッカーあり。分析書を見つけてチェックすると「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、温泉」。加水なし、加温・循環・消毒あり。
浴室はそこそこの広さ。団体さんがいっせいに押しかけると厳しいだろうけど、そんな不運に当たらなければまず大丈夫な規模だ。この日は満室に近かったと思うが全然余裕だった。洗い場は10名分が横並び、ただし真ん中のカランが使えなくなっていて実質9名分。シャンプーやボディソープには馬油が使われていた。馬油とかクマザサとかそういうアピールに弱いんでね、思い切り使わせてもらいました。
内湯のほかにジャグジー付き露天風呂あり
内湯浴槽は2つの区画に分かれていて、両者の境界にあたる中央部に湯口がある。前回訪問時の記事にはそれぞれ5名規模って書いてあるな。今の感覚だとぞれぞれ4名規模、片方の区画については奥行きがあるので向かい合わせを許容するなら4名×2で8名いける。
お湯は無色透明でややぬるめの適温。前回のように熱いという感想は持たなかったな。あの時は真冬だったから加温をかなり頑張っていたのかもしれない。またアルカリ性によるものか、微妙にヌルっとする感触があった気が。匂いは軽い塩素臭を感知した。
この大浴場にも露天風呂はある。今の感覚だと5名規模。一部が浅く作られているから寝湯をやろうと思えばできなくもない。加えてジャグジー的なボコボコ泡の噴き出しあり。湯口から出てくるお湯は、ただ流れ落ちているのでなく壁から押し出されるように、勢い余って飛び出してくるようにも見える。
お湯の特徴は内湯と一緒。外の景色が見えるかどうかとかは印象に残ってない。団体行動の縛りがあったし、迫り来る夕食時間のことも気になって、いろいろ観察する心の余裕がなかった。大浴場を利用したのは結局この1回のみ。
湯質と景観にすぐれた渓流露天風呂
夕食後は速攻で眠ってしまい、風呂には入らず。翌朝起きてから渓流露天風呂へ行ってみた。1階の一般女湯の前を通過して奥へ進むとサンダルを履き替えるところがある。いったん外へ出てすぐまた別棟へ。階段を下って男女別の小屋(?)に到着。エレベータから結構歩きます。
こちらにはかけ湯がわりのカランが1台あるのみでシャンプー・石鹸の類はないから洗身洗髪するなら一般大浴場へどうぞ。スペースの大部分を占めるのは王道の岩風呂だ。今の感覚だと8~10名規模といったところか。朝風呂狙いのお客さんがひっきりなしにやって来て、常時5名くらいがいる感じだった。
お湯は一般大浴場よりもぬるくて好み。しかも塩素臭はなく、むしろ第一印象が微硫黄香だった。こちらのお湯は循環・消毒していないか、その度合いを弱めに抑えてあるんじゃないか。浴槽の縁からあふれたお湯を目の前の川へ捨てているのが見えたし。
そう、川が近い。客室から見下ろした滝川がここではすぐ目の前を流れている。この景色はいいですね。対岸の林の中を鳥が飛び回っているし(種類は知らん)、ホーホケキョが聞こえたりもして、自然を感じながらぬるめの露天風呂にゆっくり浸かることができた。
ご当地メニューいっぱいのお食事をどうぞ
夕食の料理長サプライズは健在
夕食は2階エレベータ近くの食事処で。17時50分~の第一部と19時30分~の第二部との選択で前者を希望した。それでお風呂の時間がちょっと忙しくなったわけだ。部屋ごとに決まったテーブル席へ案内される。スターティングメンバーがこちら。
大子町はこんにゃくも特産とのことで、湯葉こんにゃくがしっかり用意されていた。蓋をされているのはお品書きによれば鯛の飯蒸し。主役となるのは台物。茨城県産の常陸牛カルビと美明豚ロースの溶岩焼きだ。久しぶりにとろけるような柔らかい肉を食べたなあ。
他にお造りや鮎の塩焼きが出てきた。この鮎はうまかった。大子町は久慈川があるだけに鮎も(以下略)。さらに料理長サプライズの天ぷらには山菜が含まれていてうれしい。こうなるとビールから日本酒へ切り替えざるを得ない。前回と同じく日本酒3種飲み比べセットを注文。前回と違ったのは全部飲みきれなくてメンバーに手伝ってもらうはめになったこと。うーん衰えたなあ。
締めは奥久慈軍鶏けんちん汁と大子産コシヒカリ。大子町には(以下略)。デザートをいただいたらもうお腹いっぱい。
朝食はいろいろ選べるバイキング
朝食は別会場だった。ロマンな風情の廊下を通っていった先のコンベンションホールへ。
自由席方式のバイキングであった。料理の種類はそこそこ多い。全部試すには胃がもたない程度は用意されてる。ちょうど多くのグループが同時に到着していっせいに料理に群がるタイミングだったため、間隙を突いて取ってきたのがこれ。
自分に合ったボリューム感だとこんなもんだ。実際に用意されている種類はもちろんこれだけじゃない。ジュースを取りに行ったら「りんごと小松菜のスムージー」なるものがあったので選んでみた。青くささはなくてりんごの爽やかさが勝る。さすが大子町のりんごは(略)。
各食材はしっかりうまい。なのでもうちょっと多く食べれば良かったかなとその時は思ったが、結果的には余裕残しで終わって正解だった。理由は…このあとすぐ。
* * *
うまくいった。万事うまくいった。お連れしたメンバーには「風景が良かった」「温泉でリフレッシュした」「食事がおいしかった」「また泊まりたい」と好評。社交辞令じゃないはずだ、うん。
自分自身の感想としても全方位的に隙がなくていい宿だとあらためて思った。今回は温泉面がわりと短時間であっさりしてたので、もし次があるならもうちょっと温泉タイムを充実させたい。
おまけ:和紙・ネモフィラ・おさかな
チェックアウト後には久慈川沿いに国道118号を南下して常陸大宮市の「紙のさと・和紙資料館」へ。西ノ内和紙という工房がやっていて和紙製品の直売所を兼ねている。まったく未知のジャンルだけに、和紙で財布やバッグなんかも作っているのは意外だった。
お次は頑張って海寄りまで走って「国営ひたち海浜公園」へ。名物のネモフィラが時期的にちょうどいい頃のはずだ。おそろしく広い園内を気合いでみはらしの丘の麓まで歩いていくと---
おお、すげー。肉眼だと遠くの方は花の集まりというより空や海のようななめらかさに見える。それにしても人だらけだな。体力疲れと気疲れにより丘を登ることは断念して引き返した。
最後は2ヶ月前の茨城遠征でも立ち寄った那珂湊おさかな市場へ。駐車場へ入れるにもひと苦労の混み具合。とある食堂で5人待ちですんだのはまだマシな方だったのだろう。どうにか着席したところで一番人気の海鮮丼を注文…いかん、写真撮ってなかったわ。
朝食を余裕残しで終えたのが吉と出た。もしガッツリいってたら「まだお腹苦しいからやめとこう」になっただろう。那珂湊まで来て海鮮をスルーしたら悔いが残る。食いは残さず、悔いも残さずでめでたし。