評判に違わぬ高濃度炭酸泉が良すぎた話 - 七里田温泉 下ん湯

七里田温泉 下ん湯
天然温泉なのに信じられないほど体に泡が付く高濃度炭酸泉として知られるのが大分県竹田市にある七里田温泉下ん湯だ。温泉通の間では有名で、一度は体験しておくべき位置付けになっている(と感じている)。となれば自分も行ってみたいが遠方だけにそう簡単ではない。何年も構想を温めたあげく、ようやく実現にこぎつけた。

ぬるい炭酸泉ということで、みんな長湯する傾向になりがちと予想された。先客ぎっしりのまま動きがなくノーチャンスで終了だったらどうしよう…と心配したものの、幸いにも空いていて、とくに後半は独占できた。炭酸の強さは噂通りであった。泡のパチパチで血行改善しまくりだったんじゃないかと思う。

七里田温泉下ん湯へのアクセス

七里田温泉まで直行するバスはない。JR豊肥本線・豊後竹田駅で直入支所前行きのバスに乗って約40分の三船で下車したら2kmほど歩く。頑張りましょう。ちなみに三船バス停のそばに城山という民宿があるので湯めぐり拠点としてどうぞ。

自分はその民宿城山をチェックアウトしてからレンタカーで向かった。車だったら5分の距離だ。快晴の空の下、桜や菜の花がきれいな場所もあって朝からいい気分。見晴らしが開けてくじゅう連山の勇姿を拝めるところもあった。どれだかわかんないけど、どれかは大船山だろう。
七里田温泉への道で見える大船山
看板にしたがって進んでいくと七里田温泉館木乃葉の湯に到着する。ここは下ん湯ではないけど車はここの駐車場に止めましょう。
七里田温泉館 木乃葉の湯
駐車場の奥に大船山の湧水汲み場があった。一口飲ませていただきました。おいしい大船天然水ですね(小並感)。
大船山湧水 水汲み場
いったん木乃葉の湯に入館して下ん湯希望の旨を告げると、いろいろ説明してくれた。石鹸などはありません/ぬるいですよ/渡した鍵を使って入ったら鍵をかけてください、等々。下ん湯の入浴料は800円…600円の気がしてたがネット情報だと800円なので自分の思い違いだろう。加えて鍵の貸出保証金として1000円または車のキーを預ける。


評判通りの素晴らしき炭酸泉

長い歴史を持つ七里田温泉

木乃葉の湯から下ん湯まで徒歩2分。建物の隣に足湯コーナーがあった。七里田温泉の歴史も書かれてる。1558年にお湯の守り本尊をお坊さんに刻ませた物が残っているとのことだから、相当に古くからあったようだね。
七里田温泉 足湯コーナー
預かった鍵で入館。中に入ったら鍵をしめる。脱衣所には普通の棚と100円戻らない式ロッカーが並ぶ。分析書をチェックすると「含二酸化炭素-マグネシウム・ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物温泉、低張性、中性、温泉」だった。源泉温度は36.5℃。加水・加温・循環・消毒なしの源泉かけ流しでおそらく間違いない。

浴室から地元の方らしき会話が聞こえる。下ん湯は9時オープンで今は10時過ぎ。一番風呂かその次のお客さんかな。混んでないことを祈ろう。

浴室にカランは2台。言われたように石鹸・シャンプーの類いはない。詰め込み感なく入ろうとすると4名サイズの浴槽が奥に控えていた。先客は2名だった。軽く挨拶して丁寧なかけ湯の後に湯尻へ静かに入湯して体育座り。これなら作法破りと思われないでしょう。

これでもかという強力な泡付き

ゴウンゴウンと音がする。壁に2つほど換気扇が埋め込まれてて、その稼働音だった。あまりの炭酸の強さにより気化した二酸化炭素が大量に室内に溜まることで発生する中毒事故を防止するためだろう。窓も開け放たれている。えらいことになってるな。

お湯は完全な無色透明ではない。微濁りでハマグリ汁のような色をしている。湯の花のように見える粒があったとしたら、それは炭酸の泡だ。お湯の中で行き場を求めて大量の微泡が漂っている。人が浸かると「行き場を見つけた」「飛んで火に入る夏の虫」とばかりにワーッと肌めがけて殺到してくるようで、すぐに体じゅうが泡だらけになる。これは見ものだ。

匂いを嗅いでみると金気臭を感知した。総合的にみて個性の面でもクオリティの面でもかなり上位のクラスに位置するのではないか。しかも好みのストライクど真ん中の温度。体温と同じくらいの不感温度であった。押しも引きもしない、お湯と自分が一体化したような気分になる浴感がすばらしい。無限に入れちゃうやつだ。

マニアを気取るなら、湯尻だと泡の付き方が弱いとかお湯の鮮度が…と思いたくなるが、湯尻でも十分すぎるくらいに楽しめる。体育座りのまま目を閉じているといつの間にか眠ってしまいそうな心地よさだ。

思いもよらず始まった、夢の独占タイム

30分ほど経過して先客が出ていった。ついに来た独占タイム! 湯口付近へ移動して足を伸ばす体勢に。あー、やっぱり泡の勢いが違いますね。湯尻でも十分にラスボス級だったのに、こちらはさらにラスボス第2形態級。わかりやすくいうと大神官ハーゴンの後の破壊神シドー(わかりにくい)。

見た目の泡の量だけじゃない、肌に付いた泡が弾けてパチパチする刺激すらはっきりと感じられるのだ。やけくそのように炭酸を注ぎ込んだ人工の高濃度炭酸泉というならまだわかるが…天然温泉にあるまじきギミックよ。インクレディブル。

おっと、はしゃぎすぎたか。地元の大切な温泉をまるでアトラクションのように考えてはいけません。落ち着け、じっくりぬる湯を楽しむんだ。こうして合計1時間ほど驚異の下ん湯を堪能した。正直まだ全然いけたけど(いきたかったけど)スケジュールの都合もあるので、このへんでお開きということで。

念願の七里田温泉下ん湯、行けてよかった。まさに百聞は一見にしかず。思い出深い体験になった。世の中にはこんな温泉もあるんだね。


おまけ:春、岡城跡の花の宴

下ん湯を出て、次に目指す長湯温泉は車で10分もかからない。入浴間隔を空けるために岡城跡を見学することにした。下ん湯から30分。駐車場から見上げると、桜が咲いていてちょうどいい感じである。あそこまで登らなきゃいけないことも意味するが。
岡城跡
入場料は300円。この地形じゃ難攻不落の城と言われるよなー。
難攻不落の絶壁
いったん登りきるのに10分弱。中は広くてあちこちに石垣が残っている。本丸へ続く道は切り立った崖状態なのに手すりも何もなくてちょっと怖い。
本丸跡への道
北の方を眺めるとくじゅう連山が並んでいた。その中には七里田温泉で見た大船山もあるはず。
岡城跡から望むくじゅう連山
本丸跡には神社がある。
本丸跡の神社
二の丸跡の方へ行くと滝廉太郎像が。滝廉太郎は少年期を竹田で過ごし、岡城は「荒城の月」のモデルと言われている。
滝廉太郎像
西の丸跡かその先だろうか、春らしい美景が展開していた。
二の丸跡の桜と菜の花
正直なところ歴史的な観点からの興味は薄かったのだが、景観と散策の観点だけでも訪れる価値のある観光スポットだ。