おお風呂場はみどり。朝から賑わう老舗の湯 - 川渡温泉 藤島旅館

川渡温泉 藤島旅館
鳴子温泉郷を貫くJR陸羽東線は4つ連続で温泉地名の駅が並ぶ…中山平温泉・鳴子温泉・鳴子御殿湯・川渡温泉。今回の「春の温泉一人旅」では、最終日までに鳴子温泉と鳴子御殿湯(東鳴子温泉)を訪問していた。最後にあともう1箇所行っておこう。そう考えて川渡温泉への立ち寄りを決めた。

口コミなどいろいろ調べた結果、地元の方がよく行く銭湯代わりのような存在という「藤島旅館」を訪問先とした。ここはレトロ感あふれる建物で、旅情をかき立てられる。風呂は内湯が一つのみだが、大きな浴槽でゆったりしている。そして温泉はまぎれもない超本格派。旅の最後にいい締めができた。

川渡温泉「藤島旅館」へのアクセス

川渡温泉街は最寄りの川渡温泉駅と結構離れている。徒歩だと15分はかかるだろう。駅前を通る羽後街道を鳴子温泉駅方面に進むと江合川にぶつかる(ここまで歩くのに10分以上)。橋を渡って数分で温泉街が始まるとすぐ、道が直角にカーブするところにあるのが藤島旅館だ。

自分は一駅隣りの東鳴子温泉・久田旅館に泊まった翌日、天気もいいし風呂に入るから汗かいてもいいだろうってことで、4キロ・50分の道のりをてくてくと歩いていった。実際は物見しながらの“ぶら~り”だったため70分以上かかった。

藤島旅館の前に立つ。午前中だというのに駐車場はほぼ一杯だ。事前調査通りに地元民人気をうかがわせる。玄関口は鄙び感がすごい。
藤島旅館の玄関口
ちょっとドキドキしながら入館した。


なんだかすごく効き目を感じるお湯

謎の温泉プール

帳場で入浴料を払う。藤島旅館には大浴場(300円)と中浴場(500円)がある。大浴場は地元民でいつも賑わっているという情報があったから、じゃあ中浴場なら空いてていいかなと思ったけど、希望を伝える前に「300円です」と大浴場の料金を告げられたので、まあいっかと成り行きにまかせて大浴場へ。

教えてもらった大浴場への通路を間違えて自炊部らしき区画へ迷い込んでしまった。壁でなくふすまで仕切った部屋、廊下にずらっと干してある洗濯物…なんと昭和でレトロな光景。自分がこの場に馴染めるかというと、まだレベルが足りてないような気がするが、味のある雰囲気にはちょっとひかれる。

この棟の中庭には温泉で満たされたプールのようなものがあった。まさかプールじゃないよな。源泉の溜め置き槽かな。いや本当にプールかも。真相はいかに。

大きな浴槽が目を引く浴室

正しい通路に戻ってコインロッカーに貴重品を預けた。100円入れてあとで戻ってくるのがよくあるパターンだけど、ここのは50円かつ戻ってこないやつだった。

大浴場の男湯の脱衣所には数名の客の姿。服を脱いでいる間にも新たに人がやって来る。ありゃりゃ、混雑しちゃうパターンかな、これは。芋洗いの嫌ーな予感が胸に広がった。ともかく壁の分析書をチェックすると「含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」とあった。

浴室内には先客が7,8名ほど。空いてるとは言えないものの、うんざりするほどの混雑でもない。洗い場は5名分で石鹸やシャンプーは置いてないから必要なら持参すべし。浴室全体は特に広いわけじゃないが、床面積の過半を占める勢いの大きな浴槽が目立っている。20名は余裕で入れそう。

緑の中を走り抜けてく真っ黒なひじき

お湯は入浴剤をぶちまけたかのごとく緑色に濁っている。うぐいす色に近い。天然で湧いてる状態でこの濃い色はすごいな。入ってみるとガツンと来る熱め。あ゛ー効くわー。個人的にはぬるめが好きなんだけど、こりゃ効くわー。

湯の中には黒い糸くずのような、いや、ひじきのような湯の花がたくさん舞っていた。白や茶色の湯の花は何度かみたことがあるけど黒いのは初めてだ。しかも細かい粒子じゃなくて、ひじきに見えるくらいのはっきりした大きさを持っている。

匂いは泉質通りの完璧な硫黄臭。白濁ならぬ緑濁硫黄泉は見た目と匂いがすでに、とてつもない効能をアピールしてくる。古くから脚気川渡と謳われてた中での当館のこの人気。実際に効能確かなんだろう。


朝から賑わう大浴場

すごい人気。客がどんどんやって来る…

そうこうする間にもどんどん人がやって来る。出ていく人がそれなりにいるから人口密度の爆発的上昇はないが、あまりにも途切れなく来続けるので、過去のトラウマ=銚子犬吠崎温泉でのベルトコンベアー事件が蘇ってきた。おいおいまだ午前だぞ、まじか、勘弁かんべーん。

芋洗いの恐怖に震えつつ、しばらくするとようやく人の流れが落ち着いてきた。客数は12,3名をピークに後半は6名前後で安定してきた。ふー助かったぜ。

熱めだから湯船を出たり入ったりを繰り返す。ふと見ると常連らしきおじいさんが浴槽の脇の床にダイレクトに寝そべっていた。トド寝ってやつか。たしかにその場所は浴槽からあふれて床を流れるお湯の量がことさら多かった。

すべりに注意

そういえば浴槽は深めだった気がする。たしか体育座りができなくて中腰になるくらいじゃなかったかな。あの広さと深さの中に加水・加温・循環・消毒いずれもしない源泉がかけ流しで満たされているわけか。なんともぜいたくだ。

緑の海につかって長いこと経った。のぼせる前にあがるとしよう。浴室を出るとき、床のぬめりですっ転びそうになった。ここのお湯は結構すべる。甘く見てはいけない。スベラーズを置きたいね。

大浴場を出て、通路内のちょっとした休憩スペースでちょっとお休み。お酒を含むドリンクの自販機やベンチが置いてある。自分には実体験がないくせになぜか懐かしく感じる昔ながら風の売店もあった。
藤島旅館 売店

菜の花に見送られて

以上で藤島旅館はおしまい。この旅もおしまい。あとは帰るだけ。川渡温泉駅に向かうと、途中の河川敷が一面見事な菜の花の海になっていた。
川渡温泉付近の菜の花
鮮やかに色づいた広大な四角い区画が目に飛び込んでくる。黄色と緑の違いはあれど、なんだか藤島旅館の大きな浴槽に見えてきた。