非加熱源泉槽との交互浴が癖になる硫黄冷鉱泉 - 塩山温泉 宏池荘

塩山温泉 宏池荘
甲府からの帰り、どこかに立ち寄り湯していこうと考えた。電車で帰るので駅から近いところが望ましい。甲府駅周辺、もしくは山梨県内の沿線にないかな。とりあえず石和は条件を満たしているが。

そういえば塩山に温泉があったな。調べてみると駅から徒歩10分くらいのところに何軒かの温泉宿が集まっているようだ。これなら行ける。あとは日帰り入浴を受け付けているかどうか。

宏池荘はネット情報で日帰り利用OKとはっきりしていたし、地元の公衆浴場的な存在でもあるらしく、これなら大丈夫と確信を得て訪問してみた。加熱した冷鉱泉ながら硫黄ぽさがあり、非加熱の源泉槽との交互浴が癖になる良泉だ。

塩山温泉「宏池荘」へのアクセス

JR中央本線で東京から甲府へ向かうと、笹子峠の向こう側に出てから直線的に笛吹市へ向かわず、北寄りにぐるーっと回り込むようなルートを取る。その回り込みの北端付近が塩山だ。鉄道に詳しい知り合いによれば、直線的だと勾配が急すぎるから、緩くするために遠回りしているらしい。なるほど。

まあそのおかげで塩山温泉が駅徒歩圏になっているのだから結果オーライ。塩山駅は特急かいじが停まるし、何なら高尾から各駅停車に乗ってもうんざりするほどの遠さじゃない(70~80分)。行きやすい方だと思う。

自分は甲府湯村温泉からの帰りに立ち寄った。単に直帰するつもりなら甲府駅から高速バスに乗るのがコスパ面でベスト。しかし湯村ホテルに1泊しただけでもう帰らなきゃいけないなんて、ちょっと物足りないなあ。もう1箇所、どこか初訪問の新鮮味を感じさせる温泉地はないか…と考えた時に、ちょうど塩山温泉がマッチしたのであった。

甲府から塩山まで各停で20分。下車後は駅から北西へ10~15分ほど歩く。スマホの地図アプリであたりをつけておけば迷うような場所ではない。方向感覚にまかせて歩いてたら途中で「国登録有形文化財」と書かれている門を見かけた。後日の調べでは飯島家住宅長屋門といい、江戸時代1830~1868年頃の建築らしい。
飯島家住宅長屋門
ここまで来れば目的地はもう近い。小さいが深く切れ込んでいる川の周辺に温泉宿がぽつぽつ立っている。宏池荘もその一帯にあった。


源泉そのままの湯船もある大浴場

今回は一般の大浴場へ(貸切風呂もあります)

日帰り客も正面玄関から入るようだね。ネットの一部情報だと「日帰りの場合は裏手から入るようになった」という説明をちょいちょい見かけたが、今はまた正面から入るように変わったみたいだ。では遠慮なく。

日帰り客用の下足箱からスリッパを取り出して、空いた空間に靴をしまったら受付で入浴料をお支払い。500円。少しだけ奥まで進むと右の方に別棟への出口があった。別棟といっても目と鼻の先。出口から外へ出る→2歩進む→別棟入口なんでね。ちなみに出口の手前に無料の貴重品ロッカーあり。

別棟に移るとすぐ男湯・女湯が並んでいる。脱衣所はどことなく懐かしいローカル色強めながらも特段鄙びているわけではないし、きれいにされていますな。分析書によれば「単純硫黄冷鉱泉、低張性、アルカリ性、冷鉱泉」とのこと。

ここに露天風呂はない。内湯のみ。※別料金の貸切露天風呂がある。今回は利用しなかった。

適温に調整されたメイン内湯

浴室はわりかし新しめ。カランは8台。1~2名いた地元民らしき先客はまもなく出ていって独占となった。当館は近隣の登山の帰りに汗を流しに来る利用パターンもあるようで、今回は冬の午前だからそういう客を見かけなかったけど、夏の午後はまた様子が異なるのかもしれない。

内湯浴槽は手前と奥に2つ。まず奥のメイン浴槽から入ってみよう。4~5名サイズの広さに無色透明のお湯。オーバーフローしている様子がないから循環ですかね。湯口からの投入量はなかなかの多さ。浸かってみると適温だった。冬はぬくぬくできてちょうどいい。

細かい白い粒が少し漂っているのは湯の花だろうか。泡付きは特になし。ヌルヌル・ツルツル感も特になし。ただし通常の沸かし湯とは違う、スムーズというか肌になじむ感覚がある。匂いを嗅ぐと甘い系の微硫黄香があった。

お湯の中で強めの噴流を感じる。あぶくや気泡を露骨に大量発生させているわけではないが、湯口の近くでは明らかにボコボコと波を立てているので、一部がジェットバス式になっているんだろう。

非加熱の源泉槽に頑張って浸かる

手前のは源泉浴槽に違いない。2名でいっぱいになる小さめの浴槽に蛇口からジョローーーっと非加熱の源泉が流し込まれていた。ただの水風呂でないことは匂いを嗅げばわかる。明らかに硫黄香がする。

かなり冷たそうだな。夏はともかく今耐えられるかな…しかしせっかく来たのに源泉浴槽を前にしてスルーできまい。まず腿のあたりまでゆっくり浸かっていった。冷てーーー!!

お次は腰まで。両足の時よりも冷たい感覚がさらに激しく襲ってくる。うおおおおお負けるかああああ。…お次は肩まで。いいか、ゆっくり、ゆっくりだぞ。押すなよ押すなよ絶対に押すなよ(フリじゃありません)。

慣れれば不思議と気持ちいい

こうしてなんとか肩まで浸かった。いったん体勢が定まってしまえば、動かなければそんなに冷たくない。

ああ、なんだか不思議と気持ちがいいね。非加熱のままの源泉とダイレクトに接しているせいかな。で、5分くらいしたらまたメイン浴槽に移ると、冷/温の交互浴になってさらに快感アップ。冷が温を、温が冷を、互いに相手を引き立てるのが癖になって、ついつい何度も行き来してしまう。

ちょっとだけ立ち寄るつもりが予想外に1時間近く滞在してしまった。それだけのクオリティを感じたってことだ。冷鉱泉だからとあなどれんな。塩山なら車はもちろん、電車でもふらっと来やすいし、覚えておこう。