4つの顔を持つ湯治宿で館内湯めぐり - 鳴子温泉 旅館姥の湯

鳴子温泉 旅館姥の湯
春たけなわ、でも実際は夏みたいな暑さの中での温泉一人旅。2日目は肘折温泉から鳴子温泉へ移動した。ここは本当にすごいね。多種多様な温泉が湧いている。とてもワンフレーズでくくれるものではない。

まずは旅館へ入る前にどこか一箇所で立ち寄り入浴するとしよう。バラエティ豊かな温泉群・施設群からどこを選ぶか。正直ノープランだったのだが、自然と足が向かったのが「旅館姥の湯」だった。

なんと、一つの旅館内で4種類の源泉かけ流しを楽しむことができる。日帰り客にも4種類すべて開放されている。とっても得した気分だ。

鳴子温泉「姥の湯」への道

旅のお供に、くぢら餅大福

まず初めに。広い意味での鳴子温泉郷には5箇所の温泉地=鳴子温泉・東鳴子温泉・川渡温泉・中山平温泉・鬼首温泉が含まれる。ここで話題にするのは5箇所のうちのひとつ=狭義の鳴子温泉である。

鉄道で東京方面から鳴子温泉へは、東北新幹線・古川でJR陸羽東線に乗り換えて約45分、というのが一般的なルートだ。鳴子温泉駅を降りればすぐに温泉街。複雑な乗り換えや駅からバスに乗ることがないから、行きやすいといえば行きやすい。

自分の場合、前泊地の肘折温泉・旅館勇蔵を発ってバスで新庄駅へ出て、そこから陸羽東線で1時間。車中のお供に、新庄駅で「くぢら餅大福」を買っていった。初めて見聞きする食べ物だから興味津々。
くぢら餅大福
くぢら餅といっても鯨の肉は入ってない。栃餅よりも濃い茶色、ほとんど黒に近い。大福の中身はアンコだが、本体の餅は甘さといい、どろっとした柔らかさといい、水飴みたいだった。こいつがお昼ご飯ね。

湯けむりラインに乗って

陸羽東線は「奥の細道湯けむりライン」の愛称が付いているように、沿線に温泉地が多い。瀬見温泉・赤倉温泉・中山平温泉・鳴子温泉・東鳴子温泉(駅名は鳴子御殿湯)・川渡温泉。一度の旅行ではとてもカバーしきれない。

鳴子温泉の手前では列車がスピードを落として徐行。「さあ左手をご覧ください」的なアナウンスがあったような気がする。窓の外はちょうど見事な新緑の鳴子峡。気が利くねえ。
新緑の鳴子峡
列車の終点・鳴子温泉駅はホーム上ですでに硫黄の匂いが鼻をついた。おおさすがは鳴子さん。とりあえず旅情たっぷりのローカル線のホームを写真に収めた。
鳴子温泉駅

混雑する滝の湯をスルー

ついに来た鳴子温泉にわくわくしつつ、まずは駅から5,6分歩いた高台にある温泉神社でお参り。
鳴子温泉神社
その後の立ち寄り入浴はとりあえず神社の麓にある共同浴場・滝の湯を狙っていたのだが、人の気配のない温泉街の中で滝の湯の入口付近だけ、やたらと人がたむろしている。ネット情報でもここは混んでるって書いてあったしな。今日は芋洗いリスクがやばそうだ。

混雑絶対避けるマンのおじさんは滝の湯をあきらめて、足の向くままに歩き出した。事前調査でいくつかの候補を頭に入れてあったものの、特にここというあてはない。

やがてなんとなく、列車が鳴子温泉駅に着く直前に車窓から見えた「姥の湯→」の看板を思い出した。これも何かの縁だ、あの看板の指すところへ行ってみようじゃないか(姥の湯も候補の一つに入っていた)。


姥の湯で館内湯めぐりをやってみた

手始めに硫酸塩泉「義経の湯」

姥の湯は鳴子温泉駅の正面口から線路をまたいだ反対側にあり、坂を下って徒歩5分くらい。昭和風の古い佇まいを残す建物の玄関受付で550円を払って入館する。

当館は4種類の自家源泉が売り物だ。手当たり次第に体験してみることにする。まずは硫酸塩泉を謳う内湯「義経の湯」。壁の分析書には「ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」とあった。

ちょうど先客と入れ替わりになったのでいきなり独占状態。やったぜ。浴室にカランは2つあるがシャワーが付いてない。石鹸・シャンプー類もなし。蛇口から出るお湯は冷たくてなかなか温度が上がって来ないから難儀した。とはいえ、体験した中ではここが洗い場として一番使えるレベル。うーむ、評価が分かれそうなところだね。特に宿泊の場合。

万人向けの良泉

お湯の方はすばらしい。3~4名規模の四角いタイル張り浴槽に、無色透明でわずかに濁ったお湯がかけ流しにされている。入ってみると適温。いかにもな温泉の匂いがしたと思うが、正直印象に残っていない。他が強烈だったもんで。

よく見ると綿埃のような湯の花がふわふわと舞っていた。ほほう、結構結構。個人的にはぬるめが好きなので、温度はもう少し低くて良いが、一般的にはこのくらいの熱さが受けるだろう。

姥の湯では義経の湯が一番オーソドックスで万人向けだと思われる。ここだけでも十分「いい温泉」としてやっていけるだろう。

人気No.1、白濁硫黄泉「こけしの湯」

続いては硫黄泉を謳う「こけしの湯」。当館の人気No.1らしい。うんうん、わかるわかる。みんな大好き白濁硫黄泉だもんね。だがここも誰もおらず独占。いやいやたまりませんなー。脱衣所の分析書には「含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉(硫化水素型)、低張性、中性、高温泉」とあった。

浴室内はシャワーなしのカランが1つ。石鹸・シャンプーはやっぱりない。4名規模の四角い木の浴槽があり、白濁したタマゴ臭のお湯がかけ流しになっていた。あふれたお湯は浴槽の縁からそのまま出ていく。縁の部分の木は析出物がこびりついて真っ白。

入ってみると、熱め。はっきりと熱い。じっとしていればそれほど苦にすることもないけど長くは入っていられない。2分入って3分休憩みたいなのを繰り返した。

酸性ではないからピリピリ来る感じはない。強烈すぎない適度なタマゴ臭が気分を盛り上げる。泉質的にここが一番「温泉につかりましたよ」感があって満足できるだろう。人気No.1とすればいつ人が来てもおかしくない。誰か来たら出ようと思っていたら、ずっと独占が続いたので、思ったより長く滞在してしまった。

露天風呂の重曹泉「啼子の湯」

続いては重曹泉を謳う「啼子の湯」。ここは露天風呂であり、かつ15時までは混浴だ。慎重に誰もいないのを確認してから突撃。誰も来るなよー来るなよー。分析書には「ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉、低張性、中性、高温泉」とあった。

露天エリアの中に脱衣コーナーがあって、隣接するように5~6名規模の岩風呂がどーんと控えており、まわりは目隠しの塀に囲まれている。真剣に探してないけど洗い場は見つからなかった。

お湯は無色透明。ほんの少し濁っていて小さな湯の花が舞っていた。先ほどの硫黄泉から気分を変えて、すっきりマイルドと思われるお湯につかりながら露天で爽やかな入浴を楽しもうじゃないか。

熱すぎて即退散

で、入ってみた…あああ熱っーーーーー! なにこれ超熱い。ダチョウ倶楽部やたけし軍団が入るやつだぞ。立って足だけ入るのが精一杯だし熱いを通り越して痛い。浴槽の底で勢いよく噴き出す熱湯のジェット流みたいなのがやばい。

ネット情報だとぬるいという書き込みもあったので、その時々のコンディションで全然違うのかもしれない。なにせ加水・加温・循環・消毒なしの生源泉100%ですから。あるいは、ぬるいケースは前の客が水で埋めてたとか。

こういうとき水で埋めていいのかどうかもわからないし、そもそも近くに蛇口があったという記憶がない。ここはまあ、ご縁がなかったということで、早々に退散。

締めは単純泉「亀若の湯」

ふー、まいったぜ。気を取り直して最後の仕上げに単純泉を謳う「亀若の湯」。単純泉ていうくらいだからソフトでクリアでライトなお湯だろう。仕上げにちょうどいい。しかし分析書にあったのは単純温泉でなく「ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉」だった。なんだろうね。

それにしても、鳴子自体がそうなんだが、限られたエリアに多種多様な泉質が見られるってのは珍しいな。ここ姥の湯に至っては同一施設内で4種類だからまじ半端ない。と感心しつつ浴室へ。

中にはやっぱりシャワー・石鹸・シャンプーなしのカランが1つ。石造りっぽい扇形の浴槽は3~4名規模。

え? これで単純泉?

浴室に入って最初ちょっと戸惑ったのは、匂いがどうみても単純泉じゃない。誰でもすぐわかるくらいに明らかな金気臭がした。鉄の主張がかなり強い。お湯の色も透明じゃない。半白濁とでも言おうか、透明度50%の白みがかった湯。

入ってみてさらに驚いた。浴槽の底に手をついたら、指の先がオレンジ色に! 赤サビ鉄粉みたいなのが付着していたのだ。これって含鉄泉じゃないの。お湯に鼻を近づけるまでもなかったが、あえて近づけてみると、すんごい鉄アピール。

しかしここは気に入った。好みのぬるめだったのだ。鉄成分も嫌いじゃない。表向きが単純泉だと地味だから、積極的に狙って来る客はいそうになかったし、実際誰も来なくてずっと独占だった。じっくりつかっていい感じ。自分的にはNo.1だった。


本物の温泉を求める人に

4つも巡ってもうお腹いっぱい。大満足であった。各源泉でいたずらに粘ることなくサクッと回ったつもりだったけど、終わってみればゆうに1時間半を費やしていた。

すっかり出来上がって外へ出る。本館のすぐ横に源泉を取るところ(?)があった。硫化水素ガスが危ないから立ち入るなと書いてある。
姥の湯 源泉を取るところかもしれない
姥の湯は個性豊かな4種類の源泉かけ流しを楽しめるのでお得感がある。建物は全般に昔風であり、洗い場が上記の通りだから、そういう面を割り切れる人向け。

昔ながらの自炊宿の雰囲気を持つ姥の湯への宿泊は、少なくとも今の自分には敷居が高いが、亀若の湯を筆頭に館内湯めぐりが楽しく好印象だったことは間違いない。この点は万人を満足させてくれるだろう。

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