湯治場の素朴な味わいの宿が“いいね!” - 肘折温泉 旅館勇蔵

肘折温泉 旅館勇蔵
東北へ2泊3日の温泉一人旅に出たおじさん。最初に訪れたのは山形県大蔵村の肘折温泉。ゴールデンウィークといっても過言ではない時期だから、混雑絶対避けるマンのおじさんは戦々恐々だったのだけれども、拍子抜けするくらい混雑とは無縁なのんびりムード。

初日の宿泊先は「旅館勇蔵」。肘折温泉らしく湯治寄りの性格を持った小規模旅館である。食事の内容が簡素な湯治プランと、ちょっと上級の旅籠プランがあり、湯治プランでも良かったんだけど旅籠プランにしてみた。前者は2泊からという縛りがあったからだっけな…忘れた。

なんだか居心地のいい宿で、山菜たっぷりの食事も良かったし、もちろん風呂は肘折クオリティで言うに及ばず。新たに始めたばかりという貸切風呂を体験できたのも得した気分だ。

肘折温泉「旅館勇蔵」へのアクセス

肘折温泉は肘ならぬ指折りの豪雪地帯として知られるが、春の盛りを過ぎつつあるこの時期なら、いくらなんでも大丈夫だろうと行き先に選んだ。

東京方面から鉄道だと山形新幹線で終点の新庄まで乗ることになる。新庄駅はモダンなデザインで、改札を出たところに物産館が併設されているから、バスの乗り換え待ちの間に立ち寄ってみるとよいだろう。

新庄からは大蔵村の肘折温泉行き村営バスに乗る。マイクロバスのサイズだった。冒頭にある通り戦々恐々のおじさんは「行楽客を含む大勢の乗客が殺到して補助椅子を出したけど一部の客は乗り切れない」という最悪の可能性にびびっていたが、実際は全然余裕で空いていた。無事に出発。

そうして約55分で終点・肘折温泉に到着。旅館勇蔵は2つ手前の第一停留所で降りる方が近い。自分はバスを降りてから近隣の黄金温泉カルデラ温泉館へ立ち寄り入浴し、その後に当宿へやって来た。温泉街の車や人が通る道に限れば雪はもう一切ない。


現代版の湯治宿らしい部屋

ぼっちのおじさんには十分快適

さてチェックイン。案内された部屋は2階にある、通りに面した7.5畳相当の和室。一部がテレビ用のくぼみとか床の間スペースになっているから6畳プラスアルファともいえる。一人旅には十分だ。
旅館勇蔵の部屋
トイレは共同。廊下の奥に、一般家庭にある個室タイプが4つほど並んでいる。新しめのシャワー付きトイレでなんら不都合はない。ちなみに2階の廊下にはコーヒーのサービスと漫画を置いた棚があった。撮ってみたけどかなりボケちゃってる。
旅館勇蔵 コーヒーサービスと漫画の棚
こうした旅館はトイレと洗面所が共同というのがよくあるパターンだが、自分の部屋には入ってすぐのところに洗面台が備え付けてあった。しかも新しくてきれい。こいつは助かるね。
旅館勇蔵 部屋内の洗面台

湯治場の活気と静けさと

勇蔵の外観・主要な柱・棚なんかは昔ながらのそのまんまの感じを残す一方、洗面台とか部屋のドアとか壁紙などは近年更新した様子がうかがえる。もろもろ清潔に管理されているし、快適にすごせる。

窓の外は向かいのお土産物屋さん。通りに面しているから車の音や立ち話する人の話し声が聞こえてくる。でも常にじゃないしうるさいとは感じない。これも温泉街の活気の一部だ。

木造なんで隣室の話し声も漏れてくる。具体的に何を言ってるかはわからないくらいの音量。いずれにせよ聞こえるのはたまにだし、夜はピタッと静まったし、テレビの音はしてこなかったし、気にする程ではないかと。戦々恐々とした休日でこれだったら、いいんじゃないでしょうか。


名湯・肘折を堪能できるお風呂

新しく始まった貸切風呂

行った当時の新着情報として、貸切風呂があげられる。チェックインの際に女将さんから「貸切風呂を始めたんですよ」「ホームページに載せたいんだけどまだ間に合ってなくて」と紹介された。

貸切風呂の位置は2階の廊下の奥の奥、別棟っぽいところとの連結部分。そういえば勇蔵には別館トイレ付き部屋なる上級コースもあった。つまりそこが別館なのかな。

運用ルールはまだ固まっていないらしく、空いていれば内側から鍵をかけて締め切って、それが使用中の合図。早い者勝ちだ。その後ルールができたかもしれないから、旅館勇蔵のホームページや現地で最新情報を確認されたい。

個室で肘折の湯を独占

やはりというか、みなさん狙ってたみたいで、夕方と翌朝にチェックしに行ったら当然のごとく埋まってた(浴室前に脱いだスリッパが置いてあるからすぐわかる)。自分は夜9時頃に1回だけあったチャンスに飛びついた。

脱衣所も浴槽も完全に1人用のサイズ。カランも1つ。サイズは小さいがしっかりと肘折の源泉がかけ流しされている。後述の主浴場と同じ、茶色で半濁の熱めの湯。こいつがまたじんわりと芯まで効くのである。

広々した大浴槽じゃないと気分が出ないという人にはアレだが、ピカピカに新しくて確実に独占状態を楽しめる貸切風呂は、なかなか結構なお点前だ。熱めの湯だから一人が長時間居座ることはないだろうし(そのあたりもいずれルールができるだろう)、誰でも宿泊中にチャンスはあると思う。

主浴場に鎮座する紫水晶

貸切風呂が埋まっていた夕方と翌朝には主浴場へ行った。こちらは小規模旅館なりのサイズの内湯。脱衣所の分析書には「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、低張性、中性、高温泉」とあった。

浴室内にカランは2つ。うち1つにはシャワーが付いてない。左手奥にある浴槽は3名までが適正、4名入ったらちときつい。浴槽の手前側に湯口があって、奥にはブラジルから寄贈されたブラジル産の紫水晶が飾ってあった。いわれはよくわからない。

熱めでジワジワくるパワフルなお湯

お湯の見た目は半濁の茶色。湯の花なし。入ってみるとやや熱いけどじきに慣れる。アッチッチで入っていられない、とすぐ出たくなる気持ちにはならない。むしろジワーッと身体の内部まで温泉が効いてくる感じがして結構長くつかっていられる。さすが天下の肘折さん。

匂いを嗅いでみると、カルデラ温泉館の湯にあった甘い匂いを弱くしたようなのを微かに感じた。金気臭なのか土気臭なのかアブラ臭なのか、よくわかんないや。細けえことはいいんだよ、ってことで、そこかしこに茶色がこびりついた湯船や壁を眺めながら、しばしまったりと。あー、効くわー。

朝も夕も他の客とはちょうど入れ替わりになるタイミングで、浴室内はずっと一人きりだった。戦々恐々とした休日にもかかわらずゆっくり独占できて大満足である。


素朴でハイレベルな勇蔵の食事

山菜づくしの夕食

勇蔵では夕食が18時、朝食が8時。食事の時間が来ると、他の部屋へバタバタと部屋食を運び入れる音が聞こえてきた。あれは湯治プランだろう。食べ終わったらお膳を廊下に出しておくシステムじゃないかな。

自分は旅籠プランだったので、帳場からかかってくる内線を合図に、食事が用意されている別の部屋へ移動する。一人泊でもちゃんと単独の部屋があてがわれ、大広間で他の客と同席させられるわけではない。こういうの、本当にありがたい。

夕食がこれ。天ぷらは少し後に出てくる。馬刺しと地元で採れた山菜づくしか、いいですねえ。
旅館勇蔵の夕食
山菜は説明を受けたから、あれだ、ええと…まあ細かいことはいいや。フキノトウとかワラビとかウドとか聞いたことがあるようなのはひと通りあったはず。姿と名前が一致しなくても美味しかったから、ええじゃないかええじゃないか。

全部うまくて大当たり

鍋はキノコ鍋。これも地元産である。たくさんの種類がてんこ盛りで、初めて名前を聞くやつもあった。キノコは結構好きなんでね、こんなに味わえるなんて、ぼかぁ幸せだなあ。

馬刺しと魚があるとはいえ、山菜とキノコ主体では淡白じゃないか・量は足りるのかと思うかもしれないが、これがすごく腹一杯になるのである。お櫃のご飯(大蔵村の観光スポットでもある四ヶ村の棚田で取れた米)は完食できなかった。

いやー勇蔵の食はいい意味で素朴かつレベルが高い。部屋のテレビはNHKにチャンネルを合わせてつけてあり、朝ドラの総集編的な番組が流れていた。ドラマのタイトルは「半分、青い。」だが、ここの夕食は「全部、うまい。」だった。

タケノコご飯の朝食

朝食も山菜が出る。さっぱりとして食べやすい。玉子は温泉玉子だった。タケノコご飯ってのも季節感があって大変よろしい。量はたっぷりで残念ながら完食できず。
旅館勇蔵の朝食
東北で朝の味噌汁といえば少年時代の旅の記憶があって、しょっぱいを通り越して塩辛くて難儀した思い出に引きずられてしまう(あれは秋田県の鹿角の方だったが)。そんなトラウマ(?)とは関係なく、ここの味噌汁は適正である。


ぬる湯に長く入るのが好きな自分にとって旅館勇蔵のお風呂は少しばかり熱めだったとはいえ、間違いなくいいお湯だったと断言できる。本来なら長く逗留して湯治をもっと楽しむべきなんだろうけどね。限られた日程であちこち巡るカバレッジ志向の旅を選んでしまった我が貧乏性。

それはさておき湯治系・素朴系志向の人にはおすすめしたい勇蔵。全国の雄三さんにもおすすめしたい。ぼかぁ幸せだなあ、ってきっと言うはずだ。

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