どこまでも広がる水平線と潮騒の温泉 - 犬吠埼観光ホテル

犬吠埼観光ホテル
ようやく秋らしくなってきた、とある週末。千葉県銚子観光の最後に温泉に立ち寄ってみた。灯台で有名な犬吠埼付近には温泉が出るのである。海はあるわ、見晴らしの丘はあるわ、レトロな鉄道はあるわ、加えて温泉まで。にくいぜ犬吠。

このあたりに日帰り利用OKの温泉を提供するホテルはいくつかあるが、今回は犬吠埼観光ホテルへ行ってみた。行楽日和の週末だったからある程度覚悟はしていたものの、予想をはるかに超える混雑ぶり。かなり久しぶりに芋洗い状態を体験することとなった。

犬吠埼観光ホテルへの道

波が迫る遊歩道

犬吠埼観光ホテルは銚子電鉄の犬吠駅と外川駅の中間くらい。どちらからも徒歩10分弱というところ。しかし本記事では、銚子・犬吠エリアをあちこち歩き回った末、クライマックスの犬吠埼灯台を出てきたところから話が始まる。

灯台から波打ち際に整備されている遊歩道へ出た。洗濯板のような岩場では親子連れが磯遊びに興じている。近くの岩に波がザッパンザッパンぶつかって高いしぶきを上げている。
犬吠埼の荒波
人と波が結構近いようにみえるけど大丈夫なのかな…その岩が波をブロックしてくれているのだともいえるが。

けっきょく遊歩道終点まで行く

日帰り温泉できるところがあれば入ろうと思いつつ、しばらく遊歩道を進んでいき、シーサイドなホテルの前まで来た。灯台がもうあんな遠くに見える。でも気まぐれでもう少し先へ行ってみることにした。
遠くなった犬吠埼灯台
その後もいくつかのホテルをかすめたが、いずれも遊歩道より数メートル高い崖の上にあり、アプローチできそうな道もない。折り合わぬまま先へ先へと進まされるうち、遊歩道は車道にぶつかって終点となった。

さてどうしたものかと迷うまでもなく、すぐそこが犬吠埼観光ホテルだった。日帰り温泉可能なのは事前に調査ずみ。秋らしくなったとはいえ、カンカン照りの下を長いこと歩いて、ずいぶん汗もかいた。よし、ここにしよう。


波打ち際で温泉を

弧廻手形でお得な特典

犬吠埼観光ホテルの外観はややくたびれた感じ。でもどうしたって潮風にやられちゃうんだろうから仕方ない気がする。紫地に白い文字の「潮の湯温泉 犬吠埼観光ホテル」の看板だけが派手めで目立つ。

入口すぐのところに日帰り入浴の券売機がある。平日1000円・休日1200円なり。ただし自分は、銚子電鉄のデラックス1日乗車券・弧廻手形による300円引きの特典を行使し、フロントで直接900円を支払った。

フロントでタオル・バスタオルを受け取って左手に行くと奥に大浴場がある。脱衣所に分析書はあったかな。少なくとも犬吠埼観光ホテルのホームページによれば「ナトリウム・カルシウム塩化物泉」だ。

疲れが取れる「温まりの湯」

浴室内はそこそこ人口密度があるけど混んでて困るほどではない。後にそれは嵐の前の静けさにすぎなかったと知ることになるのだが…。

洗い場は7~8名分で奥に内湯浴槽。手前に2つの壺風呂がある。まず内湯浴槽へゴー。湯温を表示するLEDパネルがあり41.2℃を示していた。ぬるめが好みの自分にとってはやや熱めとはいえ一般的には適温の範疇だろう。

お湯はささ濁りで湯の花的なものはない。印象を残す強い匂いもなかったと思う。この泉質にみられる通り、よく温まるお湯だ。疲れは取れそうな感じ。湯をなめる癖は持っていないが、もしなめたらしょっぱいに違いない。

壺風呂でそわそわ

続いて壺風呂に入る。ここにも温度パネルがあって41.3℃。湯船を自分が独占できるのはいいけど、これは温泉なのかな、沸かし湯なのかな。よくわかんないや。…わりかし短時間であっさり切り上げた。

壺風呂がそんなに盛り上がらない理由ははっきりしている。ガラス窓の向こうに海を間近に眺める露天風呂が見えているのだ。そちらが気になってそわそわしてしまう。

海を近くに感じる露天岩風呂

さあお待ちかねの露天エリアへ。露天風呂は2つある。まず舟形をした岩風呂へ入った。7~8名規模の浴槽に先客は4名ほど。お湯は内湯と同様。茶色い木くず状の湯の花が舞っていたけど、おそらく湯の花ではなくて本当の木くず。

やはり眺めはすばらしい。大浴場が波打ち際のすぐ近く、しかも海面からそう遠くない高さに作られているから、本当に海を近くに感じる。そして視界いっぱいに広がる水平線ばかりでなく、見る角度によっては遠くの崖の上に灯台が見えたりして、こりゃもうナイスなビューだ。

絵画的に海を見せる露天檜風呂

次に隣の檜風呂へ。こちらは4~5名規模で先客は1名。お湯は他と同様。茶色い木くず状の湯の花が舞っていたけど、浴槽の縁の木がささくれ立っていたのを見て、そこから剥離した木くずだと判断した。これが客の体にくっついて客と一緒に岩風呂へ移動したんだろう。

檜風呂の方はどーんと海や波を見せるのでなく、視界を遮る塀をあえて立てておいて、塀の中央部に穴をくり抜くという趣向でもって見せている。

横長の四角にくり抜かれた穴から見る海は絵画や写真、あるいはテレビや映画のワンシーンのようでもあった。


芋洗いストーリーは突然に

急に始まった混雑

いやあ、これだけのオーシャンビューは大したもんだと感嘆。ところが調子づいて、さあもう1サイクル:内湯→壺風呂→岩風呂→檜風呂を楽しもうとした矢先、まったく別のストーリーが始まったのである。

なんとまあ、見る間に客がどんどん入ってきて、人口密度がうなぎ上りに上昇していった。言葉は悪いが、工場のベルトコンベアーに乗せられた組立部品のように、無機質な一定のペースで浴室に投入される、人の群れ・群れ・群れ。あるいは機械的に押し出される“ところてん”とでも言おうか。

もはや洗い場に空きはなく、待ち人が多数発生していた。壺風呂は2つとも常時埋まりまくり。内湯にやや余裕があるのみ。

あまりのやばさに退散

露天風呂は完全な芋洗いの阿鼻叫喚地獄絵図。お湯の中に人がいるのか、人のすき間にお湯が漂っているのか、ってなところへさらにベルトコンベアー並みのペースで引き続き新しい客がなだれ込んで来るから、もう見てらんない。

これはいったい、ギネスに挑戦なのか、どっきりカメラの企画なのか。とにかくもう付き合いきれないので、2サイクル目はあきらめてあがることにした。

週末だからって、いくらなんでも混みすぎだ。思うに近所でアウトドア系の大きなイベントがあったのだろう。いい汗かいた帰りに温泉でさっぱりして行こうと皆が皆、同じことを考えたわけだ。推測だけど。


平時に訪れたい好景観の温泉

めったにない異常事態と考えられる混雑ぶりを無視すれば、すばらしい景観込みで、なかなか良い温泉だと思う。レストラン&喫茶コーナーでは九十九里オーシャンビールという地ビールを味わうこともできる。
九十九里浜オーシャンビール
もし計画に組み込まれる場合は、同じ日に近くで大きなイベントがないことを確認しておくと、より満足度の高い環境でゆっくり温泉を楽しめるだろう。


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