心の旅の行く先。やすらぎのぬる湯とお宿 - 栃尾又温泉 宝巌堂

栃尾又温泉 宝巌堂
魚沼産のコシヒカリといえば誰もが認める極上のブランド米だ。そして魚沼にはもう一つ、極上の温泉がある。「晩秋のぬる湯三昧」と銘打った一人旅で2連泊した栃尾又温泉だ。

このプチ湯治の宿に選んだのが宝巌堂という旅館。口コミ評価は総じて高い。実は1年あまり前にも今回と同じようなコースの旅で宝巌堂に2連泊し、えらく楽しかったため温泉旅行に目覚めて、現在に至る。あの素敵な思い出をもう一度、というわけで再訪となった次第。

なお、今回は栃尾又温泉のメインコンテンツ「したの湯」が改装工事中であり、入ることができなかった。それじゃ意味ない?…うーむ、そうなんだけど、でも考え方によっては、これはこれで珍しい事態。本記事はある意味で貴重な体験談でもあるのだ。

栃尾又温泉「宝巌堂」へのアクセス

温泉ひしめく旧湯之谷村

鉄道利用で栃尾又温泉へ行くには、まずJR上越線の小出駅で下車する。東京方面からだと上越新幹線・浦佐で在来線に乗り換えて2駅だ。自分は前泊地の貝掛温泉を発って越後湯沢から在来線に乗り、約40分で小出に着いた。

小出駅からは栃尾又行きのバスが出ている。バスは小出の中心街を抜けて旧湯之谷村のエリアを走る。方角的には奥只見湖を目指す感じ。

バスの沿線は佐梨川に沿って温泉がぽつぽつとある。停留所名でいうと葎沢、芋川温泉、折立温泉、大湯温泉、そして終点の栃尾又。また大湯温泉で降りて4キロほど歩いた最奥部には駒の湯温泉。湯之谷の名前はダテじゃない。

「湯之谷の少女なう鹿ちゃん」というゆるキャラを作って広報活動してみたらどうか(パクりすぎて無理か…)。

旅館3軒だけの静かな場所

終点で降りると目の前が栃尾又温泉。ここの風景は1年ぶり2度目にすぎないが、なぜか懐かしい気持ちになる。3軒の旅館があるだけで温泉街といえるものはない静かな場所だ。栃尾又温泉に入浴できるのはこれら3軒の宿泊客のみで、日帰り入浴は受け付けていない。

右手のメイン通りに面したのが自在館と神風館という旅館。
栃尾又温泉の旅館3軒
左手の坂の上に宝巌堂がある。さすがは雪国、晩秋とはいえこの時期にもう積雪ってのと、これくらいの雪はなんともないぜって感じで除雪はバッチリ。


センス良く、心地よい部屋

一人には贅沢な広さのレトロモダンな和室

さっそくチェックイン。宝巌堂はなんというか、レトロモダンとでもいうのか、古風な佇まいでありながらもセンスの良い洒落た雰囲気を持ち合わせている。女子に好まれそうなデザインだ。おじさんもかまわず泊まっちゃうけどな。
宝巌堂館内
桐材の床を素足で歩くようになっているのがいい。

当宿は全8室ですべて間取りやデザインが異なっている。宝巌堂のホームページを参考にして予約時に希望の部屋を指定できる。自分が選んだのは3階の日当たりの良い側。前回と同じ部屋にした。
宝巌堂の部屋
8畳間に加えて4畳半はあるんじゃないかと思われるフローリングの洗面・トイレエリア。この広さを一人泊で使っていいってんだから贅沢の極み。こじゃれた感じだし新しめでキレイだしね。WiFiだって完備だ。
宝巌道の部屋 水回り

非日常感を味わえる山の宿

暖房はこたつ+ファンヒーターの他にエアコンも。寒さ対策としては十分だった。金庫はないので貴重品は最初にもらう紙袋に入れて、必要に応じてフロントに預けるべし。

窓の外は神風館と自在館を見下ろしつつ、正面は雪をかぶった山。非日常感があって大変結構なり。
宝巌堂 窓からの眺め
山の宿は晩秋でも若干数のカメムシが出る。そいつらをガムテープで貼り付けて潰さないようにくるんでゴミ箱へ。当宿では小さなかわいいてんとう虫も出た。てんとう虫なら許すつもりだったけど、寒さにやられたっぽくて動かないし、ひっくり返ってるのもいるしで、武士の情けと思って引導を渡してあげた。


「したの湯」について

ファンの多い源泉ぬる湯

さあお楽しみの温泉だ。しかしまずは入ることのなかった「したの湯」について触れておこう。したの湯は栃尾又温泉に3つある大浴場の大将格であり、多くのコアなファンを持つ。

佐梨川の川べり、源泉湧出位置の真上に湯小屋を建てたため、各旅館からは長い階段を下っていかなければたどり着けない。だから、したの湯。おかげで35℃のぬる湯を新鮮な状態で楽しめる。

しかも浴室はなんともいえない幻想的な雰囲気に満ちあふれ、ここだけ時間の流れが止まったかのような、静かで心地良い別世界が展開しているのだ。

神秘のしたの湯

初訪問時にブログに書いた体験談を以下に再掲する。

“…源泉は強烈にガツンとくる特徴があるわけではない。ちょっと泡付きのある無色透明の湯だが、気持ちのよいぬるさでふわっとした気分にさせられ、ついつい目を閉じたくなる。ネット上では「羊水の中にいるような」といった表現をよく見かけるが、言いたいことはわかる気がする。”

“…したの湯はいたってシンプルなつくりだ。露天ではないし、窓はあっても景色を見て楽しむ感じではない。余計なものは何もない。情報を極限まで削ぎ落としてお湯に精神を集中すべきだと云わんばかりだ。”

“…Don't think, Feel! …ただひたすら浴槽に体を沈めてじっとしていると、だんだん時間の感覚を失い、噂に違わぬ幻想的な気分に包まれてくる。ときおり誰かの出入りにともなって浴槽にぬる湯の波が起こると、それが体にぶつかって冷やっと感じることで現実に引き戻されるのだった。”

再訪時は湯小屋解体中

そんなファンタスティックなしたの湯も老朽化のため2017年11月9日より改装工事に入った。当初の工事終了予定は12月20日(実際は12月23日に完成した模様)。

自分が行ったときは解体が始まったところで、湯小屋の屋根が取り外されつつあった。
解体作業中のしたの湯
場所はそのまま、浴槽も壊さないとのことだから、ひとまず安心。湯小屋だけを建て替える形か。新たな装いとなるしたの湯のデビューが楽しみだ(前述の通り2017年暮れに再開)。


のんびり「うえの湯」体験

栃尾又温泉センターのラジウム泉

今回の訪問では残る2つの大浴場「うえの湯」と「おくの湯」に入ることができた。日替わりで、男湯=「うえの湯(+したの湯)」/女湯=「おくの湯」、またはその逆パターンとなる。

どちらの湯も栃尾又温泉センターという建物に同居している。長い階段を上り下りしなくていい場所だから足腰のつらいお年寄りにも利用しやすい。
栃尾又温泉センター
うえの湯は以前からあったもので、脱衣所が左右二手に分かれているのがユニーク。もちろんどちらを利用してもいい。壁の分析書には「単純低放射能温泉、アルカリ性、低張性」とあった。いわゆるラジウム泉。よく理解してないが放射線量は10.2マッヘと書いてある。

源泉かけ流しのぬる湯

浴室は町の銭湯チックなタイル張りのつくり。白熱灯の暖かい光が室内を明るく照らす。3名分の洗い場の向かいにぽかーんと開いた空間があるのはなんだろう。

栃尾又温泉に露天風呂はなく内湯のみ。うえの湯にあるのも3つの内湯浴槽で、詰めれば15名くらいいけそうなメイン浴槽と、3名規模の寝湯と、4名規模の加温槽からなる。

メイン浴槽の中央部にある湯口から源泉がドボドボとかけ流されている。お湯の流れはおそらく、メイン→寝湯→いったん吸い込まれて加温・濾過→加温槽→排出だと思われる。湯口の隣には飲泉所もある。

お湯は無色透明・無臭。体温を若干下回る温度だから、ときおりゾクッとする感覚がある。メイン浴槽の底には穴の開いたパイプが這っており、パイプ内はヒーターを通してあるんだろう、冬季は1℃程度だけ加温するそうだ。

沈黙は金なり、の1時間

自分以外の客は常時1~3名。柔らかいお湯に包まれて、みんな1時間はざらにつかっている。おしゃべりするものは皆無。防水対策した本を持ち込んで読書するツワモノさえいた。

寝湯の利用者はほとんど見かけないが、試すとなかなか気持ちが良い。加温槽は最後出る前の上がり湯として使うか、冷温交互浴としてメインと行ったり来たりするか、お好きにどうぞ。

こうして極上のぬる湯に長湯三昧。チェックインした日に1時間×3回、チェックアウトの朝に1時間×1回入ったなあ。


新しい「おくの湯」で2時間浴に挑戦

見た目はモダン版したの湯

おくの湯も温泉センター内にある。近年作られたものでまだ新しい。こちらは浴室の内装をしたの湯に似せたデザインにしている。モダン版したの湯とでもいおうか。

天井に渡された太い木の梁にはスポットライト風の灯りが取り付けられ、淡く控えめに室内を照らしている。床や壁の見た目も銭湯チックではない。浴槽の縁は石組みになっており、したの湯もこんな感じだった記憶がある。

洗い場のカランは3つ。詰めれば15名規模のメイン浴槽と3名規模の寝湯と3名規模の加温槽。メインの中央に湯口+飲泉所があるのはうえ/したの湯と同じ。やはりメイン浴槽の底に加温のパイプが通っている。おくの湯の方はこいつが頑張ってたみたいで、はっきりと温かさを感じる、37℃くらいな温度だった。

寝湯が寝られるようになってた

寝湯には前回からの変化が見られた。浴槽のそばに水の入ったペットボトルが何本も置かれていたのだ。「足元に沈めて調整に使ってください」と書いてある。

おくの湯の寝湯は、身長低めの者だと寝た時に足が浴槽の向こう側まで届かなくて、突っ張ることができない。このためすぐに体が浮いて流されてしまい、全然寝ていられない。

前回訪問時に寝湯に挫折したことを当時のブログに書いたのだが、それを関係者が読んだわけじゃないだろうけど、改善の工夫がされてたので感心した。ペットボトルで身長を補完する格好で突っ張って寝湯を堪能させてもらいました。

2時間浴もやればできちゃう、やさしい湯

おくの湯では入浴回数を減らす代わりに2時間浴に挑戦してみた。2日目の朝と夜に1時間ずつ、そして昼にメイン30分+寝湯30分を2セットで2時間。さすがはいくらでも入っていられる系の王道を行く栃尾又温泉、結構やれるもんですな。手足の指先がすっかりシワシワだ。

なお、公平を期すため申し添えておくと、これら大浴場は旅館3軒の共同利用であるため、自在館・神風館に泊まっても同じ体験ができる。

そうして風呂上がりにちょっと休むのにちょうどいい部屋が宝巌堂にはあった。暖炉の部屋と呼ばれる、飲み物・漫画・おもちゃなどを置いた休憩室だ。まあ自分は利用しなかったのだが(自室にひきこもり君なので)、居心地の良さそうなスペースなのは確か。
宝巌堂 暖炉の部屋

おいしすぎる宝巌堂の食事

湯治プランで部屋食を

自分は2泊以上の客限定の湯治プランを申し込んでいた。湯治プランは料理の品数が少なく、布団の上げ下ろしを自分でする代わり、かなりお得な料金で利用できる。

湯治プランは朝夕とも部屋食になる。夕食は18時、朝食は8時にお膳を部屋まで運んでくれる。食べ終わったらお膳を外の廊下に出しておくシステムだ。自室ひきこもり君にはうってつけ。

お米がこんなにおいしいなんて

宝巌堂の食事はおいしいという口コミを多く見かけるが、それは事実だし湯治プランでも変わらない。豪華絢爛な会席料理ではないけど、素材と味付けと手わざが見事なのだ。1日目の夕食が、これ。
宝巌堂 夕食 1日目
はっきり言ってすべてがうまい。こういうメニューには日本酒ですな。「魚沼で候」という八海山の魚沼地域限定銘柄を頼んでみた。うひゃひゃひゃ…幸せの笑いが止まらない。そして見よ、このつやつやのコシヒカリを。
つやつやのコシヒカリ
ふだんはご飯のおかわりをしないのだが、ここでは軽めによそうという条件付きで4杯いける。1~2杯めはおかずとともに、3杯めは漬物と、そして4杯めはご飯をおかずにご飯を食べるってわけ。超満足した。

ごちそうを銘酒緑川とともに

2日目の朝食が、これ。朝からエネルギー全開。器にもセンスを感じるのは贔屓目だろうか。上品かつ、とろけるような柿が絶品だった。夕食の量を考えたら昼食はもういりません。
宝巌堂 朝食 2日目
2日目の夕食が、これ。このように刺し身が付くこともある。肉は鳥の唐揚げだと思うが味付けがちょっと変わっていて癖になる味だった。お米はもちろん4杯作戦。うめーよ、やべーよ、とニヤニヤしながらぺろりと平らげるおじさんであった。
宝巌堂 夕食 2日目
合わせた日本酒は緑川の本醸造だったっけな。限られた取扱店でしか購入できないともいわれる銘柄。うーん、いいねえ。大した舌じゃないのでこれ以上の講評はご勘弁。

3日目の朝食が、これ。ああもう今日で最後か…。惜しみつつ味わう。思い残すことのないよう、お米を4杯作戦。このあと帰りがけに昼食で寄りたい店があったのだが、後先考えずに4杯いってしまった。後悔はしていない。
宝巌堂 朝食 3日目

栃尾又へ行くよまた

栃尾又温泉は露天風呂がないし変わった色もしていないし特徴的な匂いもない。しかし「余計なことを考えずただ静かに温泉につかる」ことに特化するなら、これほど適した温泉もないだろう。

そんな栃尾又温泉の滞在を何倍にも楽しく思い出深いものにしてくれるのが宝巌堂だ。ああ、今回もすごい良かったなあ。センスの良さとか清潔感とか料理とか個々の要素はもちろんだけど、なんか、ほっと休まる/安まるんですよね。

再々訪いっちゃうな、こりゃ。そして生まれ変わったしたの湯へ入りたいものだ。当面は待ちかねたファンの皆さんが殺到するんだろうから、その波が落ち着いた頃を狙ってみるとしよう。

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