温泉街・ピラミッド・スキー場 - 雪景色の大湯温泉を散歩してみた

大湯温泉
2017年一人旅企画「晩秋のぬる湯三昧」で新潟の栃尾又温泉に2泊した際、2日目の昼に近くの大湯温泉まで歩いて往復してみた。栃尾又から大湯温泉まで1キロあまり。散歩にはちょうどいい距離である。

実はこの前年にも栃尾又温泉に2泊し、2日目に大湯温泉まで散歩している。あの頃の楽しかった思い出をもう一度、というわけだ。過去にとらわれる後ろ向きなおじさん。ただし今回は積雪があったため全然違う状況になっていた。

栃尾又温泉からスタート

子宝祈願の夫婦欅と薬師堂

朝食を終えて一息ついた後、宿泊先の栃尾又温泉・宝巌堂を出発。まず近所を探索すると自在館という旅館に隣接する敷地に栃尾又の夫婦欅があった。
栃尾又の夫婦欅
他に子持杉なるものもあり、子宝祈願の由縁を思わせる。その証を示すように少し奥に薬師堂が立っていた。お供えされたキューピー人形がびっしり。
栃尾又の薬師堂
こりゃまた…ここには数多くの切実な念が凝縮されているぞ、こりゃ。素人が遊び気分で近づいていい場所ではないな。神妙な面持ちでそっと踵を返した(とかいって写真を撮らせてもらっちゃいましたが)。

見返り橋の言い伝え

雪国にしてもまだ早いと思われる積雪が見られるも、道はしっかり除雪され歩行に困難はない。そうして栃尾又温泉を出て5分ほど行くと見返り橋に着いた。「会いたい人を思って振り返ると、その人に会える」という言い伝えに関係がある橋。何も考えずに渡ってしまったよ。
見返り橋
大湯温泉へは橋を渡って右折するが、あえて左折してちょとだけ進んでみると狙い通り、木々が邪魔してチラチラっとしか見えなかった越後駒ヶ岳の白い峰が、はっきりと目に映った。いやーいいねー。
越後駒ヶ岳
この道が続く限り1時間ほど歩くと豪快な源泉ドバドバ投入で知られる駒の湯山荘がある(当時は冬季休業中)。車がないと難しい場所だけど、いつか行ってみたいものだ。今日のところは引き返して大湯温泉へ向かう。


大湯温泉街をぶらぶらする

熊野神社は冬休み?

10分ほどで大湯温泉街に着いた。かつては地域随一の賑わいを誇ったというだけあって、そこそこの規模の集積がある。だが現在はいささか寂れてしまっている印象だ。

バス停の近くに熊野神社があった。でももう冬休みっぽい。拝めず。
大湯温泉 熊野神社
ここは神社だけど子安地蔵がおわしました。また、神社の階段を下りたところに「目洗いの湯」が湧いている。このお湯で目を洗うと眼病が治るとか。ふーん。ただし、湧いてる勢いや全体の雰囲気からして、ここも冬休みっぽい。
目洗いの湯
その隣にはオブジェのような石の並びと水路が。親分的な六角形の石からあふれているのは大湯温泉の源泉。説明によれば「並んだ石のうち一つが回るようになっている。それを見つけて回すことができれば願い事が叶う」。
よしチャレンジしたろ! …いやいやこの雪じゃ無理だから。足を踏み入れたら靴の中までずっぽり雪が入ってきそうな深さだ。やめておきました。

宿泊者特典で入れる「雪華の湯」

さらに階段を下った先に共同浴場「雪華の湯」があった。
大湯温泉 雪華の湯
鄙びすぎず現代的すぎず、いい雰囲気だ。ここ入ってみたかったんだけどねー。地元民か大湯温泉各旅館の宿泊客しか利用できないのだ。残念。該当しない者は後述の日帰り温泉施設「ユピオ」を利用するようにとのこと。

雪華の湯の目前には足湯コーナーがある。前回訪れたときはドクターフィッシュが泳いでいた。足を差し入れるとつついてきてくすぐったかった思い出があるけど、ここも今は冬休み中。何もいない。がっくし。
大湯温泉 足湯コーナー
フィッシュがいる暖かい時期であればハイライトになり得たスポットだ。

鄙びた温泉街の目抜き通り

まもなく佐梨川にかかる合わせ湯橋まで来た(冒頭の写真)。何を合わせるのかと思ったら、大湯温泉と栃尾又温泉をハシゴすると体に良いという意味らしい。昔は湯治客がこの橋を渡って両温泉を行き来したといわれる。

続いて川に沿って狭い路地を行く。鄙びた温泉情緒漂う静かな通りともいえるし、場末感漂う寂れた通りともいえる。目抜きのすずらん通りの端まで来て温泉街は終了。
大湯温泉 すずらん通り
温泉街中心部が急坂を含む狭いくねくね道で、各旅館へ車で近づきにくいのが痛いね。なんかあともう一押しあれば「味のあるレトロ感」「そぞろ歩きが楽しい」と人気を博しそうなポテンシャルを感じなくもないが。

大湯公園と日帰り温泉「ユピオ」のピラミッド

もっと先へ数分行くと大湯公園の広場がある。前回来たときは一面緑の芝生がきれいだったが、今は真っ白な雪に覆われていた。なんもできねぇー。写真を撮るためにちょっと近づいただけで、くるぶしの上まで雪の中に埋まり、靴の中に雪が侵入してきた。
大湯公園の広場
広場の向かいには交流センター「ユピオ」がある。特徴的なピラミッド大屋根の建物だ。
交流センター・ユピオ
中は日帰り温泉のほか、スポーツ施設やコミュニティホールがある。大湯温泉体験記としてユピオの温泉に入ろうかどうしようか悩んだが、このあと栃尾又で2時間浴に挑戦する計画があったため、自重した。

ユピオの隣にロックガーデンというちょっとした散策路なんかもあるけど、やっぱり雪でコレ。自分の装備じゃとても入っていけない。
大湯公園 ロックガーデン
ううむ、雪国の宿命とはいえ、こういったスポットが年間通して機能しないんだと、レジャー集客施設としてはなかなか厳しそうだね…。


並行する別の道から帰る

スキー場もあるよ

さあ宿へ戻ろう。前回と同じく帰りは佐梨川の対岸の道を通った。車道はしっかり除雪されているけど歩道はとても歩ける状態じゃない。
大湯温泉沿いの道
帰り道沿いにも大湯温泉の旅館群が立ち並んでいた。こちらは主に大箱のホテル。温泉街の情緒はないが車でアプローチしやすいのはこちら。また、遠景を遮るものが少なく見通しの良い地点がチラホラあり、ホテルの高層階なんかだと雄大な山の姿を楽しめるかもしれない。
越後駒ヶ岳
しばらく行くと左手に大湯温泉スキー場のリフトが現れた。さすがにこの時期はまだ稼働していないが、温泉とスキーがすぐ隣り合っているという恵まれた立地だ。昼はスキー、夜は温泉か。うらやましい。
大湯温泉スキー場

駒の立て髪を仰ぐお散歩コース

道はやがて見返り橋で往路と合流した。そうして栃尾又温泉まで帰ったわけだが、最後に、見返り橋の手前で見つけた謎の句碑。

「残雪の 駒の 立て髪 仰ぎけり 達朗」
大湯温泉の道沿いの句碑
このあたりから駒ケ岳を仰ぎ見て一句ひねりたくなったのかな。実際どうだったのかはさておき、白い駒ケ岳に感嘆しながら歩いてきた身からすれば、その気持ちはわからないでもない。