久方ぶりの「したの湯」体験 - またまた栃尾又温泉 宝巌堂

栃尾又温泉 宝巌堂
ちょうど紅葉と新米の時期に訪れた新潟県魚沼市。宿泊先は3回目のリピートとなる栃尾又温泉の宝巌堂だった。まあ予感はしていたけど3回目来ちゃったね。昨年は主役級のお風呂・したの湯が工事中で入れなかったから、今年はぜひとも堪能したいと乗り込んだ。

うーん、やっぱりいいですねえ。子宝の湯との異名を持つ効能は、おじさんにはまったくこれっぽっちも無縁だけど、そんなことは関係なく極上のぬる湯である。通常の温泉旅行ではあり得ないくらいの長時間入浴してしまった。

なお今回も2連泊して、お得な湯治プランを利用した。少食なので食事の量があれくらいでちょうどいいし、連泊との合わせ技で湯治っぽい感覚も味わえるから、わりと気に入っている。

3度目の栃尾又温泉「宝巌堂」へ

過去2年と同じコースをたどるように貝掛温泉・栃尾又温泉に泊まる旅だが、今回は一人旅でなく車利用のグループ旅行。貝掛温泉をチェックアウトした後は清津峡そして三国川ダムを見学してまわりながら、栃尾又温泉を目指した。

小出から先は、葎沢・芋川・折立・大湯と沿線の各温泉を通り過ぎ、見返り橋を渡って一般車道のどん詰まりまで行く。思い出の通りの車窓の最後に、思い出の通りに3軒の旅館が並んでいた。そのうちの1軒が宝巌堂である。

バス停前の駐車場に車を置く。すぐそばが崖になっており、眼下に温泉を湧出する佐梨川を望む。紅葉の見頃にはやや早かったか。
栃尾又付近の佐梨川

すっかりおなじみの館内

布団敷きっぱなしの部屋でゴロゴロ

すっかりおなじみとなったマスコット(?)のふくろうが出迎える玄関でこんにちは。チェックインでございます。
宝巌堂 正面玄関
宝巌堂は部屋ごとにデザインが異なっており、泊まりたい部屋を予約時に指定できる。今回は宿におまかせして選んでもらったところ、3階の洒落た雰囲気の部屋になった。これ何畳になるんだろう。布団は最初から最後まで敷きっぱなしのスタイル。
宝巌堂の部屋
全体に木のぬくもりとレトロ感が醸し出されて落ち着きがある。
宝巌堂の部屋
シャワートイレ・洗面所付き。冷蔵庫はとくに気にしなかったので不明。金庫はない。浴衣の他に作務衣が置いてある。風呂場への行き来に階段を上り下りする必要があるから、着るなら作務衣の方をおすすめする。

WiFi環境がちと重い

WiFiはあるし前回は快適に利用させてもらったのだが、今回はなぜかつながりにくいし、つながってもやけに重い。多くの客が同時に使おうとしてルーターがパンクしがちなのと、栃尾又まで光回線をなかなか通してくれないらしく、改善にはNTTほかインフラ系企業に頑張ってもらうしかないですな。

じゃあ携帯の電波で、といってもキャリアによっては厳しいところもあり、同行メンバーのネット環境はほぼ詰んだ状態であった。

それから季節柄カメムシはどうしても出てくる。最終兵器ガムテープで貼り付けてくるんでゴミ箱へ丁重にご案内しよう。


栃尾又温泉で入れる3種類の浴場

男湯・女湯のパターン

栃尾又温泉の浴場は3軒の旅館の共同利用となる。一種の外湯に近いノリだ。単純に考えて、各旅館内にお風呂がある場合と比べて3倍の客が来るからすぐ芋洗いになっちゃうんじゃないの、と思うかもしれないが、意外とそこまでは混まない。日帰り客を受け入れていないのが有効に作用している気もする。

3種類の浴場「したの湯」「うえの湯」「おくの湯」のうち、“うえ”と“おく”については昨年の栃尾又温泉再訪記もあわせて参考にされたい。

到着した日は“した・うえ”が男湯で“おく”が女湯だった。どうやら奇数日がこのパターンらしい。翌日には男女が入れ替わり、翌々日にまた入れ替わって元に戻った。月末が31日の場合に翌1日はどうなるんだろう…自分が利用する日のパターンを気にする方は、ねんのため宿泊先に確認を取ったほうがいいだろう。

のんびりできる「うえの湯」

ちゃんとした洗い場があるのは、うえの湯とおくの湯である。これらは栃尾又温泉センターという建物の中に同居している。
栃尾又温泉センター
1日の汚れを洗い流すため、我々はまずうえの湯へ行った。したの湯が主役の扱いだからこちらへ来る客は少ない。幻想的な雰囲気のしたの湯に比べて銭湯っぽい雰囲気が敬遠されがちなのかと。

また温泉通な方に言わせると、源泉を崖下から引っぱり上げてくる間に鮮度が落ちるからだという(成分が飛んでしまいやすいラジウム泉だからなおさら)。でもそんなに厳しく突き詰めて考えなくても、って気はする。

無色透明無臭というお湯の特徴と「ぬるくてやわらかい」という浴感は3箇所とも一緒。人口密度の面で、確実にゆったりのびのびと浸かりたい・あるいは独占状態を狙ってみたいならば、うえの湯を中心に組み立てるのも手だ。

長い下り階段の先にある「したの湯」

続いてしたの湯へ行ってみた。源泉が湧出する真上に作られた湯小屋は、前回は屋根が外され解体中の姿を晒していたが、今回ばっちり復活していた。
したの湯の屋根
したの湯は3軒並ぶ旅館のうちで自在館の中にあり、宝巌堂から行くにはまず石段を下りる。ここまでは“うえ・おく”と同じで、自在館側にしたの湯への入口がある。
したの湯への入口
入ると長い長い下り階段がある。数えてみたら82段もあった。お年寄りにはちときついかも。下りきったところの脱衣所を経て、さあいよいよ2年ぶりのしたの湯です。

おお、あの頃から変わってない…いや待て、正確には嘘だ。2年ぶり2回め程度じゃ、どこが同じでどこが変わったかなんて細部まではわからない。でも受ける印象は変わっていなかった。

幻想的な空間で楽しむぬる湯

7~8名、それをオーバーすると芋洗い感が出てくるサイズの浴槽の真ん中に石積み風の湯口がある。長湯しやすいように体育座りでなく腰掛け的な姿勢を取れる段差がついており、その足元に穴の空いたパイプが通っている。

見上げれば、太い木の梁から投影された独特のライトアップにより湯気のぼやけた見ばえが強調され、抑えた照明とあわせて幻想的な雰囲気を演出していた。これだよこれ、この感じ。

今回は幸いにも客は多くて5名といったところで窮屈感はなかった。みなじっと目を閉じて黙ったまま何十分も湯に浸かっている。自分も同じ。ぬるさが心地よく、いつのまにか眠りに落ちかけたりしつつ、1時間は余裕でいられた。

初めて訪れる前、温泉は「露天風呂で仲間とワイワイ雑談」みたいな歓楽旅行のイメージが染み付いていたから、一人の世界に浸りきるようなここの独特の印象が余計に強く刻み込まれ、以来バイアスのかかった贔屓目で見てしまってるという自覚はある。その点を差し引いても個人的に好きな雰囲気だ。

カイゼンが進む「おくの湯」

翌日は終日おくの湯。したの湯のデザインを取り入れつつ現代的に整備された浴場である。詳細な描写は昨年の記事に譲るが、今年は新たな発見があった。

寝湯がッ…改良されているッ! 寝湯は奥行きがありすぎて、身長低めの者には足を突っ張らせることができず、自然と身体が浮いてしまう難点があった(一昨年)。昨年は脇に水入りのペットボトルが置かれ、適当に沈めて奥行きを調整してくださいという運用へ一歩前進していた。

そして今年、ついに奥行き150cmあたりの浴槽の底に薄い石板が設置された。身長低めの者は石板を使って足を突っ張らせればよいし、高めの者は薄い石板の上に足を置けば以前の寝湯と同じ格好になる。

経営コンサルタントが喜びそうなカイゼン事例であった。おみそれしました。

結局、2泊する間に60~80分の入浴を9セットやったんじゃないかと思う。指先はすっかりシワシワだし、肌はすべすべして別物みたいだし、温泉効果はバッチリでしょう。免疫力アップで今年の冬は風邪引かなくてすむんじゃないかな。


宝巌堂は食事がうまい

お得な湯治コース

宝巌堂は食事がうまい宿と評価する声を多く見かける。その通りだと思う。品数少なめの湯治コースでもそれは変わらない。

初日の夕食がこれ。デザートについては割愛。あとはおいしいコシヒカリに味噌汁。お米はやわらかめに炊いてあってお腹にやさしい。毎日豪華な会席料理だと胃が疲れちゃうんで、これでよい。お酒は地元以外にはなかなか出回らない緑川という日本酒を。
宝巌堂の夕食その1
翌朝がこれ。見た目だけでは侮れず、結構お腹いっぱいになる。
宝巌堂の朝食その1
2日目の夕食はこれ。ちゃんと刺身も出てくるのだ。お昼抜き(道の駅で食べた焼団子のみ)だったけどお腹いっぱいになった。大食いの人もご飯の量で調整可能。お酒は八海醸造が地元限定で販売している「魚沼で候」という銘柄を。
宝巌堂の夕食その2
最終日の朝食はこれ。シンプルにして十分。今年もおいしくいただきました。
宝巌堂の朝食その2

栃尾又温泉で、よろしく千萬あるべし

補足すると、当宿に揃えてあるお酒の中に「よろしく千萬あるべし」(八海醸造)という焼酎がある。ネットでも買えるし、こいつのハイボール缶を売ってるコンビニもある。

以前当宿で初めて飲んで気に入ったので、今回は道の駅で200ml瓶を買って帰り、ある晩に開けて飲みだしたらやばかった。焼酎なのに日本酒のフルーティーな吟醸香がする。ぐいぐい飲めてしまって止まらない。気がつけば速攻で半分空いていた。アルコール度数を考えたら怖くなって、そっと棚にしまったほどだ。


いやあ今年もゆっくりさせてもらいました、栃尾又温泉と宝巌堂。4回目もあるのだろうか。正直なにも決意していないし、先のことはわからない。ただ少なくとも「3回行ったからもういいや」とは思っていない。いつも秋ばかりだったから他の季節はどうなんだろうという興味もなくはないが。

(参考)2017年・栃尾又温泉 宝巌堂 再訪記