なるほど、こいつはすごい露天風呂だ - 黄金崎不老ふ死温泉

黄金崎不老ふ死温泉
温泉紹介本・旅行ガイド・テレビ番組などで取り上げられることが多く、温泉通でない一般人にも相応の知名度があると思われる黄金崎不老ふ死温泉。あの海と一体化したかのような露天風呂にはぜひとも入ってみたいものだ。

このたびの青森旅行がその千載一遇の機会となった。結構な長移動距離になってしまいドライバーには負担をかけちゃうけどね。今回を逃したら次のチャンスはいつになるかわからない。行けるものなら行っておきたい。

で、多少の強行軍を承知で訪れたのであった。ゲリラ豪雨のせいで露天NG措置という綱渡りのような状況を乗り越えて、なんとか評判の露天風呂を体験することができた。ひとことで言えば最高です。我が生涯に一片の悔い無し。

黄金崎不老ふ死温泉へのアクセス

長距離移動を覚悟の上で

なんだかんだで不老ふ死温泉へ行くには車がないと厳しいと思う。JR五能線艫作駅から1kmあまりの徒歩圏とはいえ、本数は少ないし、乗り鉄趣味を兼ねるつもりでもなければおいそれとは実行できない。

はっきりいって車でも大変だ。秋田側にせよ青森側にせよ、中堅都市からの移動には1~2時間。我々の場合、前泊した百沢温泉郷いわき荘から出発したので、岩木山麓を北回りでぐるっと迂回してから鰺ヶ沢町の海沿いへ、それから国道101号を南下するルートで、ゆうに1時間半はかかった。

実際にはいったん当湯をスルーして十二湖へ向かった。さすがに温泉ひとつのためだけだと「遠いからやめとこう」という判断になっちゃうので観光と組み合わせました。

雨雲に追いつかれたー!!

降水確率40%の微妙な天気予報で怪しげな黒雲が空のあちこちを覆う中、奇跡的なまでにそこだけぽっかり晴れた状態で十二湖観光を終えたときには13時をまわっていた。さあこの調子で最後のイベント=不老ふ死温泉まで天気よ、どうにか保ってくれ。

だが運を使い果たしてしまったようだ。当湯へ到着する直前から空が暗くなり雨が降り出した。ていうか土砂降り。十二湖を望外の好天で見させてやったんだから借りは返してもらうぜ、と言わんばかりの自然さんの仕打ち。山高ければ谷深し、平均への回帰というには極端すぎる振れ幅。テスラ株並みにボラが高いぞ。

下の写真は雨が小止みになった帰り際に駐車場で撮った。噂の露天風呂は左を向くと見えるが、壁に遮られてるとはいえ、そっちへカメラを向けるといろいろまずそうだからやめておいた。まあこういった岩礁ぽい海岸に露天風呂が作られているわけだ。
露天風呂付近の海岸風景

内湯だけでも結構なクオリティ

派手な茶色の濃ゆいお湯

車を降りてわずか数十メートルをダッシュしただけで全身ずぶ濡れ。なんちゅう雨だ。ひどい体裁で入館し券売機で600円チケットを購入。密ではなくともそれなりの人数のお客さんはいた。さすが人気施設。

露天へ行く前に内湯で汗を流すようにという張り紙があったし、雨が落ち着くのを待つ意味もあって、まずは内湯へゴー。男湯の入口に暗証番号式の貴重品ロッカーあり。脱衣所の分析書をチェックすると「含鉄-ナトリウム-塩化物強塩泉、高張性、中性、高温泉」。

浴室内にカランは19台。雨が止む気配はないし、じっくりいきましょうや。洗い場でゆっくり汗を流してから湯船へ向かう。

奥の向かって左手に3~4名サイズの温湯と書かれた札のある小浴槽、右手に6~7名サイズの熱湯の札がある大浴槽。自分はぬる湯派だから迷わず小浴槽へ。湯口は枯れていてお湯は投入されていない様子。浴槽にたまったお湯は明るいオレンジがかった茶色濁りで鉄成分を連想させるに十分だ。

この時は大小浴槽間の温度差なし

浸かってみたら特段にぬるくはなかった。むしろ適温に近い。じゃあ大浴槽の方はかなり熱いのかなと思って、そちらへ手を突っ込んでみたところ、小浴槽と同じくらいの温度で差を感じなかった。なんでしょうね、この時だけかな。ちなみに大浴槽の方は湯口から相応の量のお湯が投入されている。

差がないならわざわざ移る理由もない。小浴槽でしばし様子をみることにした。お湯の匂いは含鉄泉らしい強い金気臭。浴感的にはじんじんと温まりの良い温泉といえよう。浴槽や床の一部はかなり赤茶けてしまっていて、泉質の強烈さがよくわかる。

窓の向こうに露天風呂を囲う石の壁が見える。滝のようなゲリラ豪雨がせめて普通の雨レベルに収まってくれないと行くのは厳しそう。


いよいよ憧れの露天風呂へ

ゲリラ豪雨で目論見おじゃんの危機

雨足は弱まる気配がなかった。我々としてもレンタカーを返す時間の都合があるからいつまでも待つわけにはいかない。やがてしびれを切らしたメンバーの一人が雨の中を露天風呂へ移動していった…頑張れ、先遣隊。

5分くらいすると少し小降りになってきたから、自分を含む本隊も後を追って露天風呂へ行こうとしたら、スタッフさんにストップをかけられた。雷鳴が聞こえてきたことにより危険回避のため露天風呂は緊急NG措置だって。雨だけならまだOKだったんですけどね~、とのこと。先遣隊も強制終了で館内へ呼び戻された。

ぐぬう、自然さんの嫌がらせここに極まれり。豪雨→小康状態で引きつけてからの雷鳴ムーブ。こちらの落胆度を最大化する術を心得てやがる。このまま「不老ふ死温泉に行ったけど露天風呂に入らなかった件」というタイトルで記事を書くことになるのか…。話ができすぎだよ。出木杉くんダブルインバースみたいな人生だよ。

ぎりぎりのところで開けた運

状況の改善を待ちつつ、こういう事態でやきもきすると余計に神経を逆なでする出来事が起きがちなので、内心はすっぱりあきらめた。別にいいもんね~、また計画して来ればいいさ。

するとこの戦略的諦念に反応して自然さんのツンデレが発動した。10分ほど待つと雷鳴が収まって露天風呂OKが出たのである。雨も一時的とはいえすっかりあがった。行くなら今しかねえ。露天エリアへ出ていく通路の途中に積んである脱衣かごと、ねんのため雨対策用に脱いだ服を入れるビニール袋を手に取り、サンダルを履いて外へ出た。※使いたければ貸し傘もある。

数十メートル先に混浴と女性用の2つの露天風呂があった。もちろん混浴側へ。石壁の向こう側には簡易な脱衣コーナーとして、持ち込んだかごを置く棚が設置されている。服をビニール袋にしまってかごの中へ。結果的にはあとでまた雨が降ってきたから袋に入れて正解。

ぬるくて景色も最高の露天風呂

露天風呂はひょうたんの形をした浴槽だった。10名くらい入れそうなサイズ。手前の湯口からゴポポッ、ゴポポッ、という感じで間欠的にお湯が吹き出してきていた。

浸かってみたらぬるかった。もともとの設定なのか、豪雨が大量の加水となってぬるくなったのかは定かでないが、自分好みの温度だったのは幸いだ。天気と時間の許す限り、入れるだけ入っていようっと。

悪天候でも景色はやっぱり素晴らしい。岩礁帯に打ちつける波、そして遠くに水平線。海と露天風呂が一体化したかのようだ。ずっと見ていても飽きないね。ある岩の上にはアオサギぽい鳥が止まっていた。なんか目が合っちゃった気もしたけど逃げるわけでもなくこちらをうかがう様子。お前も風呂に入りたいのか。

泉質は個性的かつ本格的、しかも心地よいぬる湯で、周りの景色は抜群。言うことなし。いつまでも入っていたかったが、タイムリミットが迫ってきたのと雨がまた強まってきたので出ることにした。

 * * *

なるほど、これが噂に聞く不老ふ死温泉か。運が良かったのか悪かったのか、なんだかよくわからない展開に見舞われてしまったけど、結果的に露天風呂に入るところまで体験できたんだから良かったということにしよう。憧れの温泉をまたひとつクリアした。我が生涯に一片の悔い無し。


おまけ:森の中の十二湖

不老ふ死温泉の前に十二湖へ行った。森の物産館キョロロという施設前の有料駐車場に止めて徒歩10分で青池に着く。…あれ? 青くない。
十二湖 青池
水面が枯れ葉に覆われていて神秘的な色を拝むことはできなかった。あらら。むしろ途中の鶏頭場の池から見る紅葉と崩山が印象的だった。
十二湖 鶏頭場の池
あとは車で移動しながらちょいちょい、つまみ食い的に。落口の池も紅葉がグッド。
十二湖 落口の池
十二湖ビジターセンターがある越口の池は眺望の開けた場所がなかった。王池は駐車場付近だと木立に遮られてしまうが、林の中の遊歩道(誤って池に転落しないよう注意)を頑張って下りていくといい撮影スポットがあった。
十二湖 王池
最後は日本キャニオン展望所。八景の池前の駐車場から結構きつい登りの遊歩道を15分。熊出没注意。無事にたどり着くと、苦労した甲斐のある一風変わった光景が広がっていた。
日本キャニオン
日暮橋のキャニオン広場でも車を止めて日本キャニオンを遠望できるけど、本当に遠くにちらっと見える程度。できれば先ほどの展望所から見ることをおすすめする。