驚きと感動のバブル…実に素晴らしき炭酸泉 - 湯之元温泉

湯之元温泉
自分にとっての温泉未湯県であり、かつまた純粋な未踏県でもある宮崎県への湯めぐり遠征を目論んだ。しかし宮崎の温泉って全然知らないな。調べてみると県西の北霧島エリアにいろいろ個性的な温泉があることがわかった。

だったら熊本の人吉まで足を延ばせるんじゃね。それに羽田からのアクセスは鹿児島空港IN/OUTが合いそうだ。てなわけで2泊3日で宮崎・熊本・鹿児島を周遊するプランとなった。現地の足が鉄道+バスだと厳しいのでレンタカーで。

旅の1湯目は宮崎県高原町にある湯之元温泉。泡の付き方がすごい炭酸泉、しかもぬるいという口コミに期待して行ってみた → はい、その通りでした。一発目からいきなりの個性派炸裂だ。

湯之元温泉へのアクセス

安定の高速道路か、最短の一般道か

地元以外の湯之元温泉のお客さんはどっちから来る人が多いのかよくわからないし、皆が皆すべて鹿児島空港から向かうわけではないだろうが、一応自分の行動履歴に沿って説明する。

鹿児島空港でレンタカーを借りた後、2つのルートが候補にあった。ひとつは空港からすぐ九州自動車道に入り、えびのJCTで宮崎自動車道へ、そして高原ICを出て現地まで下道。はっきりいって遠回りだしお金もかかる。

しかし第2候補が山道であることを考えると、運転に自信があるわけじゃないし、広くて線形の良い高速道路を走っていればいいというのは魅力的であった。遠回りでもスピードを出せるおかげで所要時間に差はないし。もともとこっちを採用するつもりだった。

直前になって気が変わった。一般道で霧島南東側を回っていく第2候補にチェンジ。県道60号で霧島神宮前まで来たら国道223号(霧島バードライン)をひた走る。前半は山登り、後半は山下り、後半の道は結構くねくねしている。とはいえ片側1車線が確保されているから極度にびびる必要はない。

御池は省略、そして恥ずかしい勘違い

宮崎県に入って高原町へ下ってくると、御池という景勝地が現れた。駐車場付きの展望台も見える。だが湯之元温泉の到着予定時間が押していたためパス。なんか景色は良さそうだったけどねえ。他に霧島東神社とかも気になったけどパス。大物の霧島神宮だってパスしたし(最終日に行った)。とにかくメインディッシュの温泉に集中しないと。

極楽温泉という旅館を過ぎて数百メートルで湯之元温泉の看板が出てきた。左折してすぐに駐車場。へーここかー。なんか庭にジブリッシュなやつがいるぞ。霧島連山をバックにパチリ。
愉快なオブジェ
…違った。勘違いだった。ここは湯之元温泉じゃない。別のお店の庭じゃんか。あー恥ずかし。目的地はもう50メートルくらい先だった。


炭酸泉の名のもとに、個性豊かな源泉三銃士が集う

鉱泉飲み場があります

正真正銘の湯之元温泉に着いた。宿泊棟玄関の脇の方にある受付で日帰り入浴の旨を告げて550円を支払う。大浴場は別棟にあるようだ。行き方の説明を受けて歩いていくと、ちょっと待て、なんだこれは。
鉱泉飲み場・くみ場
源泉を飲んだりボトルに汲んだりできるってことかな。炭酸泉だからソーダみたいに口の中でシュワシュワってするんだろうな。ちなみに有料である。実際に飲んでみることはしなかった。

浴場棟は手前に男湯、奥に女湯、あとお食事処があるみたいだった。浴場棟までの通路の何か所かにランチメニューが張り出されている。○○御膳みたいなやつ。

主浴槽には黄土色のにごり湯

脱衣所には格安10円ロッカーがあるから旅行者も安心ですな。分析書をチェックすると「含二酸化炭素-マグネシウム・ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩冷鉱泉、低張性、中性、冷鉱泉」とあった。加温・消毒あり、加水・循環はないはず。

浴室内は天井を高くした木の湯小屋的な雰囲気があって良い。洗い場は7名分。渋い湯治場風に見せつつもカランなんかは全然古びてなくて設備面はしっかりしている。右手の方にサウナや水風呂あり。そしてここからが本題だ。

真ん中に6名規模の主浴槽がある。ここには濁った黄土色のお湯がかけ流されている。浴槽の底どころか、わずか先すらも見えないほどに不透明。浴槽の縁はその黄土色のやつが固まってこびりついたような析出物にびっしりと覆われていた。すげー。

浸かってみるといい塩梅の適温。熱くてすぐのぼせるような温度ではない。匂い・泡付き・湯の花といった特徴はさほど印象に残っていないが、リラックスできる温度で見た目の個性は強いし、いいお湯だと思う。この湯船だけでも十分に満足のいくものだ。

高濃度炭酸泉で湯之元温泉の真髄を体験する

しかし真の主役は別にあった。左奥に据えられた、高濃度炭酸泉と名付けられた浴槽だ。大きさは2~3名規模。お湯の見た目は無色透明。しかし侮るなかれ。

片足をそっと差し入れる…冷てーー!! もはや水風呂と変わらない冷たさである。おそらく一切の加温をしていないのであろう。そのおかげで源泉に含まれる炭酸が飛ばずに残るから高濃度ってわけに違いない。湯之元温泉を湯之元温泉たらしめているのがこの高濃度炭酸泉なんだとしたら、逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ。

はい、頑張って全身浸かりました。みるみるうちに体中の表面に細かい炭酸の泡がびっしり付いた。うおー、なんだかすげーな、おい。スーパー銭湯にある人工炭酸泉なんか目じゃないぞ。よく見ればお湯の中は泡のツブツブが大量に漂っているし、浮かび上がってきたツブツブ達が湯面のあちこちでボコボコとあぶくを立てていた。匂いにははっきりとした金気臭を感じる。

小さな浴槽のわりにみんな入りたがるため競争率はそこそこある。ただ水風呂みたいな温度ゆえ、いつまでも粘り続けるようなものではないから回転率は高い。焦らず待てばチャンスは何度でも巡ってくる。

ぬるさ加減と泡付きのバランスが良い露天風呂

露天風呂もある。こちらは中濃度炭酸泉と名付けられている。2名規模の岩風呂に半透明半濁りのお湯。張り紙に書いてあった通り、日が当たるとお湯の表面に油膜のようなテカりが映る。

浸かってみると35℃級だった。自分が好きなぬる湯のゾーンだ。高濃度ほどではなくとも炭酸の泡が結構付着するし、金気臭はするし、いつまでも入り続けられそうな湯加減だし、人気の盲点になっているのか、誰か来そうで来ない。個人的にはここをメインディッシュに据えたい。

露天エリアそのものは広く取られていて、小さな岩風呂+大きな庭って感じ。周囲は塀が立っているから眺望はない。

さあこれでひと通りの湯船を試した(サウナは興味外なのでいつもパス)。もうどこに入っても満足しかないが、ちょっとずつ交互に入っていくと、温度の違いもあって浴感の奥行きと楽しさが増す。次の目的地のために1時間で退出しなければならないのが惜しいくらいであった。

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すばらしい。これほどの強烈な炭酸泉だなんて、ちょっとした驚きだ。しかも単に冷たい源泉だけとか、万人受けする42℃を狙ってガンガン加温する一辺倒でなく、冷たい高濃度炭酸泉/ぬるい中濃度炭酸泉/適温のにごり湯を用意したというところはよく考えられている。

風呂からあがってしばらくすると、肌が若干ヒリヒリしてきた。炭酸の泡がプチプチと弾けた刺激のおかげだろう。不快なものではなく、たくさんの小人さんに肌をぺちぺち叩いてもらったマッサージの爽快感に近い。最後にこんなお土産まで残してくれるとは、お見事。