お湯良し部屋良し料理良し、老舗の底力 - 野沢温泉 さかや旅館

野沢温泉 さかや旅館
長野県の野沢温泉といえばスキーで有名なところ。そしてまた名前に示される通りの一大温泉地でもある。このたび「行ってみたい」との要望を受けて夏のグループ旅行で訪れることになった。

事前調査によると野沢温泉は熱いのが特徴のようだった。自分はぬるめが好きだし、しかも季節は夏、大丈夫かなとちょっと心配になった。それに参加メンバーの顔ぶれを考えると、そこそこ隙のないサービスを提供してくれる宿でないと納得しそうにない。

そこで選んだのが温泉街の中では規模が大きい老舗の「さかや旅館」。大浴場にはぬるめの浴槽があって入りやすかったし、サービスもしっかりしていた。予算をちょっとオーバーしてしまったものの満足度は高い。

野沢温泉・さかや旅館へのアクセス

東京方面から車の場合、野沢温泉へは上信越道・豊田飯山ICを出て国道117号を20km・30~40分くらい。千曲川沿いの道が爽やかで気持ちいい、と言いたいところだけど、行った当日は東京近辺と変わらない、いやもっと厳しいかもしれない酷暑。長野だから涼しいというのは甘い考えだった。

国道をはずれてから先はだんだん標高が上がって山が近くに迫ってくる。そして急に建物が密集して開けた集落が現れる。野沢温泉に到着だ。温泉街の道は結構狭くて対向車がいるとすれ違いに苦労する。

道の両側には旅館と土産物店と外湯施設が立ち並び、古き良き時代の温泉街って感じ。硫黄と思われる温泉ぽい匂いも漂い、ムードばっちり。しばらく進んでいくと、代表的な外湯である「大湯」の隣に、目指す「さかや旅館」があった。

なお、鉄道利用の場合、駅から旅館までの送迎は行われていない模様。しかも建前上の最寄り駅である戸狩野沢温泉駅から野沢温泉までのバスもないみたい。新幹線が停車する飯山駅から野沢温泉ライナーバスで終点まで25分乗るのが正解だ。


グレード感ある老舗旅館

風流な中庭が見えるロビー

さかや旅館の前に着いたものの、看板を見てちょっと躊躇してしまった。縦書きの崩し字で「さかや」って書いてあると思うんだけど、「さとのや」って読めちゃうんだよね。似た名前の別の宿だったらどうしよう。

ねんのためフロントで確認するとたしかに「さかや」であった。ほっ。車はキーを預けて移動してもらう方式。玄関前に設置された足湯コーナーを横目に御一行様の入館となった。

チェックイン手続きを待つ間、ロビーのソファに座って眺める中庭は、小さな滝や鯉の泳ぐ池があったりして、風流でなかなかいい。一人旅でこういう宿が選択肢に入ることはないから、このグレード感を味わえるのは貴重な機会といえる。
さかや旅館 ロビー

ちょっと贅沢な和洋室

我々が案内された部屋は最上階の和洋室。ちょっと奮発しました。まず10畳の和室。きれいで新しい。座椅子のクッションがなんかモコっとしてる。
さかや旅館 和室
窓の外は温泉街の密集した建物群。見る角度によっては近くの山にスキーのジャンプ台のようなものが見える。

和室の隣にはツインベッドが入った洋室。クローゼットや広縁がわりのスペースもあるし、いい感じだ。
さかや旅館 洋室
もちろんシャワートイレ・きれいな洗面台あり。中身が空の冷蔵庫もある(正確には冷やした水が入っている)。また洗面台とは別に蛇口があって、ご当地のおいしい水をどうぞの趣向。蛇口をひねってしばらく待つと結構冷たい水が出るから、自販機で水とか買わなくていい。加えて何種類ものティーバッグなんかも完備されている。

いやー、これだけやってくれたら十分すぎるくらい十分ですわ。


外湯めぐりしなくても十分満足できるお風呂

野沢まで来て外湯めぐりしない奴

野沢温泉といえば外湯めぐりのイメージがある。自分の立ち位置的にも野沢温泉へ来たなら外湯をガンガン攻めるべきなのかもしれない。でもメンバーの中にはそこまで温泉に入れ込んでない者もいたし、全体に「まあ旅館の風呂だけでいいんじゃない」という空気であった。

自分も一日気張って疲れてたし、なんだか面倒で、単独行動してまで外へ繰り出す気力がなかった。唯一、系列宿の寿命延(じょんのび)に無料入浴できるというから、夜に行ったくらい…寿命延の体験記は別記事で。

飲泉可能な温泉

さかや旅館の大浴場は2階にある。エレベーターをおりて右手に中庭を見ながら廊下を進む。
さかや旅館 中庭
壁際にアート作品が並ぶ廊下の奥に男湯があった。風呂場まわりも古びたところはまったくなくて申し分ない。脱衣所に掲示された分析書には「単純硫黄温泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」とあった。ここは源泉かけ流しである。

浴室に入ろう。右手の壁にずらっと8名分の洗い場。カランのお湯は時と場所によって熱かったり冷たかったり、調節が難しいのだけが惜しい。

一番手前にはかけ湯っぽくも見える飲泉所がある。小さなひしゃくで源泉を受けて飲んでみると、やけどするほどではないが結構熱い。硫黄泉らしい、ゆで玉子のような風味があり、苦みエグみがなくて悪くない味だった。飲みすぎるとお腹がゆるくなるからほどほどに。

激熱からぬるめまで取り揃えた内湯

さて、左手にある内湯浴槽は3つに区切られている。手前側が3名規模のあつ湯で飲泉所からのお湯が投入されているように見える。ここまじ熱い。床にあふれ出たお湯が足の裏に触るだけでもたまらなく熱い。これ入れる人いるの? 自分にはちょっと無理だった。

真ん中が5名規模のメイン区画。熱めではあるが常識の範疇だ。この温度なら好む人がそれなりにいるだろう。自分も軽く入ってみて、決して悪くはなかったが、結果的には後述のぬる湯へ入り浸ることになった。このへんは好みの問題。

奥が4名規模のぬる湯。浅く作られていて、浴槽の縁は丸太を半分に切ったような枕になる形状をしており、寝湯として使うようになっている。40℃くらいではないかと思われ、高い天井を眺めながらゆっくり長く入ることができる。いいですねー。

お湯は青白い半濁で、深さの関係もあるのか、あつ湯の区画よりも明るい色をしている。匂いは当然の硫黄臭。はっきりわかる。そしてごくわずかに湯の花。しっかりとした主張がありつつもソフトな浴感はぬるいおかげでもある。大変結構なり。

ぬるい硫黄泉をじっくり楽しめる露天風呂

露天エリアへ出てみると、サウナ室・2名規模の水風呂・4名規模の露天風呂があった。露天風呂のお湯は内湯よりもさらに明るく透明感を増していた。入ると、さっきの寝湯よりも一段とぬるく、自分の好みにかなり寄ってきた。夏だし、こいつは気持ちいいですな。いいぞいいぞ。

内湯よりも湯の花は若干多め。湯口のそばだと糸くずくらいの大きさのが漂っていたりする。露天風呂といってもまわりは塀に囲まれて眺望はない。季節柄、なんかブンブンいう虫が1匹飛び回っていたな。アブかしら。

でも熱いと言われる野沢温泉をぬるめで楽しめるのはナイスだ。他のメンバーは「ぬるいねー」と言ってわりとすぐに退散したが、もったいないなあ。自分はゆっくり楽しませてもらいました。夕方と翌朝に入って、いずれもそれほど混雑していなかったのがまた良い。我々以外の客は0~2名といったところ。

炉端風の湯上がり処には長野オリンピックを記念するスキー用品が展示されていた。
さかや旅館 湯上がり処

地元食材が並ぶ食事

ひねりを加えた前菜

さかや旅館の食事は朝夕とも2階の食事処で。繁忙期には仕切りを取り払って大広間として使うかもしれないが、少なくともこの日は完璧に仕切られた個室を用意してくれた。

夕食のスターティングメンバーがこれ。もろこし豆腐・かんずり酒盗・岩魚まあーず(刺身と卵をあわせた親子和えみたいなの)などちょっと変わった前菜が並ぶ。茶碗蒸しのような器の中身はじゃがいも万頭だ。どれもうまい。
さかや旅館 夕食

やっぱり野沢菜キター!

続いて鯉・信濃雪鱒・岩魚のお造り、やっぱりキターな野沢菜、蓼科牛源泉焼と、次々やって来る。お味も結構だし、それにかなりの量だぞ。
さかや旅館 夕食
さらに豚の塩鍋もあって、3品の止め皿まで出てきて、もうお腹いっぱい。もう限界っす。締めのご飯は夕顔とモロッコのあんかけになっていたおかげで少しだけ食べることができた。米も間違いなくうまいはずだからたくさん食べたいけどね、仕方ない。

観光地の旅館にありがちな枠に収まらない、オリジナリティーある考えられた献立には感心した。

朝食に源泉粥を

朝食は落ち着いた感じだけど品数は十分。十穀米の万頭のようなものが印象に残っている。そしてやっぱりキターな野沢菜。
さかや旅館 朝食
ご飯は普通の白米・麦とろろ飯・源泉粥の中から選べる(種類を変えておかわりすることも可能)。温泉を旅の主目的とする自分はもちろん源泉粥。おかわりしたのも源泉粥だ。淡く上品な感じでとくに硫黄感はしなかった。


ここなら間違いないと思わせる旅館

微妙に遠い感じがするという思い込みで、興味はあれど足が向かなかった野沢温泉。このたび機会を捉えて行くことができたのは大きい。自分としてはちょっと背伸びして、さかや旅館を選んだのも正解だった。

ぬるめの良泉と隙のないサービス。これに尽きる。他のメンバーもご満悦の様子。何も言うことはない。古き良き温泉街の老舗旅館はダテじゃなかった。野沢菜を食べるたびに思い出すことになるんだろうか。


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