温泉も海鮮も良き、夕映えの宿 - 利尻富士温泉 ヘラさんの家

利尻富士温泉 ヘラさんの家
利尻島と礼文島。行ってみたいと思うことはあっても、最果ての離島イメージがあるためか、実際に計画を立てて実行に移すにはハードルが高い。そんなとき頼りになるのが仲間内の「人生で一度は行きたい」シリーズ企画への相談。道北を訪れたいメンバーは多く、経験者を中心に計画がどんどん具体化していった。助かるわあ。

今回は観光メインの旅で温泉めぐりはしないが、利尻島にも温泉宿はある。お世話になったペンション「ヘラさんの家」もそうだ。展望スポット・ペシ岬のすぐ隣。

しっかりとした温泉感のあるお湯を楽しめる。夏とは思えぬ寒風吹きすさぶ日だったから、ぬくぬくできて生き返った気分。助かるわあ。

「ヘラさんの家」へのアクセス

利尻富士が空港でお出迎え

旅の2日目。支笏湖畔の丸駒温泉旅館をチェックアウトして新千歳空港へ。レンタカー返却後に利尻空港行きの便に乗る。羽田→稚内→船で利尻島、だと稚内までの航空券が高かったので、新千歳経由にしたのだ。ならついでに千歳付近で1泊挟もうということで丸駒温泉旅館に泊まった次第。つまり旅はここからが本番。

さすが飛行機だと早い。50分で着いちゃった。タラップを下りて、ふと振り返ると…利尻富士じゃああああ!!
利尻空港で見た利尻富士
この旅行中の天気予報はあまり良くなかった(実際良くなかった)。こんなに晴れて利尻富士がしっかり見えるのは最初で最後かもしれないなと予感しつつ。

道北の気候をなめてました

空港でしばらく待っていると、オーナーの運転する迎えの車がやって来たから乗り込んで出発。5分ほどでヘラさんの家に着いた。ちなみにオーナーの名前がヘラさんというわけではないようだ。直接確認したわけではないけど。

車を降りると…うぉっ、寒ぶっ!! ひんやりした涼しさ+吹き付ける冷たい強風のせいで体感温度的には冬と言った方が近い。おいら半袖しか持ってきてないよ…やっべーな。

このあたりの鴛泊地区は島の北端から少しだけ東に回ったところにあたり、今日は風向きの影響で鴛泊周辺だけが際立って寒く、かつ曇っているとのことだ。南の方に行けば晴れてて暖かいはずですよ、とオーナー。※本当にそうでした。あまりの気候に違いに驚いた。

終始天気に恵まれない中で唯一、夕方晴れて宿の玄関前から利尻富士がよく見える瞬間があったので機を逃さず撮影。
ヘラさんの家の前から見える利尻富士

夕日が美しい宿のお部屋

ではチェックイン。入ってすぐのロビーから見える景色がすでに結構なお点前である。ロビーの奥が食堂になっている。
ヘラさんの家のロビー
1階には他に浴室と自販機あり。しかし自販機は故障中で使えなかった。部屋で飲みたいものがあればコンビニなんかで買っておこう。空港と宿の間にセイコーマートがあったはず。

案内された部屋は2階の8畳和室。運営体制から考えて布団はセルフだったかと思うがすっかり忘れてしまった。ペンションなので和風旅館のような装飾のないシンプルな部屋。
ヘラさんの家 8畳和室
トイレは共同。男子は小×3・個室は和1+洋1だったかな。洗面所は部屋内にあり。金庫なし、小型の冷蔵庫あり。WiFiなし。利尻まで来たらせっかくの機会だからネット断ちするつもりでどうぞ。

窓の外は海が近い。正面向きの景色も良いが、少し左を向いた時の景色、特に夕日の様子を紹介しておこう。旅情感がたまりませんな。
部屋から見える夕日
向こうに見える岬のような丘は夕日ヶ丘展望台だと思う。あそこに上って眺める夕日は格別なのだろう。ああ、「ゆうひが丘の総理大臣」をなぜだか思い出すな。恋人よ~愛なんて~言葉は捨てろよ~…ソーリー。


小さめながらなかなか結構なお風呂

利尻富士温泉を引いている

ヘラさんの家のお風呂には温泉が引かれている。温泉好きには頼もしい。1階奥に男女別の浴室があって、入る際にはドア前の札を「ただいま利用中」側にして、出る際に「空いてます」側に戻す運用。

貸切風呂ってわけじゃなく、誰かの利用中にご一緒するのはNGではないだろうけど、実質的にはお互い譲り合いながらの貸し切り風になるんだろう。

脱衣所の分析書によれば「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、低張性、弱アルカリ性、温泉」で、銘柄(?)でいうと利尻富士温泉のようだ。ちょっと山の方へ入ったところに同名の日帰り温泉施設があり、そこから配湯を受けているのではないかと思われる。

ぬるめで温泉感もばっちり

浴室の洗い場は4名分。浴槽は岩風呂風に作られ、3名が入れるサイズ。お仲間同士なら詰めて4名いける。右奥の湯口は岩の間の穴から出てきた湯が落ちてくる感じで、投入量は決して多くないものの規模を考えたらまあまあかな。お湯の見た目は完全なる無色透明。

浸かってみたらぬるめだった。好みの温度帯に近い。ゆっくり浸かってじわじわと温まることができてありがたい。外出した際に半袖の呪いで冷え切ってしまった身には天国のようだ。あ゛ーーー。匂いには塩素臭がなく、むしろしっかりとした温泉臭を感知できる。利尻島へ来て温泉に入ったぜという満足感は十分だ。

浴室の窓は大きめで外の景色を楽しめる。実は記憶があやふやになってしまい、うっかりしたことは書けないなと思ってネットで調べてカンニングしちゃいました…うん、そうそう、海の見える方角だったな。部屋から見たような海を風呂から眺めることができる。タイミングが合えば日没のマジックタイムを堪能できるかも。


期待をはるかに超える料理の数々

利尻島ならではの味を楽しめる夕食

食事は1階ロビー奥の食堂で。オーナーが腕を振るう夕食は期待をはるかに超えるものでブラボー過ぎた。しかも作りたてを一品ずつ出してくれるのだ。なのでテーブルいっぱいに料理が並んだ写真は撮れなかったのでご了承ください。

しかも食べるのに夢中で、気づいたら2枚しか撮ってなかった。いろいろな料理が次々に出てきたんだけどなあ。基本的には海鮮攻めだった。最初の方に出てきたのはホタテとウニ。これがまたうまいのなんの。
ヘラさんの家 夕食の一品
途中で出てきたうちのひとつがウニ乗せあんかけ豆腐。ここでもウニか。すげーな。そして利尻昆布と大根煮込み。ブラボーブラボー。
ヘラさんの家 夕食 その2
まあこんな感じで北海道、いや利尻島ならではの海の幸をたっぷりといただいた。食材+味付けのうまさも半端ない。当館の夕食はかなりのクオリティとお得感を誇る。

朝食はさっぱり系でバランス取れてる

朝も同じテーブル席で。前夜が海鮮づくしだったのに対し、朝はさっぱりとしたメニューになっている。食前ジュース(?)が甘めでおいしい。
ヘラさんの家 朝食
自分はサラダにコテコテのドレッシングやマヨネーズべっちょりを好まない、少量さっぱり系の味付けを好むのだが、このサラダがまさにそんな感じで大変良かった。あとたしか、夕食も朝食もご飯に少しぬかっぽい匂いがついていた気がする。胚芽米? じゃないよなあ。個人的には嫌いじゃない。

よくある朝食後のコーヒーサービスはないが、有料でオーナー手作りのコーヒーをいただくこともできる。ロビーのところに豆へのこだわりとともに案内書きがあった。

 * * *

ペンションという自分になじみの薄い形態でどうなんだろうと思っていたら、実質はアットホームな民宿のように過ごすことができた。風呂は温泉だし、飯はうまいし、オーナーとお姉さんが世話好きな感じで大変結構なり。フェリーが発着する鴛泊港から徒歩5分という立地も推しポイントだ。


おまけ:決死のペシ岬攻略

岬の先端=崖の頂上だから急登覚悟で

ヘラさんの家は名所・ペシ岬のすぐ隣りにある。せっかくだから朝食後に行ってみた。今にも降り出しそうな暗い空と、体ごと持ってかれそうな強い横風が不安を誘う。大丈夫かなあ。

わりと簡単にすぐ到達できるところに会津藩士の墓があった。江戸時代の蝦夷地防備に関連して命を落とした藩士を慰霊するために立てられたらしい。
会津藩士の墓
ここからが本格的な急登の始まり…あのてっぺんまで登らないといけないのよ。片道20分と聞いた。炎天下も嫌だけど冬のように寒い中もキツいなあ。風はおそろしく強いし。おいら半袖なのよ。
ペシ岬

装備はちゃんと整えよう

寒い、寒い、体がこわばる…苦難の末、なんとか頂上に着いた。裏に白い灯台があったのね。
ペシ岬頂上
鴛泊港の方角は晴れていれば利尻富士が見えるはずなんだけど、今日は全然だめ。
鴛泊港
夕日ヶ丘展望台の方角がこちら。
ペシ岬から夕日ヶ丘展望台を望む
ああ、だめだ。寒すぎる。なぜか指がしびれてきたし、低体温症の兆候じゃないのこれ(低体温症になったことないけど)。ここで360度のパノラマ景色を眺めながらボーッとするのが最高の体験なんだろうけど、それどころじゃなかった。速攻で退散しました。