法師温泉長寿館アゲイン:足元湧出のぬる湯天国を再び

法師温泉 長寿館
ゴールデンウィーク後の落ち着いた時期に遠征を企てた、ぬる湯党一味。今回は「あの名湯をもう一度」ということで法師温泉長寿館に2度目の宿泊となった。足元湧出の極上ぬる湯を楽しめる貴重な秘湯宿だ。しかも某メンバーの才覚により、予想よりもかなりお安く泊まれる手はずとなった。もはや反対する理由など、どこにもない。レッツラゴー法師温泉。

上越県境付近の山の中というロケーションがいかにも秘湯だし、国の登録有形文化財にもなってる建物をはじめとする宿の雰囲気が素晴らしい。そして温泉のクオリティは言うまでもなく。新鮮かつ絶妙のぬる湯だからたまりません。夢のような時間と空間であった。

法師温泉長寿館へのんびりドライブ

猿ヶ京のさらに奥地にある温泉

法師温泉は新潟との県境…具体的には三国トンネル…に近く、鉄道駅からさくっと行ける場所ではない。新幹線の上毛高原駅もしくは在来線の後閑駅から猿ヶ京行きの関越交通バスに乗って終点まで30~50分。そこでみなかみ町営バス法師線に乗り換えて終点まで20分弱。町営バスは1日4便、バス同士の乗り継ぎを考慮されたダイヤになっているようだ。

我々ぬる湯党一行はメンバーの愛車で群馬へ向かう。平日休暇カードを繰り出したおかげで、朝遅めに出発しても関越道に渋滞はほとんどなく、とてもスムーズに月夜野ICへ到達できた。チェックインが始まる15時よりかなり早く着いちゃうぞ。

鯉が泳ぐ初夏の赤谷湖

寄り道の妙案もないまま猿ヶ京まで走ってきてしまい、ひとまず前回も見学した相俣ダムへ行ってみた。おや、なんか工事してますね。
相俣ダム
真ん中あたりをくり抜いて新しい放流設備を追加している様子。なかなか豪快なことをするな。重機をどうやってあそこへ入れたのかを考えると、夜も眠れなくなっちゃう。

もう初夏の陽気だったけどダム湖(赤谷湖)の奥に控える山にはまだ雪が残ってるな。それに湖の上を鯉のぼりが泳いでるじゃないか。
赤谷湖
もっと近くで見てみましょうかね。コンビニ前の釣り船の看板があるところを左折して坂を下ると駐車場があった。相俣ダムから続く遊歩道との合流地点から見えた鯉のぼりがこちら。赤黒以外にも色がいろいろ。
鯉のぼり
まだ時間に余裕あったが、とにかく現地へ行ってしまおうか。三国トンネルへ向かいながら、当湯の看板が出てきたら国道17号を外れて県道261号へ入り、すれ違いに気を使う狭い区間を含む秘境への道を最後まで行ききると法師温泉に着く。


今回は別館の部屋に泊まってみた

展示館・資料館のような旅館

本館の正面入口がこちら。いかにもな風情に「特別な場所へ来たなー」と感慨を覚える。さすが国の登録有形文化財。
法師温泉長寿館の本館
入館してすぐ目の前の、火鉢や神棚のある間もなかなかのレトロ調。
レトロな空間
お土産コーナー&カフェはリニューアル感のあるモダンな雰囲気だ。結局なにも買わずにすいません。
お土産コーナー&カフェ
15時まではこちらのロビーで待つことになった。
ロビー
ロビーから見えた中庭がこちら。ガラス窓にスマホを押し付けて撮影。ちなみに向かいの建物は我々が泊まった別館だ。
ロビーから見える中庭
ほかにも当湯で撮影された旧国鉄のポスターやカモシカなどの剥製展示、源泉槽のリアルタイムモニター映像などが見られたし、本館と別館を結ぶ通路には石器の展示なんかもあった。見せる仕掛けが多いね。

古き良き時代の気分に浸れる部屋

案内された部屋は別館1階の8畳+広縁和室。加えて4畳分の前室付き。布団は夕食中に敷いてくれて朝食中に上げてくれる方式。
法師温泉長寿館 別館8畳客室
前回は本館2階のトイレなし部屋だった。今回はトイレと洗面台がセットになった個室あり。金庫あり、別途精算のお酒などが入った冷蔵庫あり。WiFiはロビーで使う前提のアクセスポイントゆえ部屋ではつながりにくい。

古くからの歴史を感じさせる部屋は旅の非日常感を盛り上げるし、一方で管理状態や清潔さの意味では決して古ぼけていない。十分に快適だった。窓の外は先ほどロビーから見た中庭だ。
窓の外の景色
法師川が見えるようにやや下向きに撮影。この小川は赤谷湖へ流れ込み、赤谷川となって利根川へ合流する。川のザーザーという水音が部屋まで聞こえてくるのは、個人的には情緒を感じられてよい。うるさいとは思わなかった。


法師温泉のお風呂といえば、なんといっても法師乃湯

入浴前に一杯の清水を

大浴場は本館1階奥に3箇所。メディアに取り上げられることの多い主役的存在の法師乃湯、やや小さめな長寿乃湯、洗い場が多くて露天風呂を備えた玉城乃湯。

前回でひと通り体験していたから、チェックイン直後からいきなり法師乃湯へゴー。時間配分を考えて最初に主役を堪能しておこうという作戦。廊下の途中には飲泉所が、と思ったら山の清水を飲めるコーナーであった。
清水を飲めるコーナー
法師乃湯は混浴で20~22時が女性タイムになる。男性用脱衣所には棚+かごが並ぶ。分析書はなく、周辺情報から察するに「カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉」と思われる。

浴槽についての説明(我ながらわかりにくい)

浴室に洗い場なし。浴槽はとても大きく、手前から奥にかけて4列の大区画が目に入る。各列はさらに2つの小区画…仮にA・Bとしよう…に分かれているから、1A, 1B, …, 4A, 4Bまで全部で8区画あるように見える。しかし近づくと、1列目と2列目の間、および3列目と4列目の間は丸太のようなものを一本渡してあるだけで、壁で仕切られてるわけじゃない。よってお湯の共有具合でいえば、1/2A, 1/2B, 3/4A, 3/4Bの4区画になる。

過去の経験から手前の1・2列目は適温に近く、はっきりぬる湯なのは奥の3・4列目だとわかっていたし、体感温度をチェックしつつかけ湯してみたらやっぱりそうだった。先客も3・4列目に集中している。そこで迷わず空いていた3Aへ収まった。※3Aのような小区画ごとに4名ずつ入れるサイズ。

…あれ? 思ってたより温度が高いな、こんなだったっけ? と思ったのは最初の一瞬だけで、すぐに熱さを感じなくなった。しかも泉質の特徴なのか、とてもふんわりした感触。お湯と自分が一体化したような感覚がたまりませんな。気持ちよくてウトウト眠りそうになってしまう。

足元湧出の湯を体感しよう

お湯は清澄な無色透明。湯の花は目立たず。泡付きは結構ある。好ましい程度に石膏臭もあり。時おり肌をくすぐるようにしてお湯が立ち上ってくるのは、足元から源泉が湧いているからだ。浴槽の底に敷いてある石の間からボコボコっとあぶくとともに浮上するのがわかる。つまりお湯の鮮度は折り紙付き。源泉かけ流しの中でも最上級の部類といえる。

ぬるいから、こんな素敵なお湯へ普通に30分とか1時間とか入浴し続けることができちゃいます。古き良き和風木造建築のようであり、窓の形などは大正ロマン風でもある浴室は、本館・別館とともに登録有形文化財に指定されている。訪れたのはいずれも新緑の季節ばかりだが、これがまた法師乃湯の雰囲気によく合っているのだ。あー、すべてが良すぎる。

結果的に夕方40分級×2・早朝1時間級・チェックアウト前にも1時間級入浴を敢行した。悔いはない。


開放時間を見極めて狙いたい長寿乃湯と玉城乃湯

長寿乃湯は謎の集中混雑に注意

夕方第2弾の入浴は長寿乃湯へ。男女入れ替えの関係で15~20時が男性可だったからだ。おそらく法師乃湯と同じ泉質の足元湧出泉のはず。行ってみたらすでに3名の先客がおり、2つのカランは埋まっていた。

浴槽は詰めて4名サイズかな。底にはやはり石が敷いてある。過去の思い出ではここもぬるかったはずだが、当時はぬるくない適温だった。しかもみんなの思惑がシンクロ現象を起こしたのか、次から次へと新しい客が入ってくる。どうした? なぜみんな長寿乃湯へ押し寄せる?

カランはなかなか空かず、湯船に浸かって待つ者・湯船の外に立って待つ者が詰まりだして、飽和感が出てきた。うーん、窮屈になっちゃったし、お湯もぬるくないし、無理に引っ張らなくていいか。短時間で切り上げて再び法師乃湯で40分入浴。夕食前のパフォーマンスとしては十分だ。

万人向きで露天風呂もある玉城乃湯

夕食後、気付いたら布団で居眠りしてた。やっべー、いま何時?…21時だった。じゃあ1回お風呂に入って、あらためてきちんと寝ようかな。入浴のために無理に夜ふかししてリズムを崩すこともなかろう。

ちょうど20~翌7時が男性タイムとなる玉城乃湯へ行くことにした。こちらはいろんな意味で万人向きに設定された浴場といえる。カランは6台あるし、内湯浴槽は10名サイズ。お湯はおそらく足元湧出でないし若干加温している感じの適温(世間一般的に好まれる温度)。そのおかげで逆にマニアな人達が殺到することなく、比較的混み合わずのんびり入れる。独占チャンスも多そう。

加えて露天風呂もある。10名サイズの岩風呂で同じく適温。この時期の山の夜はひんやりとした空気で露天風呂との相性良し。夜空の星が見える天気ではなかったが、仮に好天でも周囲の灯りの関係で星は見えにくいんじゃないかと思う。でもまあそんなことまで望まずとも十分でしょう。秘湯感はしっかり味わえる。


お風呂の後の食事も楽しみ

期せずしてイワナづくしとなった夕食

法師温泉の食事は朝夕とも1階の食事処で。やや広めな個室風広間の各々に数組ずつ収容される。時間はいくつかの選択肢から希望できて、準備ができると部屋に内線電話がかかってくる。ちなみにこの電話機が懐かしの昭和の黒電話。

夕食のテーブル席に並んでいたスターティングメンバーがこちら。
法師温泉の夕食
前回もいただいた上州麦豚陶板焼きがありますな。固形燃料で温めるもう一方の鍋は山菜入りのお吸い物。お造りは少し後に出てきて、イワナ・ギンヒカリ(群馬ブランドのニジマス)・トロ湯葉・刺身こんにゃくだった。

予約したプランはお得なだけでなく、各自に日本酒300ml(?)瓶がサービスで付いてきた。土田酒造の誉国光だった。1年前の群馬遠征で立ち寄った酒造じゃないか。久しぶりの再会を祝して乾杯ってことで。

そしてもう一つのサービスがイワナの燻製。各自に2尾ずつ出てきたぞ。通常のお品書きとして別途イワナの塩焼きもあるから、イワナを3尾いただくことになったのであった。刺身にもイワナがあったから、今宵はイワナ天国だ。
イワナの塩焼きと燻製
山菜の天ぷらも追加されて大変なことに。ほかに煮物もあったし、もうお腹いっぱいでやんす。もはや伝統芸ともいえる「締めのご飯はちょっとだけ」でエンド。しかしお米以外はしっかり完食するほどうまかった。

朝食で果敢にお米チャレンジするも…

朝も同じ場所の同じテーブル席で。起床後の1時間級入浴を終えてそれなりにお腹は空いている。
法師温泉の朝食
思い出した、焼き海苔は法師温泉印の独自なやつだったね。そして湯豆腐をはじめとする定番的なメニュー。さっぱりしっかりの生ハムサラダがうまい。お米は盛られた分はきっちりいただきました。このご時世ゆえ、できるだけお米を…ふだん使いでないおいしいお米を…たくさん摂取しておきたかったけど、胃の容量的になかなかそうもいかず。

朝早めの時間帯を希望したので、食後からチェックアウトまでまだ余裕がある。当然ながら法師乃湯に1時間入浴するでしょう。エネルギーは満タン、さあ行くぞ。

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やっぱりいいお湯・いい宿でしたね。特に今回はお得かつ特典付きのプランを見つけられたのが大きい。それにしても我々が車を出して行ける範囲にこのような満足度の高い秘湯があるのは幸運というほかない。法師温泉に泊まれるなら、喜んで平日休暇カードを切りますよ。