大雪山系の主峰・旭岳。その中腹には温泉大浴場を持ついくつかの旅館・ホテルが並んでいるが、日本秘湯を守る会の会員宿で、温泉ファンのみならず一般の旅行客からも高く評価されているのが湧駒荘(ゆこまんそう)だ。なにしろ、3つの浴場・5つの泉質・17もの浴槽が提供されているのだ。一晩で入りきれるの?
(実際は男性・女性それぞれ14浴槽まで。)
しかも好きなぬる湯もあるって。あー行ってみたい。いつものお財布事情だと手が出ない高級宿だけど、調べてみると季節ごとに結構値動きがあり、本当に夏のハイシーズンになるといよいよ不可能な相場感になってしまうことがわかった。梅雨時ならまだなんとかなる。迷っている暇はない。行け。で、行きました。
旭岳温泉 湧駒荘へのアクセス
北海道の広さを甘くみていた
旭川駅もしくは旭川空港から当館前を通る1日4便のバスが出ている。旭岳温泉入口で下車すればすぐ目の前。そういう意味ではアクセスに難はない。冬もバスは走ってるようだし、スキー・スノボ客のことを考えたら、むしろ冬は繁忙期なのかもね。
おじさんが行ったのは本州の梅雨時。旅の2日目にレンタカーで十勝岳温泉凌雲閣を出発→フロンティアフラヌイ温泉を経由して向かったのである。
旭川空港付近をかすめて東川町の中心部を通り過ぎると、あとは一直線に旭岳へ向かう感じになる。忠別湖のあたりは町境になってて東神楽町になったり美瑛町になったりする。この忠別湖も余裕があればダムを含めてじっくり見学してみたかったんだけど、数多の浴槽を持つ湧駒荘にはできるだけ早くチェックインしたい。すでに15時ぴったりには間に合いそうもない。距離を甘く見てたわ。北海道が広すぎる。
山の中でも道は走りやすい
ちなみに忠別湖の終わるあたりに大雪旭岳源水公園があり、気にはなっていたものの、熊出没により閉鎖中であった。やべーっす。天人峡方面と道が分かれるところで、誤って天人峡への道路に入ってしまいリカバリーするなどのトラブルもあって、いっそう15時着は絶望的。
旭岳温泉への正しい道に入り直すと、勾配が急になっていってカーブも多くなる。でも片側1車線は確保されているし大型観光バスも通るような道だ。山奥の一軒宿に続くようなガチの狭隘くねくね道ではないから大丈夫。泣きは入りません。
運転しながら頭の中で計算する…この分だと部屋に落ち着くのは15時半かなあ。いつもやるように、夕食までに2回入浴するパターンはかえって忙しすぎるかもしれない。それなら1回だけにして、90分くらいかけてたくさん入りまくる方がいいんじゃないか。ぬる湯ならなおさらだ。
憧れの湧駒荘に足を踏み入れる
山のリゾートホテルという感じ
はい到着。冒頭写真のような立ち姿をしており、予想してたより大規模だった。では入館。ロビーに旭岳の天然水を飲める場所があった。
こちらがお土産コーナーでございます。
暖炉付きのラウンジがこちら。熊さんがこんにちは。
ここにはスノボ用品が並べてあったり、ビデオでスノーボーダー竹内智香選手の映像を流している。調べによると湧駒荘は同選手の実家だそうで。
あとは1階大浴場の隣に喫茶室。お茶やコーヒーのフリーサービスあり。
全般に規模感・グレード感があって、運営面も含めてしっかりしたつくり。リゾートホテルといってもいいだろう。来る前は家族経営風・山荘風を勝手に想像してました。すいません。ただし、古い木材を活用してるっぽいところや、レトロなデザインにしているところも要所要所にあって、ただの無機質な空間でないのがいい。
最大限活用しないといけない気がしてくる部屋
案内されたのは2階のプレミアダブル。ウッドを基調にした温かみのあるデザイン。
一人には超幅広いベッドとリッチな気分でくつろげそうなリビング部。そりゃあお安くないわ。
きれいなシャワートイレあり、きれいな洗面台あり。金庫あり、旭岳の天然水ボトルが入った冷蔵庫あり、WiFiあり。ベッドの脇にはスマホを突っ込んでおけるくぼみや電源コード・USBをさす口が用意されていて抜かりなし。
駐車場側を向いた部屋なので窓の外はこんな感じ。
さすが人気宿。遊び心も感じさせる、いい部屋だ。お風呂にいっぱい入りたいけど、部屋でゆっくり過ごさないのももったいない…悩ましいぜ。
目移りしちゃうお風呂天国
まずは伝統のゆこまんの湯へ
部屋で一息ついて、16時ちょっと前に大浴場へゴー。当館にはゆこまんの湯、シコロの湯、神々の湯という3箇所の大浴場があって、最初はゆこまんの湯へ行った。開湯以来守り続けている伝統の浴場らしい。
入ってすぐのところに分析書がずらーり。たくさんあって区別がつかないし、覚えきれません。ざっくりで言うと、「マグネシウム・ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩温泉、低張性、中性、温泉」だ。ナトリウムとカルシウムが入れ替わったパターンや、最後が高温泉になってるパターンもある。泉温は40℃台~44℃台。PHは6.xってところ。冬季に若干加温されるほかは、加水・循環・消毒なしの源泉かけ流し。
脱衣所内に浴槽のレイアウト図が貼ってある(客室に置かれた説明冊子で見ることもできる)。なんだかたくさんあるなー。とにかく体験してみりゃわかるだろう。行くぞ。
交互浴が癖になる石膏泉と、入れなそうで入れた露天風呂
浴室に入ると、すぐ目の前に2つの浴槽が。石膏泉とのこと。左側はややぬるめの適温で、右側は体温を若干下回るくらいのひんやりしたぬる湯。寝湯と書いてあって浅いことは浅いが、いわゆる寝ころび湯とは違う。普通の姿勢でもいいくらい。
いろいろ多すぎて記憶が散ってきてるけど、お湯は半濁りくらいだったかな。匂いは金気臭の混じった、それっぽい温泉臭。2つを行き来するのが心地よく、ぬる湯派にはぴったりのシチュエーションだったので、だいぶ時間を費やしたし、お世話になったバディもの浴槽だ。
その先が通路状になっていて、カランが一列に10台並んでいる。その途中に露天風呂への出口があった。「この季節は閉鎖しています」との張り紙あれど、たまたま通りかかった湯守さん(?)の話では入れるとのこと。ただしまだ調整中でぬるいですよと。いやいや好都合です。
10mか20mくらいの通路の奥に10名サイズの岩風呂出現。屋根付きだから雨でもオッケー。こちらは茶色っぽい印象のある半濁りの湯。たしかにぬるめだった。ぬる湯ではないけどね。泉質的には石膏泉になるらしい。
こういうのでいいんだよ、ぬる湯と目薬の湯
また屋内へ戻り、通路を抜けると、4浴槽が点在する広めの空間へ出る。右端には2名サイズの無色透明な湯が入った木の浴槽。「ぬる湯」とだけ書いてあって泉質は不明。最初の寝湯のぬるい方よりもさらにひんやりしたクール系だ。こちらもだいぶ長湯させてもらいました。
その隣は「目薬の湯」と書いてある6名サイズの円形な浴槽。お湯の色はやや青みを感じさせるささ濁りで、貝汁みたいだなと思った記憶あり。泉質は正苦味泉。マグネシウム系でしょうな。この字面の泉質はなかなか珍しく、ややぬるめで入りやすいこともあって、何度もトライした。説明では37~38℃。
ガツンと熱い元湯、名脇役の炭酸水素塩泉
その隣、最も奥深い場所が「元湯」と名付けられた旭岳温泉元祖の湯だ。6~7名サイズの四角い木の浴槽に茶色い印象の半濁り湯。浸かってみたら熱い。はっきりと熱い。金気臭は一番強かった気がする。敬意を表しつつも長湯はできないから、ピンポイントで、あるいは最後にビシッと締めるために軽く入る使い方になった。
その向かい、2名サイズのやや深めな木の浴槽が炭酸水素塩泉。こちらの湯は無色透明。説明では38~39℃。ほかにぬるい湯があったため、メインでというよりはサブでたまに浸かる感じとなった。ゆこまんの湯は多彩な泉質と浴槽に加えて、元湯以外はクール系ぬる湯または40℃切る級のぬるめという、ぬる湯天国で大満足。90分くらい滞在しちゃった。
客もあちこちに分散するので混雑を感じることが少なく、独泉チャンスも多い。お湯はおおむね、無色透明から青白か茶系の半濁り+金気臭+茶色い粒が漂うと思っておけばいいだろう。21時で男女が入れ替わるため、夕食後の入浴も20時にこちらへ出撃した。
モダンなつくりの神々の湯
翌朝起床後は別館にある神々の湯へ。日帰り入浴の場合に利用できるのがこの浴場になる。朝7時でクローズするため、この1回が最初で最後のチャンスだろう。男湯は左側・女湯は右側。浴室は木造感がありながら洗練された雰囲気もあり、モダン秘湯と呼びたくなる感じ。カランは10台はあったはず。
浴槽は3つ。一番手前に4~5名サイズの芒硝泉。少し濁っている。一般的な適温でぬるくはない。その奥に10名くらい入れそうな真四角な感じの正苦味泉浴槽。やはりぬるくはないが、先ほどの芒硝泉よりはぬるめで入りやすかったので、こちらをメインに据えて多くの時間をかけた。お湯は無色透明。
正苦味泉に接する窓ガラスから露天風呂と景色が見える。行ってみよう。横一列に5名サイズの露天風呂は芒硝泉との説明。内湯にあった芒硝泉と同じような印象の湯だ。やはり適温である。頭上は屋根ありで、正面に視界が開けているものの、木とかヤブが続いていてパノラマ風景とかではない。
神々の湯は日帰り客のいない夜や朝方が狙い目か。
シコロの湯でラストスパート
朝食後のラスト入浴は男女入れ替わり後の男湯となるシコロの湯。壁にシコロという木が使われている由。カランは10台。右端に芒硝泉と書かれた5名サイズの寝湯があって(寝湯といってもそんなに浅くはない)、ここが一番ぬるかったが、それでも前日に体験したぬる湯群よりは熱い。半濁り。
中央部には無色透明の炭酸水素塩泉。向かい合わせになれる奥行きのある四角い浴槽は8名サイズ。ここはまあまあの適温。その左隣に8名サイズの元湯。名前から想像できるように熱い。あとは通路の先に5名サイズの細長い岩風呂。これも前日のゆこまんの湯にあった露天風呂と比べると熱い。
ということで、男湯として可能な浴槽にはすべて入った。ぬる湯派としてはやはりゆこまんの湯を推す。神々とシコロにはガチのぬる湯がないからね。20時の入れ替えまでにどれだけ攻められるかが勝負だ。
来た甲斐があったと思わせるお食事
こだわりの食材と手の込んだ料理が並ぶ夕食
湧駒荘の食事は朝夕とも1階レストランにて。2階にも会場があるようで、一部はそっちを利用してたように見えたのは、団体さん用かしら。ともかく自分は1階だった。
希望した18時に行くと、駐車場方向とはいえ他グループと視線が合わないような端っこのテーブル席に案内された。ぼっち客にはありがたい。最初に並んでいたのは食前酒と美瑛産完熟トマトの白ワイン漬と奄美産本鮪。刺身の醤油は自家製燻製醤油とのこと。
うーん、いきなり高級そうで丁寧に作り込まれた感のあるメニュー。さすがですな。お品書きには北海道を中心とする産地が記載されたものが多く、自信の食材ということだろう。ブランドじゃがいも・インカのめざめを使ったコロッケも良かったが、印象的だったのがこちら。
蝦夷アワビの塩釜焼きだそうだ。塩の塊をパカっと割ると昆布に包まれたアワビが出てきた。こんな料理法はグルメ対決番組とかドラマでしか見たことないぞ。塩がもったいねーと思って少しなめたくなってしまったのは庶民の悲しい性。
適度な頃合いで料理が運ばれ、どれもおいしくいただける。おかげでお酒が進んでしまい、ビールから梅酒へ切り替えた頃、終盤の知床クリーンポークのしゃぶしゃぶと稲庭うどんが出てきた。
いやあ、最初から最後まで、豊かな気分にさせてくれる夕食だ。白いお米もありますよとのことだが、稲庭うどんまででもうお腹いっぱいだった。胃袋いっぱい夢いっぱいでごちそうさま。
朝は自家製燻製醤油の卵かけご飯をどうぞ
朝食も同じ席。和定食には違いないが結構いろいろあるぞ。
朝から真鯛の刺身付きとは豪勢な。カセットコンロ上のは寄せ豆腐鍋で、熱々の豆腐+味噌汁としていただける。セルフで取りに行く方式の生卵は、自家製燻製醤油と一緒に卵かけご飯にするのが湧駒荘の朝の定番だそうで、おすすめされていたから試してみた。
燻製の香りとか独特のコクとかまでは正直わかりません(豚に真珠)。でも卵かけご飯はおいしかったですよ。刺身も焼鮭もあるし、おかわりしようかな・完食できるかなと悩んじゃったくらいだからね。胃袋の容量と相談して結局おかわりは見送ったが。
食後は喫茶室でコーヒーを。紙コップを利用すれば部屋に持ち帰ることもできる。
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多彩な湯船に「ここは温泉の宝石箱や」と言いたくなる湧駒荘。特にゆこまんの湯は、好きなぬる湯やそれに近いぬるめの浴槽が多くて天国のようだった。あれだけの規模のお風呂を源泉かけ流しで提供しているのはすごい。ハード面や食事・サービス面もしっかりとグレード感があって満足度は高い。思い切って決断して来てみたのは正解だ。












