秘湯好きの求めるすべてがそこに - 十勝岳温泉 湯元 凌雲閣

十勝岳温泉 湯元 凌雲閣
この北海道遠征の1泊目は、以前からどうしても泊まりで訪れたかった上富良野町の十勝岳温泉にある凌雲閣だ。日本秘湯を守る会の会員宿であり、お湯のクオリティと絶景が素晴らしいとの評判をしばしば見かけていた。そして好きなぬる湯の湯船も備えているらしい。そんなの最高じゃないか。夢は膨らむばかりだった。

しかし、行きたいからとパッと行動できるかといえば、現実はそうもいかず、ここまで延び延びになってしまった。昨今のインフレ傾向を考えたら、先延ばしすればするほど経済的に手が届かなくなっていくだろう。もう後がないぞ。と自身を奮い立たせて実現させたのだ。

…はい、最高でした。秘湯感、絶景、湯質、ぬる湯、欲しいものがすべてそこにあった。

十勝岳温泉 凌雲閣へのアクセス

土砂降りのため道の駅に避難する

JR富良野線・上富良野駅からの町営バスが当館まで運行している。冬はどうなるか確証ないが、少なくとも6~9月は走っている。とはいえ、特に道外からの観光客は、レンタカーを使うでしょう。自分もそうだった。

旭川空港から美瑛の白金温泉「杖忘れの湯」に立ち寄ったら、当館のチェックイン可能時刻まで残り2時間。あと1箇所くらい観光スポットへ…なんてことを考える余地はなかった。とんでもない土砂降りに見舞われたからである。

この雨では屋内でじっとしているしかない。道の駅びえい「白金ビルケ」に緊急避難した。駐車場と建物が離れているという試練はあったけどね。雨が弱まった一瞬の隙をついて建物へ駆け込んだ。しかしなんちゅう天気や。傘でどうにかなるレベルじゃねーぞ。

中はお土産ショップやハンバーガーショップ、アウトドアグッズショップ、地域に関する展示コーナーがある。自販機でコーヒーを買い、休憩スペースで飲みながらスマホをチェックしたりして午後の時間を過ごした。

天気が良ければ十勝岳望岳台への寄り道も良さそう

残り1時間になって雨も少しはましになってきたから出発。車にカーナビがないし、スマホの地図アプリと連動云々する器用さもないから、勘で走る。まあ一本道みたいなものでしょ。ほら、あの十勝岳(想定)に登っていけばいいわけだから。
あの山の方へ登っていけばいいはず
…違った。道を豪快に間違えて十勝岳火山砂防情報センターに着いちゃった。場所的には白金温泉のすぐ近く、美瑛川を挟んで対岸。ほぼ1周して元に戻っとるやないかい。

再度出直して、今度は正しいルートに入れた。途中で十勝岳望岳台なるビュースポットへ立ち寄るも、ちゃんと予習してないから、どの峰が何岳ってのはわかりません。
十勝岳望岳台
こうして、雨ときどき大雨の中を走って凌雲閣に着いた。道路そのものは登坂とカーブ続きでも片側1車線が確保され、高難易度ではない。


十勝岳連峰と富良野盆地を望む秘湯宿

熊さんと記念撮影をどうぞ

翌朝はスカッと晴れたから、そちらの写真を紹介した方がいいでしょう。建物前の駐車スペースでは富良野地域を見下ろす景色が広がる。
駐車スペースから見える富良野盆地
十勝岳連峰はまだ雪渓が残っていた。建物の脇から見えるのは、上ホロカメットク山か上富良野岳ではないか。よくわかってないけど。狭義の十勝岳は凌雲閣の位置からだと見えない気がする。
凌雲閣の脇から見える十勝岳連峰
ではチェックイン。フロントの横に売店がございます。
売店
ロビーはわりとつねに人がいるため、カメラを向けるのを控えた。かわりに熊さんをどうぞ。当日の日付で「出没」って表記されてて一瞬ひやっとするけど、単に記念撮影用の日付表示であって実際に目撃されたわけではない。この近くにビールの自販機あり。
記念撮影コーナー

おひとり様向けの部屋あります

案内されたのは、2階の7畳相当の和室にソファとシングルベッドを入れた部屋。おひとり様の受け入れを想定しているわけですな。ありがたや。
凌雲閣 シングルベッド入り和室
反対からも撮影。
凌雲閣 シングルベッド入り和室 その2
トイレなし、洗面台なし。2階の共同男子トイレは小×4とシャワートイレの個室×3。金庫なし、空の冷蔵庫あり、WiFiあり。エアコンはなく、扇風機が置いてあった(今回は使わずにすんだ)。温泉目的の一人旅なら全然十分な、特に不都合のないスペックだ。

窓の外に見えるのは、道を挟んで向かい側の駐車場。夕方雨があがったタイミングで撮影。
窓から見える景色
登山客がここに車を置いて山頂を目指すんだと思うが、凌雲閣の宿泊客も、もし運悪く建物前の駐車スペースが一杯なら、こちらに止める手もあるだろう。


強い属性をマルチに備えたお風呂

大岩と小岩からなる大浴場

凌雲閣の大浴場は地下1階。大岩の湯・小岩の湯に分かれており、20時までと朝8時以降は大岩=男湯・小岩=女湯、20時から翌朝8時の間は逆になる。

まずチェックイン直後に大岩の湯へ。脱衣所に掲示されている分析書をチェックすると、1号井が「酸性-含鉄(II)-水素-硫酸塩温泉、低張性、酸性、低温泉」で泉温28.6℃・PH2.2、2号井が「含鉄(II)-カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉、低張性、中性、高温泉」で泉温51.1℃・PH6.2だった。おそらく加水・加温・循環・消毒なしの源泉かけ流しに違いない。

1号井の泉質の「水素」ってのは初めて見たぞ。炭酸水素塩とか硫化水素型という記載は時々見かけるけど、単体の水素ってなんだろう。まあとにかく入ってみよう。

温泉通が好みそうな冷たい酸性の1号井浴槽

浴室は奥に細長い感じ。右手の洗い場は6名分。左手にドーンと岩が突き出していて、その周囲を取り巻くように2つの浴槽が配されている。

手前が2名サイズの1号井浴槽。見た目は無色透明だ。浸かってみると、源泉温度そのまんまですねって感じの30℃を切るヒヤッと系ぬる湯。水風呂ではないにせよ、最初は水風呂に入るくらいの気合を要する。慣れれば意外と大丈夫。

湯の花や泡付きのことより金気臭の印象が強い。また、珍しい酸性泉であるため、効能面の満足感(気分の問題も含む)が高い。さあ酸性泉よ、皮膚上に巣食う悪玉菌を一掃するのだ。善玉菌も巻き込むけどな。

温泉ファンは1号井を好んで狙いそうだが、冷たさゆえに一般受けしないようで、自分以外にここへ入る客をほとんど見かけなかった。おかげで独占しやすくて好都合でしたけどね。

2号井のメイン浴槽は熱め

その奥に10名以上が収まりそうな2号井メイン浴槽。こちらのお湯は暗緑色の濁りを呈していた。浸かってみると適温…印象的には熱め。色からして鉄みを感じさせるものの、金気臭は1号井ほどではない。また、湯の中には茶色のような金粉のような細かい粒状の湯の花がたくさん漂っている。泡付きはなし。

ここだけに入っているとすぐのぼせちゃうので、冷たくても頑張って1号井と温冷交互浴するのがベストかと。1回やってみれば、温度差の快感でやみつきになる。

続いて露天風呂へ繰り出そうとしたら、屋根のないところへ土砂降りの雨が叩きつける状態で、こりゃ無理だとあきらめた。この回は内湯のみを体験していったん部屋へ戻った。

絶景+ぬる湯の露天風呂が最強なり

1時間ほど部屋で休憩してから、夕食前にワンチャン…ということでまた大岩の湯へ。雨はあがっており、ちょっと混雑気味ではあったが、露天風呂を体験できた。

露天の浴槽は2つ。手前が濁った暗緑色。適温ながら内湯メインよりも低めでじっくり入りやすい。サイズは詰めて5名ってとこかな。

奥側もサイズは一緒で、牛乳多めのコーヒー牛乳というか、明るい茶色。こちらも完全に濁っていて浴槽の底は見えない。温度は低く、完全にぬる湯の部類である。長く浸かっていると体がぶるぶる震えて止まらなくなったので、体温より若干低いくらいか。それでも好きなぬる湯だから結構粘りましたよ。

どちらも十勝岳連峰の絶景をばっちり拝める。下の写真は翌朝チェックアウト後に富良野側へ下りてから撮影したもの。噴煙を上げているあたりが十勝岳とすると、そこは風呂から見えてなくて、中央部の地獄谷っぽい荒れた山肌~右の高いピークあたりが見えてたんじゃないかと思う。自信はないけど。
上富良野の町で見た十勝岳
緑の中に雪渓の残る山が目の前にどーんと連なり、地獄谷風の景色も見えて、とにかく絶景と泉質とぬる湯という三拍子揃った最強の露天風呂であった。

同じような体験が可能な小岩の湯

夕食後と翌朝起床後には小岩の湯へ。夜は熊を警戒して内湯のみ。洗い場は5名か6名分。1号井の透明酸性クール槽は3名サイズ。隣の2号井による暗緑メイン槽は熱い。体験した中で一番熱い。ここでも両者の温冷交互浴をおすすめします。

朝は露天風呂から。内湯メイン槽内をジャバジャバと歩いてドアの向こうに出る。すると洞窟風呂のような暗緑適温岩風呂(景色を眺めるには適さない)と、コーヒー牛乳茶色のぬる湯岩風呂がある。ぬる湯の方はしっかり外を向いていて景色を楽しめる。スカッと晴れて朝日がまぶしい山を眺めながら30分くらい長湯した。

チェックアウト前のラスト入浴は、再び男女が入れ替わって大岩の湯。露天風呂で最後の絶景を目に焼き付けてから、1号井⇔2号井の往復を数セットやってコンプリート。いやあ、通算ですんごい入ったなあ。


食事もなかなかに楽しい

夕食で地元グルメを堪能する

凌雲閣の食事は朝夕とも1階のレストランにて。夕食は18時と18時半から選べた。希望した18時に行くと、おひとり様向きの2人がけテーブル席へ案内された(カウンター席もあるがそちらではなかった)。料理のスターティングメンバーがこちら。
凌雲閣の夕食
山荘らしい無骨・素朴なものかと思ったら、意外と華やかさがある(失礼)。ホタテは北海道っぽいね。上富良野ではホップを生産しているそうで、忽布古丹醸造のクラフトビールを注文してみた。王道のピルスナーを。

その後も料理が次々やって来て、すぐにこうなった。
凌雲閣の夕食 その2
ハモとカニという豪華共演があるじゃないか。しかし一番印象に残ったのは上富良野産ポークの焼豚だった。柔らかくて臭みがなくて濃厚な味。ラーメンの名店によくあるトロトロチャーシューとはまた違ったうまさだ。夜の風呂を意識して酒量を自重したが、このポークだけでビールもう1本いきたいくらいだった。

締めのご飯もほんのり甘みがあって良し。量もちょうど良し。

山を眺めながらのバイキング朝食

朝も同じレストランで。7時と7時半から選べたんだっけな。7時半に行くと、自由席方式のバイキングだった。前夜と同じテーブル席を確保し、出撃して取ってきたのがこちら。
凌雲閣の朝食
自分の食欲を考えたらこれくらいでいいでしょう。実のところ、ものすごくたくさんの料理が並んでいるわけではないけど、水準級ではある。少しずつ取って全品制覇できるかどうか、どんどん盛ってたら厳しいよ、というくらいには揃ってる。あとパン中心の組み立ても可。

食後には十勝岳の天然水を使ったコーヒーをどうぞ。ちなみに、レストランの窓からも山の景色を拝める。次の写真は夕食時に撮った。ガラス越しなので黄色ぽくなってたり部屋の明かりが写り込んだりしているのはご容赦。
食堂からも山が見える
さすが秘湯宿ですな。

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定評ある凌雲閣に泊まることができて非常に満足している。そりゃみんな行きたくなるよねという感想だった。チェックイン時の土砂降りでどうなることかと思ったけど、その後は絶景も見られたし、温泉のクオリティといい、ぬる湯といい、言うことなし。北海道最高所の宿は、あらゆる点で最高だった。