誰もがみんな知っている、月光仮面のような存在は穴場じゃない。知る人ぞ知る隠れた名店のような温泉宿こそが穴場であり、なにかのきっかけで知ろうものなら興味が湧いて行ってみたくなるものだ。三川温泉湯元館はそんな穴場のひとつかもしれない。
良質でぬるめのお湯・素朴でのんびりリラックスできる雰囲気・料理がうまい…口コミの数々が自分の求める方向性とマッチしているように思われた。加えて鯉料理が自慢だという。※2人前からの要予約なので、一人泊だと2人分食べるか、注文してないのに出されるという幸運に恵まれるかのどっちか。
泊まってみると、優しく包まれるようなお湯だったし、素朴でのんびりできたし、食事はうまいし、運良く鯉が出てきた。穴場ですね。
三川温泉湯元館へのアクセス
石油の町・新津へ寄り道
三川温泉は新潟県でも福島の会津地方に近いところだ。最寄り駅はJR磐越西線・三川になる。駅から湯元館までは4kmほど離れているから歩くと1時間かかってしまう。宿が送迎サービスをしてくれるようなので相談してみよう。毎日運行の路線バスは設定されてないみたい。
自分の場合は新幹線燕三条の駅前でレンタカーを借りて、越後長野温泉嵐渓荘に立ち寄ってから三川温泉へ向かった。ただし時間に余裕があったため新津の「石油の世界館」を見学することにした。かつて新津温泉という石油の匂いがする温泉を訪れたことがあり、新津=石油の構図が頭に残っていたのでね。
カーナビに案内させたら、世界館から100mほど離れた里山ビジターセンターに着いた。まあいいや、ここに止めて歩こう。駐車場の目の前に「石油の里 古代館」なる恐竜モチーフの展望所があったけど施錠されてて入れず。
阿賀野川沿いに三川へ
新津では明治初期から20世紀終わりまで石油を採掘していた歴史があり、昔の産業遺産があちこちに残されている。
では石油の世界館に入りますか。入場無料。
展示例としては上総掘りの模型など。
うーむ、こんな土地で温泉を掘ったら石油みたいなお湯が出るだろうなと納得。今度こそ三川へ向かう。五泉市街から阿賀野川沿いの国道49号へ、そして懐かしの咲花温泉を対岸に見ながら快調に走る。道の駅みかわの交差点を左折してR49を離れ、カーナビの指示にしたがってうねうね走ると三川温泉に着いた。何軒かの旅館やホテルが集まっている。
湯元館は細い路地沿いにあるが、狭い道は最後の最後だけなので問題なし。
アットホームな雰囲気の旅館
ニャンコ宿かもしれない
ではチェックイン。玄関付近はこうなっております。ある時、入浴後にひょいと覗いたらマットのところに猫ちゃんがいたな。警戒されちゃって交流することは叶わず。
民宿のようなイメージを持って来たものの、アットホームな雰囲気はありながらも実際はエレベーターを備えるなど、しっかり旅館だった。エレベーターホールの角にはいろいろ飾られている。
客室は2階に集中しているみたい。共同のトイレ・洗面所・冷蔵庫・電子レンジがあるところを見ると、シンプルでエコノミーな客室/プランがあるのかな。湯治や合宿やスキー客に対応しているみたいだし。
ちなみに湯元館はネットの旅行予約サイトに掲載していない。電話かホームページ経由の予約に限られるし(対面式の旅行代理店経由が可能かどうかは知らない)、PCやスマホで気軽に空室状況をチェックすることもできない。今回はホームページから希望日を申し込んだら翌日か翌々日くらいに電話が来て、その日は空いてますとのことで予約を確定した。
居住性ばっちりな部屋でごゆるりと
さて案内された部屋は2階の8畳+広縁和室。ところどころ設備更新されている様子で居住性ばっちり。布団は最初から敷いてあった。
こちらの部屋はシャワートイレあり、洗面台あり。タオルハンガーが大小用意されてて使いやすい。WiFiあり、金庫ありで冷蔵庫はなかった気が。当然エアコンあり。風呂あがりにビールを所望するなら1階エレベーターホールに自販機がある。2種類のウェルカムお菓子とともにどうぞ。
角部屋だったゆえ窓は2面。一方の方角はすぐ外で蜂さんがブンブンしてたから窓を閉めたままスマホをガラスに押し付けて撮影。
もう一方の方角に見える景色がこちら。外は緑多き環境といっても日が出ているうちはモワッと蒸し暑い令和の残暑である。
宿泊中に5回も入った湯元館のお風呂
飲泉できる湯使い
湯元館のお風呂は1階奥。男湯の存在だけを確認できて、女湯の場所はよくわからず。チェックインからアウトまで男女の入れ替えなし。温泉通の体験ブログなんかだと、鯉の形をした湯口&壁タイルに緑のライン&ちょいレトロな浴室が紹介されてることがあって、そちらが当時は女湯に対応していたと予想。
男湯のれんの前にスリッパを置いてから脱衣所へ入る。内部は普通な感じで棚+かご。分析書を確認すると「ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉、低張性、中性、温泉」だって。源泉温度は41.5℃。冬季のみ加温あり、加水・循環・消毒なし。おー素晴らしい。
浴室はレトロ調じゃないし、壁タイルに緑のラインはない。カランは2台。ほかには内湯浴槽のみのシンプルなつくり。浴槽は大きな窓に接しており、湯口は鯉の形ではない。湯口近くにコップが置いてあったのは飲泉できるってことだろう。試しに飲んでみたら、わりといける味。
ぬるめでやさしいお湯の心地よさ
浴槽は横一列に4名入れるサイズ。詰めれば5名いけるかも。湯口からの源泉投入がなかなかの量と勢いで、浴槽の縁のあちこちからどんどんどんどんオーバーフローして床へ流れ落ちていた。床の上でトド寝ができそうなくらい。※思ってもやってはいけません。
湯口のまわりは白や緑色をした析出物の塊がびっしりこびりついている。おー本格的ですな。床面も新しい雰囲気の中に徐々に白い膜が広がっている様子だった。圧巻は浴室引き戸の取っ手で、真っ白な塩のようなゴツゴツした塊が取っ手全体を覆っていた。すげー。なにゆえここだけ?
お湯は無色透明で湯の花もほとんどない。浸かると明らかなアワアワ状態になるわけではないが、微小・微量の泡が肌に付くことがあるようにも見える。匂いはまあ温泉らしい温泉の匂い。なんて呼ぶべきかは知らんけど。
温度はぬるめの適温。クールとか人肌よりは高い温度に感じる。30分連続で入り続けるようなぬる湯ではない。それでもトゲトゲしさのないやさしいお湯だから、浴感がとてもすぐれていて入りやすい。
何度も入りたくなってしまう謎
あー、それにしても気持ちがいいな。なんだか癖になったかのように、チェックイン直後・夕食前・就寝前・起床後・朝食後と、5回も入りに来てしまった。各回においても、浴槽にイン→いったん出てクールダウン→また入りたくなって浴槽へ戻る→…を飽きずに繰り返すのだった。
清澄なお湯、やさしい感触、勢いよく湯口から投入されつつオーバーフローしていく様子、のどかな雰囲気、すべてがばっちりとハマっている。「温泉はいいなあ」と思う心の根っこに触れてくるとでも言おうか。こいつはやばいっすね。
入浴中はぬるめでやさしいのだけど、湯あがり後はやけに体がぽかぽかする。温まりの良いお湯ですね。そして当然のごとく肌がすべすべになる。いい湯だな。
絶品の鯉料理をいただくことができた
ボリューミーな夕食にギブアップ
湯元館の食事は朝夕とも部屋食。夕食は希望した18時の少し前に運ばれてきた。見てびっくり。写真1枚では収まりません。まず第1弾。
今回は鯉料理を予約せず(2人前は食べきれないし)あきらめていたところ、なんとしっかり出てきたじゃん。ありがた山のかたじけなすび。ずいぶん大きな甘煮ですね。加えて刺身ともずくと冷しゃぶ。これらだけでもう十分な量。だが第2弾もあるのだ。
鯉の酢味噌あえまであるぞ。さらにアジと揚げ物と大きいナス。完食できる自信がなかったのでトリアージとして、まず刺身をいただき、続いて主役たる鯉料理をいただいた。自分は鯉が苦手でなく好む方の人間だからとはいえ、甘煮はまじでうまかった。臭みなんかないよ。白身のほか卵巣(?)もしくは白子(?)の部分や肝(?)の部分も含まれている。一部の骨やウロコを除いて全部食べられた。
ビールを飲んでたし、この時点で胃袋的にほぼギブアップである。頑張って冷しゃぶとナスをちょっとだけいただき、アジと揚げ物はまるまる残した。うまそうな米と鯉こくもあるんだけどな~。
米は2口だけ、鯉こくとぶどうはなんとか胃に収まった。もう完全にギブアップ。大変申し訳ないことにたくさんの料理を残さざるを得なかった。面目ない。※揚げ物は冷蔵庫に保管して翌朝温めたのを朝食に出してくれました。
朝の味噌汁は具だくさん
朝食は「7時半から8時の間に」という説明通りの時間帯にやってきた。下の品々プラス前夜残した揚げ物。この地域でゴーヤはちょっと意外性あり。
味噌汁が具だくさんでいいですね。ヤマメだかニジマスだかの甘露煮でまずは控えめによそったご飯をいただく。うん、まだ胃袋に余裕ありそうだ。お櫃からまた控えめの量でおかわりして、今度は卵かけご飯を作っていただいた。醤油が会津の醸造元でしたね。
ほかのおかずもなくなり、最後に揚げ物の唐揚げと対峙。ごろっとした大きいのが2つだから結構手ごわい。最終的には勝利を収め、意気揚々とラスト入浴へ向かったのであった(整腸効果を期待して飲泉した)。
* * *
温泉でのんびりまったりしたい方におすすめ。今回泊まったようなトイレ付きで普通の旅館風な客室もあるから、ことさら旅慣れしていなくても大丈夫でしょう。数名で来てもいいし、一人で内省的にすごすのも良い。やさしい温泉にかなり癒やされるはずだ。鯉料理とともに旅の思い出にどうぞ。
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