2年ぶりの新玉川温泉に宿泊してその魅力を再発見した話

新玉川温泉
秋田県の八幡平エリアにある玉川温泉は、噴気の上がる地獄谷・希少な北投石・ラジウム岩盤浴・日本最強の酸性泉といったパワーワードがてんこ盛り、重い病をも治すとの評判まで立って、全国から湯治客が集まってくる一種の聖地である。

自分も玉川温泉を体験してみたい・泊まってみたいとの興味はあれど、さすがに聖地、なかなか予約が取れないし、大病を患っているわけでもない物見遊山の者が行っていいのかという点も気にかかる。

実際、一般の観光客向けには頭に“新”が付く「新玉川温泉」をご利用下さいと案内されている。本家玉川温泉の姉妹館だ。そこで初夏の東北旅行の初日は新玉川温泉へ泊まることにした。過去に日帰り入浴を体験ずみなんだけど泊まったことはないからちょうどいい機会だ。

新玉川温泉へのアクセス

秋田新幹線・田沢湖が最寄り駅

新玉川温泉の最寄り駅は秋田新幹線・田沢湖。そこから路線バスで約70分。雪の季節にどうなるのかは知らない。

我ら旅のグループ一行は田沢湖駅前でレンタカーを借り、国道341号を一路北へ。まず本家玉川温泉の近くにある玉川温泉自然研究路を散策して岩盤浴の光景や地獄谷を見学した後、新玉川温泉へやって来た。

本家から新までは車で5分くらい。専用の遊歩道を通れば徒歩でも15分くらいで着く。ただしまれに熊を目撃することもあるらしいから、うーん、自分はちょっと避けたい手段。

きれいに整ったエントランス

新玉川温泉の玄関前は路線バスの停留所とともにロータリー風に整備され、その脇に岩盤浴用のゴザ置き場や駐車場がある。大勢が出入りする大規模旅館でも雑然とした感じはなく小ぎれいに整った雰囲気。館内も同様であった。
自動ドアを越えて中へ。いきなり注意書きが…「X月X日(宿泊日のつい最近)X時に熊の目撃情報がありました。夕方以降は外出しないで下さい」だと。うわあ、やっぱり出るんじゃないか。

実際のところ、夕食後や早朝にフロント前を通りかかったら、玄関の自動ドアは締め切られた風で“Keep Out”を主張するロープが張られ、外へ出られないようになっていた。


現代風にアレンジされた大規模湯治宿

迷路のような広い館内

さてチェックイン時にフロントで受け取った鍵を見るとC棟2階の部屋番号。部屋まではエスコートなし、自力で行く。A棟からD棟まであるうえ、フロントがあるのはL階で1つ上が1階、など広くてややこしい構造をしているから慣れないと迷う。なんとなく万座プリンスホテルを思い出すな。

フロントのすぐ近くのロビーはこんな感じ。写真からおわかりのように秘湯といえど年季の入った様子は微塵もなく、むしろモダンで新しい。
新玉川温泉 ロビー
ロビーの向かいは売店。お土産・ドリンク・お酒・おやつ・日用品などを売っている。宿泊客は部屋付け精算もできる。
売店
売店奥のエレベータか階段でL階から1階へ上がり、渡り廊下でC棟へ、そこからまたエレベータか階段で2階へ上がる(エレベータ横に小と大の浴衣置き場がある)。他の棟には行ってないけど、少なくともC棟は現代的なホテルっぽい。なおかつ廊下の幅がやたら広いしバリアフリーが考慮されてる印象だ。
新玉川温泉 廊下

万人向けの安心感あるお部屋

お部屋の方も全然いいじゃないの。11畳相当のおニューな感じの和室は居住性ばっちり。金庫や空の冷蔵庫も完備されている。備え付けの浴衣は中サイズなので別のサイズがよければ前述の浴衣置き場から持っていく。
新玉川温泉のC棟客室
きれいな洗面台・シャワートイレあり。洗面台には手洗い用の蛇口と飲用の蛇口があった。
冷蔵庫と洗面台
WiFiありだからネットは問題ない。テレビは電波状況が厳しいのか、映像がよく切れたりザザッと乱れたりする。窓の外はこんな感じ。雪かきした雪を集めておく場所だったにしてもゴールデンウィークを過ぎてまだ雪が残っているとは驚いた。
窓からの眺め

新玉川温泉のお湯をふたたび体験

日本一の酸性泉

では風呂へ行ってみよう。前回訪問時のレポート記事とかぶるところは多々あると思うがご容赦。

大浴場はフロント右手の通路をずーっと奥まで行く。途中に湯治法に関するセミナー室、男女別の屋内岩盤浴室、湯治相談室がある。突き当たりが男湯・女湯の入口だ。スリッパの取り違えを防ぐためのクリップが番台に置いてある。

脱衣所に張り出された分析書を見ると「酸性-含二酸化炭素・鉄(II)-塩化物泉」とあった。本家と同じ源泉を引いているからスペック的には同じ。この酸性ってのが曲者で、なんとPH値はおよそ1.2。分析書の数字は1.1台が記載されてたと思う。

ざっと調べると酢がPH3.0前後、レモン汁がPH2.0~2.5、胃液ですらPH1.5~2.0だというから、とんでもない数値だ。ちなみに自分が体験した中では草津温泉が2.1、蔵王温泉と塚原温泉が1.4だって。酸性度では玉川温泉が日本一とされている。この本家玉川温泉と同じ源泉をここ新玉川温泉にも引いてきている。

バラエティ豊かな各種浴槽

浴室に入ると檜の香りが鼻をついた。浴槽だけでなく壁も柱も天井も建物全体が総檜造りなのだ。最初に目に入るかけ湯槽が入浴できちゃうんじゃないかってくらいに大きい。だから「かけ湯槽の中に入らないでください」と注意書きがしてある。

洗い場は17名分で余裕がある。浴室中央に主役の100%源泉槽が8~10名サイズ×2区画ある。これについては後ほど。主役を取り囲むように小さめの浴槽群が並んでいる。反時計回りにいこう。

最初に露天風呂への扉。でも前回体験したし今回はいいやと思って行かなかった(当湯の真骨頂は露天じゃないと思っている)。続いて2名サイズの弱酸性湯槽。源泉をかなり薄めてあるんだろう。肌への刺激を考慮してお子様はここだけにしましょうと推奨する張り紙があった。

その隣が2名サイズの50%あつ湯槽。源泉を2倍に薄めて熱めで提供しているってことかな。自分はぬるいのが好きなのでパス。その隣が6名サイズの50%名前なし槽。標準的な適温ってことかな。同行メンバーはここの温度が気に入ったようだ。

自分好みの50%ぬる湯槽

その隣が6名サイズの50%ぬる湯槽。自分が好きなやつ。不感温度まではいかないが長く入っていられるぬるめのチューニングが絶妙だ。50%なら肌への刺激を感じないから安心して長湯できる。

お湯はクリアな薄緑。白っぽい湯の花が舞っているのが見える。硫黄や鉄の臭いとか含二酸化炭素だから泡付きがすごいとかいうことはなかった。また若干のヌメりがある。総じて結構なお点前だ。

その隣の50%気泡湯つまりジャグジー風呂はパス。その隣に箱蒸し湯が3つ。黒ひげ危機一発みたいな感じで首から下を箱に入れて温泉熱で蒸す、一人用サウナ。話の種に1分くらい入ってみただけで汗がドバっと吹き出してきた。こりゃすごい。

その隣は打たせ湯と座り湯。一瞬だけ体験して終了。その隣が歩行湯。腰上あたりまでの深さのお湯が張ってあり数メートルの奥行きがある。リハビリに使えそうね。1往復だけして終了。

飲泉も可能。とんでもなく酸っぱいが

その隣に飲泉所があった。2倍に薄めた源泉をポタポタ流す蛇口と水をチョロチョロと流す蛇口がある。脇の使い捨てコップの底にちょっとだけ源泉を入れたらコップいっぱいに水を足して38倍薄めて飲めと書いてある。

つまりは100%源泉を2×38=76倍希釈する。法改正でPH3.0以下の飲泉提供が不可になったからだが、計算してみるとたしかにPH1.2程度をPH3.0以上にするには76倍の希釈が必要だ。

注意書きをよく読まずに2倍段階のを1滴だけなめてみたら…酸っぺー! 歯が浮きまくり。歯が溶けちゃうよ、と慌ててうがいをして口の中を洗ったけど、しばらく浮いた感じが続いた。そのあとに38倍薄めたやつを飲んでも結構酸っぱいぞ。たくさんは飲めない。

飲泉所の付近にかぶり湯・蒸気浴・浸頭湯が続く。浸頭湯とはようするに寝湯だ。いずれもパスした。

ピリピリとしみてくる100%源泉槽

中央にある主役の100%源泉槽に入ってみた。ここもぬるめのチューニング。熱いと肌への刺激がとんでもないことになっちゃうからかな。個人的にぬるいのは大歓迎。お湯の外見は50%槽と一緒で、2つに仕切られた区画の間にも差異は感じなかった。

記憶によれば100%槽はピリピリと痛いほどにしみてくるハードなお湯だったから、覚悟して浸かってみたところ、意外と平気でいけた。「最初のうちは平気だけど数分経つと『いてててて!』ってなるんだよなー」と身構えるも大丈夫。

ただし痛くはないけど局所的にピリッとした刺激は感じる。そのくらいだったら耐えられるし、ぬるいんだから長湯してもよさそうなものだが、「100%槽の浸かりすぎはよろしくない」という理性による抑制が働いたのと、団体行動ゆえ「じゃあ出ようか」となれば従うことになる。

こうして50%ぬる湯と100%を中心に夕方・夜・朝と3回入った。1回あたりはそんなに長い時間ではない。いま振り返ると、もうちょっと粘っても良かったかな。でも度が過ぎると肌が荒れちゃうかな。

肌荒れといえば、源泉かけ流しの温泉に入る時は風呂上がりに体にシャワーをかけないで出る派なんだけど、この時ばかりはPH1.2にびびってシャワーをかけるようにした。


にぎわいのあるビュッフェスタイルの食事

派手さはないが体には良さそうな夕食

新玉川温泉の食事は朝夕とも1階のレストラン「旬菜ダイニング ~ぶなの四季~」で。大規模旅館のため同時に全員を収容することはできない。夕食の時間はチェックイン時に希望の調査と調整が行われる。

夕食はビュッフェスタイル。最初に取ってきたのがこれ。盛り方がみみっちいのは放っといてください。中央の魚はハタハタだった気がする。
新玉川温泉 夕食
肉や刺身・寿司もあるにはあるけど、これでもかと取り揃えてるわけじゃないので、野菜や山菜の存在感が大きくなっている。エネルギッシュな方々にはちょっと辛いかもしれない。

湯治の里だからそういった食材で全然OKですけどね。湯治で長期連泊する客を考えたら毎日豪勢な会席料理ってわけにもいかないだろうしね。個人的に不満はない。一応オープンキッチンで焼いた牛肉も取ってみた。
稲庭うどんとオープンキッチンで提供される牛肉
炭水化物に関してはいろいろ豊富。白飯、お粥、しょっつるベースの茶漬け、きりたんぼ、稲庭うどん。全部試したいけどお腹いっぱいになっちゃって断念。

洋風も可能な朝食

朝は営業時間内で好きな時に行けばいい。ただし7時台はどうしても混雑する。混雑すれば空席待ちの列ができる。夕食時に時間帯別混雑予想表が張り出されているのを見た我々は8時に遅らせて正解だった。

朝もビュッフェ。傾向は夕食と同様でパンやカレーが追加されている。取ってきたのはこんな感じ。謎の和洋折衷。
新玉川温泉 朝食
ひじきがやたらぶっとい。パンは余計な味付けしないでほしい派なので一番シンプルなやつを選んだら、麦の風味とほんのり甘みがあってうまかった。思わずおかわりしてしまった。


(新)玉川温泉のお湯はどうしても強酸性という面が強調されてしまうけど、ほんのり心地よい加減のぬるさが大変良い、という新たな一面に今回気づいた。気軽に行ける場所ではないだけに、まさかこんなに早く再訪するとは思ってもみなかったが、当湯をより深く味わえたような気がするので行ってよかったと思う。

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