やっぱりサイコー。再訪した桜田温泉「山芳園」に大満足

桜田温泉 山芳園
伊豆といえば東を避けて西側を目指してしまう、混雑絶対避けるマンの面々が今回向かったのも、やっぱり西伊豆。しかし理由はそればかりでなく、もっとはっきりした目的があった。西伊豆は松崎町の雄・桜田温泉「山芳園」を再訪するためである。

思い起こせば前年の春先、たまには贅沢しましょうくらいのノリで当館のお世話になったら、すんごい良かったのだ。間違いのない宿として自信を持っておすすめできるし、自分たちもいつかまた来たいものだと思った。そんなにしょっちゅうは贅沢できないけども。

あれから歴史が動いて、2020年の秋~冬シーズンは「ちょっと豪華な宿」に泊まる機会が続いていた。それで気が大きくなったわけじゃないが、やるなら今しかねぇという感じで話がまとまると、思い出の桜田温泉へ…今回も良い印象だけが残った。

西伊豆の海沿いに桜田温泉へ

西伊豆エリアの松崎町までの道は、もうすっかりおなじみだ。新東名・沼津長泉IC→伊豆縦貫道・月ヶ瀬IC→国道136号・土肥→同・松崎、以上。東京圏目線だと東伊豆より遠いイメージがあるけど、実際はそうでもない。月ヶ瀬まで高速で行けることと、GWや正月でもない限りひどい渋滞にあわないことから、時間的精神的には想像以上に楽だ。運転担当じゃないから言えるセリフかしら。

我々は月ヶ瀬IC近くの湯の国会館で立ち寄り入浴してから桜田温泉を目指した。時間にかなり余裕があったので、土肥から先は恋人岬(おっさんグループで行くとかなり場違い)・黄金崎の馬ロック・加山雄三ミュージアム・道の駅「花の三聖苑」へ寄り道しつつのドライブ。
馬ロック
もう毎度のコースだから詳細は割愛。ただ一点、加山雄三ミュージアムの館内に流れるBGMは加山雄三ボイス一色。昭和の名曲をカバーしているから耳に残りやすい。とくに休憩コーナーは「海よ~、俺の海よ~」がエンドレスにかかってて洗脳されそうになる。旅行中どころか帰宅後もしばらくは脳内ヘビーローテで大変だった。


思い出の桜田温泉にニンマリ

なまこ壁が特徴的な宿

さあ桜田温泉に着いた。駐車場脇には相変わらず温泉スタンドがある。一軒宿としては相当量の源泉湧出があるものと思われる。
駐車場にある温泉スタンド
駐車場から道路を挟んだ向かいはアイガモ農法の田んぼ。ここで作ったお米が食事に出てくる。また、向こう側に広がる田んぼは春先になると「田んぼをつかった花畑」として知られる観光スポットに変身する。桜の開花と重なる時期は当館が満室続きになるのだろうし、我々が過去に訪れた3月初めでも十分にきれいでおすすめ。
桜田温泉向かいの田んぼ
建物の外観は白いなまこ壁が特徴的。
白いなまこ壁
内装にも重厚感がある。
桜田温泉のフロント付近

ちょっといい宿のちょっといい部屋

チェックイン時にいくつか用意された色の中から好きなタオルを選ぶと、いよいよ部屋へご案内。今回はなんと、露天風呂付き客室だ。ちょっとどころじゃない、突き抜けた贅沢しちゃってるぞ…こんなご時世で経済を回すためだと自分に言い訳した部屋がこちら。
露天風呂付き客室
8畳+ゆったりした広縁。布団は最初から敷いてあり(接近し過ぎの布団はあとで離しました)、座卓は部屋の壁際に寄せてあった。

シャワートイレ、洗面台あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり。座卓の上にひとり1本ずつ、サービスのミネラルウォーターが置かれていた。前回は当湯の源泉を詰めたペットボトルだった記憶だが、今回は伊豆の天然水という別ブランド。あとWiFiはロビー付近でなら使える。

部屋の露天風呂は本格的

肝心の露天風呂がこちら。おー、すげー。客室に付いてるやつで岩風呂にしてあるのはなかなか。サイズは1~2名規模でカランは1台。
部屋の露天風呂
奥に源泉湯宿を守る会の源泉100%かけ流し認定浴槽ステッカーが貼ってある。湯口とお湯があふれ出ていくあたりの岩の表面はドス黒く変色しているし、こいつは本物だぜ。

風呂の側から外を見るとプチお庭な感じ。部屋の窓から見えるのも、この風景だ。
客室の小庭
温泉めぐりのおじさんグループが利用するパターンは想定されてない部屋なんだろうけど、自分的にはリッチな気分&旅の高揚感を味わうことができた。本来の客層の方々が泊まっても同様の気分で満足できるものと思う。


こだわりが半端ないお風呂群

貸し切りなのが信じられない、広い広い露天風呂

桜田温泉の温泉へのこだわりは半端ない。汲み上げた源泉を空気に触れさせず、かつ水を加えずに冷却し、湯船に直結させて提供しているとの由。ちゃんと理解していなくてすまぬが、このような張り紙の通り。
桜田温泉 こだわりの源泉管理
この結構な温泉を飲める飲泉所が玄関前にある。コロナ対策のためコップを置いてないので、湯あがり休憩所や部屋の湯呑みを持っていこう。飲んでみたら沸かした水道水以上に無味無臭だった。強いて言えばほんのり硫黄ぽい風味があるかもしれない。
玄関前の飲泉所
さて、真っ先に入浴しに行ったのが屋上にある貸切大露天風呂。追加料金や予約は不要で空いていれば自由に利用できる(1回30分を目安にお願いします)。
露天風呂へ上がる入口
屋上へ上がると思い出通りに、とてつもなく広い露天風呂が待ち構えていた。一説によると20畳あるそうだし、ぱっと見で30名入れそうなサイズ。これを貸し切りにするんだからスゴすぎ。

そこへ豊富に流し込まれるお湯は、脱衣所に貼ってある分析書によれば「カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」。ただし前回訪問時の記事はナトリウムとカルシウムの順序が入れ替わっているし、弱アルカリじゃなくて単にアルカリ性と書いてあるね。ネットで調べてもどちらの表記もヒットするし…って細けえことはいいんだよ。

熱いお湯が滝のように流れてくる

お湯は無色透明で結構熱い。岩を組んで小さな滝のように作られた湯口は、高い位置から源泉が流れ落ちてくる趣向になっており、白い湯気が盛んに立ち上っていた。お湯の通り道になってる岩の表面はドス黒く変色し、湯船の縁にあたる箇所には白い析出物がびっしりとこびりついている。

目隠しの塀に囲まれているため、田園風景がパーッと広がるというような眺望はないけれども、なにせ持て余すくらいに広い風呂だから開放感は十分にある。桜田温泉といえば大露天風呂、と誰もが連想するほどの当館の顔、主役の風呂である。

個人的には、お湯がもう少しぬるければ…でも1回30分なら長湯を楽しんでもらう方向性じゃないし、このくらい熱くていいのかなあ。ちなみにシャワー付きのカランが3台あるけど洗髪洗身するなら内湯へ行った方がいい。

温度と檜の香りが良好な大浴場

貸し切りにできる風呂がもう一つある。内湯の家族風呂だ。4名入れる湯船だったと記憶しているが、今回は部屋の露天風呂に時間を割いた影響で家族風呂へは行かなかった。

他にいわゆる一般の大浴場もある。こちらは夕方と翌朝に行ってみた。脱衣所には壁の中を通る源泉パイプを覗き見られる場所がある。浴室に入って階段を数段下がっていくと5台のカランと2つの檜の浴槽。どちらにも源泉湯宿を守る会の認定ステッカーが貼ってある。

手前の浴槽は3名サイズであつ湯。自分のストライクゾーンからすると熱すぎたのでほとんど利用せず。一方、奥にある浴槽は4~5名サイズでぬるめ。こちらは好みに近くてじっくり浸かれるから気に入った。檜の香りも微妙に感じられるからいいですね。

早朝に行った時、洗い場の壁に何か張り付いているぞ、と気づいてよく見たらカエルだった。小さくて可愛げがある系だから許す。冬突入の時期でも温泉のまわりにいればサムクナーイ・冬眠不要、といっても餌になる虫がいなくなっちゃうから、やっぱ冬眠した方がいいぞ。とアドバイスだけはしておいた。

他に女性専用の室岩風呂なる洞窟風呂もあるようだ。

部屋の露天風呂もクオリティ十分

今回の目玉ともいえる部屋の露天風呂は、合間合間に何度も入った。こちらのお湯は熱すぎない適温。もっと熱くしたければ源泉蛇口から加水ならぬ加湯することができるし、プチ庭との間の仕切り扉を閉じて内湯化すれば冷めにくくできる。まあしませんでしたけど。

しかしいいお湯だなー。ぬる湯でもないのにいつまでも入っていたい感じ。匂いを嗅いでみると無臭ではない温泉らしい印象があり、かすかに硫黄香を感じなくもない。

そして入浴後の肌のツルスベ感がすごい。とくに手の平なんかはテカテカ感もあって、まるで何かでコーティングしたかのようだった。やはり新鮮な源泉100%かけ流しの威力は半端ないね。


食事のレベルは相当高い

お魚いっぱい、大満足の夕食

桜田温泉の食事は朝夕とも個室食事処で。夕食は18時と18時半からの選択。テーブルにはスターティングメンバーが洒落た装いで並んでいた。
桜田温泉の夕食
食前酒は赤ワインに自家製柑橘系果汁を加えたサングリア。きびなごの南蛮漬けもあるぞ。お造りはアジのたたき、キハダマグロ、コショウダイ、ムツ。本わさびをすりおろして醤油でいってもいいし、塩でもどうぞ。塩は2種類用意されてるという凝りよう。

途中で追加された品もあって、川のりさつま揚げでお腹いっぱいになってきたところへ、真打ち・金目鯛の煮付けが登場。この大きさ、ドーーーン!
金目鯛の煮付け
我々一同に対して一尾とはいえ、でかいぞ。食べ切れるのか心配になりつつも、甘いタレがよく合う美味さで、気づけばきれいに片付いていた。アイガモ農法米のご飯には煮付けのタレをかけてわさびを乗せると最強なのだが、もうお腹いっぱいすぎてあまり入らなかったのが残念。

前回と同様に大満足の夕食だった。当館の食事はレベルが高い。それに最初のきびなごから最後の地魚あら汁まで、夕食でいただいた魚肉は相当量にのぼるはず。さすがは西伊豆。

朝食もまたすばらしい

朝食は8時と8時半からの選択。朝だからと侮れない品々が出てくる。
桜田温泉の朝食
茶碗蒸しのようにも見える蓋付きのやつは自家製豆腐。塩を振ると大変よろしい。アジの開きもよろしいし、漬けマグロならぬ漬け金目鯛(たぶん)+わさびがやばい。

サラダも小鉢も、何もかもがうまい。同行メンバーは「朝食の美味しさは体験してきた中でもトップ級」との評価を与えていた。

食後はロビーの囲炉裏端ラウンジでコーヒーをいただける。そこの本棚に「ぬる湯温泉ナビ」という本を見つけたので、旅行後にネットで探して買ってしまった。

 * * *

いやあすばらしい。再訪を決意させた過去の思い出は正しかった。ハード面だけでなく、温泉のクオリティについても再認識させられたし、食事のレベルの高さは満足感に相当寄与している。

いわゆる間違いのない宿。今回なんとなくネットで検索してみたら、当館はテレビ番組の「一度は泊まってほしい温泉宿・関東編」企画で1位を取ったことがある模様。一度といわず何度でも泊まってほしい。ていうか自分がそうしたいですわ。