晩秋のぬる湯宿にて日の出富士を望む - 須玉温泉 若神楼

須玉温泉 若神楼
ぬる湯王国山梨には何度も訪れているが、須玉にある若神楼(わかみろう)の存在を知ったのはわりと最近のことだった。格式を感じさせる“ちょっといい宿”の風情で敷居が高いのかなと思いつつ、調べてみたら工夫次第で予算感に収まりそうだった。晩秋山梨ツアーのメンバーに提案してみたところ賛意を得られたので宿泊体験が可能になった。

ぬる湯という意味では冷たい系の源泉風呂と人肌に近い系の露天風呂がある。季節的に源泉風呂はさすがにクールすぎて敬遠気味、ほどよくぬるい露天風呂へ主に入り浸ることとなった。温泉以外では部屋から見える富士山と朝の日の出が見どころ。※部屋の向きによるので全部屋に当てはまるとは限らない。

須玉温泉 若神楼へのアクセス

JR駅または高速バス停から送迎あり

若神楼の最寄り駅はJRで中央本線の穴山もしくは日野春。両駅から宿の送迎サービスがある(要予約)。駅から歩くと1時間レベルなので送迎を頼ろう。あるいは新宿からの高速バスであれば須玉バス停まで行くと、そちらでも送迎が可能なようだ。須玉バス停から歩くと20分くらい。

我ら一行は南アルプス市の芦安温泉岩園館→同市内の市営温泉樹園を経て、車で若神楼へ向かっていた。走ったルートを後日地図で確認したら、過去に訪れた韮崎旭温泉が近いのね。まあ韮崎駅の近くを通った時点でそんな予感はしてた。

加えて国道141号を走るバスの行き先が増富ラジウム温泉である。こちらは前年に2回訪れた。いろんな思い出が蘇ってくる道中だったな。新府とか穴山の地名は武田絡みで大河ドラマを連想するし(穴山はどちらかといえば某無双ゲームの登場キャラを思い出す…倒しまくっちゃってすまんかった)。

ゆ~ぷるにらさきもヨロシク

国道沿いの道の駅にらさきは翌日の帰り際に寄った。同施設の道路を挟んで向かい側には日帰り温泉「ゆ~ぷるにらさき」もある。入ってないから余計なコメントは差し控えるが、泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、お風呂に加えて温水プールもあるようだ。

そうこうするうちに若神楼が見えてきた。R141の西側へ外れてちょっとした高台へ上ったところに立っている。それより一段低くなっているところに未舗装駐車場があるようだったが(従業員用?)、スルーして当館前まで来てみたらちゃんと舗装された駐車スペースが設けられていた。
若神楼駐車場で見た紅葉
駐車場前の紅葉は盛りを過ぎたとはいえまだ見頃。


違いがわかる大人向けのちょっといい宿

和風のシックな雰囲気(だけじゃない)

ではチェックイン。格式を感じさせる落ち着いた雰囲気の館内だ。こんな一角で庭園を眺めるのもいいんじゃないか。
若神楼フロント前の一角
信玄公もおわします。
武田信玄公
ロビーはゆったりしたつくり。テーブル上には登山・観光・ライフスタイル関係の本が並べられている。
ロビー
和風のシックな演出に徹しているかと思えば、異なるノリの遊び心に出会ったりする。このへんはまだ近いノリだが、
レトロ蓄音機風CDプレーヤー
もともとラウンジだったであろう場所に温泉卓球が現れたり、
温泉卓球
茶室風に飾り付けてもよさそうな小さな一室はスーパーファミコン部屋になっていた。
スーパーファミコン部屋

富士山と日の出の絶景がいいね

案内された部屋は4階の広縁付き和室。畳の組み方が複雑で、一見して何畳あるかよくわからないまま、しっかり数えるのを忘れてしまった。十分すぎるほど広く、若神楼のホームページの写真で判断すると16畳だった可能性が高い。
若神楼 おそらく16畳和室
シャワートイレ、洗面台あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり、WiFiあり。布団は夕食中に敷いてくれるクラシック方式。浴衣は1階エレベーター前にサイズ別で積んである中からチョイスして持っていく。部屋で飲む緑茶・ほうじ茶・コーヒーもエレベーター前に粉末スティックと紙コップがアメニティ類と一緒に用意されているのを取っていく。

富士山側を向いた部屋であり、窓の外の景色がこちら。富士のシルエットが浮かんでますね。
窓から見える景色

部屋まで案内された際に眺望について説明があった。見どころは朝の日の出ですよと。日が昇る前の明暗グラデーションと太陽が顔を出し始める瞬間が狙い目ですと。「もし雲が多かったりすると残念なので」と、条件の良い日に撮影した動画を見せてくれた。

以上を踏まえて、翌朝早く目が覚めたらみんなで、まだ薄暗いうちから窓の前で待機。おっ、そろそろかな。
早朝の富士山
いよいよだぞ。赤富士ぽくなってきた。
日の出直前の赤富士
キターーー!!!
日の出と富士山
という体験をしてから朝風呂へ行ったのだった。


気になっていた若神楼のぬる湯を体験する

浴場棟へ下っていく

若神楼の大浴場は別棟になる。フロント前の階段を下り、地下1階廊下の奥からいったん屋外へ出て、1フロア分程度の下り階段へ。旅館本体部より一段低くなった土地に浴場棟が立っている。中に入るとゆったりした畳の休憩コーナーになっている。椅子があったりマンガが置いてあったり。

ここで左右に分かれて右が男湯、左が女湯。男女の入れ替えはない。女湯寄りの壁に分析書が掲示されてて「単純温泉、低張性、中性、低温泉」だった。泉温は27.7℃、PH7.3。加水・加温・循環・消毒あり。加温の程度を弱めにしてくれてれば絶妙な人肌ぬる湯だろうと期待。

脱衣所から浴室へ進むと、まず洗い場が14名分。空くのを待つような事態は起こらず、旅館の規模に対する数としては十分かと。奥には大きめの内湯浴槽が構えている。

ひんやり系の源泉風呂にちょっと逃げ腰(もったいない)

浴槽の全体としては浴室の幅いっぱいに広がり、かつ奥行きのある四角形だが、左手前の小さな部分が区切られて源泉風呂になっていた。3名でいっぱいになるくらいのサイズ。ここは源泉風呂なだけに非加温だろう。つまり27~28℃級ってことだ。浸かってみるとやっぱりひんやりしていた。

一気にザブンは無理。冷たさに耐えながら少しずつ身体を沈めていく感じになる。いったん肩まで浸かってしまえばどうにかなるし、源泉の個性と効果を最も強く受容するにはベストの浴槽には違いない。

が、訪れた晩秋の頃だとどうしても逃げ腰になってしまう。ぬる湯派を名乗っておきながらいかんなあ…とはいえ無理してもしょうがないので「一度体験しましたよ」程度の利用に留めておいた。せっかくの源泉風呂なのにもったいない、けどまあいいです。

源泉狙い・ぬる湯狙いの客が殺到していつも混み混みということはなかった。逆にたいがい空っぽでいつでも独占状態を享受できる感じ。夏はどうか知らんが。

ぬくぬく温まるなら内湯メイン

内湯浴槽の残りの部分は適温の加温風呂。40℃設定とのことだけどもう少し熱めに感じる。ただし熱すぎるレベルではない。お湯の見た目は無色透明。湯の花と思われる粒が漂っていることがある。泡付きはない。匂いにこれといった強い主張はなく、消毒の塩素臭も感じない。変に癖がないから万人向きではある。

壁には山梨の温泉施設でおなじみO大学T教授の説明板が掲げられていた。「フォッサマグナが~」ってやつ。そんなお湯に浸かりながら「あったまるわあー」とリラックスする時間を楽しむべし。10名以上が余裕で入れそうなサイズで、だいたい周囲から余裕を持って陣取ることができるのもいい。

窓の向こうに見えるのは露天エリア。下方にある浴槽みたいなのが露天風呂か?…いや、どうやら池のようだ。あれに間違って入ったらやばいことになるぞ。

露天風呂が絶妙にいい具合のぬる湯

露天風呂は公式には夕方17時から夜22時まで。珍しいパターンだな。管理上の都合で夜や早朝にクローズするなら理解できるが、夕方から夜に限ってオープンするなんてね。ともかくチャンスは夕食直前と夕食後から寝るまでの間ってことで、2回に分けてトライしたのであった。

浴室の脇から露天エリアへ出て石段を下ると大きな岩風呂が登場。ずっと入口(湯尻)付近にいて奥(湯口)まで行かなかったから全体像は不明なれど、10名は収容できそうな気がする。露天エリアは岩や木々に囲まれ、高台からの眺望が広がるとかではないけど開放感は十分。

35℃設定とされるお湯は個人的にちょうどいい塩梅のぬるさだった。全体にほんのり温かいお湯で、底の方を中心に若干ひやっとしたお湯の塊の流れがある。晩秋の屋外でも気にならないくらいの低温、というか長湯をじっくり楽しむのにばっちりな温度。いくらでも入れちゃうってやつだ。

17時からといわず15時から+翌朝もオープンしてくれてればなあ…というのは贅沢な望みか。もしそうなったら1時間浴を何度もやっていたに違いない。クオリティ重視なら最も時間を割くべきはずの源泉風呂よ、すまぬ、この季節は露天風呂専門になってしまいそうだ。


見て楽しみ、味わって楽しむお食事

いろいろと工夫の見える、上品な感じの夕食

若神楼の食事は朝夕とも1階の食事処で。我々の場合は完全個室の部屋が用意されていた。夕食は選択肢の中から18時を希望。スターティングメンバーがこちら。
若神楼の夕食
さすがお上品な感じですな。お造りは寒鰆だって。前菜には地元志向で小淵沢のワイン鱒や明野の長芋なんかが含まれている。茶碗蒸しのように見えるのは凌ぎの蕪みぞれ絞り(きのこ餡)。典型的な凌ぎとして出てくることがある蕎麦は別途ご飯に対する汁物として出てきた。

エシャロットにはなまこが合わせてあった。いろいろ工夫してるんだなあ。鍋物は富士桜ポークという山梨のブランド豚肉ときのこだそうで。赤いスープを見て一瞬キムチ鍋?と思ったらトマトスープだそうで。いろいろ工夫してるんだなあ。

もちろんナイスなお味。後から追加で銀鱈柚庵焼きとかぼちゃの煮物が出てきてボリューム面も十分だ。かといって残してしまうほどでもなく、ちょうどお腹いっぱいで終えることができた。そういえば、ご飯は釜飯に見えるけど、中は普通の白米です。炊き上がりまで30分+蒸らしに15分かかるため食事開始とともに着火したんだっけな。おかずは完食したがご飯だけはちょっと残したんだった、思い出した。

普通はおかわり必至と思われる朝食

朝は8時を希望。お風呂が朝9時までだから、もっと早い方が食後のラスト入浴に余裕ができたかもしれないけど、まあいい。
若神楼の朝食
定番的なのはむしろオッケー。それぞれがしっかりした味付けで良し。鮭なんかも大きめだから、標準またはそれ以上に旺盛な食欲を持ち合わせているならご飯のおかわり不可避でしょう。自分は必要なかったけど。

蓋をした鍋の中身は忘れてしまった。味噌汁や湯豆腐ではなかったはず。正解は行ってみてのお楽しみ。

食後のコーヒーは部屋で飲みましょう。前述の通り、エレベーター前に粉末スティックと紙コップが用意されている。なお朝夕とも配膳のスタッフさんが丁寧なきめ細かい対応で好感を持った。気持ちよく食事をすることができた。

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ぬる湯業界における山梨の層の厚さを実感させる宿がまたひとつ。国道沿いで中央道ICからも近いので行きやすいうえ、グレード感のあるしっかりした宿なので、下手を打てない方をお連れする旅行に好適だろう…仮にぬる湯を受け付けてくれなくても普通の温度の広めな内湯浴槽があるし。

とはいえ、できればぬる湯を敬遠せず親しんでいただきたいと思う。そしてそれは自分自身にもいえる。今回は源泉風呂をクールすぎると敬遠してしまったから、ぬる湯派の面目なし。もし次の機会があるなら今度こそしっかり源泉風呂を堪能したい。