新潟下越遠征の2泊目は山形県側に越境して小国町の国民宿舎梅花皮荘とした。梅花皮(かいらぎ)は読めなかったなあ。イバラエイというエイの皮、もしくはその皮に似た模様のことで、梅花皮模様の雪渓から名付けられた飯豊連峰・梅花皮岳が宿名の由来みたい。
マタギの里を思わせる自然環境、そしてまた登山との関係が深いロケーションでもあり、秘湯感はばっちり。残念ながら天候に恵まれず、飯豊連峰をはっきり望むことは叶わなかったが、かわりにぬる湯派の自分に超おあつらえ向きの状況が到来した。源泉トラブルのためぬるい状態での提供となったのだ。宿にとっては災難だから喜ぶのは不謹慎だろうが…。
ともかく気持ちのよいぬる湯がとってもいいで。※本記事公開の2026年1月時点では元の源泉に復旧ずみのようだ。
飯豊温泉 梅花皮荘へのアクセス
関川村で渡邉邸を見学
鉄道旅であればJR米坂線小国駅まで行きましょう(米坂線は当面の間、今泉~坂町間が代行バス)。小国駅から飯豊山荘行きの町営バスに乗れば当宿を通る。運行本数には注意。
今回はレンタカーの旅。三川温泉湯元館から出湯温泉華報寺共同浴場を経て小国町へ向かったのである。徐々に天気が怪しくなってきて、道の駅関川ではぽつぽつ降り出していた。ここには「ゆ~む」という日帰り温泉があるけど諸般の都合によりパス。
関川村にあるほかの温泉…高瀬・鷹の巣・雲母(きら)・湯沢は、どうやら熱い、もしくは激熱らしく、今回は見送った。かわりと言ってはなんだが、道の駅から徒歩5分の国指定重要文化財・渡邉邸を見学。800円。※目の前の関川村役場に駐車するのが一番近い。
江戸時代に栄えた豪商豪農のお屋敷だ。広ぉーい。
美しい庭園が見られます。
部屋の一例はこんな感じ。
中庭に出ると蔵がいくつかあるけど入れない模様。なんか怖いメッセージがあるぞ。
マタギの里の雰囲気強い
では出発。荒川や米坂線と並行する国道113号を東へ進み、山形県に入ったらわりとすぐに国道を離れて南下。※新潟側から来た場合、直感とは反対に左折してから国道をアンダーパスして南へ向かう形になる。
今度は玉川に沿って走る。決して広くはない川周辺の平地は耕作地となっていて、ところどころに集落は現れるものの、秘境の雰囲気が濃い。道路にお猿さんの集団がたむろしてたり、いつ熊が出てきてもおかしくなさそうなムード。ある場所では道路上にタヌキの亡骸が転がっており、それをカラスと猛禽類が仲良くついばんでました。
梅花皮荘のちょっと手前にはマタギの館なる食事処があった。そうだよな、このあたりはマタギの里っぽいよな。なんて考えているうちに梅花皮荘が見えてきた。
願わくは雲のない晴天で背後の稜線がはっきり見えてほしかったな。
山と川に囲まれた湯宿
正面玄関前に白線で区切られた駐車スペースがある。最初に止めた区画は蜂さんがバックカメラに何度も突進してくる姿が映ってたから、縄張りを侵して怒らせたかもと危険を察知して別の区画に変えた。玄関前には数年前にSNSでバズったという顔出しパネルが設置されてる。やっぱり熊じゃん。マタギの里じゃん。
ではチェックイン。こちらがお土産コーナー兼ロビーでございます。缶ビールなどを買える冷蔵ケースもあるよ。
最初に源泉トラブルにより温泉がぬるいことを説明された(旅行前に電話連絡も受けていた)。全然大丈夫です、ていうかむしろ好都合。露天風呂に入れなくなってたのは残念だが仕方がない。ちなみに露天風呂はお隣の別館川入荘を利用する。翌日チェックアウト後に撮影した川入荘がこちら。臨時休業閉鎖中みたいな扱いだった。
梅花皮荘の館内は国民宿舎らしいといえばらしいつくり。各客室のドアには部屋番号とともに「3人部屋」「4人部屋」「5人部屋」といった札がついている。案内されたのは2階の3人部屋…ではなくて4人部屋の札がついた8畳+広縁和室。布団は最初から敷いてあった。
トイレなし、洗面台あり。2階の共同男子トイレはたしか小×3に個室が和・和・洋の並びだった気がする(自信なし)。金庫あり、冷蔵庫なし、WiFiあり。エアコンありだから令和の夏も安心ね。建物じたいは年季が入っているが、室内の諸々は設備更新されている様子で不都合なし。窓の外に目を向けると、岩壁のようにも見える山肌が迫っている。
首を右にひねれば玉川の流れと背後の峰々も見えてくる。やっぱり晴れてほしかったな。
お湯がぬるく露天は休止という特殊状況下
コワーキングスペースを併設する浴場棟
先にも書いた通り、源泉トラブル期間中の体験記なので、あくまで当時はこうだったということでお願いします。梅花皮荘の大浴場は2階渡り廊下でつながった山崎屋という建物にある。こちらには大浴場のほかコワーキングスペースがあるようだ。
山崎屋側の内装は結構新しい感じできれい。チェックイン直後は(2階渡り廊下から行って)手前が男湯だった。脱衣所は普通に棚+かご。壁の分析書によれば「ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩温泉、低張性、中性、高温泉」だって。源泉温度57.1℃を44℃で提供。もちろんトラブル前の平時のスペックだ。冬季のみ加温とだけ書いてあり、加水・循環・消毒有無は不明。
浴室はまあまあ広い。天井が高いから余計に広く感じるし、ぶっとい梁や木板の壁などが旅情を盛り上げてくれる。洗い場は6名分。左奥側に設けられた浴槽は縁に沿って8~10名程度はいけそうなサイズ。
平時の金気臭濁り湯が無色透明無臭ぬる湯に(好都合)
お湯の見た目は完全に無色透明だった。口コミやネットで見かける写真だと黄土色なんだけど、当時はまったく濁りも色もない。まあとにかく浸かってみましょうか。…ぬるい。ぬるいぞォ! 勝ったッ!! 好みのストライクゾーン・35℃くらいのぬる湯でございます。
令和の狂ったような暑さがまだまだ続いてる折、もともとぬる湯で知られる温泉だったら人々が放っておくはずがなく、地元民・温泉通・涼を求める旅行客で湯船ぎっしりでもおかしくない。しかしたまたまのめぐり合わせで実現したぬる湯だからか、その場にいた客はぬるい湯を狙って来てる様子じゃない。快適な人口密度が続き、独占タイムもしばしば発生する。
しかもアブ・ブヨの心配がない内湯だからね。心置きなく1時間級の長湯を堪能できるってもんだ。実際にはチェックイン直後に軽いジャブとして30分、いったん部屋で休憩を挟んで夕食前に50分、就寝前に1時間、翌朝起床後に(男女入れ替わった浴室にて)1時間、チェックアウト前にも20分。
湯の花は微小な白い粒が若干見られる程度。泡付きなし。匂いは無臭に近い。平時に評されるような金気臭は感じない。評判に聞く特徴と全然違うから調べてみたら副源泉を加温して使っているようだった。頑張って加温しても35℃にしかならないという事情のようだ。まあ個人的にはこれでいいっす。
露天風呂からの眺望に思いを馳せる
翌朝になったら男女が入れ替わって奥が男湯だった。基本的には同じだと思っていい。洗い場は7名分、右奥側に設けられた浴槽は8~10名サイズ。やっぱり満足度の高いぬる湯である。そんな温泉がしっかりオーバーフローする形でかけ流しにされているのを見るのは気持ちがいい。※排湯の際のゴボオオォォーッという音が鳴り響いている。
浴槽に浸かりながら窓の外に目を向ければ、部屋で見たのと同様の景色を眺めることができる。晴れて遠くまで見通しが良くなればかなりいい感じになりそうだ。露天風呂が復活すればもっとすばらしい眺望なのかもしれない。
おまけで湯あがり休憩室がこちら。鉄砲や昔の写真が飾ってある。ほらー、やっぱりマタギの里じゃん。
山形自慢のお米・つや姫がうまい
酒が進む夕食は品数がちょうどよい
梅花皮荘の食事は朝夕とも2階の食事処で。大浴場へ向かう渡り廊下の手前にある。夕食は18時を希望。部屋番号に対応したテーブル席は窓際かつ窓を向いていた。つまり他客と目を合わせずにすむし、実際ジロジロ見られないにしても視線を気にする気持ちは軽減される。ぼっち客にはこれ重要。
おかず系は一気出し。
お造りは鯛のカルパッチョとメニューに書かれていたけど現物はカツオのような気がする。イワナ塩焼きは揚げたような様子があり、ぱりぱりと全部食べられた。自分の感覚では量的に多すぎもせず少なすぎもせずでちょうどいい。半分くらい片付いたところで2杯目にチューハイを頼んじゃった。
できあがった豚蒸し鍋を含む料理がすべて片付いて、十分な余力を持って締めのご飯までたどり着くことができたのは幸いである。だいたいいつも満腹ギブアップ寸前で米は微量しか入らないので。米がうまいなあと思ったら「山形自慢のお米・つや姫を使用しています」だそうだ。つや姫万歳。
定番的内容の朝ごはんで元気をチャージ
朝食は7時半から8時の間に来てくださいパターンだったかな。前夜と同じテーブル席。着席後にトレイに乗った一式とご飯・味噌汁が運ばれてくる。水やお茶はセルフでお願いします。
毎度同じことを言ってる気がするが、朝はこういうのでいいんだよの定番的内容で結構なり。つや姫は相変わらずうまい。とはいえ軽く少量おかわりした程度だけど。こういうところが少食体質の悲しい性。
食後のコーヒーもいただけます。セルフで作るドリップバッグのやつ。さあて、エナジー充填したから最後にひとっ風呂入ってくるかな。
* * *
まさに筋書きのあるドラマかというめぐり合わせで、ぬる湯派おじさんが特別ぬる湯版の梅花皮荘に宿泊した。それだと本当の梅花皮荘を体験したとは言えないのかな…いや、これも当宿の一面であって、梅花皮荘に本当も嘘もないはずだ。
自分の好みはおいといて、復旧した本来のお湯を体験してみたい気持ちもないわけではない(露天風呂に入りそびれたし)。しかし本来の定評ある主役と見事なパフォーマンスを見せた代役、どちらも捨てがたいなあ。


















