栃木県那須塩原市の温泉といえばやはり塩原温泉郷の規模と知名度が抜けている。あるいは板室温泉か。しかしそれほど山の方へ行かなくても、東北道やJRが通る那須野が原寄りにも多数の温泉が存在する。そんなにたくさん行ったわけじゃないけど、黄褐色のモール系が多い印象。
そんな中で少々毛色の異なる温泉があるのに気づいた。その名も那須塩原駅前温泉。でも全然駅前じゃない(那須塩原駅から2km以上離れている)。緑~白に濁ったアブラ&硫黄感いっぱいのお湯がなんとも個性的…うーん気になる。ある湯めぐり旅行で福島から南下して那須町へ向かう日があったので、足を延ばして当湯へ寄ることにした。はたしてその結末はいかに。
那須塩原駅前温泉への道
後悔のないように、やるなら今
その日は朝から雨だった。無理して屋外で観光する気にならない。今日はあちこちで温泉に入るくらいしかやることないよなあ。だが微温湯温泉をチェックアウトするまでに、起床後50分・朝食後にも50分、すでに2時間弱も入浴していた。だってぬる湯なんだもん。
なおかつ正午頃には甲子温泉大黒屋でも小一時間の湯浴みを堪能。我ながらハイペースで飛ばし気味だぞ。だってぬる湯なんだもん。
幸いに予報より早く雨はあがった。いつもなら温泉はもういいやと自重して、どこかで時間を潰してから今宵の宿へ向かうところ、どうしても那須塩原駅前温泉には行っておきたかった。次の機会にしようとスルーしたら、以後なぜか毎度いろんな事情ができて結局行くに行けずで後悔しきり、ってのが人生あるあるだからね。いつやるか? 今でしょ。
現地の場所をしっかり把握しておくべし
というわけで決行。ただし甲子温泉を出た時点で珍しく小腹が空いていた。たいがい旅館の朝飯の量が十分すぎて昼抜きにする習慣なんだけどな…白河ICから東北道を運転する間にもおやつと水分のことで頭がいっぱい…このままではまずいと那須高原SAへイン。
今ガッツリ食べて旅館の夕飯が入らなくなると本末転倒だから、まんじゅう1個とかでいい。しかし手頃な甘味はなく、仙台名物ひょうたん揚げを買った。ゴルフボール大の球状かまぼこをアメリカンドッグの甘い衣で包んだやつ。加えて甘~いコーラを(かのスティーブ・ジョブズによれば砂糖水)。これで水分と糖分を補給したら集中力が戻ってきた。よし行くぞう。
黒磯板室ICを出たら那須塩原駅へ通じる道路を5分ほど走ると右側に当館が現れた。道路脇のすぐ目に付く建物や看板から判断しようとしてもわかりにくいと思う。きっと想像しているのと違うから。
自分はカーナビの指示と沿道ののぼりの文字を見て間違わずにすんだ。
色も匂いも個性豊かなクセ強温泉
ボーリング会社の営業所内にある温泉
現地は当湯を運営する白河井戸ボーリングの営業所敷地内であり、駐車スペースの目の前にある (株)水地温[スイッチオン]というのも系列会社なのか、住所が同じだけで関係ないのか、よくわからない。駐車場の向こうは田んぼと住宅街。
まあとにかく入りましょうや。見た目は平屋の小ぢんまりした建物。
内部もコンパクトなつくり。券売機で入浴券を買い(1000円)、受付に差し出すと「ちょっと待ってくださいね」と、男湯のドアからちょっと脱衣所の様子を確認して「大丈夫です。どうぞ」とゴーサインが出た。当時は明らかに空いていたが、ルーチンとして混雑チェックをしたのかな。密を避けるために混雑時は入場制限をかけるかもしれんね。
エメラルドグリーンに濁ったお湯が待ち受ける
壁に掲示されてる分析書によれば「ナトリウム・カルシウム-塩化物泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」だ。浴室まで行けば源泉かけ流しとか地下1500mから汲み上げているとかの説明板もあった。あと脱衣所内に100円リターン式ロッカーあり。
サウナがあるけど関心対象外のため割愛します。浴室に入ったとたん、むわっと温泉の匂いが襲ってきた。花粉症チックに鼻の調子が狂っていてもはっきりわかるほどのアブラ臭。さすがですな。
洗い場にカランは3台。あとは横一列に4~5名サイズの四角い内湯浴槽。縁の部分は木でできている。その浴槽を満たすのは白が混じった緑、エメラルドグリーンと言うべき濁り湯であった。きれいな色ですね。火山の中の噴気地帯ってわけじゃない平原の地によくぞこのようなタイプの温泉が出たもんだ。
温泉ツウに選ばれた名湯
内湯は適温のお湯でもクセが強いから長湯は難しいだろう。匂いを嗅ぐと金気臭に混じってアブラ臭やゴム臭の要素も感じられる。うーん強烈な個性だ。緑白濁の見た目といい、関東最凶(褒め言葉)とも謳われる喜連川早乙女温泉を連想させる。一度入ったら忘れられないなー。
そういえば、脱衣所かどこかで「テレ東の番組コーナー『温泉ツウが選ぶ、本当は教えたくない極上の名湯ベスト10』の2位に選ばれました」ってアピールしてたな。知る人ぞ知る温泉ってことか。ランキング内で自分が行ったことあるのは他に尻焼温泉の星ヶ岡山荘くらいだった。
それと記憶あやふやで自信がいまいちだけど、時々ジュゴォォォーーー!!!というすごい轟音が響いてた。お湯を排出する音だ。“龍の鳴き声にたとえられます”なんていう説明があったような。
五色の変化がよくわかる露天風呂
露天風呂もある。四分の一円の形をした4名サイズの浴槽は1メートル5センチの深さがあるため、立ち湯に徹するか中腰体勢で入ることになる。他に迷惑がかかる状況でなければ、階段部分に腰かけることで、ちょうどいい深さとして利用できるけどね。
基本的には内湯と同じ特徴。外気で冷めるせいか内湯よりぬるめなので、じっくり楽しみやすいこともあり、主にこちらに入ってました。
壁に「太陽光線によって五色に変化します」と書かれた説明がある。確かに、全般に内湯と比べて明るいし、日差しが強く当たるところは黄色みが増している。逆に湯口直下の影になっているところは黒っぽくすら感じられ、少し離れると青っぽく、もう少し離れると緑、そこからどんどん白や黄色が強くなっていく。面白い。
周辺環境からして当然しっかり目隠しされていて眺望はない。まあそういう要素を求めて来るところじゃないし。脇のチェアに座ってクールダウンしていると、昼までの雨が呼び込んだ涼風がいかにも心地よい。露天風呂→涼風のコンボがたまらんね。
平日昼だったおかげか、最後近くになって1名の客が入ってきただけで、これほどの名湯をほぼ終始独占状態で楽しめた。やったぜ。湯あがりはベトつかず、お肌スッキリすべすべ。塩化物泉のぽかぽか感ともに、シャッキリ締まった感もあって仕上がり良好。温泉ツウが選ぶだけのことはありますな。