大分県九重町にある壁湯温泉をいつどこで知ったのか、もう思い出せないが、いつか行ってみたい先として心の候補リストにあがっていた。川の岸壁に道を作り、洞窟のような穴の中に風呂を作ったといわれている。パーフェクトな源泉かけながしであることに加え、貴重な足元湧出泉でもある。しかも好みのぬるい温度だから見逃せない。
九州くじゅうエリアの温泉めぐりを計画した際に当然のごとく壁湯温泉も体験することにした。一人泊不可能ではないようだけど予定の日は取れなかったので立ち寄りで。たしかにお湯はすこぶる新鮮で泡付きが豊富。期待通りのぬるさが心地良くてつい長湯、予定の時間をずいぶんオーバーしてしまった。
壁湯温泉 福元屋へのアクセス
バス便があることはあるが
壁湯温泉はその成り立ちからして福元屋のみの一軒宿だと思われる。最寄り駅をしいてあげればJR久大本線豊後森駅。でも徒歩やタクシーワンメーターじゃ無理。駅からバスで25分、壁湯停留所下車。宿の送迎サービスについてはよくわからなかった。
泊まりも立ち寄りも含めて多くの人は車で行くのだろう。自分もレンタカーを頼った。旅の2日目に筋湯温泉たからや旅館をチェックアウトして県道40号を北上する。下り基調で標高をどんどん下げていきますね。筋湯温泉が標高1000mだから当然か。
途中で四季彩ロードに入って宝泉寺温泉に出るのかと思ったら(グーグルマップはそのルートを提示)、カーナビは四季彩ロード手前の県道680号へ入るように指示してきた。えっ、そうなの? 地図ではずいぶんくねくねの細いマイナー道に見えるけど…一応指示に従ってみた。
日帰り客は公共駐車場へ
あー、やっぱりいぃぃぃ。一部に対向車とのすれ違いが困難な狭い区間のあるくねくね下り坂だった。やめてよおぉぉぉ。泣きを入れつつ頑張って運転していった。ある程度下りきって民家が現れ始めるあたりに紅葉谷の湯なる温泉施設を発見。本当にどこにでも温泉があるって感じですな、このあたりは。
県道が国道387号にぶつかるT字路を右折、玖珠町方向へ2km弱で壁湯温泉に着く。筋湯温泉から30分だったかと。反対車線沿い=川側に設けられた駐車場は宿泊客専用だ。立ち寄り入浴客は玖珠町方面車線沿い=山側の公共駐車場に止めること。6~8台分のスペースがあったと思う。
車を降りて道路を渡り、宿泊者駐車場から下を覗き込むと福元屋の建物が見えた。
これはまさしく壁湯と呼ぶにふさわしい
川に沿って洞窟風呂へ進む
国道脇の歩行者用の坂を下っていくと、このような光景に出会う。国道と川のはざま、高さでいえば両者の中間地点に当館が立っている。写真中央の手前に折り返す石段が洞窟風呂への道。
いったん入館してフロントで呼びかける。しばらくしてご主人(?)が現れたので立ち寄り入浴の旨を告げて400円お支払い。外へ出て洞窟風呂を目指す。
女性専用洞窟風呂の小屋の先に本家洞窟風呂の脱衣コーナーがあった。周囲から目隠しするものは何もないし、置かれた靴も服も荷物もない。その奥に洞窟風呂があって、すでに数名が利用中。
彼らはどこに靴・服・荷物を置いたのだろう、と思ってよく見たら、洞窟風呂の先にもう1箇所の脱衣コーナーがあった。そちらはちょっとしたカーテンで目隠しできる。みんなそっちを使ってるようだから自分も合わせておくか。
早くも利用客多数
ちなみに本家の洞窟風呂は混浴。女性はタオル巻きOKといえどもハードル高そうですね。女性専用洞窟風呂の小屋内でタオル巻きになって本家まで歩いてくる作戦しかないだろう。なお、泉質を示す分析書は見当たらず、ネット調査によれば単純温泉だ。加水・加温・循環・消毒なしで間違いなかろう。ていうか足元湧出だし。
洗い場はないので丁寧にかけ湯して入る。湯船は芋洗いが嫌なら6名が定員かなというサイズ。そこにすでに4人いた。互いに広めの間隔を取っており、5人目としてすんなり加わりづらいし陣取る位置も難しい…だが弱気になってる場合じゃない、湯尻付近で体育座りとなって居場所を確保した。これなら文句はあるまい。
岩をくり抜いて半洞窟にしたような浴槽なので頭上は岩壁である。その岩壁のあちこちからポタリポタリとしずくが落ちてくる。これは湯気が水滴化したものでしょう。源泉は足元の岩の間から湧き出てるんじゃないかな。湯尻に体育座りじゃ確認できないが。
泡付きが結構すごいですね
お湯は無色透明。湯の花の有無を覚えてないくらい泡の印象が強い。最初は目立たなくてもしばらくすると明らかにたくさんの泡が体中につく。アワアワ天国だ。お湯が新鮮な証拠でしょう。匂いを嗅ぐと単純温泉らしい温泉臭、川の水を連想させる匂いがした。
温度は体温と同じくらいでぬるい。ぬるかったら温泉じゃないと嫌がる人もいるが(一般人の反応としては理解できる)、一度ぬる湯の良さに目覚めるとやみつきになる、そういう人種もいるのである。冷たくても熱くても長く入るのは難しいけど、ここのような体温に近い不感温度であれば無限に入れそう。※ちなみに湯あがり後は不思議とぽかぽかしてくるので、ぬる湯だからと湯冷めを心配しなくて大丈夫。
とにかく気のすむまで浸かり続けることにした。時計がないため体感で、30分ほどして2名が出ていって空間に余裕ができたので、湯尻から奥の方へ移動して足を伸ばすことができた。あとは岩壁を触ってみたり、足元湧出らしき流れを感じたり。
時を忘れる絶妙のぬる湯
視線を岩壁から外へ向けることもできるようになり、露天風呂としての景色を楽しんだり。下の写真は帰り際に風呂から離れた場所まで来てから撮ったもので、洞窟風呂でもこれに近い景色が見える。桜と菜の花の組み合わせがいい感じだった。
さて体感で40分は過ぎたかな。この後も湯めぐりと観光の予定が詰まっていて、計画ではタイムアップの頃合いだ。そろそろ出よう。服を着て駐車場の方へ戻りながらスマホで時間を確認すると…なんと1時間も経っていた! えっ、40分そこらじゃないの?
きれいな言い方をすれば、あまりに良いぬる湯に時を忘れた、ってところだろうか。いやー、困ったなー。スケジュールが押しちゃうよー、まいったなー…全然まいってないし、なんなら満足感と達成感でニヤニヤしてるのが自分でもわかる。