丹後の本格源泉かけ流しと豪快露天風呂 - 久美浜温泉 湯元館

久美浜温泉 湯元館
京都・丹後の地に本格的な源泉かけ流し温泉があった---久美浜温泉 湯元館。2018年暮れの京都に用事ができたおじさんにとって、これはもう行くしかないでしょう。

今回のような鉄道一人旅だとちょっとアクセスしにくい場所にあり、翌日の行動の便を考えて泊まりはしなかったが、立ち寄りで利用させてもらうことにした。

まさしく温泉らしい温泉にすっかり満足した。露天風呂の景観に印象深い特徴があるし、すばらしい浴感の薬草風呂もある。雨にたたられた以外は言うことなしだ。

久美浜温泉「湯元館」へのアクセス

鉄道でアプローチするには悩ましい立地

本屋でふと見つけて買って読んでみた「日本一周3016湯」(高橋一喜、幻冬舎新書、2014)。たいがいの温泉施設は欄外に小さい字で短文コメントが載ってるだけだが、久美浜温泉 湯元館は本文に字数を割いて紹介されていた。

温泉通の玄人が取り上げるくらいだから間違いはあるまい、と考えて行ってみることにしたのだった。

鉄道旅行者にとって問題は現地までの足。京都丹後鉄道・夕日ヶ浦木津温泉駅から久美浜温泉行きのバスに乗れるけど、本数はかなり少ないし列車との接続もいまいち良くない。

当駅からは4キロくらい離れているので歩くと1時間かかってしまう。晴れていればまだしも、冬の日本海側は雨雪前提で考えるべきだから、ちょっと無謀だな。タクシーが待機しているような駅でもなさそうだし。

小天橋駅から歩く作戦

一方、隣の小天橋駅にバス便はないけど、現地までは2キロ。積もる雪だったらあきらめるとして、多少の雨雪なら強引に歩いてカバーできそうだ。よし、小天橋駅から歩こう。

そんなわけで京丹後大宮の小野小町温泉を訪れた後、本日2湯目の久美浜温泉へ向かうべく、小天橋駅までやって来た。駅舎はこんな感じ。
小天橋駅
小天橋とは「もうひとつの天橋立」とでも言うべき景勝地である。当駅から3.5キロ。レンタサイクル借りて行ってみる野望もあったんだけどね、案の定、雨がパラパラ降ってきた。無理っす。

とりあえず駅前から海が見えたので近くまで行ってみた。なかなか絵になる久美浜湾の景色。右半分の低い陸地部分が小天橋の砂州だと思う。
久美浜湾

雨の中のフルーツ街道

あとは温泉まで歩くのみ。大半は道なりに進むだけなので迷うようなことはない。道沿いにはフルーツ農園が目立つ。

小雨だから傘はささない。旅行中に折り畳み傘を広げると後始末が面倒だからね。そうこうするうちに本降りになってきたけど意地でもささない。いけずな雨雲さんと意地の張り合いをして、かなり足早に歩いたおかげで20分で着いた。
久美浜温泉 湯元館の前
80分後には当館始発のバス便が出る。入浴に1時間あてるとして、帰りはバスで夕日ヶ浦木津温泉駅まで運んでもらえるわけだ。ばっちりだね。


久美浜温泉はちょっとすごいよ

本格的な温泉にテンション上がる

さて入場。フロントで600円を払おうとしたら「現在キャンペーン中です」と400円になっていたのはラッキーなり。貴重品ロッカーに大事なものを入れてから脱衣所へ進む。脱衣所のロッカーには鍵がないので。

温泉分析書を探したけれど見当たらなかった。かわりに温泉の入り方指南とともに「当館の温泉は高温と低温の2種類の源泉を混合して温度を調整しています」的な掲示があった。久美浜温泉湯元館のホームページによれば、高温の方が「カルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉」、低温の方が「ナトリウム・カルシウム-塩化物泉」。

掲示には、露天風呂がぬるめなのでまず露天風呂へ入り、慣れてきたら熱めの内湯へ入るようにとも。ふむ、そうさせてもらいましょう。雨だけど。

露天風呂へ出るためにいったん浴室に入ったら、いきなりジャブを食らった。いかにも温泉らしい独特の匂いがモワッと鼻に差し込んできたのだ。キターーー! 気分が盛り上がる。洗い場に目をやるとカランは5台。

滝と銅像が印象的な露天風呂

ひとまず露天風呂の方へ出ていった。…でかい。何十名いけるかわからないくらいの大きさ。その中に自分をのぞくと0~1名しかいない状態。やりぃ。雨だったので庇のある側へ移動した。近くには打たせ湯状にお湯が落ちてくる箇所あり。

お湯は適温で無色透明。湯の花は見られない。あえて鼻を近づけなくてもはっきり温泉ぽい匂いがする。特徴的には花巻の大沢温泉鉛温泉を連想させる。これだけ広い露天風呂に源泉かけ流しはすごいな。雨という天然の加水があるのはご愛嬌。

露天風呂の一部の側に10メートルはあろうかという大岩が壁となって迫っており、岩の頂上から湯船に流れ込む温泉の滝ができていた。つまり滝が湯口ってわけ。なんとまあ豪快な。これだけでも一見の価値ありだ。岩壁は温泉成分で赤茶に変色している。滝つぼには「岩にのぼるな」との注意書きあり。のぼった奴がいるのかよ、アカンで。

その隣にはなぜか唐突に高さ数メートルのおじさまの銅像が…なにこれ。調べによると、大阪の有名な「くいだおれ」の初代社長さんらしい。ここ久美浜温泉を掘り当てたんだとか。へー。

よもぎ風呂は極楽な浴感

滝と銅像を見ながらしばし浸かって温まった後、露天風呂の脇にある小さなタイル風呂が気になって移動してみた。説明の張り紙を読むと「よもぎ風呂」だそうだ。いろいろと効能が書いてある。

あまりにもきれいな透明すぎて普通の沸かし湯のようにも見えるが、さすがに温泉なんでしょう。入ってみると、ぬる湯好きの自分には心地よい、抑えめの温度。非常にやわらかく感じる。

あちこちでプクプクと小さい気泡が立ち上っており、そのあたりに腕をやると泡付きがびっしり。人工炭酸なのかバイブラ的な仕掛けなのか素の泉質なのか、よくわからんが、大変よろしい感じ。

2名規模だけど実際は譲り合って1名ずつ利用すると思われる雰囲気だった。まあ当時はそんな配慮の必要もなかったけど。

あっちっちの内湯

露天エリア体験はここまで。なお男湯女湯は入れ替え制で、一方の露天風呂は銅像がなくてサイズが小さめとの情報もある。伝聞調で一応記す。

続いて浴室内に戻って内風呂へ入った。あちい。たしかに熱い。浸かっているうちに慣れてくるものの、ぬるめが好きな人にはちょっと厳しいだろう。少なくとも長湯はできない。

広さは6名規模で、自分以外には0~2名ほど。お湯の見た目と匂いは露天と同じ。雨だったせいか、それとも好みの問題か、露天風呂へは行かず内風呂専門の客もいた。


天気の良い時に観光とセットで訪れたい

風呂上がりに水分補給しつつちょっと休憩。ふと気づくと肌がやたらスベスベ感ある。さっそく温泉効果か。やりますな。

やがて帰りのバスが来たので乗り込んだ。バスは途中で夕日ヶ浦を通る。名前の通り、海に沈む夕日が美しい海岸なんだろう。それに夕日ヶ浦の浜辺にはインスタ映えスポットで有名になったビーチブランコ「ゆらり」がある。

小天橋・夕日ヶ浦のサンセット・そしてブランコ、ああ、晴れてさえいれば見に行ってただろうなあ。冬の日本海はカニという魅力があるけど、どんより空模様のイメージがどうしてもね。実際このときも雨がちだったし。

抜けるような青空の日にも訪れてみたいと思わせる久美浜温泉だった。