山口県の防長四湯といえば湯田・長門湯本・俵山・川棚温泉を指す。今回の遠征では四湯をすべてクリアするつもりだった。最終日の時点であと川棚温泉に入浴すれば野望達成となる段階まできていた。ようし、あと少しだ、頑張ろう。
立ち寄り候補とした旅館小天狗は自家源泉かけ流しを謳っており、最後を飾るにふさわしいクオリティが期待できた。※日帰り利用可能なのは「旅館小天狗」だ。似た名前の「小天狗さんろじ」はハイグレードな別館で日帰り不可。
受付が15時開始なので、あちこち観光周遊しつつ向かった。センスの良さが目に付く内湯と、ぬるめでゆっくりできる露天風呂の組み合わせを運良く独占状態で利用。旅の疲れを癒やした。
川棚温泉・旅館小天狗へのアクセス
駅からのバス便が整っている
鉄道はJR山陰本線・川棚温泉駅が最寄りとなる。温泉街まで2kmだから徒歩でもやってやれなくはないし、いくつかのバス路線便も利用できて、バスなら3分で着く。アクセスに関しては十分なようだ。
さて、最終日の前半を観光に費やした温泉おじさんは最後の見学スポット=角島を出発し、国道191号を南下していた。途中の地名の特牛が印象的だったな…とくぎゅう? 正解は「こっとい」だそうで、初見で当てるのはまず不可能だと思うなど。
また、二見のあたりは並走する線路とともに海のすぐそばを走ることになり、景観的な意味で目を引いた。近くに島がポコッとあったりして、我が地元の太平洋岸であまり見ないパターンだからなおさら。道路と海を撮影したら、たまたま夫婦岩も写り込んでいた。
温泉街の小路の奥
川棚の交差点を山側へ折れて少し走ったところが温泉街だった。昔ながらの雰囲気を残す静かな町並みの中に一つだけ現代アート風な建物が。民俗資料館を併設する交流センターだって。
つきあたりには妙青寺というお寺。雪舟の手による庭園があるとのこと。時間の都合で見学はパス。
予備知識もなく適当にカーナビ検索して誘導された駐車場に止めたら、従業員の方が出迎えに来た。宿泊じゃなくて一介の日帰り入浴なのにわざわざすいません。恐縮していると、「ここは『さんろじ』という別館の駐車場になります。日帰り入浴はあちらの角を曲がった『旅館小天狗』をご利用ください」と。あーすいません。やっべー、やっちまった。
下のような細い路地に旅館が並んでおり、一番奥が小天狗だった。すぐ横に駐車場があるけど収容台数は多くない。
駐車場側から見た小天狗の横顔が風情ありあり。
居心地が良くてお湯も良い
源泉かけ流しのクオリティ
日帰り入浴が15時開始のところを15時ちょうどに入館。帰りの飛行機が夜遅めとはいえ、暗くなる前、できれば17時半より前には宇部空港に着いてレンタカーを返したい。川棚から空港までの所要時間を計算すると、余裕があるとはいえなかったのだ。
券売機はなくて帳場へ直接お支払いする。800円。まずロビー兼湯あがり休憩処のような空間があり、50円コインロッカーが設置されていた。自分以外に客の気配はなかったが一応貴重品をしまうためにロッカーを使わせてもらう。
浴場はその奥。途中で客室の前を通らないため、旅館全般の様子はよくわからない。泊まる立場からすればそういう構造の方が好ましいだろう。脱衣所の分析書をチェックすると「含弱放射能-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」だった。帳場前の掲示とあわせて考察すると加水・加温・循環・消毒すべてなしの100%源泉かけ流しと判断される。すばらしい。
また、放射能泉についても触れられていて、ラドン温泉として西日本随一・全国では6位みたいな説明が書かれていた。
なぜだか気に入ってしまう浴室の雰囲気
浴室に入ると…ん? 何かが違う。なんか(いい意味で)普通じゃないぞ。どことなく遊び心やセンスを感じさせる要素があるのだ。俺でなきゃ見逃しちゃうね。その一例が洗い場で、カランが四隅に1台ずつ存在する。ただの横並びじゃない。あと壁の一部が白黒チェック模様になっていたり。
浴槽は4名サイズの楕円形。これがまた絶妙な曲線美でして。浴槽の底はタイルを一様に敷き詰めて終わりでなく、一部を違う目地のものにしてアクセントを付けたりとか。それらの作用なのか、不思議と楽しい気分を増幅させられる。
ネットで調べると普通の四角い浴槽の写真も出てくるので(当時女湯だった方の浴室だろう)、どちらの浴室が男湯になるか・女湯になるかで各人の印象は変わってくるかもしれない。
お湯は無色透明で湯の花の白い粒が漂う。泡付きは見られず。匂いを嗅ぐといかにもな温泉臭を感知する。適温だからそうそう長湯はできないが、あえて粘らずとも本格温泉の快い浴感を十分に堪能できる。やるじゃない。
ややぬるめの露天風呂で癒やされる
大きな窓の向こうに露天風呂が見える。行ってみよう。長方形の露天風呂は横一列に4名が入れるサイズ。お湯は一端に設けられた湯口からジワーッと投入されて、他方の端からあふれて出ていく。屋根付きであり、塀がすぐ間近に迫っていて開放的ではないものの、植栽などできれいに整えられている。夜には照明効果でいい雰囲気になりそうだ。
内湯との違いは温度。ありがたいことに好みのぬるめだった。40℃か、もっと低いかもしれない。おかげでゆっくりと浸かることができた。今回の思い出を反芻しながら旅の疲れを癒やす。誰もいなくて完全なる独泉だから、瞑想するかのように集中できた。旅のラストにふさわしいシチュエーションであった。
あー、いいなー。予定の時間が来たけど、ちょっとくらい延長したって飛行機に乗り遅れることはあり得ないし、もう少しここにいようかな…いやいや、気の緩みがトラブルを呼ぶのだ、無難に明るいうちに余裕をもって行動するべきだ。なんとか理性を働かせて誘惑を振り切り、小一時間であがった。
湯あがりはさっぱりすっきり。変に後を引くこともない。いいお湯でしたね。川棚温泉に小天狗あり。1回立ち寄っただけで通ぶったようなことを言っちゃうけど、まあそんな感想だ。
おまけ:盛り上がらない一人打ち上げ
山口の名物に瓦そばがあり、下関が発祥の地だそうで、川棚温泉にも瓦そばのお店がデーンと構えていた。旅行中に食す機会があればと思いつつ、旅館の食事で腹が苦しくなってしまう虚弱体質ではいかんともし難い。
宇部空港に着いて、瓦そばを出す店が空港内にないかと探したが見つからず。あきらめて同じ麺類で代用した。せめてもの下関つながりで「ふく天入りの天ぷらうどん」を。そばはメニューになかったし、西日本ならうどんがうまいかと。
まず天ぷらをつまみにビールを飲む。ふく天が今宵の主役だ。そうして最後にうどんだけが残るので、締めの素うどんとしていただく。ラーメンじゃこうはいかない。しかしなんかみみっちいな。もっとこう、一人打ち上げの宴と称してパーッと飲み食いするつもりだったんだが…結局うどんでお腹いっぱい・お酒ももういいやになっちゃった。すっかり弱くなったなあ。







