歴史ある温泉地の洗練モダンな共同浴場 - 長門湯本温泉 恩湯

長門湯本温泉 恩湯
山口で長い歴史を持つ温泉といえば長門湯本温泉。山口市から秋芳洞を見学しつつ西へ移動していく計画の日があったので、かの有名な長門湯本へ立ち寄るにはいい機会だ。ただしここを宿泊地とするには時間に余裕がありすぎたし、一人泊OKで手頃なお値段、できれば食事付きで泊まれる旅館を見つけるのもなかなか難しそうだった。

かわりにすぐれた日帰り温泉がある。共同浴場の恩湯(おんとう)だ。事前調査によれば、ぬるめですぐれた湯質との評判で、期待しちゃうね。ご当地は行政や星野リゾートの協力を得て温泉街の再生に取り組んでおり、恩湯も2020年にリニューアルずみ。モダンでお洒落な施設に生まれ変わっていた。

長門湯本温泉・恩湯へのアクセス

美祢線の状況に注意

恩湯の最寄り駅はJR美祢線・長門湯本。駅から恩湯まで徒歩10分。美祢線は2023年大雨の影響で代行バスによる運行となっていることに注意。鉄道の復旧はなかなか厳しい状況みたい。

自分はといえば、旅の2日目の朝に山口市・湯田温泉のホテル喜良久をチェックアウトしてレンタカーで秋芳洞へ。詳しくは別記事に譲るとして、往復1時間かかる大規模な鍾乳洞だったなあ。

妙な雨の降り方をする日で、天気予報によればとっくにあがってもいいはずなのに、ここらの地方だけはいつまでも雲が渦巻いているようだった。小雨や霧雨なら屋外を傘なしで強行突破できなくもないが、周期的にサーッと強く降ってきたりするから始末が悪い。で、傘を持ち出したとたんに弱まったりね。ドリフのコントかよ。性格悪い雨雲だな。

おじさんイライラしてきたぞ。もう天気の相手なんかしてやんない。さくっと恩湯に行っちゃうもんね。そうして屋根の付いた温泉施設の中でまったりするんだ。どうだまいったか。わっはっは。

おしゃれに整備された一角にある共同浴場

高らかな勝利宣言とともに長門湯本へゴー。県道31号と国道316号経由で30分ほどの道のりだ。現地では国道沿いに観光客用駐車場があったから止めた。休日は最初の1時間200円、以後30分ごと100円。もっと安いか無料のところはきっとないだろう。

駐車場はメインストリートからみて高台にあり、温泉街を一望できる。石州瓦の赤屋根が印象的だ。黒い屋根も多いですね。
長門湯本温泉街を一望
駐車場から恩湯へ続く道は竹林ぽくなってる。
竹林の道
そのまま音信川のそばまで行けるけど、雨のせいで水量が…。ちょっと怖い感じ。
音信川
赤い橋から上流方向を見るの図。
恩湯前の赤い橋から景色を眺める
この赤い橋の一端に恩湯があった。昔ながらのローカルな共同浴場ではなくて、完全にモダンでカッコよく作ってある現代建築だ。
恩湯のモダンな建物

恩湯の素晴らしきお湯を独泉する

最新鋭のデザインでお出迎え

では入館。再入館不可な通常の入浴券は990円。再入館可能な1日入浴券は1500円(いったん入浴した後に街歩きしてまた入るってこと?)。まあ今は前者でいいでしょう。下足ロッカーキーと入浴券をフロントに提出して脱衣所のロッカーキーを受け取る。その際に「恩湯のたしなみ」という小冊子をもらった。温泉の由来や特徴、入浴作法が書かれている。

脱衣所には縦長ロッカーが並ぶ。分析書が張り出されてて「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、温泉」だった。泉温39℃。PH9.9。湯使いは不明なれど、各種調査情報によれば冬に若干加温する程度で、基本的に加水・加温・循環・消毒なしの源泉かけ流しと考えてよさそう。※温度とPH値は毎日計測して入口に掲示している。

浴室もモダンでシャレオツな雰囲気だった。うぉぉー、すげーな。カランは8台。もちろん令和のデザインとクオリティだ。洗い場区画の横にかけ湯コーナー。

そこからしばらく通路が続く。通路の壁に扉が付いてるように見えて、最初はその扉を開けると浴槽のある小部屋へ通じるのかと思ってしまった…そういうデザイナー風呂もあるのかなと…。んなこたぁない。STAFF ONLYの管理用扉かただの見間違いでしょうな。

独特の泉源空間と足元湧出泉

素直に通路のつきあたりを左に折れると浴槽が姿を現した。浴槽内に4つほどの段差があり、奥へ進むにしたがって深くなっていく。左右には腰かけ用の段が付いていて、そこに座っても肩まで浸かるくらいの深さはある。左右それぞれに3名ずつ座れるサイズ。

浴槽の奥はすぐ壁や窓じゃなくて、しめ縄+源泉が湧き出ている岩盤の空間だった(立ち入れません)。恩湯の泉源を祀ってあるとかそんな様子。岩盤からの源泉は湯口へ集められてそのまま浴槽へ投入されている。なんだかすごい光景を見てしまった。

しかも小冊子を読んだら、浴槽の底からも源泉が湧き出す足元湧出泉って書いてあるぞ。をいをい、とんでもないビッグスターじゃないですか。えらい温泉に来ちゃったなあ。

ぬるめでタマゴ臭のいいお湯

お湯の見た目は無色透明で湯の花や泡付きは意識されず。匂いはしっかりと硫黄を連想させるタマゴ臭。そしてややヌルっとした感触。温泉らしさがあっていいお湯ですね。脳にインプットされた情報のせいでそう思うのかもしれないけど、お湯がとても新鮮な感じがしてうれしい。体内にもお肌にもよさそう。

温度はちょうど39℃ですねっていうくらい。ぬる湯派としてはあとワンノッチ低いと最高だが、すぐにのぼせて出たくなる温度でないのはありがたい。ゆっくりまったり楽しめるのがぬるめの温泉のいいところ。運良く他客のいないタイミングで終始独泉させてもらった。

浴槽の手前に一段あって、そこを踏み台に浴槽の縁をまたいで入るのだが、その段が一人寝転べる大きさで、オーバーフローしたお湯がチョロチョロ流れているもんだから、トド寝できそうだなと思ってしまった…もちろんやりませんよ。誰もいないから何をやってもいいということにはならない。思っただけ。

休憩処にも寄ってくんなまし

あーいい湯だった。小一時間で満足してあがり、湯あがり休憩処にて温泉ラムネでプハー。
温泉ラムネ
この休憩処もおしゃれなつくり。全面ガラス張りで外から丸見え、外を丸見え。内装の材質や色使いとあわせて明るくライトな雰囲気を醸し出している。

デザインに凝ったオセロ盤や知的な風味の書籍が並べてあったり、なかなかのシャレオツ空間。攻めてますねー。一見すると穏当(恩湯)なお湯だけど、足元のクオリティはガチの本物、雰囲気づくりはアグレッシブだ。