初夏の群馬新潟に続いて山口を湯めぐりすることになった。せっかくのいい季節だし、航空会社のタイムセールに参戦して格安なチケットを入手できたので、やるしかない。実際には2泊3日のうち2日間を雨に祟られて、「いい季節」のメリットを生かしきれなかったが…。
遠征の1湯目は柚木慈生(ゆのきじしょう)温泉への日帰り入浴。山口の温泉をネットで調べているとよく名前が出てくるし、口コミも総じて高評価。しかも好みのぬる湯らしい。
実際に体験してみたところ、ぬるい炭酸泉のおかげで長湯を堪能できた。素晴らしいですね。宇部空港から車で行くには結構遠いが、頑張って運転するだけの価値があるハイクオリティなお湯だった。
柚木慈生温泉へのアクセス
バスで行けなくはないが
柚木慈生温泉から徒歩4分のところに柚野活性化センターというバス停がある。堀~柚野活性化センターを結ぶバス便があり、JR山陽本線の徳山駅・新南陽駅あるいは山口線の山口駅・宮野駅を通って堀へ向かうバス路線があるから、乗り継ぎを駆使すれば行けそう。ただし徳山~湯野~堀ルートを除くと運行本数がかなり絞られてて現実的でないかも。
距離的には山口線徳佐駅が最寄りで、調べると柚野活性化センターまでコミュニティバスが走ってそうなのだが、水・金のみで夕方の便がない。
ということなので基本は車でしょう。自分は昼過ぎに山口宇部空港に着いてレンタカーを借りた。時間的にこの日は柚木慈生温泉を訪れたらおしまい。他のことをする余裕はない。
進撃の温泉おじさん
時間の節約が何より大事なので惜しみなく高速を活用した。山口宇部道路→中国道鹿野IC→国道315号だったかと思う。強めの雨が叩きつける中を100km近く走ったのは楽じゃなかった。なにしろ当湯のある一帯は島根との県境が近く、山口市といってもむしろ津和野圏じゃないかっていう場所だ。温泉へのこだわりがなければ一気に直行しようなどと思わなかったに違いない。
だからといって「ちょっと遠いから今回はパスするか」「また次の機会に」なんて逃げてはいけない。ここは中国山地に含まれる地域で冬には雪が積もると予想される。行きやすい「いい季節」を選んで山口遠征できる機会が人生であと何回あるかを想像したら、やるんだな?! 今…! ここで!
ちなみに空港から車でアクセスするのであれば石見空港の方が近い。50km・1時間程度で行けるみたい。今回は宇部IN/OUTに合わせた旅程の中で柚木慈生温泉だけがやや異質な位置にあったためにこうなった。
個性豊かな良質の温泉
人気の高さが現れた活気ある館内
現地は道沿いに看板が出ているから迷うことはない。同じ敷地にカラオケ柚子っ子という店舗がある。駐車スペースは半分以上埋まっていた。建物の外に温泉分析結果が出ている。
では入館。フロント・男湯・女湯がコンパクトにまとまったつくりで、どこを見てもつねに人がうろうろしている感じ。カメラを向けられる雰囲気じゃなかったので中の写真はありません。入浴料は600円。フロント横ではちょっとした惣菜を売っていた。
館内にも分析書が掲示されていて、外のやつと同じく「含二酸化炭素-ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉」だそうだ。加温がわりに源泉と温めた沸かし湯を7:3の比率で投入しているとも書いてあったな。その意味では加水ありなのかな。循環・消毒については不明なれど、もしあったとしても、後述するように温泉の特徴がガッツリ出ていて全く気にならない。
脱衣所にロッカーはあったはず。使った記憶がある。脱衣所の時点で浴室から話し声が漏れてきていた。なんなら女湯からも聞こえてくる。県外からもお客さんを集めそうな高評価の温泉だからなー、湯船にぎっしりレベルで混んでたらどうしよう。
泡付きびっしりの金気臭なにごり湯
おそるおそる浴室に入ると、自分一人がもぐり込む余地はありそうでひと安心。洗い場は4名分でシャワーが付いてない。全体でシャンプーのボトルが1本、コンディショナーも1本、数個の固形石鹸を収めた容器が1つ。鄙び感のある浴室をイメージしていたら、思ったより普通だった。
親指を立てた「いいね」マークのような形をした浴槽は、ある程度余裕をもって入るなら4名サイズかな(自分が4人目として加わった)。5人目になると各自詰めれば不可能ではないにせよ、加えてもらうための心理的ハードルは高くなる。
お湯の見た目は黄土色。しっかり濁っており浴槽の底は見えない。お湯の中にあっても自分の腕や胸などは見えるので観察すると、泡付きがびっしりだった。さすがは炭酸泉。沸かし湯と混合してもこれだけの泡が残っていて付着してくるのはかなりのものだ。この泡だけでも満足感高い。
匂いは強い金気臭。いかにも源泉の濃ゆさを主張している。そして温度に関してはぬるい。せっかくの温泉で沸かし湯が優勢にならないように、温泉成分を薄めすぎないように、炭酸が飛ばないように、考えて調整してくれているのだろう。
ぬる湯で長湯はみんなの総意
自分は「熱くないと温泉じゃない」「42℃がベスト」思想に染まっておらず、むしろぬる湯大好きっ子なので、こいつはありがたい。体温よりわずか上くらいの温度だから、その気になれば30分でも1時間でも浸かり続けることが可能だ。ほかのお客さんもそんなノリで来ているようだ。だから一度入るとなかなか出なくて混みやすいってのはありそうですな。
もし5人目が来たのにしぶとく居座り続けたらまずいかなと引き際を考えながら入っていたが、4人が3人になり、3人が2人になり、まもなく3人に復活したと思ったら4人に戻った、という流れで結局50分間もお湯の中に滞在してしまった。明らかに濃ゆい温泉なのに、ぬるいからとそんなに長湯して大丈夫か。つい調子に乗っちゃった。
湯あがり後は妙に全身ぽかぽかしてくる。炭酸の爽快感もあり。こりゃあ上質な温泉でしたね。宿泊もやっているので(ネットで気軽に予約できないし一人泊OKなのかも知らないが)、泊まりでゆっくり何度もお風呂に入ることができたら、さぞかし幸せな体験になるだろうと思った。