のんびりムードで時間を忘れる良泉 - 人吉温泉 華まき温泉

華まき温泉
九州の小京都といわれる人吉は良質の温泉でも知られている。また2020年の豪雨では甚大な被害を受けた。2年後もなお復興の途上にあるという状況の中、温泉めぐりで訪問することになった。いろいろと計画の紆余曲折を経て宿泊ではなく日帰り利用、かつ典型的な人吉中心部の温泉街ではない場所に決めたのだが。

それが華まき温泉。市街地を少し外れた緑の多い風景の中にある。事前調査では泡付きが強いぬるめの湯ということで自分の好みにばっちり沿っていたから期待して行った。

実際に期待通りのクオリティであった。ローカル色の強い小ぢんまりした温泉。だがそれがいい。ゆったりした時間が流れるのんびりした雰囲気とお湯の特徴が噛み合って、すごく好感が持てる。

華まき温泉へのアクセス

ダブルループ橋を越えて

旅の2日目。えびの市の加久藤温泉をチェックアウトして出発。県境の峠を越えて人吉を目指す。その前に道の駅えびのでお土産を購入。駐車場には島津義弘公の像があったぞう。
道の駅えびのにあった島津義弘公の像
背景に写ってる山の中腹あたりに国道221号の高架が見える。峠に造られたえびのループ橋だ。熊本側にも人吉ループ橋があり、登りでループ・下りでもループという楽しいドライブコースになっている。えびの~人吉間であれば高速道路を使うまでもなくR221のWループ経由で十分だろう。スピードの出しすぎにさえ注意すれば、幅が狭かったり巧みなハンドルさばきを要求されるような道路ではないから大丈夫。

先に青井阿蘇神社で参拝

人吉に入ってから、華まき温泉へ行く前に観光らしきことをしてみようと思って、青井阿蘇神社へ寄った。本殿や拝殿などが国宝に指定されている。
青井阿蘇神社の鳥居
中ではちょうど結婚の儀が厳かにとり行われた直後のような様子だった。新郎新婦の撮影とかやってた。国宝の場で式を挙げられるのか。地元の名士級じゃないと無理な気がするけど実際どうなんだろう。なんてことを考えつつ晴れやかな一団が去った後で二礼二拍手一礼。
青井阿蘇神社 拝殿
境内には青井大神宮や青井稲荷神社もあるのだが、球磨焼酎勢揃いの図についつい目がいってしまう。今夜の宿では球磨焼酎を飲んでみようかな(結果的には薩摩芋焼酎を飲んでしまった)。
球磨焼酎勢揃いの図

カーナビ任せだとややこしい道を行かされる

見学を終えたらいよいよ本命の華まき温泉へ。カーナビの指示にしたがって走っていたら、どんどん集落内の狭い道へ誘導されていった。しかも右折左折を頻繁に繰り返すため、いったいどこへ向かっているのか、混乱してきた。「右です」「20m先を左です」「すぐ斜め右です」…ちょっと何言ってるか分からない。

本当はもっと単純で道幅そこそこのルートがあったんじゃないの?…カーナビに翻弄されながらもどうにか華まき温泉にたどり着いた。最後の100mは本当に狭い道なので(でも見通しは良いので)対向車が来そうもないことを確認したら一気に走り抜けるべし。


温泉通も注目の、これが華まき温泉だ

のんびりした雰囲気の小さな浴場

当館を取り巻く周囲の環境がすでにのんびりムード。お風呂でゆっくり過ごそうかなという気分が強くなる。
華まき温泉 駐車場前の景色
受付で400円を支払い、正面入口の前に立つ。左が男湯・右が女湯だった。他に貸切の家族風呂があるようだ。今回は一般の男湯のみを利用。

扉を開けるとすぐに靴を脱ぐところがあって、そのまま脱衣所へつながる。中はそんなに広くなく、鍵付きロッカーの類はない。分析書には「ナトリウム-炭酸水素塩泉、低張性、弱アルカリ性、温泉」とあった。純重曹泉ですな。加温あり、週2回の消毒あり、加水なし、循環なし。

浴室も小ぶりで洗い場は3名分。カランから出てくるのも温泉だと思う。ぬるっとしているし匂いがそれっぽい。他には横並びで4名サイズの浴槽があるのみ。前面の縁は石(大理石とか御影石とかの違いがよくわかってない)で左右端と奥の縁は木だったような。

噂通りの泡付き豊富なぬる湯に大満足

では浸かってみよう。ぬるーい。いつまででも入っていられるレベルのぬる湯は我がストライクゾーンであり大歓迎だ。お湯は無色透明でカランでの感触と同様にぬるぬるしている。匂いはやはりいかにもな温泉臭だった。

そして驚くべきことに肌にたくさんの気泡がまとわり付く。場所を変えて観察すると湯口付近ほど泡付きが強くなるようだ。もちろん端近くにいても十分な量のアワアワ天国なので、客同士で湯口のそばを奪い合う鎌倉御家人的なパワーゲームを繰り広げる必要はない。

当時は先客が2名いて、しばらくしたら独占状態となった。のんびりムードの昼下がり、誰もいない静かな浴室、絶妙のぬる湯で泡に包まれるこの幸せよ。うっかりすると眠ってしまいそうになるし。最高すぎる極楽なンだわ。

1回だけ脱衣所の時計を確認するために湯船を離れて、再び戻ってきて入ったら、一気にあふれたお湯の量とザパーッという音がすごかったから、湯口からの投入量はなかなかのレベルなんだと思われる。ゆえに中のお湯はいつも新鮮で泡付きも良い、と。

出るに出られぬ心地よさ

浴槽部の女湯との仕切りの壁はくもりガラス・すりガラスのような感じだから、実際透けて見えることはないものの、気になる方は距離を取った方がよかろう。

浴室の窓から見えるのはやっぱりのどかな景色である。うーん、こりゃええわ。まだまだ・ずっとここにいていいんだよ、という悪魔の囁きのような誘惑にすっかりとらわれてしまい、出るきっかけがなかなかつかめない。あと少し、あと少しで、ずるずると。

終わりは新たな客とともにやって来た。独占状態が破られてやっと踏ん切りがついたのだ。いやーずいぶんと長居してしまいました。指先はシワシワ、お肌はツルツル。

 * * *

華まき温泉が人吉温泉のスタンダードな泉質・特徴なのかは分からないが、個人的に人吉の温泉全般に対する好印象が強く刻まれたほどのクオリティだった。訪れてみて正解だった。

なお、当湯は九州八十八湯めぐりという企画の対象施設になっている。それだけ各方面からの評価が高いということだろう。まあそうだよね。


おまけ:九州最大を誇る鍾乳洞「球泉洞」

華まき温泉の後は球磨村の球泉洞へ向かう。九州最大の鍾乳洞だって。よく晴れた日、国道219号と並ぶように流れる球磨川の翡翠色とも称される色が見事なんだけど、見晴らしの良い場所には車を止められず、駐車帯がある場所は木が茂っていて川が見えにくい。次の写真が精一杯だった。
翡翠色に輝く球磨川
華まき温泉から20分ちょっとでトンネルを抜けたらすぐ球泉洞。一般コースの見学料は1100円。最初は人工的なトンネル風で、しばらく歩いた先から本格的にスタート。
球泉洞 本格スタート地点
詳細は割愛します。中はライトアップされて明るく、鍾乳石の特徴の各種説明がある。
球泉洞内部
この手の洞窟に棲んでる生き物といえばコウモリ。
コウモリのアパート跡
異形のモンスターにも見えるフローストーンと石筍の結合物。
フローストーンと石筍の結合物
こんなのを見ながら一般コースは30分くらいで回れる。探検コースに申し込むと、もっと本格的なガイド付き鍾乳洞ツアーに参加できる。
探検コースへの分岐点
球泉洞の向かいにはドーム型屋根が目立つエジソンミュージアム森林館があった。気になる名前と屋根。
エジソンミュージアム森林館
発明王エジソン関連の展示を見せてくれる施設だったようだが長らく休館中。残念だね。