乳白色の露天風呂はまさに秘湯の雄 - 乳頭温泉郷 鶴の湯温泉

温泉ファンの間で常に高い人気を誇る乳頭温泉郷・鶴の湯温泉。あまりの人気に、泊まりたくても予約を取るのがなかなか難しいという。

ではせめて日帰り入浴で…と考えて昼に行くと、同じ境遇の者たちで湯船は溢れかえり、秘湯感を味わうどころではないらしい。まあ伝聞だが。

別に鶴の湯を貶めたいわけではなく、それくらい魅力があって人々が殺到する素敵な宿ということ。梅雨入り前の一人旅「秋田と岩手の温泉ビッグネーム探訪」3湯目は、そんな鶴の湯の「夜の日帰り入浴」をのんびり体験した話。

夜に日帰り入浴を受け付けているのかって? …たしかに普通はやってない(10時~15時)。でも方法があるのだ。

夜の鶴の湯温泉に日帰り入浴する方法

駒ヶ岳温泉の鶴の湯ナイトツアーに参加

鶴の湯温泉のホームページへ行くと、別館山の宿と駒ヶ岳温泉という2つの系列宿があることがわかる。これらの系列宿に泊まると鶴の湯本館の温泉を無料で利用できる(ただし時間帯に制約あり)。

自分が泊まった駒ヶ岳温泉の場合だと、20時出発の送迎車を出してくれて、20時20分から1時間の入浴タイムを楽しめるようになっている。別館山の宿の方はもっと時間の自由度が高いようだが、詳しいことはわからないから、各自確認されたし。

そういうわけで駒ヶ岳温泉に泊まった夜、夕食のお酒を控えめにして鶴の湯ナイトツアーに参加した。この日の参加者は自分一人だけだった。皆が皆必ず行くものでもないようだ。

闇に包まれた鶴の湯

車は上り坂とカーブが続く街灯のない暗い道を進んでいく。水沢温泉郷や田沢湖高原温泉郷のあたりで旅館群の灯りが見える以外は完全に真っ暗、車のライトだけが頼りだ。こりゃ走り慣れた地元民じゃないと結構辛そう。

20分後、現地に到着。鶴の湯を紹介する写真によくある木の門があった。写真を撮りたかったけれど、何しろあたり一体真っ暗。まともに写らないだろう。フラッシュが発動して泊まり客の部屋までまぶしくすると顰蹙だしね。本記事に載せる写真がないのが残念である。


類似的でもあり対照的でもある白湯と黒湯

橋の向こうに素朴な浴室

「奥の橋を渡ると風呂場があります。終わったら2号館の休憩室で待機しててください」と言われて、とりあえず奥へと進んだ。砂利道の両側に鄙び感たっぷりの宿泊棟が並ぶ。左が茅葺き屋根の本陣、右が2号館・3号館。古い時代の田舎の宿場町を思わせる、鶴の湯を象徴する光景だ(暗闇だったけど)。

奥には言われた通りの木橋があり、渡ってすぐに男性用の湯小屋があったので、とりあえず入ってみた。中は脱衣所と、黒湯・白湯と名付けられた2つの小さな浴室があった。木の素朴な作りは雰囲気あって良。

脱衣所の分析書をみると。白湯が「含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩泉(硫化水素型)」、黒湯はそこからカルシウムを削除した形だった。

めちゃめちゃ熱い黒湯

白湯はアジアンな訪日客の若者2名がはしゃいでいたので後に回し、誰もいない黒湯の方へ行った。黒湯といってもべつに黒くない。普通に白濁したお湯だった。強いていえばやや灰色寄り。浴槽は2名がせいぜいくらいの大きさ。

お湯を体にかけてみる…あちい! なんだこりゃあ、めちゃめちゃ熱いぞ! せっかくだからと頑張って湯船につかるも、30秒も耐えられない。いくらなんでも熱すぎる。浴感どうこうのレベルじゃない。誰もいないわけだ。

トロみのある乳白色の白湯

そうこうするうちにアジアンボーイが出ていって白湯が空いたので、そちらへ移動した。白湯は、当たり前だが白いお湯。緑がかったり青みがかったりしてない、そして不透明な、いわゆる乳白色。私見では甘酒を思わせる色だ。

黒湯よりひと回り大きい浴槽へ入ってみると、こちらは熱めながらも許容範囲。お湯は少しヌメリというかトロみ感がある。硫黄泉らしい匂いが若干あるけど、はっきりしたタマゴ臭というほどではない。

かの鶴の湯の風呂を独占するという幸運を味わって喜んでいるうちに残り時間あと40分。そろそろ本命の露天風呂へ行ってみることにした。

白湯を出たところで、一人のおじさんが黒湯から飛び出して来るのに出くわした。いささか興奮気味に「あのお湯はアッツいね! 入れないよ!」とまくし立てると白湯へ駆け込んでいった。そうですよね~。


憧れの秘湯露天風呂を独占

なんとバッチリなタイミング

いったん湯小屋を出て、先ほどの橋のかかる小川に沿ってもう少し奥へ行くと、有名な混浴露天風呂がある。入口のところで、裸のまま服を抱えて足早に去っていくアジアンボーイ2名とすれ違った。ちょっと風呂場を移動するのに、いちいち脱いだり着たりなんて面倒くせえ、という大陸的合理性の発露であろうか。

脱衣所の隣に何だか小さな浴槽小屋があって、そこから外へ抜けると、いよいよ憧れの大露天風呂(混浴目当てじゃないので大露天と表記します)。

なんとまあ誰もいない。まさかまさかの独占だ。さすがの鶴の湯大露天にも独占できるタイミングがあるんだねー。平日夜だから?

足元湧出の源泉に包まれて

勇んで入ってみるとお湯は白湯に近い感じ。露天で冷めるからか、ぬるめで入りやすい。足元は玉砂利ぽく、ところどころ砂利の間からやや熱いお湯が立ち上ってくる。下から源泉が湧いてくる足元湧出ってやつだ。ちょっとくすぐったい感触がするね。

温度といい、見た目といい、トロみ感といい、これはたしかにいいお湯だ。そして石造りの浴槽、レトロな小屋、周囲に配された木や草。秘湯感とか情緒面での雰囲気づくりもすばらしい。大きい露天風呂を独り占めしているので余計にそう感じるのだろう。超ええわー。

こりゃ人気になるのも当然だ。誰もが夢中になってしまうだろう。土日祝日なんていったら芋洗いになってもおかしくない。鶴の湯大露天にこれほど静かにゆったり入れたのは相当な幸運だったかもしれない。

肌がすごくスベスベになる!

いつまでも入っていたかったが制限時間が気になった。時計が見えないから気持ち早めに行動しないとな。と適当な頃合いで上がってみると、残りあと20分。ちょっと早すぎるが欲張っちゃいけない、ここが腹八分目、いい潮時だ。

あとで調べたら他に「中の湯」というのもあったようだが、当時は気づかず、2号館で休憩しているうちに帰る時間となった。駒ヶ岳温泉の部屋へ戻ってくると、手と足先がとんでもなくスベスベなのに気づいた。過去に例を見ないほどのスベスベ感にびっくり。鶴の湯のパワーをあらためて印象づけられたのだった。