身延山久遠寺の桜がバッチリだった話

身延山久遠寺境内
4月のグループ旅行で身延山を観光したのでレポートする。旅程の都合でまず久遠寺だけを見て、宿泊をはさんで翌日に奥之院思親閣という、ちょっと変則的な行程。名物の果てしない石段が本当に果てしなかった。

例年なら桜の散り終わる時期に訪れたが、今年は開花が遅れたため、ちょうどいいあんばいだったのが予期せぬヒットであった。

身延山久遠寺への道

身延駅からバスで10分

前日に高遠の桜を見に行って玉砕(ほとんどつぼみだけ)した一行は、ガッカリしながら次の目的地である身延へ向かった。

JRで伊那市→岡谷→甲府ときて身延線に乗り換える。2015年末に下部温泉へ行くため乗ったローカル線だ。こんなすぐに再度乗ることになるとはね。今回は下部温泉を通り過ぎて身延駅で下車。

身延駅から身延山まではタウンコーチという会社が運行する身延山行きのバスで10分程度。終点付近は車のすれ違いに難儀するほど道が細く、バスが降車地点を目の前にしながら、すれ違いのグダグダで何分も立ち往生するという一幕があった。

狭い参道は歩行注意

バス停から久遠寺の三門まで徒歩6~7分。両脇にみやげ店が並ぶ細い参道をおかまいなしに行き交う車がうざい。まあ向こうは向こうでチンタラと道をふさぐ歩行者をうざがっているだろう。聖地を前に殺伐とした空気が流れる修羅道。

やがて姿を現した三門は大きく立派で見る者を圧倒する。そばに咲くしだれ桜との組み合わせがまたいい。ここへ到達するまでに修羅に堕ちた者共はことごとく心を洗われて人間に戻っていった。
久遠寺 三門

石段の試練の先に天上界が

やばすぎる、長い長い階段

門をくぐると試練の石段が待ち構えていた。どこまで見上げればいいのかわからないくらい。もはや階段っていうレベルじゃねーぞ。階段が無理な人のためにつづら折りの坂道もあるのだが、それだって急な勾配だ。
久遠寺の長い石段
怖じ気付いてる場合じゃないと意を決して石段を上り始めた。一般的な階段に比べてはるかに段差があるから、一段一段がなかなかの運動量。それが287段もあるのだ。

ひいこら言いながら息を切らして足を高く持ち上げる動作を延々と繰り返す。しかし一向に終わりが見えてこない。どこまで上るのか。ふぅー。きつすぎ。やばいよ、やばい。天まで続くかと思われる階段で文字通り昇天しちまうぞ。ひぃー。

立派な本堂、そしてあっさり下る

…永遠に続くかと思われた輪廻の果てに、ようやく天上界へたどり着いた。15分か20分か、いやもっとかかったかもしれない。あまりの強烈体験に、この石段が身延山の最初にして最大の思い出となった。着いた目の前には五重塔。
久遠寺 五重塔
その奥にでっかい本堂。熱心に参拝する人々で賑わっていた。
久遠寺 本堂
他にも祖師堂とかしだれ桜とか見どころはあったのだが、同行者がもう歩けない・戻ろうというので、引き返すことになった。いま来た石段を下りるのは体力的に厳しいから、ミニケーブルカーのような斜行エレベータを利用して一気に下った。

満開の桜との出会い

ただしエレベータはバス停と逆方向にある駐車場に着く。そこから三門へ出るのに10分以上、バス停までだと20分近く歩かなくてはならない。だがその途中で満開の桜並木と出会うことができた。
久遠寺 参道の桜
甲信地方の開花の遅れがここ身延では吉と出たようだ。思いがけず高遠の敵を身延で討つ形となった。この旅行の目的の一つである花見を一応達成することができて、メンバーの表情に満足の色が広がった。


身延山頂の奥之院を参拝

混みあうロープウェイで山頂へ

その日はいったん終了。身延線で10分離れた内船の船山温泉に一泊し、翌日再び身延山バス停まで戻ってきた。もう石段を上る気力はない。バス停前に待機していた乗合タクシー(200円)で本堂の裏手へショートカットした。

その近くに身延山頂へのロープウェイ乗り場がある。何かの行事だろうか、まだ10時かそこらだというのに、到着した下り便から白装束姿の人がぞろぞろと出てくるのに出くわした。上りを待つ列も結構長く伸びていて、次の便にはぎりぎりで乗せてもらえた。
身延山ロープウェイ
ロープウェイの車内は通勤電車のようなラッシュで景色を楽しむ余裕なし。人混みに揉まれること7分、わけもわからぬまま頂上駅に着くと、帰りの乗車待ち行列がすでにとんでもない長さ。こりゃあ早め早めに行動しないとやばいぞ。

大パノラマの展望台

まずは近くの展望台へ。正面に富士山、下界に富士川がきれいに見える、いい眺めだ。ここでしばらくパノラマの景色を楽しんだ。ちょっと歩いた先には霊山・七面山を望む展望所もある。
展望台からのパノラマ

静寂の奥之院

続いて徒歩数分のところにあるメインコンテンツ・奥之院へ。階段の途中には日蓮大聖人お手植杉が、ものすごーく太い幹をずーっと上まで伸ばしていた。

この杉がってことではないし、そもそも杉由来なのかもわからないが、やけに鼻がムズムズ・目がかゆくなってきた。来たよ来たよ、花粉症的なアレ。マスクをしていたにもかかわらず涙と鼻水が止まらなくなった。この花粉はやばい、強い霊力を帯びてやがる。

奥之院は思親閣の文字が掲げられた門とお堂がある。あれだけロープウェイに満載だった人々はどこへ行ったのか、ここは人の姿もまばらで静かなものだ。落ち着いてお参りすることができた。
身延山奥之院思親閣の門

下山のロープェイ待ち時間が曲者

ロープウェイ乗り場へ戻ると、やっぱり長い列。併設のみやげ店内の通路は長蛇の列によって占領されていた。運行は20分に1本だから、仮に次の便は無理として、もし次の次の便にも乗れ切れないとなったらスケジュールが狂ってくる…うーむ、焦りが…。

少々ヒヤヒヤしたもののどうにかオンスケジュールで下山できた。久遠寺本堂から三門まで今回は石段も斜行エレベータも使わず、つづら折りの坂を下っていった。それでもなかなかの急勾配、かつ浮石で滑りやすいから相当な注意と筋力が必要だ。


見どころ一杯の身延山

我々は2日間に分けて見学したが、普通は同じ日に三門~本堂周辺~ロープウェイ~奥之院をひと通り回るんだろうから、今回の体験をもとにすると、3~4時間みておいたほうが無難。身延駅を基準にするとバスの接続やらなんだかんだで丸一日の行程になってしまうと思われる。

それでも、お寺・歴史・霊山といったものに関心があるなら、十分な見返りは得られる。季節が合えばここに見事な桜と緑が加わって、より一層思い出深い体験になるだろう。超強力な花粉は余計だったが。