贅沢な時間が流れるハイクラスの宿 - 船山温泉(南部)

船山温泉
山梨県南部町にあって身延山観光の拠点として使える船山温泉にグループ旅行で泊まってきた。自分の基準だと高級宿の部類で(料金・設備・サービス面)、温泉宿それ自体を楽しむ目的にも十二分に応えてくれる、さすがの水準だった。

清水の舞台から飛び降りるつもりで予約してみたんだけど(大げさ?)、思い切って行ってよかったと思う。

桃源郷を思わせる船山温泉

こだわりに良宿のオーラあり

4月に実行されたこの旅の趣旨は「有名な高遠の桜を観る」であった。そこへメンバーの約1名から「ついでに身延山に行きたい」と要望が。全然ついでじゃねえ…。「え? 方角は一緒だし、行きか帰りのついでに、ちょちょっと寄れるだろ?」

…ああ、やってやる、やってやんよ。そのかわり一泊増えるし、宿は自分の趣味全開で選びますぜ。ってことで、ネットで評判のいい温泉を探して見つけたのが、一軒宿の船山温泉だった。

もう口コミを見ても船山温泉のホームページを見ても、素晴らしい宿だという確信は増すばかり。静かにゆっくりくつろいでもらうためのこだわりがまたイイ。たとえば7名以上の団体・小学生以下のお子様・宴会目的はNGなのだ。絶対に自分好みだぞここは。

満開の桜がお出迎え

しかもプランの中にジビエコースがあった。ジビエって最近よく聞くけどまともに食べたことがないから一度試してみたかったんだよね。料金はさらにお高くなるけど、一生に一度の体験じゃー、えーいままよ! で予約した。いやあ楽しみだ。

船山温泉はJR身延線・内船(うつぶな)駅から車で10分。富士川の支流・船山川の最奥にある。我々は宿の車で駅まで送迎してもらった。当日は神社の祭事の日だったらしく、道中の建物という建物がことごとくしめ縄で囲まれる珍しい光景が見られた。

季節は春真っ盛り。ふだんの年なら桜が散り終わる頃だが、この年は開花が遅れていて今まさに満開を迎えていた。船山温泉の周辺も桜の花と緑がいっぱいで一種桃源郷かのような風景だった。なんという幸運。
船山温泉の桜

情緒とテクノロジーが融合した部屋

チェックインを終えて2階へ上がる階段の横に熊の剥製があった。2つ先の山で仕留められた3歳だか4歳だかの若い熊だそうだ。
船山温泉 熊の剥製
一行の部屋は2階端っこの15畳和室。部屋に入るなり、うわー新しいー・きれいー・おしゃれーとテンションが上がる。凝ったギミックで格納された大型液晶テレビの横の棚にはコーヒーやお茶とポットが格納されていて自由に飲める。

窓際にはソファとマッサージチェア。こんなのがある部屋は初めてだ。すごいわー。セレブになった気分(大げさ)。
船山温泉のマッサージチェア
窓からの眺めが駐車場なのは納得づくで指定した部屋だから気にならない。むしろ駐車場の向こうは桜と木々の緑に覆われた里山でいい眺め。なお、駐車場側でない部屋も他にあるようだからお好みでどうぞ。

部屋を入ってすぐのところとトイレの灯りは自動センサーでオン・オフする。手でスイッチを触る必要がない。夜中トイレに立つときも安全安心だ。テクノロジーの進歩万歳。


凝った演出を楽しめるお風呂

大浴場と2つの貸切風呂

船山温泉には男女別の大浴場と貸切内湯「清水」と貸切露天「二人静」がある。貸切の方は予約不要で、ドアがあいていれば利用可能、使うときはドアを閉めて鍵をかける=使用中の合図というシステムになっている。概ね清水は使用中のことが多くて二人静はチャンスが多々ある感じだった。

まずは大浴場へ行く。脱衣所までもがきれいでおしゃれな雰囲気を保っていた。壁の分析書には「単純硫黄冷鉱泉、低張性、弱アルカリ」とあった。加温はしているようだ。

駐車場の埋まり具合からしてこの日はほぼ満室と思われる割に、浴室内は自分たち以外にいつも1~2名しかおらず、のびのびと入浴を楽しむことができた。

気持ちいい寝湯ができる内湯

内湯は一つの浴槽が「浅め+超浅め+深め」の3エリアに区分けされている。真ん中の超浅めのところで寝湯をする趣向になっていて、仰向けになった状態で体の厚みの半分くらいまでが湯につかる。これがまた気持ちいい。トド寝っていうんですかね、あれが好きな人の気持ちがわかる気がした。

湯は若干ぬるめで、ほぼ無色透明といってもいいくらいの微濁り、ごく小さな湯の花が舞っている。なんだろう、温泉らしさを主張するかすかな匂いを感じたのだが、このときはそれが何なのかを言語化できなかった。

川と緑に囲まれた露天風呂

続いて露天風呂へ。最初だけふっと強く鼻を通った印象で匂いの正体がわかった。タマゴ臭だ。しかし鼻が慣れたのか、すぐにまた印象が弱くなった。お湯そのものは内湯と同様。

露天風呂は2人が限界の大きさ。目の前は船山川で左手に人工の大きな段差が造られており、一種の滝のような景観とザーッという水の落ちる音によって露天気分を盛り上げている。

船山温泉の周囲に他の民家や施設はなく、露天風呂から見える景色は川と山林のみ。おかげで温泉+自然環境というダブルのリラックス効果を得ることができる。いいですねー。

幻想的な夜のライトアップ・ツリー

夕食後に二人静が空いていたので利用してみた。単独もしくはカップル向けの規模だった。コンクリート打ちっぱなし風の洗い場から外に出ると小さな円形の露天浴槽があったので入る。お湯は大浴場と同じ。

ここからだと人工滝は見えないものの音は聞こえるし、夜は夜でまた凝った演出が見られた。川のこちら側と向こう岸の木々がライトアップされていたのである。うーん、手が込んでいる。すばらしい。おみそれしました。

翌朝は大浴場の男女が入れ替わっていた。基本的な作りは一緒で露天風呂がやや広めだったかな。


贅沢三昧の食事に有頂天

ジビエづくしのコース料理

船山温泉の食事は1階の個室でいただく。時間は夕食が18時、朝食が8時と固定されている。客はワガママだからいろいろ言うだろうが、考えようによっては、今のリソースで下手に個別対応しようとしてグダグダのオペレーションになるよりも、最高のおもてなしをするために本当に必要なことにフォーカスしようという割り切り戦略とも取れる。

なんてことを考えつつ夕食が始まった。まず食前酒の梅酒とジビエの前菜。鹿肉、猪のハム・スペアリブ、熊と猪(鹿だったかも)のウインナーなど。いきなりジビエづくしキター。予想外に柔らかくて食べやすい。
船山温泉 ジビエ前菜
続いてお造り。イワナの刺身と馬刺し。超うまい。
馬刺しとイワナ刺身
それから猪鍋、焼きイワナ、鹿肉ステーキ、自家製手打ちそば、筍ご飯、デザート。どれもこれもすばらしかったし量も十分すぎるくらいだった。腹が苦しいぜよ。

ジビエは仕留めてすぐに加工するとかの苦労・工夫が忍ばれ、意外なほど柔らかくて臭みがなく味がしっかりしていた。

夜食のおにぎりサービスと朝のお粥

料理は一品一品タイミングを見計らって運ばれてきた。運んできたのは迎えの車を運転していた若めの男性だった。堂々と料理の説明をする語り口から、遅ればせながら宿の若旦那じゃないかと気づいた。

なお、余った筍ご飯はおにぎりにして、別途作った白米のおにぎりとともに食後に部屋まで運んできてくれた。どこまでも気が利いてるぜ。

朝食はあっさり系ながら中身は凝っている。写真の鍋物は味噌汁と湯豆腐である。他にセルフで茶粥・そば粥・パン・ジュース・コーヒーなどが付く。茶粥の茶は「まるわ茶園」という地元のブランド茶だそう。
船山温泉の朝食

味わい深い大人の隠れ宿

いやあ、評判に違わぬ良宿である。自分の尺度だと非の打ち所がない。スマホのアンテナが0~1本の間をウロウロしてすぐに切れてしまうことくらい。

温泉は冷鉱泉だからと侮れないくらいの総合力に仕上がっていたし、食事・設備・サービスは言うに及ばす。同行者も「こんなにいい宿をよく見つけたね」と言ってくれたし、皆のいい思い出になった。よくいわれる大人の隠れ宿ってこういうことなのかな。

今回は旅の中継地として利用する側面がメインとなってしまい、温泉宿そのものを味わいつくしたとは言えない。遊歩道・DVD貸し出しサービス・貸切内湯などスルーしてしまった要素が残っている。一人泊の受け入れOKだそうだし、次こそは…。

しかし我が懐事情がそれをなかなか許してくれないのが残念だ。またいつか機会が来ることをお祈りします、と就活のお祈りメール風に締めくくらせてもらおう。

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