星降る高原の強アルカリ泉 - 霧ヶ峰温泉 ヒュッテ霧ヶ峰

霧ヶ峰温泉 ヒュッテ霧ヶ峰
自分が温泉めぐりを本格的に始めたのとほぼ同時期に仲間内で盛り上がり出したのが「人生で一度は行きたい」シリーズ企画。この企画に乗っかることで色々な場所を訪れる機会を得た。そしてまたひとつ、同企画に新たなパターンが生み出されることになった…星を見るツアー。我らおっさんもロマンチックな絶景を見てみたいのである。

季節は夏、場所は長野の高原。悪天候リスクを考慮して2泊3日で臨むこととし、かつ日ごとにエリアを変える作戦。ガチの天文マニアではないから、車中泊とか野営とか望遠鏡を持ち込むとか、そこまではしない。ライト層らしく気負わず、装備はお手軽に、泊まり先は温泉宿にしたい。

というわけで1泊目はヒュッテ霧ヶ峰。基本はスキー・ハイキング客向けと思われるが、ライト層の星見ツアー基地としても十分に機能するし、加えて天然温泉付きだ。

ヒュッテ霧ヶ峰へのアクセス

場所が霧ヶ峰なので、東京方面から車で直行するなら中央道で諏訪ICまで行って県道424号、もしくは40号で山を登る。出発地次第で上信越道経由の佐久回りルートの方が便利というケースはあるかもしれないが、我々は中央道ルートからの県道40号を選択した。

諏訪といえば諏訪湖畔の上諏訪温泉と宿場町の下諏訪温泉のイメージしかなかった。あとは諏訪大社くらい。実際、GW頃には下諏訪温泉に行っているし。しかしあらためて考えると霧ヶ峰は諏訪市(と茅野市と下諏訪町)なんだな。春に続いて夏も諏訪へ来ることになるとは。

それにしてもとんでもなく暑い日だった。首都圏を脱出して諏訪市街まで来ても暑さはさほど変わらない。やばいよ地球さん。とはいえ、霧ヶ峰あたりの標高1600mともなればさすがに違う。強烈な日差しを涼しい風が緩和してくれて過ごしやすくなる。避暑地パワー炸裂。

早めに現地へ到着したのでヒュッテのチェックイン時刻までまだ間がある。そこで八島ヶ原湿原を先に見学して、それから宿へ向かった。

幸い天気は良かった。頭上には青空が広がっている。しかし山の天気を侮ってはいけない。あっという間に様相が変わってもおかしくないからね。実際のところ高原を囲む遠くの峰々のあたりに、いかにもな積乱雲がモクモクと…。気になるわー。


温泉宿として利用するにも十分

玄関付近はスポーツ合宿に縁がありそうな雰囲気

宿の前の敷地が駐車スペースになっており、その向こうはちょっとした芝生の広場。お子様向けブランコやベンチなんかが置いてある。スワっていいよ。
駐車場前の芝生広場
同行メンバーが付近を探索したところによれば、建物の裏手にもっと良さげな広場があり、もし夜に星を見るならそこへ出ていくのがよかろうとのこと。また、脇のあたりに「スキーはここ」と掲げた小屋が立っていた。冬にはここでスキー・スノボ用品を借りることができるのかもしれん。
スキーはここ
こちらがロビーになります。歴史のある宿らしく昭和30年代の絵や写真が飾ってあるし、長距離ランナーの合宿にも使われているのではないかと思わせる記事が貼ってあったりする。
ロビー

高原の涼しい風が吹き抜ける部屋

チェックイン手続きの後に案内された部屋は2階の12畳和室。おお広い広い。洒落た和風旅館の凝ったつくりとはもちろん違うが、くたびれたところはないし、きっちり管理されているように見える。何ら不満はない。布団はセルフでお願いします。
ヒュッテ霧ヶ峰 12畳和室
洗面所とトイレは2階に共同のがある。男子トイレは小×2、洋式シャワートイレの個室×2。部屋には金庫なし、空の冷蔵庫あり、WiFiあり。浴衣もタオル類もあるし、素朴系温泉宿としての装備は普通に一式揃っている。ヒュッテといっても身体を休めることができればOKという山小屋ではない。窓の外はこんな感じ。
外の景色
夏向け情報として冷房についてコメントすると、エアコンはありません。扇風機もない。窓を開けて網戸にしておけば結構涼しい風が入ってくるから要らないっちゃあ要らない。夜寝る時に窓を締め切ったら若干ムッとする空気になってたけど、寝苦しさを感じるほどじゃなかった。下界が狂ったように暑かった日であることを思えば相当涼しい。


強アルカリの美肌湯をどうぞ

ぬるい源泉を加温して提供

ヒュッテ霧ヶ峰のお風呂は1階の一角にある。お風呂場の前は多少のコミックを置いた休憩コーナーになっている。
お風呂場前の休憩コーナー
時間による男湯・女湯の入れ替えなし。宿の性格からしてそういう方向にはいかないだろうし、その必要もないだろう。脱衣所に分析書が掲示されていて「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、低温泉」とあった。加水なし、加温・循環・消毒あり。

PH10.05の強いアルカリであることをアピールしていた。たしかに10越えは珍しい。お肌に効きそうね。あと源泉温度が28~29℃ということで、ぬる湯好きの自分は一瞬期待を膨らませるも、加温して41℃で提供しているようだった。少なくとも夏はそんなに温めんでも…惜しい。

しっかりした浴室に万人向きのお湯

浴室はわりと新しい感じで、温泉民宿などと比べてもずいぶんしっかりしたつくりであった。ある程度割り切った素朴なものだろうと侮ってすいませんでした。洗い場は5名分あってシャンプー・ボディソープもよさげなものを完備。

浴槽は三角に近い形をしており、このため広そうに見えても一緒に入れるのは5名までかな。浸かってみると適温で、やはり41℃というべきくらいの温度だ。決してぬるくはない。個人的な好みをいえば、もっとぬるいお湯に長時間浸かってまったりしたいところだが…贅沢な望みか。

壁から生えたL字に曲がったパイプから結構な勢いでお湯が投入されている一方、隣のパイプは本当にチョロチョロとちょっとずつ滴り落ちていた。違いはわからん。

お湯の見た目は無色透明。湯の花や泡付きなし。塩素臭は感じられない。PH10から想像したほどのヌルつきはなくて、わりとさらりとしたお湯だった。癖のない万人向き温泉といえよう。


コスパ的になかなかの食事内容

夕食のすき焼きをつまんで飲むビールがうまい

ヒュッテ霧ヶ峰の食事は朝夕とも1階の食堂で。夕食は準備ができると部屋に電話がかかってくる。食堂の中で我々に割り当てられたテーブルにはすでに一連のメニューが並んでいた。
ヒュッテ霧ヶ峰の夕食
主役となるすき焼きは食べ放題のプランにもできるらしい。我々はもう量を追い求める年じゃないのでベーシックなプランで十分。牛丼チェーンとハンバーガー以外の牛肉なんて久しぶりだぜ。

焼魚はニジマス。ちまきが付いているのがちょっと意表を付いているかな。これらをいただきながら夏の高原で飲む生ビールのうまさは格別ですな。ボリューム的にも十分で結構お腹いっぱいになる。ご飯は1~2口分しか入らなかった。

このあと外で星を見なきゃいけないから、あんまりお腹が苦しくなってもいけないしな。なんて、その時は思ったりもしたんですがね…。

朝食は定番スタイルで

朝食は部屋電なかったかもしれない。なんとなく自発的に食堂へ向かった気がするんだよね。前夜と同じテーブルに並んでいたのがこちら。
ヒュッテ霧ヶ峰の朝食
定番風の和定食ですな。まずは高原のうまい水をゴクッと。ああうまい…何がどううまいのか、味のことは正直よくわかってないけど。前夜お米をほとんど食べられなかった分、朝はしっかり完食させてもらった。ただしおかわりする余裕はない。

窓から見える高原の緑と青い空がいいね。うーん、爽やかでいい眺め。この時はね…。

 * * *

温泉目的で行く人はそうそういないだろうし(我々も星観察の観点で候補を探してたら見つけた)、スキーやスポーツ合宿やハイキング基地のニーズが主なんだろうけど、エコノミーな条件で温泉があってゆっくりしたいという希望にも対応できるのがヒュッテ霧ヶ峰。

思い立ったら気軽にヒュッて行ってみてください。


おまけ:絶妙すぎるタイミングで隠された星空

肝心の星を見るイベントはどうなったのか。夕方まではいい天気だった。日暮れとともに雲が空を覆い始め、「20時には雲がなくなってくれるといいなあ」なんて話してたら、やがて雨が降ってきた。しかも降りが強い。

これゲリラ豪雨じゃん。テレビをつけると、近隣地域に大雨警報発令のニュース。ああこいつに巻き込まれたパターンか。ゲリラ豪雨なら短時間でパタッと止むかもしれない。もう少し待ってみよう。

21時。まだ豪雨。22時まで待ってみるか。22時。ようやく降りが弱まるもまだ小雨。ぐぬう、もうあきらめよう。みんなで飲み始めてしまった。今夜はもういいや。天文に詳しいメンバーの解説を聞く座学となったのだった。

初日は失敗かあ。夜中の3時に目が覚めてトイレに立った時に廊下の窓から外を覗いたら、すっかり雲がなくなってて星があちこちで輝いてた。そして朝はすっきり快晴。ああなんという間の悪さ…。