金気と炭酸のガチ源泉が強烈なり - 玉梨温泉 恵比寿屋旅館

玉梨温泉 恵比寿屋旅館
奥会津に位置する福島県金山町にはいくつもの温泉地がある。そのひとつが玉梨八町温泉だ。正確には玉梨温泉と八町温泉の合体した呼び名みたいだけど、細けえことはいいんだよ。

今回の奥会津グループ旅行の2泊目が玉梨八町温泉「恵比寿屋旅館」だった。どちらかといえば玉梨温泉に分類されるのかな。住所が金山町玉梨横井戸だし。でも大浴場には玉梨温泉と八町温泉の2種類が引かれている。しかも源泉100%かけ流し。短時間入浴しただけで全身に明らかな変化を感じるガチの本格温泉であった。

お湯の特徴としては金気臭と炭酸ということになるだろうか。とくに八町温泉の方は見た目にもはっきりと泡が付く。湯治目的・湯質重視の方ほどマッチする宿だと思われる。

玉梨温泉「恵比寿屋旅館」へのアクセス

基本は車が前提でしょう

鉄道旅で恵比寿屋に行くのはなかなかしんどい。金山町を横断するJR只見線は、ただでさえ本数が少ないうえ、会津川口駅からのアクセス手段をどうしていいかわからない(同駅から当館まで5kmくらい離れている)。加えるなら、只見線は会津川口~只見間が訪問時点で不通になっているため、会津若松の方からアプローチするしかない。新潟県小出側から行くことはできない。※2022年10月に全線復旧予定。

なので基本的には車で移動することが前提となる。東京方面からだと東北道・西那須野塩原ICから国道400号を90kmほど、ひたすら走ればいい。

あるいは白河ICから国道289号の甲子峠・下郷町経由で行くか。甲子峠越えの道路は整備されてて走りやすい。下郷町では観光スポットの大内宿や塔のへつりに立ち寄ることも可能だろう。我々は帰りにこの逆コースをやった。

うっかり通りすぎないように注意…エビスさんが目印

実際の行程としては、朝に檜枝岐村の旅館ひのえまたを出発し、田子倉ダムや撮り鉄スポットで知られる第一只見川橋梁ビューポイントを見学しながら当館を目指した。現地には派手な看板や目立つ標識がなく、初見だとうっかり通りすぎてしまうかもしれない。そう、我々のようにね。

うっかりに気づいて引き返し、どうにか到着した恵比寿屋は、野尻川のすぐそばに立つ白い建物だった。駐車場は橋を渡った先の対岸にある。橋の上で川の下流方向を眺めると、当館とその向こうに八町温泉共同浴場が見える。
野尻川沿いに立つ恵比寿屋旅館
上流方向の対岸には日帰り施設の「せせらぎ荘」がある。
野尻川とせせらぎ荘

玉梨と八町のいいとこどりをした旅館(?)

どちらかといえば素朴系かな

ではチェックイン。玄関に太鼓が置いてあって「フロントを呼び出してもなかなか出て来ない場合は鳴らしてください。軽く叩けば気づきます」的なことが書いてある。フロントの向かいに売店コーナーあり。お土産・アイス・水・ご当地炭酸水・日本酒などを売っていたがビールはなかった。ビールはフロアを2つ下がったところの自販機で売ってる。
売店
フロントの隣に湯あがり休憩所もある。当館の客室内のWiFiは弱めなのだが、ここなら少しはつながりやすいかもしれない。メンバーの一人が「ネットがつながりにくい」と言ってこの休憩所まで出撃してたみたいだから。
湯あがり休憩所
建物が川べりに立つ関係で玄関やフロントのあるフロアは3階になる。そして我々が案内された部屋は4階の12.5畳和室。写真が暗いのは部屋の明かりをつける前に撮ったから。
恵比寿屋旅館 12.5畳客室
布団は夕食時に敷いてくれるクラシック方式。シャワー付きでない洋式トイレと洗面台あり、金庫なし、空の冷蔵庫あり。真新しいピカピカの部屋ではないけど古いわけでもなく、普通に快適な住環境だ。WiFiはあるけどメンバー各位の感想によれば電波弱めでつながりにくいそうだ。自分のスマホはずっとキャリア回線でカバーしたから気にならず。

角部屋だからか、窓が2方向に設けられており、一方の景色がこちら。一番手前の赤い屋根が八町温泉共同浴場だと思う。
隣は八町温泉共同浴場

細かいことが気になるおじさん

基本的には野尻川の向こう岸かこっち岸かで玉梨地区と八町地区に分かれる。ただし当館の付近は川を越えて玉梨が版図(?)を広げた格好になっている。一方、隣の八町共同浴場はネットで調べた限り、住所を八町居平とする説と玉梨居平とする説が見られ、よくわからんがきっと源泉の湧出場所が八町地区内なんだろう。細けえことはいいんだけどね。

別方向の窓から見える景色がこちら。対岸の青屋根の建物は玉梨温泉共同浴場だ。
野尻川の対岸に玉梨温泉共同浴場
赤の八町に青の玉梨か。あとは黄屋根の共同浴場があれば三大将の完成だね。温泉王に俺はなる(ドン!!)


これぞ本格温泉のお風呂

温泉の効き目がヤバすぎる

大浴場は1階にある。エレベータがないから4階の客室からだと上り下りが結構辛い。この程度で疲れを覚えるとは、すっかり衰えたなあ。1階に到達すると、かっぱの湯と名付けられた男女別の浴場があった。時間による男女入れ替えはない。

通路に温泉成分の解説板があるほか、脱衣所に玉梨源泉の正式な分析書が張り出されている。「ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉、低張性、中性、高温泉」だそうだ。それとは別に純温泉協会による「純温泉A認定浴槽」の張り紙もあった。純温泉Aとは完全放流式・加水なし・加温なし・循環なし・消毒なし・入浴剤なしを意味する。こいつは本物だぜ。

浴室には5名分の洗い場と5名規模の内湯浴槽がひとつ。玉梨源泉のお湯は緑色に濁っており、浴槽の底は見えない。湯口や縁はすっかり赤茶けて、付近の床面は微かとはいえ析出物による軽い千枚田状態を呈し、半端ない湯質を思わせる。

浸かってみたら適温だった。お湯の濁りのため泡付きとか湯の花とかはよくわからず。匂いには明らかな金気臭がある。ツルスベとかキシキシとかの感触はとくに意識されなかった。

それにしても湯力ってやつがかなりのレベルだな。お湯の熱さを抜きにしても、とても長く入っていられるものではない。浸かり始めてしばらくすると、「これ以上入ってると効きすぎそう、なんかヤバい」と直感して思わず出てしまうのだ。これぞガチの本格温泉。

八町源泉も楽しめる、湯質最強の露天風呂

露天風呂もある。正確には屋根のある別室にしつらえた、野尻川を見ながら入れる2つの浴槽がある特設コーナーだ。どちらも1名専用の大きさの木製風呂で、一方は丸い桶状の浴槽に玉梨源泉が注がれている。内湯と違ってこちらのお湯は無色透明+赤い鉄サビのような湯の花が大量に舞っている。この特徴はお湯の鮮度が非常に高いことを示しているのではないかと想像する。温度は内湯よりも熱い。もはやあつ湯の域に達している。

もう一方は四角い浴槽に八町源泉が注がれている。このお湯も熱め。そして無色透明+湯の花なし+強い泡付きあり。浸かってしばらくすると体中が泡まみれになる。熱いのに泡が飛ばずに残っているのはやはりお湯の鮮度が高いからだろう。

2つの露天風呂はどちらも浴槽サイズに比して源泉投入量が異様に多い。オーバーフローして出ていく量も普通じゃない。純温泉Aをこんなペースでかけ流しにしていたら、そりゃあお湯の状態が最高にいいわけだよ。湯質重視の人にとってはヨダレが出る状況といえる。

とはいえ、長く独占して楽しむなんてことはできない。とにかく長く入ってるとヤバいという直感が働くのだ。短時間で十分。それでも体全体がぽかぽかしてちっとも汗が引かない状態になる。なんとなく普通じゃないような表現し難い感覚になるし。効き目が強烈すぎて怖い。

貸切風呂「月と太陽」もあります

宿泊者は貸切風呂(35分間)を1回だけ無料で利用できるから試してみた。事前にフロントに申し出て予約を取り、自分の時間が来たらフロントで札を受け取ってから1階へ向かう。

かっぱの湯の女湯側の通路奥に出口がある。サンダルに履き替えて別棟へ移動すると、「月と太陽」と名付けられた貸切風呂へ至る。こちらには八町源泉が引かれているようだ。

浴室内には1名分の洗い場と2つの木製浴槽あり。手前側が1名サイズ・奥側が2名サイズで、3人で利用するならまあなんとか、4人だといささか手狭といった規模感。お湯は熱め。特に手前側が熱い。夕食後に利用したので電灯があるといっても全体に暗くて泡付きとか湯の花のことは目視確認できなかった。月と太陽という名前は壁に開けられた穴の形を見れば納得。


こういうのがいいんですよ、な食事

夕食はお酒のお供に合う面々

恵比寿屋旅館の食事は朝夕とも3階の大広間で。座卓にあぐらをかいて座るスタイル。個室ではないが各グループの間は十分な距離を取ってあり、ごちゃつき感はない。夕食のスターティングメンバーがこちら。
恵比寿屋旅館の夕食
ファストフードチェーンの味に飼い慣らされたおっさんにはうれしい品々。これらをつまみにいただく生ビールがたまらない。刺身は湯葉とこんにゃく。もうね、この年になると、サーモンとかマグロじゃなくていいんですよ。回らない寿司には絶対行かないとして、たまに回転寿司に行っても頼むのは光り物・貝・白身を少々・もしあれば生しらす軍艦、だもんな。まあどうでもいいか。

鍋は野菜と鶏肉の蒸し物だった。ボリューム的には十分で結構お腹いっぱいになる。いつものごとく締めのご飯はちょっとしか入らなかった。やれるものなら旅先で暴飲暴食してみたいんだけどね。

お重スタイルの朝食

朝食のおかずはお重スタイル。内容は比較的オーソドックス。湯豆腐をとろろに絡めて食べるのがちょっとユニークだったかな。
恵比寿屋旅館の朝食
主食の米要素として、お粥(温泉粥?)が出てきた。それとは別に普通の白飯もお櫃で提供される。自分は食が細いからお粥だけで十分だったが、せっかくなので二口分くらいの白飯もいただいた。

朝食後には最後の入浴へ。やはり温泉の効き目が半端なく、帰りの車内はひたすら眠りこけていた。

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玉梨八町温泉すごいっす。特徴がはっきりしているし、何度も書くように湯力が抜きん出ている。恵比寿屋旅館の湯使いも理想的で、リゾート気分・ラグジュアリー感を楽しみたいという方よりは湯質重視・本格温泉に入りたい方にこそ、おすすめしたい。