南紀海岸:名勝奇勝の連続、そして本州最南端の潮岬へ

本州最南端 潮岬
秋の紀伊半島ツアーは山から海へと舞台を移しながらとうとう最終日を迎えた。出発前のあまり良くない天気予報がもたらした不安を吹き飛ばすかのように、暑くて困るくらいの晴天となった。日頃の行いが良いからなんてことは言わない。ただただラッキーです。

この日は那智勝浦から海岸沿いの景勝地をめぐりながら空港のある南紀白浜を目指す。一番わかりやすいところだと潮岬でしょう。ここ数年で房総半島・伊豆半島・四国・日本(無人島除く)の最南端に続いて本州最南端へも訪れることになるとは。最南端めぐりにこだわりはなくても、なんとなく達成感がある。

あわせて前日のことになるが三重県熊野市の鬼ヶ城に行った話も加えた。ここを含めて全般的に岩と崖と海の話である。

奇岩と波が絡み合う鬼ヶ城

メインとなる千畳敷

まずは鬼ヶ城からいこう。3日目の午前に川湯温泉みどりやから国道311号を1時間ほど走って海沿いへ出てきた。ここまで丸2日ずっと盆地や山の中だったからいざ海が見えると妙な感覚である。鬼ヶ城センター前に駐車して遊歩道へ。じっくり見物しながらだと片道1時間。ただ歩き通すだけでも20~30分はかかる。
鬼ヶ城遊歩道の始まり
最初にして最大の見せ場が千畳敷だ。鬼と恐れられた海賊の根城だったから鬼ヶ城、という言い伝えばかりでなく、禍々しい雰囲気の地形が鬼の住処を連想させる。
鬼ヶ城 千畳敷
その隣に岩がちょうど屋根になっている空間があった。岩肌の紋様がまたなんともいえない。スケジュールに余裕がない場合は千畳敷で記念撮影して引き返せばさほど時間はかからない。
鬼ヶ城 千畳敷その2

崖にへばりつくような見学コース

さらに先のスポットを見るには次のような崖伝いの道を進むことになる。全然直線的ではないし、アップダウンもあり、どうしても歩速はガクッと落ちる。それで片道1時間コースになってしまうわけ。あと熊野灘の荒波が近くてやばい。
崖に沿った遊歩道
振り返ると、よくもまあこんなところを歩いてきたもんだな。
崖に沿った遊歩道その2
途中から暑さと疲れで写真を撮るどころじゃなくなってきた。お見せできるのがあまりないから言葉で説明すると、おおむね千畳敷のような侵食系の奇岩が続いている。

やがて波切不動なる剥離しかかかった岩の所まで来た。なんとなく岩牡蠣を思い出した。うまそう。
波切不動
ここまで来れば終点は近い。終点となる鬼ヶ城西口は国道311につながっているから車を回送する段取りがつくなら徒歩は片道だけですむ(我々は来た道を戻っていった)。物珍しい地形だから鬼ヶ城はおすすめだ。このエリアを旅行するならできるだけ立ち寄りたい。


ついに来た、本州最南端・潮岬

名前の通りの橋杭岩

最終日はホテル浦島をチェックアウトして国道42号を30分ほど南下した串本町へ。潮岬へ入る手前にある「道の駅 くしもと橋杭岩」が最初の立ち寄りどころ。道の駅の目の前が橋杭岩という景勝地になっている。逆光気味で岩が黒く写ってしまった。
橋杭岩
うむ、たしかに橋の杭だ。こんな調子で、向こうの紀伊大島へ橋を架けたがっているかのように岩の列が続いている。海底の隆起と波の侵食で説明できるんだろうけど、これも物珍しい地形だなあ。杭の周囲にゴロゴロ転がってる岩が一種のアクセントになってる。

岩の列は紀伊大島まで達してるわけではもちろんなくて途中で切れている。その先端あたりに目を向けるとアーチ型の串本大橋が視界に入って、いい感じの構図になる。
橋杭岩と串本大橋

潮岬観光タワーと南紀熊野ジオパークセンター

お次はいよいよ潮岬だ。煙と何とやらは…と皮肉られようが絶景のためなら高いところへ上りたくなるのが人の性。ちょうどうまい具合に潮岬観光タワーがあるじゃない。
潮岬観光タワー
エレベーターに乗れば最上階へ行ける(300円)。そして屋上へ出れば360度のパノラマ風景が展開している。おお、こりゃすごい。南は果てしなく広がる太平洋。実際の最南端であるクレ崎という岩礁も見えた。
潮岬観光タワー展望台から南方向
北の方角は紀伊山地の峰。何が何かはわからないけれど。
潮岬観光タワー展望台から北方向
西には、まずすぐ隣にジオパークセンターの建物がある。そして道路の続く先にピョコッと白く突き出た灯台。どっちも後で行ってみよう。
潮岬観光タワー展望台から西方向
というわけで、来ました、タワーの隣の南紀熊野ジオパークセンター。ここは無料かつ決して大規模の部類ではないわりに中身が結構充実していた。大人でも十分楽しめる。地学的な分野に興味があれば楽しさ倍増。
南紀熊野ジオパークセンターの展示
ただ単に文字による説明パネルや展示物を並べただけではない。カルデラ噴火のCG映像とか、見せ方や体感を工夫しようという意図が感じられる。

潮岬灯台にのぼってみよう

そして潮岬灯台。天気が良いから白亜の灯台がよく映える。日本では少数派の「のぼれる灯台」だ。もちろんチャレンジします(たしか300円)。
潮岬灯台
80段以上の螺旋階段をぐるぐると登って最後は梯子レベルの急階段という典型的な灯台内部を上りきると展望通路に出られる。強い風が吹きつける狭い通路。高所がだめな人はちょっと辛いか。

先ほどのタワーと同様に南に見えるのは岩礁と太平洋。串本では明治時代にトルコの軍艦がこのような地形で座礁した事故が起きている(実際の現場は紀伊大島の東方)。
潮岬灯台から南方向
他に小規模な展示館が併設されており、昔使われていたレンズ等を見ることができる。

よし、これで本州最南端をクリアしたぜ…それから1ヶ月もしないうちに本州最北端にも行くことになったわけだが。


すさみ町から白浜町へ

枯木灘を見ながらのドライブ

お次は枯木灘。「ここが枯木灘です」という決まった場所があるのかと思って、いろいろ迷った挙げ句、串本から白浜にかけての海岸線の総称だという結論に達した。じゃあ車窓から見えてた景色がそうだったんだね、で終わりにもできたけど、道の駅「イノブータンランド・すさみ」でちょっとだけ撮影タイム。
イノブータンランド・すさみ付近の海
付近は名切崎などの磯釣り場が多く、国道を走っていると渡船屋さんの看板をいくつも見かける。道の駅じたいは名前のインパクトに反して地味な感じであった。売店や食堂はなく、すさみ町の情報案内所が主となっている。トイレはあります。

洞窟見学もできる三段壁

お次は白浜町に入って三段壁。いわゆる断崖絶壁だ。おお、姿形になにやら訴えてくるものがあるな。ひと目見たときに浮かんできたのが、なぜか西伊豆の馬ロック
三段壁
侵食が進んで洞窟ができている崖の内部に、三段壁洞窟という観光スポットが整備されていた。1300円。エレベーターで洞窟内へ下りていくと、激しい波を間近で見学できるテラスがあった。しかし当時は波が高すぎて立入禁止。
三段壁洞窟
たしかに勢い余った波がたまにテラスの中へかかって来そうな感じ。あー残念。他には熊野水軍に関する展示などもあり。
熊野水軍の展示
ひとつだけ、立ち入れる小規模なテラスがあったので、波がザッパーンと襲いかかってきたタイミングを見計らって撮影してみた。※実際には波との間に十分な距離があって安全は確保されていた、ねんのため。
三段壁洞窟内に押し寄せる波

白浜の千畳敷もどうぞ

三段壁とセットで観光スポットになっているのが、車で数分のところにある千畳敷。まあ名前の通りです。断崖絶壁ではないから歩いて先端近くまで行ける。夕日の名所のようだがまだ日は高い。
白浜千畳敷
足元の岩の表面がアメーバのようにベチャーっと広がったようになっているのが印象的。砂岩らしいね。三段壁とは全然違う。
白浜千畳敷その2
せっかくの名勝なのに、岩を削って名前やメッセージを刻んだ跡がいっぱいあった点はちと残念。人類に千畳敷は早すぎたんや。

白良浜と円月島で締める

いよいよ終わりが近づいてきた。ラストその1は白砂がきれいな白良浜。砂がすんごいサラサラしてる。
白良浜
もうだいぶお疲れモードになってきて、浜をずっと歩いていくとか、波と戯れるとか、向こうに見える神社へ行ってみるなんてことはしなかった。一か所にしばらく立ち止まって白い砂と青い海を見てただけ。時間もなかったし。

ラストその2は真ん中に穴の空いた円月島。すっかりシルエット風に写ってしまった。薄雲に遮られたとはいえ夕日とセットでそれなりに味のある景色が見られたから良しとするか。
円月島
以上ですべての予定をクリアした。高速道路が延びてきて便利になりつつあるとはいえ、自分にはなかなか来られるところじゃないから、今回は貴重な機会であった。やっぱり岩を中心に奇異な地形や景色が多かったね。紀伊だけに。