風の湯舟が心地よい、海のそばの温泉 - 瀬戸内温泉 たまの湯

瀬戸内温泉 たまの湯
岡山県南部に瀬戸内海を見ながらぬるめの露天風呂に入れるナイスな日帰り温泉施設がある。玉野市にある「瀬戸内温泉 たまの湯」だ。岡山遠征の最終日は当湯を訪問するために持ち時間のすべてを費やしたといっても過言ではない。結果論だけどね。

露天風呂を中心にさまざまな湯船が提供されており、源泉かけ流しの湯を楽しむこともできる。一番気に入った露天風呂は好きなぬる湯だったことに加え、囲いの隙間からとはいえ自分の地元では決して見られないタイプの景色を堪能できた。

館内施設も充実しているようだ。その分「丸一日滞在して元を取る」水準のお値段設定。本当は自分もゆっくりしたかった。でも無謀な距離を移動してきたから短時間滞在になってしまったのは仕方ない。結果論だけどね。

たまの湯への道

急きょ決まった、たまの湯への訪問

たまの湯は幸いなことに鉄道駅から近い。JR宇野線の終点・宇野駅から徒歩数分という恵まれた立地。これなら岡山駅からアプローチしやすくて旅行者にとってもありがたい。ちなみにたまの湯の駐車場から見える丘の上には「玉野競輪」の看板を確認できる。宇野駅は玉野競輪場の最寄り駅でもあるようだ。

自分の場合はレンタカー利用で、しかも出発地点が前泊した湯原温泉・かじか荘。岡山県南北縦断みたいな行程になってしまった。実を言うとこの日は他の観光地や他の温泉施設を巡る計画だった。しかし諸般の事情によりどこへ行ってもフラれっぱなし。このまま何もできずに1日を終えてしまうのではという焦りが…。

そこで遠距離移動を承知の上で当館まで行く計画に変更。帰りの飛行機に乗る時間から逆算して今日はそれだけで終わってしまうだろうけど仕方ない。手ぶらで帰るわけにはいかない。

備中高梁でちょっとだけ観光

腹を括って、たまの湯へ向かってひたすら運転。せめて少しはと、備中高梁の薬師院泰立寺に立ち寄った。ここは寅さんシリーズの秀作「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」(第32作)のロケ地なのだ。岡山に来たらぜひ見ておこうと思っていた。
薬師院 泰立寺
この長い石段、なんか見覚えあるぞ。今にもお坊さんに扮した寅さんが下りてきそう。
薬師院の石段
上った先の敷地内は映画で受けた印象よりはコンパクトにまとまっている(映画はセット撮影のシーンも多かったろうし)。寅さんファンがちらほらということはなく、人の気配がまったくない静かなお寺であった。
薬師院 本堂
薬師院から遠く山上に屋根をのぞかせているのは備中松山城。現存12天守シリーズのひとつ。あそこもいつか行かねばな。
備中松山城が見える?

備中高松城址にも寄ってみた

備中松山城からの連想で備中高松城址にも立ち寄ってみた。歴史に残る水攻めと本能寺の変からの中国大返しにつながる舞台。城の本体は復元を含めて残ってなく、今は緑豊かな公園になっている。しかし水攻めしただけあって本当に平坦地なのね。
備中高松城 本丸跡
よし、観光面は以上で満足ということにしよう。ここから先は岡山市・玉野市の市街地が続き、プチ渋滞もあったりして車の進みは遅くなる。たまの湯に着く頃にはもう午後の結構な時間になっていた。滞在できるのは1時間ってとこだな。


瀬戸内温泉の名に偽りなし

ちょっといい雰囲気づくりをしている

外観は和モダン風味で規模が大きそうな感じ。入館して下足箱の鍵と引き換えに腕輪を受け取る。料金は退館時の一括精算。タオル・バスタオル・館内着が付いてくる。一日滞在型だけに非会員の一般料金は週末だと1900円とお高め。1時間じゃもったいないけど背に腹は変えられん。
たまの湯 入口付近
館内は高級感のあるつくりで大浴場へ至る畳敷きの廊下はこのような感じ。左手には中庭も見られる。
たまの湯 館内廊下
つきあたりの階段を上ると大浴場がある。脱衣所では腕輪の番号に対応したロッカーを使う。近年の日帰り温泉のフォーマットに則っているから迷うことはないだろう。掲示された分析書には「含弱放射能-カルシウム・ナトリウム-塩化物温泉、高張性、弱アルカリ性、低温泉」とあった。

内湯の温泉浴槽を見逃すな

浴室内のお客さんは密でない程度にそこそこ多い。ぼっちおじさんみたいなのは少なく、若いグループやファミリー客が中心とみた。洗い場は16名分。

ひとつ失敗したのが内湯。6名サイズの浴槽が2つあって、たまたま先に目にした方に「あつ湯・白湯」って書いてあったから、なんだ温泉じゃないのか、それに熱いし(好みの逆)と、いきなり2つともパスしてしまったのだ。

ところが最後にあがる際にチェックしたら他方の内湯浴槽はぬるめの温泉だった。気づいた時にはもう時間切れで手遅れ。しまったあああーーー!! 最初にちゃんと見ておけばよかった。勝手に決めつけてしまったのが悔やまれる。思い込みダメ、ゼッタイ。

棚田状に連なる露天風呂

そんな運命が待っているとはつゆ知らず、さっさと露天エリアへ出ていったおじさん。目の前には棚田の湯と名付けられた広めの露天風呂があった。上段・中段・下段の3つの浴槽が棚田のように連なっている。上段と中段は10名いけそうなサイズ。上段からあふれたお湯が中段へ流れ込むようになっている。

試しに中段へ入ってみた。ややぬるめの適温。お湯は無色透明で極端な特徴はない。ふむ、なるほどね…いささかドライな感想ですませたのは、決してお湯が良くなかったからじゃない。他に狙ってた湯船に気を取られていたのと、なんか妙に細かい水滴が顔にまとわりつくので落ち着かず。どこかでミストを噴霧してるのか。

「風の湯舟」がぬる湯&海の景色で気に入った

とにかく持ち時間は限られている。さっさと本命にいこう。一番隅っこにあった「風の湯舟」と題する10名サイズの屋根付き露天風呂へゴー。ここはぬるいそうだから持ち時間を目一杯費やす気マンマン。浸かってみるとたしかにぬるい。体温よりわずかに上くらいかなあ。夏でも全然熱さを感じない。30分連続でいけるやつや。

幸いにも奥のコーナー付近を陣取ることができた。目隠しの囲いの隙間から瀬戸内海が見えるのが良い。自分にとってはなかなか目にしない風景なんでね。写真を撮るわけにはいかないので、代わりといっては何だが、退館後に付近で海の方角を撮影してみた。
たまの湯付近で見える瀬戸内海の景色
土地勘ないから「これが何々島で~」と同定することはできない。しかし地図を見る限り露天風呂の正面方向はアートの島で知られる直島ぽい。小さな船が通り過ぎるのも見えたし、結構な風情がありますな。

時間をかけて楽しみたい施設

それにしても岡山中~北部をテーマにした旅行のはずが、気がつけば玉野市で瀬戸内海を見ながら露天風呂に入ってるなんて…どうしてこうなった?!と内心苦笑いしつつ、ぬる湯を楽しんだ。指先はすっかりしわしわに。

名残惜しいが安全策で気持ち早めに湯船を出てから、棚田の下段をちょっとだけ体験し(4~5名サイズ、お湯の印象は中段と一緒)、ぬるいと書いてあって入ってみたかった3台のつぼ湯は常時満員御礼のためあきらめ、内湯へ戻ったらぬるい温泉浴槽があると知って悔やむ、という流れでタイムアップ終了。

湯あがりはわりとさっぱりしていて、汗はスッと引いた。しわしわだった指先は急にテカテカと張りが出てきた。ぬる湯という特徴込みで結構いいお湯だったと思う。本来なら館内の充実した施設で休憩してから再び大浴場へ行くなどして当館を目一杯利用し尽くすべきだろう。自分が通りすがりの者でなければそうしていたに違いない。