なぜだか早くも3回目、活気あふれる紅葉の新玉川温泉

新玉川温泉
秋田県の数ある名湯の中に玉川温泉を含めることに異論はあるまい。国内最高の強酸性湯と、特別天然記念物の北投石と、1箇所からの源泉湧出量としては日本一という、稀有なポジションを占めている。その本家玉川温泉と同じ源泉を引く、一般人もカジュアルに泊まれる旅館が新玉川温泉だ。

実に興味深い・行ってみたいなと思って新玉川温泉に単身乗り込んだのが1回目。テレビで見たが玉川温泉っていうすごい温泉があるそうじゃないか、と要望を受けて組んだ旅行が2回目。そしてこのたび別のグループから、秋田でここは行っとけという温泉に入りたい、との要望を受けて3回目の訪問とあいなった。

ちょうど紅葉の季節かつGoToトラベルの影響もあってか、近隣エリアの旅館がどこも満室祭りの中、運営規模の大きい当湯はとても頼りになった。湯船では久しぶりに芋洗いの現場に出くわしたりもしたが、お湯の質は相変わらず良好であった。

新玉川温泉への道

旅の2日目。秋田県の南端に近い秋の宮温泉郷・鷹の湯温泉を出発した我ら一行はレンタカーで一路北へ。途中途中の観光スポットに立ち寄ってはみたものの、がっつり雨でどうしようもない。田沢湖から先は勝手知ったる3度目の道、「交差点をあっちへ行くと乳頭温泉なんですよ」「もう少し行くと絶景が見えてきますよ」などとガイドの真似事もしてみたけれど、雨じゃいまいち盛り上がらない。

でも車内から見る紅葉は見事だった。途中から民家が1軒もないような山の中を走る間ずーっと見渡す限り黄色主体の紅葉。あれほどのスケールはちょっと記憶にないな。過去2回は新緑の季節だったので、今回は別の良さを味わうことができた。

こうして田沢湖たつこ像から玉川ダムへの寄り道込みで1時間半ほどで現地に到着。下の写真のような2フロア構造の駐車場のうち、1階はほぼ満車で、唯一空いてたスペースを見つけて車を止めた。こりゃあ混雑必至だな。
新玉川温泉の駐車場

人々の活気あふれる館内

紅葉シーズンの大盛況

恐れていた以上の状況だった。ロビーはチェックイン待ちの人でごった返していた。ちょうど路線バスが到着した直後だったせいもあるかもしれない。なんじゃこりゃあ。このご時世に経済が、経済が回っているッ!…チェックインの順番待ちでずいぶんと足止めを食った。

仕方がないので売店を撮影してみたりする。結果的に何も買わなかったがGoTo地域クーポン使えたみたい。
新玉川温泉 売店
客層も過去2回とは違うような気が。ファミリーや若者グループの割合が増えたように見える。草津・伊香保・城崎の空気感に近い感じがした。紅葉時期は毎年こうなのかね。もともと大規模でモダンなホテル風の当館だけど、今回ばかりは秘湯らしさがすっかり吹っ飛んでいた。

部屋によってはネットの接続状況に注意(混雑次第?)

客室は下のような感じでA館からD館まであって、スペックや広さの選択肢がいろいろ違うみたい。全館あわせると結構な部屋数になる。おかげで予約が取れたのかもしれない。
新玉川温泉 客室棟
我々の部屋はC館2階(フロントがL階なので2フロア上がる)の11畳和室。布団は奥に畳んで置いておくからご自身で敷いてください方式。
新玉川温泉 11畳和室
シャワートイレ・洗面所付き(普通の蛇口とは別に飲料水用の蛇口がある)。金庫あり、空の冷蔵庫あり。WiFiはあるのだが、この部屋ではつながりにくかったみたい。あるメンバーはネットにアクセスしたくなるとロビーまで遠征していた。自分のスマホのキャリア回線は問題なし。窓からの景色はこんな感じ。いかにも熊注意。
窓の外の景色
あと季節柄カメムシが1匹だけ出現した。備え付けのガムテープはなかったのでお菓子の空き袋に追い込んで口を縛ってくずかごへ。


ピリピリくる強酸性の湯は健在

玉川といえば源泉100%槽

もう3回目の紹介なんで手短にいきますね。大浴場はL階の奥。C館からだとそこそこ遠い。通路の途中には温泉むすめ・玉川百合亜ちゃんのパネルが。たくさんいやされてね。
温泉むすめ 玉川百合亜
勝手知ったる男湯の脱衣所で分析書を確認。まあ変わりはないけど「酸性-含二酸化炭素・鉄(II)-塩化物泉」。PH1.13と書いてあったように思う。一方で世間的にはPH1.2とされる。いずれにせよとんでもない強酸性だ。

とはいえ、わざわざ来たからには中央に2区画ある源泉100%槽には挑戦したい。はっきり言って酸が肌にピリピリきます。傷・できもの・掻いた痕なんかがあると痛みがじわじわと襲ってくる。浸かって数分後には「痛てててて!」となることが多い。跳ねたお湯が目に入ったら地獄を見るだろうな。

しかしこれこそが玉川の湯なので頑張って何度も挑戦した。ピリピリを除けばお湯はぬるめで入りやすく、クリアな薄緑色と檜の浴槽から移ってきたらしき木の香りがそこはかとなく良い。

多種多彩のお風呂があります

酸性度を下げた源泉50%槽は、あつ湯・中温・ぬる湯・ジャグジーと取り揃えてある。100%が厳しい方はこちらをどうぞ。50%なら全然ピリピリ来ない。普通にいける。自分はぬるいのが好きなのでぬる湯専門で。そして一番端には弱酸性槽というもっとマイルドなやつもある。

その他に箱蒸し湯・打たせ湯・座り湯・歩行湯・かぶり湯・蒸気浴・浸頭湯とバリエーション豊か。さらに飲泉もできちゃう。飲むならポタポタ垂れてくる源泉を水で38倍に薄めること。もし薄めないと、たった1滴なめるだけでも歯が超浮く、ていうか歯が溶けるよ。

あらためて露天風呂を見直した

まだ終わりじゃない。露天風呂もある。形態的には半露天と呼ぶ方が近いかもしれない。8名規模の浴槽でお湯はややぬるめだった。浸かっても全然痛くなかったから結構薄めてあると思われる。

寒いくらいの外気で頭はクールに、肩から下は温泉でぽかぽか。目の前の敷地の一部が見える程度だけどボーッと外を眺めながらリラックスできるし、いいんじゃないの。

初回訪問時には露天はこんなものかと思い、その記憶があって2回目は露天はいいやと思ってパスした。3回目はなかなかいいじゃないかと見直した。自分の中でも評価がころころ変わる。人の感性なんてあてになりませんな。

そういえば50%槽が芋洗いになった場面を目撃した。大人数の集団が一斉にやって来たからだが、文字通りの芋洗い。50%槽はあつ湯からぬる湯まで満員御礼&貸し切り状態で誰も近寄れねー。自分はあがる頃合いだったから難を逃れたけど、入浴時間があと少し後ろにずれてたら危なかった。新玉川温泉でこんな状況あるんだなあ。


あれこれ目移りしてしまう食事

なかなかレベルの高い夕食バイキング

新玉川温泉の食事は1階のダイニング「ぶなの四季」で。朝夕ともバイキング形式である。大規模旅館ゆえ全員は入り切らないため、来場時刻でいくつかの組に分けられる。我々の夕食は17時45分組だった。

時間が来て行ってみると…あー、やっぱ混んでますね~。特にお酒のカウンターとライブキッチンの列が長い。そんな中で取ってきたのがこれ。
新玉川温泉の夕食
前回よりも品揃えはよろしくなった印象。魚はハタハタ、じゃがいもはインカのめざめという品種。もちろん上に写っているのは提供メニューの極々一部である。ひと通り全部試そうとしてもその前にお腹パンパンになってしまうだろう。

ある程度食べて飲んで追加の品を取りに行く頃には混雑はだいぶ緩和されていた。次の組が来たら時間制限で追い出されるなんてこともなくてゆっくりできた。それに当館のバイキングはちゃんとしてるというか、ちゃんとうまい。結構でござんす。

朝食の品揃えも抜かりなし

朝は8時組。混雑度はまあまあ。朝だからといって品揃えに手抜かりはない。取ってきたのがこれ。
新玉川温泉の朝食
…ご飯を忘れてた。仕方がないのでとろろは単体で飲み込んだ。でもやっぱりお米が欲しくなって後でお茶漬けを持ってきたというちぐはぐ。まあ胃に入れば一緒よ。

朝食もひと通り試すのはちょっと厳しいくらいの種類が提供されているから物足りないってことはないはず。最後にコーヒーで締めて終了。

 * * *

まさか4年足らずのうちに3回来ることになるとは思わなかった。最初は「一生に一度行けるかどうかの、とっても行きにくい秘湯中の秘湯」っていうイメージだったのが嘘のようだ。特に今回はコロナ禍前の人気観光地を思わせるにぎわいで当湯の新たな一面を見た気がした。

自分の交友関係を考えると、さらに別の誰かを玉川へお連れする展開はもう発生しないと思われる。じゃあ今後行かないかといえば、なーんかありそうな予感もするのである。もし次があるなら今度はもう少しひっそりとした時期・曜日にしたい。本家玉川温泉も体験してみたいな。


おまけ:雨中の田沢湖エリア観光

この日の観光スポット1発目は田沢湖エリアの抱返り渓谷。遊歩道30~40分の回顧の滝まで往復するのが一般的なコースだが、時間の都合で駐車場から5分あれば行ける赤い「神の岩橋」まで。
抱返り渓谷入口
橋の上から見た景色がこちら。空は暗いがまだ雨が降ってなかっただけまし。直後にザーッと降ってきたからぎりぎりセーフだった。
神の岩橋から見た抱返り渓谷
続いて田沢湖のたつこ像へ。雨は完全に本降りになっており、あの特徴的な青い湖面は見られず。空も湖も鉛色で残念無念。
田沢湖たつこ像
最後の立ち寄りスポットは玉川ダム。下流側が公園になってるはずだけど道が封鎖されてて入れなかったため管理事務所や天端のある上流側へ。
玉川ダムと宝仙湖
肉眼だと湖面が若干青いことを認識できるが、本気の玉川ブルーはこんなもんじゃない。あの鮮やかすぎる青色を同行メンバーにお見せしたかったなあ。低気圧の野郎~。なお紅葉は全開ですばらしかった模様。そして天端からのぞき込んだ下流側がこちら。
玉川ダムの下流側
晴れていればこの何百倍も輝いて見えたに違いない。