深さいろいろ、お風呂もいろいろ - 秋の宮温泉郷 鷹の湯温泉

秋の宮温泉郷 鷹の湯温泉
秋田県湯沢市といえば2020年秋に誕生した菅総理の出身地として一躍脚光を浴びた。より詳細には市内の秋ノ宮地区らしい。そんなホットな町にある秋の宮温泉郷「鷹の湯温泉」を目指した我ら、「秋に秋田の秋の宮」ってことで何かいいことありそうな予感がしてたら、その通り。

昔ながらのレトロな旅館の中に、ワイルドな野天風呂から立って入るユニークな内湯まで、さまざまな源泉かけ流しのお風呂が用意されている。雰囲気も湯使いも申し分ない。

景勝地や見学施設をめぐる観光だけでなく良い温泉を楽しみたいという目的も大きかったので大変に満足している。ホットな町のホットな温泉、いいじゃないですか。

秋の宮温泉郷「鷹の湯温泉」へのアクセス

秋の宮温泉郷は広い湯沢市の南の方にある。隣県の山形や宮城の存在が意識されるようなロケーションだ。特に主要道となる国道108号(仙秋サンライン)を南へ行けばトンネル越えて鳴子温泉に出てしまう。近いと言っていい距離なのかわからないけど、結構近いのね。

そういう場所だから出発地次第では鳴子温泉経由で仙秋サンラインを北上するルートが考えられる。東京方面から新幹線+レンタカーの旅だとそうなるのかもしれない。しかし我々の場合は、もろもろの経緯があって高速で一関→北上→横手と、ぐるーっと大回りして湯沢入りした。

あいにく天気は悪い。小安峡と川原毛地獄を見学したら雨に打たれて体が冷え切ってしまった。当然ながら関東よりも気温は低いし(南関東だと1ヶ月以上先の寒さ)、こりゃたまらん。早く温泉に入りたい。

川原毛地獄から秘境感のある山道を下って仙秋サンラインに合流し、少し南下すると鷹の湯温泉への分岐が出てきた。対向車とすれ違うのが難しいくらいの幅の道をちょっとだけ進むと当館に到着。すぐそばを役内川が流れ、向こうに吊り橋が見える。橋を渡った先には自炊湯治棟があるらしいが詳細は不明。


レトロ風情が漂う館内

ではチェックイン。レトロ感のある館内は落ち着いた雰囲気で渋めを好む人向き。ロビーはこんな感じ。ここでは朝コーヒーがふるまわれる。
鷹の湯温泉のロビー
売店はないけどフロント横にいくつかお土産を並べてある。稲庭うどんを売っているのが湯沢らしいといえばらしい。

案内された部屋は1階の8畳+広縁和室。室内はレトロ調を保ちつつも要所要所は更新されていたりして管理状態は良好。居住性に難はない。なお最初から布団が敷いてあった。
鷹の湯温泉 8畳和室
シャワートイレ・洗面所付き。トイレは完全な密室じゃないというか、足元にちょっと隙間があって、おじさん世代の学校のトイレ個室を思い出した。金庫あり、容器入りの水を収めた冷蔵庫あり。WiFiの有無はちゃんと確認しなかったのでわかりません。自分のスマホはアンテナしっかり立っていた。
窓からの眺め
窓からの景色は上のような感じ。写真ではわかりにくいが草むらの向こうに川が流れている。木の間にかすかに見える建物は例の吊り橋を渡って行く湯治棟だ。


いろんなお風呂に入れます

4箇所あるお風呂

鷹の湯温泉では合計4箇所の浴場に入ることができる。それらの中で我々が体験したのは3箇所…時間帯で男女が入れ替わる2つの内湯のうち小さい方には行かなかった。4箇所ともロビーからまっすぐ続く通路を進む。通路の半分は植木が置かれ、ある意味で緑豊か。
浴場へ通じる通路
階段の手前に内湯の大浴場と小浴場がある。その向かいに湯あがり休憩所があって、懐かしのコミック作品も置いてあった。タイトルを忘れちゃったなー。あと、お酒を含む自販機も設置されている。
湯あがり休憩所

自然に囲まれた野天風呂

しかしチェックイン直後の夕方は内湯をスルーして階段を上がってさらに奥へと進んだ。途中で外に出られる扉があり、サンダルに履き替えて庭の中をしばし歩くと、6名くらい並んで利用できる足湯がある。さらに進んで後述の半露天風呂の外壁を横目に通り過ぎた先に目的の野天風呂があった。一応混浴。まあ実質男湯みたいなものでしょう。

素朴な木の棚に脱いだ浴衣を乗せて、いざ野天風呂へ…んんん~?! 熱い、熱いぞ。冷え切っていたはずの体はあっという間にゆだってしまった。

10数名規模の岩風呂にやや高い位置から突き出した湯口からジョボジョボと源泉が投入されている。お湯は無色透明で塩化物泉ぽい匂いがする。実際、先ほどの休憩所に置かれていた分析書には「ナトリウム-塩化物温泉」とあった。源泉温度が高いため加水しているようだ。循環・消毒はないはず。

野天というだけあって、すぐそばに川が見えるし、ちょうど見頃の紅葉が周囲を彩っていた。見事な景色。これで天気さえ良ければ…しかし降り続く雨が天然の加水になってくれていてもお湯は熱い。長く浸かり続けるのは難しい。適当なところで切り上げた。なお、ここに洗い場はない。

半露天風呂にある2つの浴槽

夕食までにはまだ時間があったから続けて半露天風呂へゴー。通路をさらに奥へ奥へ、また階段も上がってロビーからかなり離れた最奥まで来ると男女別の脱衣所に着いた。こちらも混浴ということになっていて脱衣所の先は男女とも同じ場所。ちなみに隣には女性専用の半露天風呂もある。

男性側脱衣所の壁に昭和時代の古めかしい分析書板(?)が掲示されていて「弱食塩泉、緩和性、低張高温泉、PH7.3」と書いてあった。

半露天風呂に洗い場はなく、浴槽が2つあるのみ。一方は木の風呂。檜風呂だろうか。四角くて4名規模の湯船の一角には「日本秘湯を守る会」の提灯がぶら下がっている。お湯は適温。試しにちょっと入ってみただけでほとんど時間を割くことはなかった。もう一方の岩風呂に集中したためである。

ややぬるい岩風呂が気に入った

岩風呂は7~8名規模で楕円形。お湯がややぬるめだったので自分の好み的にこちらばっかり入っていた。時おり足だけお湯につける形で岩に腰掛ける休憩を挟んでおけば結構長湯は可能。そして温度以外の特徴は野天風呂その他と一緒。

半露天風呂といっても屋根はあるけど壁に相当するものは無きに等しく、立ち上がれば川をチラ見するくらいの眺望はあるし、露天風呂を名乗ってもおかしくない。紅葉がよく映える中、目の前のすすきが風に揺れてたりして、いやあ結構結構。

秘境の露天風呂感があるのはやっぱり野天風呂の方だけど、中で過ごしてみた感想では半露天風呂が気に入った。チェックアウトまでに3回か4回入りに行った。

珍しい立ち湯のある大浴場

大小2箇所の内湯は16時まで大が男湯・小が女湯、16時から18時までは男女が入れ替わり、18時からまた大が男湯になる。そこで夕食後に大浴場へ行ってみた。

浴室の扉には「浴槽の一つは深さ150cmの立ち湯です」と張り紙してある。ほう面白そうじゃない。で浴室に入ってみると、似たような大きさの細長い3つの浴槽が目に飛び込んできた。|= ←こういう感じで3つ並んでる。

洗い場は2名分…いや、奥の隠れ家的な区画にもう3名分あった。この区画には打たせ湯を思わせる雰囲気の場所が見られたのだが、お湯は出てなくて今は使われてない感じ。あるいは単なる見間違いか。

異なる深さを行ったり来たりで楽しむ

さて最初の3つの浴槽は深さがそれぞれ違い、奥にあるのが一般的な深さのやつ。でもちょっと深めかな。お湯は適温。まあ普通に利用できるオールカマーな風呂。手前中央部にあるのは腰までの深さのやつ。適温。中で中腰になって肩まで浸かってみたり、歩行湯ノリで浮力と水圧を受けながら歩いてみたり、いろいろと楽しめそう。もちろん他の人の邪魔にならないように。

手前壁側にあるのが深さ150cmの立ち湯。適温。初見はゆっくり慎重に入っていきましょう。深さの感覚がわからないから、なかなか足が底につかなくて溺れるんじゃないかと焦ってしまった。どうにか心を落ち着けて姿勢を安定させる…へえー、立ち湯経験ゼロじゃないとはいえ、めったに体験しない珍しい感覚ですな。面白い。

お湯は一緒でも深さの違う浴槽を行ったり来たりするだけで結構楽しめる。さらに洗い場のそばには2名規模のやや熱めの岩風呂まである。しかも我々以外の客はせいぜい1名。大半の時間が独占状態だった。これだけの風呂を貸し切りのように使えるとはおそろしや。そういえば半露天の方も同じだったな。平日泊にして良かった。


秋田に来た感を楽しめる食事

“じゅんさい”と“きりたんぽ”の夕食

鷹の湯温泉の食事は朝夕とも個室で。時間が来ると部屋に内線がかかってきて、部屋の外へ出ると「こちらです」と別フロアの個室へ案内された。畳の部屋にテーブル+椅子だったかな。夕食のスターティングメンバーがこれ。
鷹の湯温泉の夕食
鍋物は秋田だけにきりたんぽ鍋。アルミホイルの中身は確かきのこ類。透明なグラスにも見える器の中は食前酒かと思ったら秋田特産じゅんさいだった。ちゅるちゅるしたゼラチン食感とお酢の味がよい。しかしあとで日本酒を注文した際、この器と日本酒グラスを取り違えてこいつに酒を注いでしまうというミスを犯したのは内緒。
鷹の湯温泉の夕食その2
途中でイワナの刺身と塩焼きも出てきたし、他にもまだあった気がしなくもない。最終的にかなりお腹が膨れた。

朝食は“いぶりがっこ”と共に

朝はオーソドックスな中にも“いぶりがっこ”にご当地らしさを感じる。たくあんはあまり好んでは食べないけど、いぶりがっこは燻製風味が助けになってわりといける。
鷹の湯温泉の朝食
お米はもちろんあきたこまち、だよね。うん、そうだ、そうに違いない。食後は前述の通りロビーにてセルフサービスでコーヒーをいただける。この時、湯沢市の観光振興策かなにかのプレゼントキャンペーンの応募用紙を渡されたので申し込んでおいた。さて当たるかどうか。

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鷹の湯温泉なら本格的な温泉を多彩なスタイルで楽しめる。レトロ感・秘湯感は十二分だし、リゾート感・スタイリッシュ感よりもこういった雰囲気を志向する人にはぴったりだ。

しかも今回は紅葉ばっちりの時期だったから好感度倍増だ。それでいて客が殺到してガヤ感に満ちてしまうこともなく、落ち着いてゆっくり過ごせた。こんなご時世の密を避ける施策中だったのかもしれないが…。とにかくすんごい得した気分である。