目に焼き付けろ源泉砲。合言葉は558823 - はやぶさ温泉

はやぶさ温泉
何年か前に山梨のぬるい温泉を調べていたら峡東地域の「はやぶさ温泉」が目に留まった。名前がカッコいいし気にはなったものの、その時の温泉旅では行き先に入らなかった。いつか別のチャンスを狙おう…そうして2020年秋、山梨ぬる湯めぐりのグループ旅行計画が持ち上がる。

まず当湯と同一エリアと言っていい川浦温泉に泊まることが決まり、次に移動途中の立ち寄り湯候補を探すことになった。これはまたとない大チャンス。強力にプッシュして計画に組み入れてもらったのである。

ここは湯量豊富らしく贅沢に源泉かけ流しで提供されている。カランから出てくるのも源泉だそうだからすごいですね。ぬる湯の観点からは露天風呂がセールスポイントになるだろう。

はやぶさ温泉へのアクセス

はやぶさ温泉は山梨市牧丘町地区にある。先の川浦温泉の記事とほぼカブってしまうが、車で行くなら中央道勝沼ICを目指すことになる。勝沼ICで下りたらフルーツラインと呼ばれる果樹園街道をずーっと道なりに進む。途中で左折して国道140号(雁坂みち)にスライドしたいんだけど、これといった目印がなくわかりにくい。武田信玄ゆかりの恵林寺を目指す感じで。

雁坂みちに入ったら南へ100メートルもいけば看板が出てくる。車で進入するには看板の先のY字路をV字に右折しなければならない。他には勝沼ICからJR東山梨駅あたりを目指すようにして南から雁坂みちへ合流して北上、最後のY字路を楽に左折してすませるルートも考えられる。

公共交通機関で行く場合はJR塩山駅から西沢渓谷入口行き・窪平行きバスで放光寺入口下車徒歩7分。あるいはJR山梨市駅から西沢渓谷入口行きバスで隼上下車徒歩1分。どちらも便数少ないので注意。

我々は川浦温泉をチェックアウトして雁坂みちをずーっと南下しV字右折を経て、はやぶさ温泉までやって来た。ついさっきまで旅館で朝風呂していたのにすぐまた入浴になっちゃうけどまあいいか。


旅館風の日帰り温泉

飲める温泉が商品に

10時開店のところへ10時20分頃着いたのに、15台分ありそうな駐車場はもう半分近く埋まっていた。みんなハヤブサのように動きが素早いな。ちなみに向かいに第2駐車場もある。

で、車を降りると目の前に「りょう泉 はやぶさ」の看板が。これが温泉施設なのか?
りょう泉 はやぶさ
…どうやら違うみたい。当湯では高アルカリの温泉水を販売しており、見えてる建物は温泉水の倉庫・営業事務所じゃないかと思われる。他に温泉水から作ったコスメも売っているようだ。後述するようにここの源泉は飲泉できるほどなので、こういった商品展開が可能になったのだろう。

温泉通路を抜けて

ふと脇を見ると「温泉通路」と書かれた札が立つ、民家の敷地内を通り抜けるかのような狭い誘導路があった。え? 一般民家にしか見えないけどここが温泉施設なの?
温泉通路
…違った。誘導路はすぐ普通の道路(私道かもしれない)にぶつかって終わり、先の倉庫の1軒おいて隣くらいのところがはやぶさ温泉だった。現在は日帰り専門だけど、以前は宿泊もやっていたとの情報があるように旅館風の建物。
はやぶさ温泉の建物
玄関前には、きれいに整えられた庭園もありんす。
玄関前の庭園

源泉をじゃんじゃんかけ流すお風呂

カランにも源泉使用

入館して2時間券700円を購入する。広間で休憩するには4時間券1300円か1日券1800円が必要だ。今回の我々は2時間で十分。すぐそばの貴重品ロッカーに諸々をしまってから男湯へ。途中の廊下の壁にはでかでかと温泉の由来や泉質や効能の解説文が掲げられていた。

脱衣所の雰囲気からするとお客さん結構いるみたい。壁の分析書には「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、温泉」とあった。また少し見上げた位置に「ここの源泉は飲泉できます。カランのお湯も源泉です」的なことが書いてある。ってことは循環・塩素消毒なし。もちろん加水も加温もなし。

そのカランは浴室に7つ用意されている。試しに使ってみると、たしかにちょっと硫黄を連想させる温泉らしい匂いがするような。

独特の湯口が目立つ内湯

内湯は7~8名が入れるサイズで豊富な湯量は一目瞭然。なぜなら左奥にわりと大きな鯉の像が設置されていて、その口から源泉が勢いよくドバーーーッと噴き出していたからである。しかも滝のように落ちているんじゃない。鯉の口からほぼ水平に発射された源泉砲は放物線を描きながら、50cm、いやもっと先の湯面に着弾して激しくしぶきを上げていた。こんな湯口は初めて見たぞ。

勢いよく投入されている分だけ、あふれ出ていく量も多い。浴槽の縁を越えて床の上に大量に流れ出している光景はなかなかのものだ。

では浸かってみよう。お湯は無色透明で単純温泉らしい微硫黄香がある。ただ思ったより温度が高い。ぬる湯のレンジではない。加温してないとしたら湧出温度が40℃以上あって、それが冷めないうちに投入されてるってことかな。お湯が新鮮な証拠ではあるけれど。

ぬる湯目当てなら露天風呂

もう少しぬるいのないかな、と露天風呂に活路を求めた。外へ出て石段を下りていくと5~6名サイズの屋根付き岩風呂が現れた。こちらの湯口も高い位置から源泉砲ドバーーーッ。ただし普通の筒であって鯉の像ではない。

さてどうかと入ってみたらぬるかった。体温と同じか、1℃ほど高いか、それくらい。これならじっくり浸かることができる。とくに奥の方は日光が差し込んでこないから、晴れると暑くなるこの季節には好都合。腰を落ち着けたところで湯口からの源泉を軽く口に含んでみた。…うん、まろやか。いくらかタマゴ風味があるかな。

露天風呂に時計があるのは、スケジュールで動く旅行者にはありがたい。ぬる湯だと調子に乗っていくらでも入り続けてしまうからね。はやぶさ温泉のようなマイルドかつフレッシュな源泉であればなおさらだ。露天風呂には30分以上いただろうか。まだまだ続行可能だったけれど、出ると決めていた時間が来たので、この旅最後の入浴を終えた。

 * * *

駐車場へ戻ってみると、半分どころか7~8割ほどがもう埋まっていた。いやあすごい人気だなあ。しかも他地域ナンバーがずらり。他人のことは言えないが、みんなはやぶさ温泉に入りたくて遠くからわざわざ来たのだろうか。地元の常連さんだけじゃない厚い支持層があるってことだな。

そりゃまあそうだろう。あのクオリティの温泉を豪勢に提供してくれるところはなかなかない。湯めぐりで・渓谷ハイキングや登山の帰りに・ワイナリー見学とあわせて、行きたくなるのに違いない。合言葉は558823=ゴーゴーはやぶさ、ってところか。